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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~エルフの国『ヴァルハラ』戦争編~
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男の発言はフラグだった

男は『ヴァルハラ』へ向かう道中、泉に立ち寄る。

順調な旅に満足する男だったが、それはフラグだった。

「うわああ!?」ヴィラルの声が泉から聞こえた。

男はガルムと泉に向かうが―――――――――

――――『道中』――――


俺とヴィラルは荷馬車で『ヴァルハラ』に向かう。

魔物も出ないので、他愛ない話が始まる。


「貴殿はどこで剣術を会得したんだ?」


「我流だ。」

俺はヴィラルの質問を流す。


俺の剣術が凄いのは『剣術補正』が掛かっているのもある。

そして、俺の補正値は、この世界の基準値を軽く凌駕しているのだ。

『測定不可だしな・・・。』


口が裂けても言えない・・・。


「そうか、我流か・・・。」

ヴィラルは手綱を操りながら、考え事をしている。


「お前には『師』がいるのか?」

と俺が尋ねるとヴィラルは笑みを浮かべて「ああ。」と返事をする。


「私の『お師様』は厳しいお方でな。

小さい頃、鍛錬をさぼりがちだった私はよく怒られた。

『お師様』の拳骨は痛かったよ。」


「へー。」

俺は意外だった。

俺のなかで、ヴィラルは戦士というイメージが強いからだ。


「『ヴァルハラ』に行けば、貴殿も『お師様』に会うことになる。

私の『お師様』は、王直属『近衛兵』の隊長だからな!」


ヴィラルからまたしても爆弾発言が投下された。

『王直属近衛兵の隊長だと!?』


「詳しく教えてくれるか?」

俺はヴィラルから内容を聞く。


王直属の近衛兵は王命を受け、行動する。

近衛兵の中で、最も王からの信頼が厚い人物がヴィラルの『お師様』らしい。

弓の腕も一流で、策略家らしい。

『聞いてるだけで、超エリートだ・・・。』


ヴィラルの横顔を俺はチラッと見る。

瞳は、キラキラしていた。

『お師様』のカッコいい姿でも妄想しているのだろう。


「ヴィラル集中してくれ。」

俺は注意を促し、ヴィラルを荷馬車の操縦に集中させる。

『先は、まだ長いのに荷馬車が壊れたじゃ話にならない。』


「すまない。つい、考え事を・・・。」

『妄想だろ・・・。』


荷馬車は順調に進み、日が暮れる。


「このあたりで休もう。」

ヴィラルは荷馬車を止める。


「この近くに泉があるんだ。ギリギリまで荷馬車を寄せる。」

ヴィラルはそう言って、荷馬車をゆっくりと泉の方へと進める。

俺たちは、荷馬車を下り、体を伸ばす。


ヴィラルに荷物を渡す。

「ほら。」


「ありがとう!」

ヴィラルは荷物を受け取る。

俺は尋ねた。

『ずっと気になっていたんだ・・・。』


「そのカバンの中身はなんだ?」

俺は荷馬車に座っている間、ヴィラルの荷物を落ちないようにしていた。

カバンを触った感触がゴワゴワしていた。

『食料にしては、大きすぎるし・・・。』


「ん?ああ。食料以外に衣類が入っているんだ。」

『衣類?』

俺は首を傾げた。


「実は、『ヴァルハラ』の服はなんというか・・・。落ち着かないんだ。

それで、国への土産を含めて購入したんだ。」

ヴィラルは恥ずかしそうにもじもじしていた。

俺はその様子を見て、大体想像がついた。


『露出が多いとかそのあたりか?』

俺は口には出さず、「そうか。」とだけ頷いた。


「私は水浴びをしてくる。貴殿はどうする?」


「俺は、荷馬車の中で先に寝る。」

ヴィラルは荷物を持って泉に走って行った。


寝ているガルムを邪魔しないよう俺は横になる。

『何事もなく1日が終わって良かった・・・。』

俺は、それに安堵し眠りに落ち―――――――


「うわあああ!?」

ヴィラルの声がした。

俺とガルムは起き上がる。

『フラグだったか・・・。』


「ヴィラル!?」

俺とガルムは荷馬車を飛び出し、泉の方へ走った。

魔物にヴィラルが襲われているのが見える。

咄嗟に握った弓で応戦しているようだが―――――


『このままじゃまずい!』

ヴィラルは下半身を水につけている。

水の抵抗でうまく動けないはずだ。


相手は昆虫型の魔物『デスビー』だ。

サイズが大きく、お尻から出ている針は『毒針』だ。

かすっただけで『猛毒状態』に陥る。


デスビー』は旋回し、再びヴィラルに襲い掛かる。


「くっ!」


ヴィラルは弓で狙いを定めるが、『デスビー』の速さについていけてない。

スキルを発動させ、命中率を上げているが、それすら当たらない。


「ガルム。俺がやる!」

俺は、ガルムを待機させ、地を蹴る。

蹴った地面はえぐれた。


俺は、『デスビー』の体を横から両断した。

泉に『毒針』が落ちると汚染させる可能性も懸念して、

デスビー』を両断すると同時に『毒針』も斬り飛ばした。


デスビー』の体は泉に落ちるも『毒針』は茂みに落ちた。


「ヴィラル平気か?」

と俺は振り向かずに尋ねる。

『振り向いたら怒るだろうし・・・。』


ヴィラルは水浴び中だった。

その為、裸体なのだ。

ヴィラルもそれを察したのか・・・。


「すまない!ありがとう。」

ヴィラルは泉からあがり、服を着た。


そして、俺が蹴った地面を見る。

『なんという脚力だ・・・。』

ヴィラルは後ろを向いている俺を見る。


ヴィラルは思った。

『やはり只者じゃない・・・。』

ヴィラルは息をのむ、俺はそれに気が付いていない。


「もう振り向いてもいいか?」

俺はヴィラルに尋ねた。


「あ、ああ!もう大丈夫だ!」

俺はヴィラルの許可を得て、振り返る。


俺たちは荷馬車まで戻った。

俺はある提案をする。

「今夜の見張りは俺がする。休め。」


「し、しかし!」

ヴィラルは不満そうだったが、俺は「ダメだ。今日は休め。」と言い張る。

『魔物に襲われた者が見張りまでしたら、ストレスを抱えるだろう。』


ヴィラルには荷馬車の操縦を任せている。

俺としては、あまり無理をしてほしくないのだ。

『俺は、睡眠不要だしな。』


俺はスキルで本来、睡眠不要である。

前世の名残りで日が暮れると眠たいだけだ。


俺が荷馬車を下りて夜空を眺めていると、ガルムが俺の隣で伏せた。

「一緒にいてくれるのか?」

俺はガルムを優しく撫でる。

ガルムはそのまま寝入ったが、俺は夜空を見続ける。


「今日も綺麗だな・・・。」

『探知』に魔物が引っ掛かることもなく、夜が明けた。


―――――王都出発から2日目――――――


「起きろ。」

王都出発から2日目の早朝。

俺は荷馬車内で寝ているヴィラルを起こす。


「む~・・。父さん・・あと5分・・・。」

『この世界の者は全員寝起きが悪いのか!それと俺は父さんじゃない!』


俺はヴィラルの毛布を引っぺがした。

『デジャブだな~・・・・。』


「起きろ!」


「うわああ!?」

ヴィラルは飛び起きた。


「全く・・・。」

俺は顔の額に手の平を当て、ため息をつく。

「もう朝だ。出発の準備をしろ。」

とだけ言い残し、俺は荷馬車の中から出る。


俺とガルムは朝食を食べ、昨日と同じ場所に座る。

俺たちはヴィラルが準備できるのを待った。


10分後―――――


「待たせてすまない。」

というヴィラルに「ああ。」とだけ返事をする。


「はっ!」

ヴィラルは荷馬車を走らせる。

俺は、荷馬車を操縦するヴィラルに言った。


「道中仮眠を取る。問題があれば起こしてくれ。」


ヴィラルは「見張りをしてもらったしな!休んでくれ。」と言う。


俺は、荷馬車の中へ移動し、仮眠を取り始める。

『『探知』は発動させているし、大丈夫だろう。』


そこへガルムがやってくる。

俺に寄り添う形でガルムが伏せた。

『昨日といい・・・俺が好きだな。・・・俺も好きだけど。』


俺は目を閉じながら、ガルムを優しく撫でる。

『毛皮がもふもふしてる・・・・・。』



―――王都出発から2日目『ヴァルハラ』までの道のりはまだ長い―――


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