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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~エルフの国『ヴァルハラ』戦争編~
66/218

男は荷馬車を奪取する。




―――――王都出発当日 王都北門―――――


早朝、俺はガルムと共に王都の北側に来ていた。

今日が王都出発日だからだ。


俺は、ヴィラルを探していると、後ろから声をかけられた。


「遅れてすまない!」

ヴィラルは弓と一緒に大きなカバンを背負っていた。

『この世界に魔法のカバンはないのか・・・。』


ガランに『大地の槍』を手渡した時から思っていた。

ガランは壊れた防具を自分の手で運んでいたし、

俺が魔法のカバンから槍を出した時、非常に驚いていた。


『魔法のカバン』は『錬成合成』で製作できるのだが、

合成する素材の希少価値が高い為、易々と作り出せる代物ではない。


それを考えるとこの世界の冒険者が『魔法のカバン』を所持していない理由に納得がいく。


「いや、俺も今来た所だ。」

俺がそういうとヴィラルは「そうか!」と頷いた。

そして――――――


「うお!? テンペスト・ウルフ!?」

ガルムを見てヴィラルは驚く。

ヴィラルは驚きのあまり後ろに後ずさった。

『『テンペスト・ウルフ』を知っているのか?』


『テンペスト・サー・ウルフ』に存在進化したガルムは、

体のサイズがでかくなり、何かと目立ちやすい。

『小さい時は誰も気にしなかったのにな・・・。』と思う俺である。


「安心しろ。俺の従魔だ。」


「従魔!?」と驚くが、息をのんで、ヴィラルは恐る恐るガルムに近づく。

ガルムはヴィラルの足元にすり寄って行った。


「ひいいいい!」とビビっていたが、次第に落ち着きを取り戻していった。


「・・・。本当に従魔なのだな。」

ヴィラルはガルムの態度に納得の意を示す。

ヴィラルの視線はガルムから俺にと移った。


「ああ。それよりもテンペスト・ウルフを知っていたのか?」

俺は、そっちの方が気になった。

ガルムを遠目から眺めていた人たちは、珍しそうに見ていた。

テンペスト・ウルフがこの世界に生息していないのでは?と考えたほどだ。


「・・・伝説の魔物だ。」

ヴィラルはそう口にした。

『伝説の魔物?テンペスト・ウルフが?』

俺は足元に戻ってきたガルムと目を合わせる。


「伝説?詳しく教えてほしい。」


ヴィラルは、ゆっくりと重たい口を開けて説明する。

「テンペスト・ウルフに遭遇した者は生きて帰らない。

それはテンペスト・ウルフがあまりにも凶暴で獰猛な魔物だからだ。

嵐のように敵を斬り裂くその姿はまさに嵐そのものだ!」


故に――――『テンペストウルフ


俺は、ヴィラルの矛盾をつく。

「生きて帰った者はいないはずだろ?」

生きて帰らなければ、テンペスト・ウルフの存在を知ることはない。


「私の祖父が身を潜め、テンペスト・ウルフを遠目から生態観察していたんだ。

私がテンペスト・ウルフの特徴や姿を知っているのは祖父に聞かされたからだ。」


「なるほどな。」

俺は納得した。


しかし―――――

俺の中でヴィラルの祖父は危険人物に認定された。

『ヴァルハラ』に行ってガルムが殺されるようなことがあるかもしれない。


『そんな事をしてみろ・・・・皆殺しにしてやる・・・。』

俺は、心の内に秘める。


「では、『ヴァルハラ』まで案内を頼む。」

俺はヴィラルにそう言って、王都を出発するのだった。


――――『道中』―――――


王都を出発してから差ほど進んでいない。

俺たちは平坦な道を歩いていた。


『馬』で行けば5日で『ヴァルハラ』に到着するが、

俺たちは徒歩で向かっていた。


「馬で行くんじゃなかったのか?」

と俺は質問する。


「この荷の量では、馬が途中でばててしまう。

グラントニアから出ている荷馬車を拝借しようと思ってな。」

ヴィラルはサラッと言っているが、危険な発言をしている。


ヴィラルは荷馬車を奪う気でいるのだ。

エルフの戦士にして、奴隷制度を嫌うヴィラル。

グラントニアから出ている荷馬車は恐らく、エルフ種誘拐を目的としている。


『奴隷を捕まえる為にわざわざご苦労な事だ・・・。』

俺は王都『上層』に呆れる。


「そうか。」

とだけ返答し、俺たちは歩き続けた。


30分後――――


俺たちの背後から車輪の音が聞こえてきた。

振り返ると荷馬車だ。

御者の横に商人らしき男が座っていた。


「襲うか?」

俺がやろうとするが、ヴィラルは「手を出さないでくれ」と言う。

ヴィラルの目は笑っていない。

憎い仇を見るような目で商人を凝視する。


「私がやる!」

ヴィラルは、荷物を下ろし、弓を構える。

この世界でヴィラルは実力者だ。

俺は矢を外すなんて考えていない。


俺は荷物を代わりに背負い待機する。

ヴィラルは力を込めて矢を御者と商人に放つ。

矢は見事相手の額に命中した。


「来てくれ!」

とヴィラルは俺に言う。


商人たちは転げ落ち、荷馬車は制御を失う。

ヴィラルは弓を納めて、荷馬車に走る。

俺も後に続いた。


ヴィラルは御者として馬の手綱を握る。

馬は制御を取り戻しつつ、走り続けた。

俺はヴィラルの荷物を抱えてその横に飛び乗った。


ガルムは荷馬車の中に入って昼寝を始める。

即席とはいえ、荷馬車の奪取に成功した。


『荷馬車に傷をつければ、使い物にならなくなっていた・・・。』

御者を失ったことで制御を失った荷馬車は放って置けば、横転していただろう。

下手をすれば、バラバラだ。


「流石だ。」

と言ってヴィラルは俺を見る。

俺はヴィラルがどうするか分かって行動した。

それを褒めているのだ。


「お前の弓の腕に比べれば、どうってことない。」

今回褒められるべきはヴィラルだ。

見事、商人と御者を仕留めたのだから・・・。

俺とヴィラルは互いに謙遜しあった。


「はっ!」

ヴィラルは馬に鞭を打つ。

荷馬車は速度を上げ、『ヴァルハラ』に向かって行く。


――――俺の『ヴァルハラ』行きはまだ始まったばかりだ―――――


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