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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~はじまり~
8/218

立ち直った男

男は3日間立ち直れずにいた。

ログハウスに連れてきてしまったテンペスト・ウルフの子供は、元気になり、男を『命の恩人』と思い込んでいる。そして 男に『従魔契約』を持ちかけてくる始末。

男は、前世を思い出す。騙され、利用された自分を――――

「俺は、『あいつ等』にはならない。」

男は『従魔契約』を結ぶ前にテンペスト・ウルフの子供に自分が『親』を殺したという真実を告げる。

『夢見の森-ログハウス』


モゾモゾ・・・・モゾ・・・モゾモゾ


男はベットで布団にくるまっていた。


「今日も何もしたくない」

テンペスト・ウルフの件から立ち直れずにいたのだ。


「はああああああああ~・・・・。」

男は長いため息をつく。


立ち直れない原因は、それだけではない。

『テンペスト・ウルフの子供』だ。


「くうううーーーん。 クウウゥーーん」

男にテンペスト・ウルフの子供が――――『懐いた』のだ。


「俺にどうしろっていうんだ。」

子供は恐らく男が『親』を殺したことに気付いていない。

子供は餓死寸前だった。

男は、咄嗟だったとはいえ子供をログハウスまで運び、餌を与えた。

きっと『命の恩人』と思っている。命の恩人は間違っていないのだが・・・・。


「『従魔契約』を持ちかけてくるぐらいだしな。」


『従魔契約』は魔物が服従したい相手と交す契りみたいなものだ。

―――主に従い、主のために死ぬ―――

それが『従魔』だ。

そして、交した契約は、魔物もしくは主が死ぬまで切れることはない。


もし、仮にテンペスト・ウルフの子供が『親』を殺したのが俺だと知ったら――――

俺を殺そうとするか?


俺は悩んだ。『従魔契約』を結んだあとは、従魔は主を殺すことができない。

これは契約に組み込まれている効果の一つだ。

そして、従魔は契約を交わした以上主の指示に否が応でも従わなければならない。


「俺は――――――。」

俺は決めた。このままテンペスト・ウルフの子供に真実を告げず従魔にしたら、


「俺が前世でされたことと同じになってしまう。」


俺は、前世で騙され、利用されたことがある。

俺が『友達』と思っていたそいつは俺を騙し、金を巻上げトンずらしたのだ。


「俺はそんな奴にならない。『あいつ等』にはならない!」


俺は、テンペスト・ウルフの子供を抱き上げた。

そして勇気を持って言う。


「俺は、お前の大事な『親』を殺した。お前はそれでも俺と『従魔契約』を望むか?」


子供の様子を伺う・・・。

『従魔契約』をしたいという意思は変わらなかったようだ。


「そうか・・・。」

俺は安堵した。


「クウゥ―――ン!」

子供は嬉しそうに尻尾を振り続ける。


「なら、俺はお前と『従魔契約』を結ぼう。今日からお前の名は『ガルム』だ!」

従魔契約の魔法陣が床に浮かび上がり、青白い光が俺とガルムを包み込む。

そして、胡散して魔法陣は消えた。

俺は、『従魔契約』を結んだのだ。


「これからよろしくな。ガルム」

俺は改めて、ガルムに言う。


「クウウゥ―――ン。 ワフッ」

ガルムはよりいっそう嬉しそうに尻尾を振った。


立ち直った俺は、ガルムの鑑定をしたいと思ったが―――――できない。

『鑑定石』は触った者のステータスしか見られない。

つまり、ガルムが鑑定石に触れてもガルムのステータスは俺には見れないのだ。


「鑑定石を装備できればなー。」


『FREE』には元々自身のステータスを確認する機能はあったが、相手のステータスを見る機能はない。


「ん・・・・『見る』・・・・?」

俺は閃いてしまった。うまくいけばこれからかなり役に立つ

いや、これは大発見かもしれない!!


「失敗すれば、ログハウスにある鑑定石を失うことになるが試してみるか。」

試す価値は十分にある。

俺は早速作業に取り掛かった。


俺は、『魔法倉庫』からアイテムを取り出した。


黒いコンタクトレンズ:装飾品/レア度:2/目の色を隠す

を2つ取り出した。


そして、1階の鑑定石を2つに切り裂いた。

『FREE』では大きい鉱物を真っ二つにしてもアイテム名は変わらない。

つまり、アイテム名が変わらなければ、アイテムの効果を維持し続ける。


例えるなら、鉄鉱石があったとしてそれを小さいサイズに切り刻むとどうなるか?

俺は、『FREE』で試したことがある。アイテム名が変わり、効果を消失したのだ。


ちなみに切り刻んだ鉄鉱石のアイテム名は『石ころ:効果なし』になっていたよ。


で、

鑑定石を斬ってみたわけだが、アイテムの効果は失っていないだろうか?

俺は自分を鑑定して見た。

鑑定できた。どうやら効果は失っていないらしい。


「材料は揃った。」


俺は、黒いコンタクトレンズ×2と鑑定石×2をなるべく近くに置きスキルを発動させる。


『スキル:錬成合成』


『FREE』には特殊な魔法だけでなく、特殊なスキルもある。

4つの中から1つだけスキルを選べと言われたら何を選ぶ?


俺は、アカウントを4つ持っていた。大体予想はつくだろうが、

俺は『FREE』に関しては『強欲かつ傲慢』だった。

俺は、4つのアカウントにそれぞれ違うスキルを習得させたのだ。

そのうちの一つが『錬成合成』である。『統合』のおかげで今では4つとも使用することができる。


『錬成合成』は、2つのアイテムを1つのアイテムに作り直すというスキルだ。

黒いコンタクトレンズと鑑定石の原型がなくなり1つになる。

やがて完成したアイテムが俺の目の前に現れる。


コンタクトレンズ:装飾品/レア度12/目の色を自由に変える。鑑定効果の付与


「やった!うまくいった!」

俺は思わず声を上げた。予想通りにうまくいくなんて初めてだったからだ。


「はめてみるか。」

俺はコンタクトレンズを目に入れた。

前世もコンタクトをしていたのでなれたものだ。

コンタクトもはめたし、ガルムを早速鑑定して見るか。


――――鑑定発動――――


魔物/テンペスト・ウルフ/幼体

lv/5 ガルム


体力/1500

防御/ 700

攻撃/ 800

速度/ 800

持久力/1000

魔力/ 500

魔力量/1200

魔法適正/A


状態:従魔


lv5にしてはまあまあかな。

テンペスト・ウルフは『FREE』の魔物の中で上位に入る。ガルムの成長が楽しみだ。

これでいつでも自分だけじゃなく、相手の鑑定もできる。


「鑑定は便利だからな。」


戦闘に置いても、相手のステータスや所持スキルがわかるということは、相手を丸裸にしたも同然なのだ。


気づけばガルムが俺の肩によじ登ってきた。

「ワフッ!」

俺はガルムの頭をやさしく撫でた。


「3日も時間を無駄にしてしまったな。」

鑑定できるコンタクトレンズを手に入れたのはメリットとしては大きい。しかし、鑑定コンタクトレンズを作る以外にも3日間の間に色々で来たはずなのだ。


「そろそろ本当の意味での外に出るとするか。」

俺は、異空間から外へ出ることを決意する。


まあ、その前に――――

「布団洗わねーと・・・・。」

「クウウ~ン・・・」



男「心臓破裂するかと思った。」

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