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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~エルフの国『ヴァルハラ』戦争編~
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ヴィラルは男を探すpart3―ヴィラルver―

ヴィラルは男を捜索するが、1週間経過しても男は見つからない。

捜索範囲を王都から『メイサの森』に広げたヴィラルは、冒険者を連れて森に向かう。

森に入った一行は違和感を感じる。

「魔物たちの様子が可笑しい。まるで、何かから逃げてきたような・・・。」

――――『王都グラントニア』――――


「おい!あっち探せ!」


「ダメだ!こっちにはいない。次行こうぜ!」


冒険者ギルドの協力を得た私は『レイダス・オルドレイ』を捜索している。

冒険者たちは真剣に彼を探していた。

私は『中層』『下層』と順番に彼を探すが、彼の姿はない。

まるで、この世界から『消失』したように音沙汰がないのだ。


人に尋ねると、皆、首を横に振る。

「ここも空振りか・・・。」


私は次に歩を進める。

私は、彼に会わねばならない。

もう一度彼と――――話がしたいのだ!


私は歯をくいしばる。


捜索すること―――――――1週間。


『レイダス・オルドレイ』は見つからなかった。

私が冒険者ギルドを尋ねると冒険者たちが酒場で会議を開いていた。


「王都にはいないんじゃないのか?」


「あの人の事だから森とか?」


「メイサの森によく行き来してたもんな。」


冒険者たちの会議の様子を私は遠目から眺める。

『ギルドマスターや受付嬢だけではないのだな・・・。』

冒険者たちは『レイダス・オルドレイ』を尊敬し、憧れていた。


私は、そんな素晴らしい人物を傷つけてしまった。

私の中にはその『後悔』しかない。

冒険者たちの様子に私の気持ちは安らぎを得た。


本来、私は安らぎを得る資格がないのに・・・。

私は心の中で涙する。

『皆・・・ありがとう・・・・。』

感謝の言葉が心からあふれ出る。

感謝しても私はし足りない気持ちに襲われた。


「ヴィラルさん!貴方も会議に参加してくださいよ!」


「そうですよ。貴方は強いんだ。森の捜索となると心強い!」


「ささ!こちらへ!」


冒険者たちは私に笑みを向ける。

私は優しさを得る資格がないのに・・・。

私は、彼らに感謝し続ける。


「皆・・・ありがとう・・・。」

冒険者たちは優しく笑う。

私はそれが居心地良かった。


会議の結果、『メイサの森』を捜索することになった。

『レイダス・オルドレイ』は『メイサの森』と王都を頻繁に行き来していたという。

私はその情報を信じた。


明日の早朝、私たちは『メイサの森』に向かうのだった。


―――――『メイサの森』―――――


「はああああ!」

私は魔物に矢を射る。


「ボアあああ!?グルアアアア!」

私は、魔物の攻撃を横に回避する。


「そこどけ!」

私は声の主の通りにその場を離れる。

槍を持った冒険者は地面に槍を突き立て、魔法を発動させた。

『『土』属性の武器!?』


魔物は冒険者の攻撃を受けて倒れる。

「大丈夫か?」

冒険者は私に声をかける。


「ああ。感謝するガラン殿。」

『ガラン・レーガン』『大決闘演武大会』を勝ち残った32人の1人だ。


私は自分の弓の腕に自信はあるが、それは相手が遠くにいる場合だ。

接近戦闘に持ち込まれれば、私に成すすべはない。

正直、ガランがいるだけで私は安心して攻撃に専念できた。

心強い協力者だと思っている。


そしてガランを援護するフェノールの攻撃魔法も素晴らしい。


私は、砂を払いガランたちと森を捜索する。

「レイダスの奴どこに行ったんだ?」

ガランは独り言をつぶやく。

フェノールがコクリと頷いた。


「2人はレイダス・オルドレイ殿と知り合いなのか?」

私はそのつぶやきを耳にして尋ねた。


ガランは前に進みながら、私に言う。

「ん?ああ。新人冒険者試験を一緒に受けた同期なんだ。

フェノールも同期だぜ!」

ガランの言葉にフェノールは頷く。


「そうなのか・・・。」


私はガランの話を聞きながら、森を捜索する。

2人は冒険者試験で『レイダス・オルドレイ』に助けられたという。

ガランは『大決闘演武大会』でも彼に助けられ、

武器の槍も彼から譲り受けたものだと説明した。


「正直、あいつがいなかったら、俺は『大決闘演武大会』の32人に入れなかった。

俺はあいつに・・・感謝してる。」

ガランの声から―――――言葉から―――――気持ちが伝わってきた。


私は泣きそうになるが堪えた。

「『メイサの森』の奥に行ってみよう。危険だが、御仁の事だ。いるに違いない。」

冒険者たちは頷いて、同意した。

私たちは森の奥へと足を踏み入れる。


―――――『メイサの森 奥地』――――――


『メイサの森』奥地に来るまでに

魔物と戦闘をした私たちは疲弊していたが、足を前に進める。


「なんか・・・おかしくねーか?」

そう言ったのは協力してくれている冒険者の1人だった。

私は地理に疎い。冒険者に話を聞く。


「おかしいとは?」


「奥地に来るまでの間に数多く魔物を相手にしてきたが、

奥地に来てから、魔物が襲ってこない。それどころか、気配すら感じない。

『メイサの森』には何度か来ているが、こんなのは初めてだ・・・。」


「言われてみれば・・・。」

と他の冒険者が頷きだす。


私たちは、これまで魔物に遭遇し、戦闘になった。

それは本来、奥地に生息している魔物らしい。


「まるで・・・。逃げてるみたいな・・・。」

冒険者たちは息をのんだ。


危険な魔物がいるのかもしれないからだ。

しかし、冒険者たちは引けなかった。

『レイダス・オルドレイ』を捜索する。

その為に奥地まで来たのだから・・・。


私も覚悟を決める。

私たちは、奥へ進むことを決断した。

『騎士』職の冒険者とガランを先頭に周囲を警戒しながら、奥へ進む。


不意にガランが水たまりに足を突っ込む。

「うお!?・・・・お?」

ガランは首を傾げた。


「どうした?」

と『騎士』職の冒険者がガランの足元を見ると、

それは水たまりではなく『血だまり』だった。


冒険者たちが臨戦態勢に入る。

「やっぱりこの森には何かいやがる・・・。」

ガランは周囲の警戒を強めた。


私もいつでも攻撃ができるように弓を構える。

しかし――――――森は静かだった。


「まだ、先にいるのかもしれない。」

私たちは、臨戦態勢を維持したまま、ゆっくりと進む。

次第に血だまりの数が増える。

緑の茂みが血を浴び、赤色に染まっていた。


見渡せば、木々もいくつか倒れている。

断面を見ると、斬撃によるものだった。

『レイダス殿・・・。』


私は彼かもしれないと想像した。

私は『ヴァルハラ』に向かう道中、『泉』で彼に助けられた。

彼が蹴りつけた地面はえぐれていたのを覚えている。

彼の強さは本物だ。


冒険者たちは私の指示を待つ。私は静かに指示を下した。

「行くぞ・・・。」


私たちは進む。

音を立てず、ゆっくりと――――――


突然、『騎士』職の冒険者とガランの動きが止まった。

「何があった・・・?」

尋ねても2人から返答は返ってこない。

周囲を警戒していた冒険者たちは2人に近づいて、眼前を見る。

私も同様に眼前をみる。


そこには、信じられない光景が広がっていた。


――――『私たちは・・・今日・・・死ぬのかもしれない。』―――――

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