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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~エルフの国『ヴァルハラ』戦争編~
80/218

非難完了―男ver―

―――――『王都から南西』戦争開始前―――――


俺は王都から南西、『メイサの森』の隣の平地で、『ある作業』を進めていた。

ちなみにガルムは『夢見の森』のログハウスで留守番させている。

『ガルムに無理をさせたくないからな。』


俺は剣で木々を伐採し、魔法『重力』で一か所に集める。

そこから、スキルを1つ発動させる。


『スキル:家具製作』


すると、『あら不思議!』家が眼前に現れた。

このスキルは、特殊スキルの1つで、家具の製作ができる。

必要なアイテムが揃っていれば、好きな家具を作り放題なのだ。


『家』を建設したい場合は、『木材』が必要なため、

こうして、調達している。

本音を言えば『めんどくさい』。


『家』は『家具』に分類されているだけ、マシなのだが・・・。

『何故、俺がこんな事をぐぬぬぬ~・・・。』


これも全ては王都の『中層』住人と『下層』の奴隷たちが戦争放棄をした結果だった。

『まさか、本当に乗るとは思ってなかった・・・。』


俺はリーゼルに『あるメモ』を渡していた。


内容は、簡単に言えば――――

姫様と『中層』住人と『下層』の奴隷を新たな新天地に移動させ、

『ヴァルハラ』軍に『上層』を潰させる。

というものだった。


『ヴァルハラ』は俺を利用した。俺も利用させてもらおう・・・。

そう考えたのだ。


頭の回転が速い奴なら誰でも理解できることだが、

姫様を誘拐したのは、王都の象徴として君臨して頂く為である。

王都は現国王が死亡した。つまり、代わりが必要なのだ。

姫様には、これから『女王』として国を支える大役を担ってもらう。


姫様が女王になれば、奴隷制度は無くなり、人間の敵も少しずつ減っていくだろう。

ただ、エルフとのわだかまりが消えるかどうかは微妙な線である。。


恨み、怒り、憎しみと言った負の感情は魂に刻み込まれる。

俺のように―――――

生きている限り、一生消えないのだ。


「まあ。今後の王都もヴァルハラも俺には関係ないけどな。」

俺は、作業を進めながら、他人事のように独り言を呟く。


数時間後――――――


「これで完成だ!」

俺は家の建設作業を終えた。

『中層』住人と『下層』の奴隷が住めるだけの広さと家を確保した俺は、次の作業に移る。


「道路整備は大事だよな。」

自動車が『FREE』の世界で走り回るわけではないぞ!


『FREE』の世界にも馬車ぐらいは存在している。

その為の道路整備だ。

俺は、カバンから大量の鉱石を取り出し、歩きながら落としていく。

数メートル歩いた当たりで、俺は振り返り、スキルを発動させた。


『スキル:家具製作』


平地に鉱石が定着し、鉱石はブロック型に形を変化させる。

俺が手を下に振ると、ブロック型の鉱石は地面に打ち込まれた。

こうして、洋風の道が完成する。


俺は道が必要そうな場所に鉱石を落とし、道作りに没頭した。

『意外と楽しい。』


俺は、作業している内にテンションが上がっていたらしく、

家の細かい装飾から街灯にかけて凝った物を製作していった。

気が付けば、自分好みの街の出来上がりである。


「・・・・・・。」


『良いさ。あいつ等が自分でしないのが悪いんだ。』

俺は他人のせいにした。


最後の仕上げに、

俺は四方に建設した柱のてっぺんに札を貼っていく。

札には変わった文様が描かれており、貼っていくごとに文様の色が変化する。

これは消費アイテムの1つで『魔物除けの札』である。


4枚で1組のアイテムで、

周囲から魔力量を吸収し、街を囲むように結界を形成する。

魔力量は吸収されたとしても、魔力量の自動回復が上回っている為、害はない。

しかし、1枚でも剥がれたら結界は瞬時に崩壊する。

『強力だが、もろい』それが欠点だった。


俺は作業を終えて、街の入り口で王都の連中が来るのを待つ。


数時間後―――――


中々来ない王都の連中に痺れを切らした俺は、『家具製作』で椅子を製作し、腰を下ろす。

『時間通りに行動しない奴は嫌われるぞ?』


以前リーゼルに用があって、酒場で待たされたことがあったが4時間overだった。

『リーゼルに任せたのが間違いだった・・・。』


俺は心のメモに書き記した。

『リーゼルは時間を守らない。』と――――


さらに数時間後―――――


俺が椅子に座って眠っていると、遠くから音が聞こえてきた。

『王都の連中か?』

方角は北東、王都のある方角である。


馬の蹄、大勢の声が次第に近づいてくる。

視界でとらえた俺は「やっとか・・・。」と声を漏らした。


『冒険者』たちと『黒い番犬』は馬に乗り、

住人達を囲むようにしてここまで誘導してきたようだ。

『羊飼いみたいだ・・・。』


街の入り口で住人たちは停止。

先頭で誘導していたリーゼル、ウェルダンさんとその他数人が馬に乗ったまま俺に接近する。


「よお。久しぶりだな!」


「お久しぶりです。」


「よお!」


「・・・・・・。」


俺に接近してきたのは、

リーゼル

ウェルダン

テペリ

姫様

ガラン

フェノール

の6人だった。


姫様は手綱を握るテペリの後ろに座っていた。

『普通ガランとかリーゼル当たりに落ちないよう手前に乗せてもらうとかあるだろ?』

俺は不思議がりながらも、挨拶をする。


「久しぶりだな。取り敢えず入れ。話はそれからだ。」

俺は、街に入るよう指示を出す。


「わかった。」


リーゼルたちは住人達を誘導し、丁寧に対応する。


「これからここが貴方たちの家です。さあ、お入りください。」


「気に入ると良いな!」


住人たちは戸惑いながらも家に入る。

そして感動していた。

俺の製作した家を気に入ってくれたらしい。

木の温もりは住人達の心を掴んだのだ。


そうする事数時間―――――


リーゼルたちはくたびれたように腰を下ろす。

実際、疲れているのだろう。


戦争が始まるという恐怖――――――

人間を守るという使命の重さ――――――


リーゼルたちにプレッシャーとなってのしかかったのだ。

それに、来るのが遅かった。

道中魔物にでも遭遇したのかもしれない。


しかし、彼らの仕事はまだ終わらない。

「くつろいでないで、来い。」

俺は、リーゼルたちに声をかけ、立ち上がらせる。

そして、『ある建物』へと案内した。


「こりゃあ!?」


建物を見た者は驚愕した。

王城に住んでいた姫様でさえ驚きの表情を浮かべる。


それはだった。

大きさは『上層』の王城より二回り程小さいが精巧な作りをしていた。

入り口の門には金の装飾が施されている。

門を開城するとレッドカーペットが出迎えた。


「来い。」

とだけ言って、俺はスタスタと中へ入っていく。


「あ!おい!?」

と慌ててついて行くリーゼルに続いて、残りが城に入る。


城の1階には門から奥の方に王座がある。

上を見上げれば、高級そうなシャンデリアがぶら下がっている。

俺は門から入ってすぐ右手にある階段を上って行った。


「この街全部・・・。貴方がお造りに?」

テペリに手を引かれる姫様は俺に質問する。


「ああ。俺が造った。」

俺はそう言った。


後ろについてくる者たちは、全員同じ表情を浮かべていた。

『ありえない・・・。』

しかし、それができるのがこの男なのだと誰もが納得した。


俺は2階の廊下をまっすぐ進んだ先にある扉を開けた。


「ここだ。」


俺はついてきた者たちを部屋へ招き入れる。


そこには高級そうな長いテーブルと複数の椅子が置かれていた。

テーブルの中央には花瓶があり、青い薔薇が飾られている。

俺は、適当な椅子に腰かけた。


固まっている連中に俺は声をかける。


「どうした?座らないのか?」


俺の声に我に返った者たちは席に着く。

そして、話は始まった。


「まず、新天地を我々に与えてくださり感謝いたします。レイダス・オルドレイ様。」

姫様は頭を下げた。


「礼には及ばない。それとレイダスと呼び捨てで構わない。長いし、面倒だ。」

と俺は言う。


「いえ、そういう訳には参りません!」

姫様は席から立ち上がる。


「貴方は私たちを救ってくださいました。

貴方がいなければ私たちは死んでいたかもしれません!」


姫様の言葉にリーゼルが同意する。

「そうだぜ!レイダスは俺たちの『英雄』だ!」

『ウェルダンさんもガランもそんな目しないでくれ・・・。』


周囲の視線は俺に向けられていた。

瞳は真剣で、輝きを放っている。

俺はそれが嫌だった。


「お前たちは勘違いをしていないか?」

俺は言葉を続ける。


「リーゼル、ガランから報告を受けていたはずだろ?ヴァルハラで俺が何をしたか。」


「ああ。聞いている。しかし、あれは『ヴァルハラ』側がレイダスを攻撃したのが悪い。

やっこさんの自業自得だろ?」

リーゼルの言葉に俺以外、全員同意だった。


「・・・・・・・。」

『ダメだ!多数決では勝てない。分が悪すぎるぞ!?』

俺は黙った。

『この場を切り抜けるんだ俺!どうにかするんだ俺!』


俺は、口を開いてこう言った。

「俺はエルフを殺した。人数は数えていないが50人以上は確実だろう。」


「!?」

その場にいた者たちは驚愕する。

1人の人間にそれだけの事が可能なのか!?と


「俺は戦争を引き起こした張本人だ。俺が招いた災いにお前たちを巻き込んだ俺の失態だ。」


「それでも俺を『英雄』と崇めるつもりか?俺は御免だ。」


「・・・・・・・。」

俺の発言に全員黙る。

リーゼルやガランは拳を握りしめる。

『そうだ。それでいい・・・。』


やられたらやり返されるのは世の常だ。

だから、殺した――――――

俺が弱ければ、『ヴァルハラ』で死んでいただろう。

蟠りはあるが、

どっちみち戦争は回避できなかったし、悪い選択だったと今では思っていない。


只、俺は『英雄』なんて柄じゃない。

俺は、死を恐れない。

『命』を平気で奪う殺戮者だ。


「俺は行く。今後の方針はお前たちで決めろ。」

俺は席を立ちあがり、ドアノブに手をかける。


すると、テペリが立ち上がって、俺に接近してきた。

「どこに行くんですか!?」


瞳は涙目で今にでも泣き出しそうな顔をしていた。


「寂しいのか?」

と俺が言うと図星だったのか、テペリは慌てて両手を振って誤魔化そうとする。


「そんなのじゃありません!」

『子供だな~。』


俺はテペリに近づいて、頭を雑に撫でる。

「うわわわ!?何するんですかあああ~!?」


テペリは俺が撫で終えた頭を抑える。

「心配するな。野暮用で暫く留守にするだけだ。じゃあな。」


俺は部屋から退室していった。

俺は、他人だ。

俺には国事情はどうでもいい。

だから――――――

『己が道は自分の力で切り開け・・・。』


―――――俺が退室した後――――――


テペリが席に戻り、話は続けられた。


「レイダス様は変わったお方ですね・・・。」

シャーロットはつぶやいた。


「自身が戦争を引き起こした張本人だと本気で思っていないでしょう。

我々を考えての発言だと思われます。」

とウェルダンは言った。


『上層』という膿が招いた結果が戦争だった。

俺はその火種になっただけだと全員理解していた。


ミスをしたら他人に押し付ける。

人間とはそういう生き物だ。


「責任を負われるおつもりなのでしょうか?」

テペリは耳を垂らし、悲しそうな表情を浮かべる。


「恐らくな。相変わらず読めねー奴だぜ。」

リーゼルは椅子にふんぞり返る。


「あいつはそういう奴だ。」

とガランは頷く。

それに同意するようにフェノールはコクリと頭を縦に振った。


「我々が御仁を理解していれば大丈夫でしょう。

『今後は任せる』と言って行かれましたし、

出来る事から片づけるのが賢明な判断かと思われます。」

ウェルダンの言葉に全員頷く。


そして、今後の方針を決める会議が始まったのだった。

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