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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~エルフの国『ヴァルハラ』戦争編~
73/218

男は発見される。

――――『メイサの森 奥地』――――


俺は、ガルムを『夢見の森』のログハウスに残し、

『メイサの森』に来ていた。


「うおあああああ!!」

俺は片っ端から魔物を斬り裂いていた。


『畜生畜生畜生・・・・・・。』

『足りない!足りない!足りない!』


俺は俺が分からなくなっていた。


俺の中の何かが渇いている。

渇きがおさまらない・・・。


俺は、魔物を斬るたびに一瞬満たされた。

それでも――――――――『足りない。』


何をすれば満たされる?

人間を殺せばいいのか?エルフを殺せばいいのか?


「うらあああ!!」

俺の剣が魔物を両断する。

飛んでいった斬撃が木々をなぎ倒した。


魔物が俺に恐怖し、逃亡を図る。

『逃がすか・・・。』

俺は、魔物に容易に追いつき、斬り殺す。


魔物の血が茂みにつく。

新緑が真紅に染まった。

『ざまあみろ。ざまあみろ。・・・。』


俺は――――『赤』が好きだ。


『赤』は俺の色だからだ。

血の色は―――――俺の象徴だ。


『もっとだ・・・・。』

最俺を満たしてくれ―――――

最俺の渇きを癒してくれ――――――


魔物は次々、俺に殺されていく。


『――――死は救いだ――――』


俺も死ねるのなら死にたい。

けど――――――


俺は自分の胸に剣を刺した。

「ゲホッ!・・・。」

俺は剣を引き抜く。


傷はみるみる治って行った。

俺は、『不老不死』だから・・・。


俺は奥歯を噛みしめて、咆哮を放つ。

「くそがあああああ!!!」


魔物は死んでいく。

俺の剣で死んでいく。

無慈悲に魔物は死んでいく。


死ぬときに何を思う?

生きていて何を成した?

教えてくれ!


俺は何のために!―――――――――


俺は目の前の魔物を斬り裂き、剣を納めた。

魔物に聞いた所で言葉が通じるはずがなかった・・・。


俺は魔物を斬り裂き続けたが、疲労はない。余裕だった。

『俺は化け物だからな・・・。』

俺は笑みを浮かべる。


そして、声を上げて笑った。

「ハハハハハハハハッ!」


俺は壊れたんだ。

『ヴァルハラ』でエルフたちに攻撃された時に、俺の心は崩壊した。


それに気づいて、自分を笑う。

哀れな俺――――――

可哀そうな俺――――――


俺は―――――『不幸だ。』

この世界に転生しても尚、俺に不幸が付きまとう。

なんでだ――――――

なんでだ――――――


黒い感情が俺の中から止めどなく溢れ出す。

『世界が俺を否定するのなら、世界を俺が壊してやる。』


脳内に悪が溢れている。

俺はやばいことを成そうとしている。

だけど、どうでもいい―――――『俺はそれでいいんだ』


『世界は俺の敵だ。俺は世界が、『憎い』!』

俺の中に蠢く何かが囁く―――――『それでいい・・・。』


俺は、気配を察知しそっちを向く。

そこには冒険者の一団がいた。


俺の体に付いている返り血に驚いているのか?

魔物の死体の多さに驚いているのか?

どうでもいい―――――――


俺は再び剣を抜く。

『世界は俺の敵だ・・・。』


「どうした?俺が怖いのか?」

俺は笑みを浮かべる。

冒険者たちが俺に恐怖しているのが分かる。


冒険者たちは俺を囲むように配置につく。

『ガランとフェノール・・・ヴィラルもいるのか。』


ヴィラルは俺に言う。

「武器を捨て、大人しく降伏しろ!『レイダス・オルドレイ』!」

俺は完全に『犯罪者』だった。


「ハハハハハッ!」

俺は大声で笑う。


「エルフは俺を犯罪者として、『ヴァルハラ』に連行したいらしいな・・・。」

俺には笑うしかなかった。

エルフから仕掛けておきながら、俺に罪を着せるのだから・・・。

引き金を引いたのは確かに俺だ。

でもな、エルフたちが俺に攻撃をしなければ本来はこんな騒動まで発展していない。


ヴィラルは唇を噛みしめる。唇から鮮血が流れた。

「違うのだ!貴殿は何も悪くない!全ては私の責任なのだ!お願いだ・・・。

武器を捨て、降伏してくれ!」


『前世の警察みたいな事を言いやがって・・・。』

俺はヴィラルの言う事が信じられなかった。


俺はヴィラルにハッキリと言ってやった。

「ヴィラル・・・。俺はお前が信じられない。」

俺の為?違う・・・。


ヴィラルは自分の為に動いている。

自分が犯した過ちだから、それが気色悪くて拭いたいだけだ。

『発した言葉は戻らない』―――――

『犯した過ちは永遠に刻まれる』―――――


「私は、戦争を回避する為、貴殿を連れていくと『ヴァルハラ』の国王と約束した!

貴殿に責任は負わせない!罰は・・・私が受ける!だから私を―――――」


ヴィラルが言い切る前に俺は言った。

「信じるわけがない。」


俺の殺気にヴィラルは震える。

他の冒険者たちも圧倒的な強さに震えていた。


「国王と約束?戦争を回避?どうでもいい。遅かれ早かれ戦争になっていた。

それが早まっただけのことだ。俺は、お前に言ったはずだ。

やったらやり返されるのは世の常だと・・・。」


ヴィラルは悔しそうな表情を浮かべる。

戦争の話を聞かされていない冒険者たちは動揺した。

「戦争・・・だと・・・?」


「『王都グラントニア』の『上層』は奴隷を玩具として使い続けた。

そのつけが回ってきた。その王都も時期、内部崩壊を始める。

俺の首が飛ぼうが、ヴィラルの首が飛ぼうが戦争は回避できない。」

俺は心の中で笑みを浮かべる。


「残念だったな・・・。ヴィラル。」


「うわああああああ!?」

ヴィラルは矢を放った。

事実を突きつけられ、彼女の思考は乱れたのだ。

『ハハハハハハッ!』


「何を!?」

ガランとフェノールはヴィラルの攻撃に驚いている。

武器を構えていたのは俺を脅す為だ。

攻撃は作戦に組み込まれていないのだ。


しかし―――――


「嘘・・・だろ?」

冒険者たちはさらに驚愕する。

至近距離で放たれた矢を俺は素手で受け止めた。


「お前たちじゃあ・・・。俺に勝てない。」

俺は握った矢に軽く力を入れ、へし折る。


ヴィラルはカタカタと全身を震わせていた。

瞳の輝きは消え失せ、恐怖に歪む。

『笑えよヴィラル・・・。己の過ちに!己の未熟さに!』

俺が代わりに笑ってやろうか?


ヴィラルは地面に倒れた。

「ヴィラル!?」

冒険者たちはヴィラルに駆け寄り、彼女を揺する。

精神が限界に達し、ヴィラルは意識を手放したのだ。

『卑怯な女だ・・・。』


しかし――――

ガランとフェノールだけは行かない。

ガランとフェノールは真っすぐ俺を見つめていた。


「俺は行く。ガラン、フェノール・・・すまない。」

俺は何となく2人にだけ謝った。

何故、謝ったのか・・・後になって考えると理由はなかった。


「いいぜ別に・・・。お前は巻き込まれただけなんだろ?

俺とフェノールはレイダスの事をよーく知ってるからよ!

だから・・・。いつか戻ってこい!」

そういうとガランは笑みを浮かべた。

フェノールもコクリと頷く。


俺は、2人から目を背け、その場を立ち去る。

そして、『夢見の森』に転移した。


魔法で返り血を落とした後、ログハウスの扉を開けると、

ガルムが目の前で待機していた。


「ワオ―――ン。」

俺は、ガルムの頭を優しく撫でる。

俺は、装備を外し、ベットに寝そべる。


『世界は敵だ。』

俺の脳裏にそれが焼き付いている。

それは、徐々に魂に刻まれていった。


俺は壊れている。

これから起こる災厄が楽しみで仕方がない。

『生命よ!踊り狂え!』


俺の渇きは、戦争で癒されるに違いない。

『喝采せよ!お前たちは救われる!』


――――死は救いなのだから――――


俺は大声で笑い転げる。

「ハハハハハハハハッ!」


―――――戦争が始まったのはその日から約3週間後だった。――――――



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