男は奴隷商人に遭遇する。ガルムの存在進化!
男は『トーリカの森』でガルムのlv上げをしていた。
そんな時、爆音が鳴り響く。爆音の元に駆け付けると商人が襲撃に会っていた。
男は商人に助けを求められるが、荷馬車を見て驚愕する。
――――王都出発まであと2日――――
『トーリカの森』
俺は、ガルムのlv上げで『トーリカの森』に来ていた。
「ガルム!行ったぞ!」
「ワフゥ!」
ガルムの牙が魔物に襲い掛かる。
牙を深々とくい込ませ、体力を徐々に削っていく。
「グルオオオオォー・・・。」
魔物は力なく倒れた。
『トーリカの森』に来てから、連戦を続けるガルムだが、疲れるどころか
「もっと戦いたい!」と尻尾をパタパタさせている。
『育ち盛りの子供みたいだ・・・。』
俺とガルムは魔物を探しては倒してを繰り返し、魔物の素材を回収していった。
数時間後――――――
「ガルムのステータスはどうなったかな?」
俺は一旦休憩し、ガルムを鑑定する。
―――鑑定―――
魔物/テンペスト・ウルフ/幼体
lv/20 ガルム
体力/7500
防御/3800
攻撃/4500
速度/5000
持久力/8000
魔力/ 1500
魔力量/4000
魔法適正/A
状態:従魔、存在進化可能
『存在進化だ!』
魔物には存在進化がある。
存在進化は魔物が一定lvに到達すると可能になる。
存在進化をすると1つ上の上位種になり、見た目や大きさが変化する。
ステータスも大幅に向上するので『万歳!』なのだが・・・。
残念なことに存在進化するとlv1からやり直しとなる。
「今この場所ではできないな・・・。」
俺は『夢見の森』に戻ってからガルムを存在進化させることにした。
「ガルム。今はしたらダメだぞ?」
俺はガルムの頭を優しく撫でた。ガルムは嬉しそうに尻尾を振る。
そんな時―――――
ド――――ン!!と凄まじい爆音が鳴る。
「なんだ!?うお!?」
爆風が俺とガルムを襲う。
『近くで戦闘をしているのか?』
数秒して、爆風は止んだ。俺は爆音がした方向に走り出す。
俺の足は速い。今のガルムは俺の速度についてこれない。
「ガルム肩に乗れ!」
ガルムは俺の指示で肩に飛び乗った。
木を避け、茂みを掻き分ける。
数分後―――――
一台の荷馬車が何者かに襲撃されていた。
「ひいいいい!い、命ばかりはどうか・・・。」
「黙れえええ!!」
『あれ獣人か?』
荷馬車を襲撃したのは、獣人だった。
黒い毛並みをしている。
襲われているのは恰好からして商人かもしれない。
理由はともあれ俺は、獣人と商人の間に割って入る。
「誰だ!?」
「ひいいい!助けてくださいいいい!」
獣人に襲われそうになっていた商人の男は俺の方足にしがみつく。
『気持ち悪い!』
「その男の仲間か!?」
黒い毛並みをした獣人は勘違いをしているようだ。
俺は、誤解を解く事から始めた。
「ただの通りすがりだ。偶然、爆音を耳にしてな。」
「あいつは盗賊なんです!俺の商品を奪いに来たんだ!」
商人は涙を流しながら言う。
「盗賊?商品?」
俺は荷馬車を見た。
魔法を使用したのか車輪が弾きとんでいる。
荷馬車の中を覗いた俺は驚愕する。
『奴隷!?』
商人が言う商品は獣人奴隷だった。
女子供合わせて8人乗っている。
檻に入れられ、手錠と首輪をされていた。
俺は、商人を見た。
「助けてください!助けてください!」
と懇願するその姿に反吐が出る。
俺は商人に言った。
「お前が悪い。」
「へ?」
俺は、商人の頭を剣で一突きした。
俺の方足を掴んでいた商人の手は俺から離れる。
その光景に黒い毛並みの獣人は動揺していた。
「な!?」
「お前、こいつらを助けに来たんだろ?」
俺は、黒い毛並みの獣人を見たまま、後ろの荷台を指さす。
黒い毛並みの獣人はコクリと頷いた。
俺は荷馬車の中に入り、奴隷が入れられた檻を素手で破壊する。
出てきた獣人たちの首輪を鑑定すると、『奴隷効果』が付与されていた。
『スキル:契約破壊』
を使用し、効果を順番に消していく。
「これで良し。」
俺に助けられた獣人たちは震えていた。
「え・・・と・・あの・・・」
獣人たちからすれば、人間という生き物は、敵であり恐怖の対象なのだろう。
敵に助けられれば誰だって混乱する。
「行け。」
俺は、獣人奴隷たちから少し離れる。
そうでもしないと怖くて動けないからだ。
獣人奴隷はゆっくりと荷馬車から降りていく。
黒い毛並みの獣人が獣人の女性と獣人の女の子に抱きつく。
「キャロル!ミーナ!」
獣人の男は敵であるはずの俺が近くにいるにも関わらず、斧を投げ捨てる。
それだけ、嬉しかったのだろう。
強く抱きしめ、黒い毛並みの獣人は涙を流す。
「うううう・・無事でよかった!!ううう・・・」
「パパ・・・。うえええ~ん」
獣人の子供は泣き出す。
一方で獣人の女性は涙を堪えていた。
『自分がしっかりしないと!』と思っているのだろう。
黒い毛並みの獣人を抱きしめ返す手は震えていた。
恐怖と喜びが混ざっているのだろう。
俺は、荷馬車を下りてそのまま颯爽と去ろうとするが、気づかれてしまう。
『こっち見た!?』
黒い毛並みの獣人は立ち上がって、俺に頭を下げる。
「妻と娘を助けて頂きありがとうございました!!」
黒い毛並みの獣人の妻と子供、それ以外の獣人も俺に頭を下げる。
『なんか・・・。』
今までこんな気持ちになったことがない俺は、少し動揺する。
俺の感情がまた1つ豊かになったのかもしれない。
『照れるな・・・・。』
俺は、感情を表には出さず、獣人たちに言う。
「感謝はしなくていい。言っただろう。只の通りすがりだと・・・。」
俺は通りすがりだ。
ガルムと『トーリカの森』でlv上げをしていなかったら、
今頃黒い毛並みの獣人の妻と子供は売り飛ばされていただろう。
つまり、獣人たちの運が良かっただけだ。
「早くしないと奴隷商人に捕まるぞ。じゃあな。」
俺はそれだけを言い残し、その場を離れる。
俺の『探知』が反応をキャッチしていたからだ。
王都の北門から人間が近づいてきていた。
爆音が王都にまで聞こえたせいか・・・。
それとも商人の到着が遅れているのを気にした『上層』が誰かを派遣したかだ。
俺は『探知』の性能をフルに使い人物像を調べた。
「頭いて・・・・。」
調べた結果、只の新人冒険者だった。
しかし妙だ。
『新人冒険者がlv上げか、依頼で王都を出る時は『メイサの森』からだろ?』
この世界の新人冒険者は『メイサの森』で死ぬくらいだ。
なのに、俺が『探知』して発見した新人冒険者たちは、
『トーリカの森』に真っすぐ向かってくるのだ。
「行くべきか・・・行かざるべきか・・・。」
俺は、悩んだ。
他人に関わることはしたくないし――――
『あああああああ!!』
俺は、考えを放棄して新人冒険者の元に向かった。
俺は時折思うのだ。
『関りを持たないようにしているのに自分から行ってる気がする・・・。』と
俺は、新人冒険者を発見する。
「新人冒険者か?」
俺は尋ねた。
人数は合計3人。
2人は男で1人は女だった。
「はい!そうですが・・・。って『大決闘演武大会』の優勝者!?」
返事をした男が驚いている。
『観戦してたのか・・・?』
「ルーカス。この人誰だよ?」
『ルーカスというのか・・・。』
黒い髪に黒い瞳をしていた。背丈は俺より少し高い。
「知らないのか!?『大決闘演武大会』で『白騎士サラル』に勝利したお方だぞ!」
『白騎士サラル?二つ名か?』
冒険者の間では俺は有名人らしい。
「へええ~。」
チャラそうな冒険者が俺をジロジロ見る。
すると、突然殴りかかってきた。
「バゼット!?」
新人冒険者の女が殴りかかってきた男の名を呼ぶ。
俺は、バゼットの拳を片腕で受け止めた。
「やるじゃん。」
とバゼットは上から目線でものを言う。
少しイラっとしたので、優しく腕を捻ってやった。
「いだだだだだ!!」
バゼットは俺に片腕を掴まれたまま地面に倒される。
「駄犬はちゃんと躾けないとな。」
俺は心の声が漏れてしまった。
『心の声が漏れる回数も増えてる気がする・・・。』
「すいませんでした!!離してあげてください!」
とルーカスが頭を下げるので彼に免じて放してやった。
バゼットは俺に捻られた腕を抑えながら、ルーカスの後ろに逃げ込む。
「ちくしょー~!」
バゼットはルーカスの後ろから俺を睨む。
『俺の前世にいた奴と似ているな・・・。』
前世の俺は力がなかった。
力がなかった俺は工夫するしかなかった。
それすらも嘲笑い、俺を見下した連中に非常に似ている。
「そいつのせいで話が逸れた。」
俺は、バゼットに一瞬視線を向けるが、ルーカスに戻す。
「新人冒険者で良いんだよな?」
ルーカスと女は「はい。」と返事をする。
「『トーリカの森』に向かうのか?」
ルーカスが俺の質問に答える。
「はい!依頼とlv上げを兼ねて向かい予定です。」
「依頼内容は?」
「鉱石の採掘です。」
俺は、ルーカスに正直に言った。
「やめておけ。お前たちの今の実力では無理だ。」
ルーカスはともかく女は納得がいかなかったらしい。
「どうして言い切れるんですか!?」
怒りの表情を浮かべている。
「断言した方がいいのか?」
ルーカスは息をのむ。
「お前たちが『トーリカの森』で魔物と戦えば、間違いなく死ぬ。」
俺は死の宣告をした。
ルーカスたちのlvもステータスもまだ『メイサの森』クラスだ。
余裕を持ってlv30程ないと厳しい。
しかし、それはパーティメンバーの人数が4人の場合だ。
1人少ないルーカスたちはlv30以上でないとダメなのだ。
「俺は行くぞ!んなの信じられっかよ!」
ルーカスの後ろに隠れていたバゼットが『トーリカの森』に走って行った。
「バゼット!」と女がバゼットを追いかけていく。
「バゼット!メリー!」
とルーカスは呼ぶが2人には届いていなかった。
「忠告ありがとうございました!」
ルーカスは俺に頭を下げて2人を追いかける。
「『命』を捨てに行ったか・・・。」
俺はボソッとつぶやいて、『夢見の森』のログハウスに帰宅したのだった。
――――『夢見の森 ログハウス』―――――
待ちに待ったガルムの存在進化の時がやってきた!
俺はガルムをベットの上に置き、優しく撫でる。
「お前が好きに選べ・・・。」
存在進化は魔物自身が決定する。
魔物の存在進化には『候補』がいくつかあるが、
選択したものによっては進化が打ち止めとなる。
強くなるか、弱くなるかはガルム次第なのだ。
「クウウウ~ン・・・。」
ガルムは存在進化する上位種を選択し、一時的に意識を手放す。
ガルムの姿の変化が始まった―――――
大きさは犬で言えば、大型犬サイズになった。
毛並みは黒く、毛先が赤い。
ガルムは本能で分かっていたのか、
『俺が選んでほしい』と思っていた上位種に進化を遂げた。
――――鑑定――――
魔物/テンペスト・サー・ウルフ/成体
lv/1 ガルム
体力/12000
防御/9000
攻撃/10000
速度/12000
持久力/18000
魔力/ 6000
魔力量/10000
魔法適正/A
状態:従魔
ガルムは狼らしい姿になって目を覚ます。
「ワオ―――――――ン!!」
目覚めと共に遠吠えを上げる。
ガルムは俺に飛びついて顔を舐める。
「うおっ!ガルム!くすぐったいって!」
ガルムは尻尾を元気に振る。
俺は笑った。
ガルムのステータスは大分上がった。
lv40代のこの世界の実力者に匹敵する強さを身につけたのだ。
『FREE』での『テンペスト・サー・ウルフ』の強さは、
プレイヤーlvで表すとlv75とされている。
lv1でのステータスはこれで当たり前なのだ。
ガルムの存在進化に満足した俺は、簡単な夜ご飯を作りガルムと食事をする。
俺はシャツと短パンになり、ベットにダイブした。
俺とガルムは眠りにつく。
俺はこの時、ルーカスたちがどうなったのか知らないし、気にもしなかった。
俺は明日それを知ることになる。
―――――王都出発まであと1日―――――




