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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~エルフの国『ヴァルハラ』戦争編~
70/218

ヴィラルは男を探すpart1―ヴィラルver―

――――『ヴァルハラ 王室』――――


私は『レイダス・オルドレイ』が『ヴァルハラ』を去ってから

王に面会を求め、王室に訪れていた。


眼前にはエルフの王に相応しい王座が鎮座している。

そこに座るは、我が国王『ヴェル・フュアレ・三世』


国王は頭を抱えていた。

それは、人間を嫌うエルフたちが1人の人間を殺そうとし、

逆に返り討ちにあった為だ。


―――その数106―――


同胞たちが無残に殺されるのを許せる国王がいるだろうか?

王であるならば、それを捨て置くことはできない。

特に『ヴァルハラ』現国王『ヴェル・フュアレ・三世』は重く受け止めている。



「私のせいなのです!人間に非はありません!どうか!」

私は土下座する。

床に頭を擦り付けた。


私が彼を連れてきた――――

私が民を抑えられなかった――――

だから!


「見苦しいぞヴィラル!今すぐそれをやめろ!」

私に土下座をやめるように言っているのは、国王直属の近衛兵にして、

私の『お師様』『バラン・アルスール』だ。私の祖父でもある。


しかし、私は頭を上げるわけにはいかない。

「いえ!やめません!どうかお願いいたします国王様!戦争だけはお辞めください!」


国王は、王都グラントニアに戦争を仕掛ける気でいるのだ。

奴隷にされたエルフの為――――

殺されたエルフの為――――――


今回の『レイダス・オルドレイ』による殺戮は、戦争の火種となったのだ。

「私のせいなのです!私が彼を国に招いたのです!彼に罪を擦り付けないでください!」


「私はヴィラルを信頼している。」

国王は言葉を続ける。


「しかし、同胞は殺された。たった1人の人間に!許せる蛮行ではないのだ!」


「国王様!それは違うのです!」

私は顔だけを上げて、国王に申し上げる。


「彼はエルフたちの襲撃を受けたのです!我々が先に手を出したのです!

下手をすれば、彼が死んでいたかもしれません!

命を狙われて反撃しない者はいるでしょうか!」


「っ!・・・・。」

国王は言葉を詰まらせる。

国王も人間が憎いのだ。

国王は民に優しいお方だ。

尊敬され、敬われる理想の国王像だ。


「どうか私に時間をお与えください!国王様の眼前に彼を連れてまいりましょう!

ですから、どうか戦争だけはお辞めください!」

私は再び頭を床にこすりつける。


『お師様』は黙って口を開かない。

私の意思を汲んでくれたのかもしれない。


「・・・・・・分かった。」

国王はそう言った。

私は、上体を起こす。


「誠ですか!?」


「ただし!条件を付ける。」

国王は私に条件を提示した。


「猶予は1か月。

それまでに『レイダス・オルドレイ』を我が元に連れて来なければ、

王都グラントニアに宣戦布告する!以上だ!」


私は深々と頭を下げ、感謝の意を示した。

「はっ!感謝致します!」


私は王室をあとにし、息を吐く。

私は、精神をすり減らしていたが、猶予が決められている以上、

直ぐに行動に移した。

私は、荷馬車の馬を1頭連れて、『ヴァルハラ』を出発する。

『他人は頼ることができない!』


パーティを組んでいきたいところだが、

人間もまたエルフを嫌い、エルフを奴隷としている。

『それに・・・。』

パーティのメンバーが人間を攻撃するかもしれない。

それを考慮すると、どうしても私1人でしか行けないのだ。


「『レイダス・オルドレイ』殿・・・。王都にいてくれ!」

私は、馬の速度を上げる。

私は、『ヴァルハラ』を貴殿を守って見せる!


――――『ヴァルハラ 王室』――――


私が去った後の王室では国王と『お師様』が話をしていた。


「私の弟子が申し訳ありません。」

バランが国王に頭を垂れる。


「私も本当は分かっているのだ・・・。」

国王はうつむく。


「どちらか一方が引かねば、終わらぬこともある。

やったらやり返されるのは世の常であろう?戦争もまた世の常だ・・・。」

国王は語る。


生きている限り、知恵を有する生き物は間違いを犯す。

国王もまた、間違いを犯しているのかもしれない。

国王にはその自覚があった。


バランは頭を上げ、「そうですな。」とつぶやく。

バランは国王の言葉に同意した。


弟子のヴィラルは正しいと思ったことはやり通す性格だ。

はたから間違っていると言われようとヴィラルは己の信念に従い行動する。

時々バランはその性格が羨ましく思った。


「私の弟子がきっと正しい道へと修正してくれることでしょう。」

国王はバランの発言に笑みを浮かべる。


「そうだと良いな・・・。」

国王とバランはお互い笑みを浮かべる。


そして待つのだった。

『ヴィラル・アルスール』が『レイダス・オルドレイ』を連れてくるその日を―――――

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