『大決闘演武大会』4回戦―ガランver―
ガランは決闘場で相手と向かい合う。『サラル・ユーギニウス』
男の次に強いと言われる実力者だ。
ガランは、男と戦うために槍を振るい続ける。
しかし、サラルはガランの予想以上に強敵だった。
サラルのレイピアがガランに炸裂する。
『フィールド』
俺は、朝からフィールドに立っている。
そして、向かい側にもう1人、『サラル・ユーギニウス』だ。
今日から32人による『大決闘演武大会』『決闘』が始まる。
なんでも、出場者の大半が何者かに暗殺されたらしい。
『黒い番犬から聞かされた時はマジで驚いた・・・。』
決闘での最初の相手はサラルだ。
俺はレイダスと戦いたかったが、サラルに勝てないとレイダスと戦えない。
『レイダスは近況報告1位、サラルは2位だからな!』
でも、サラルに勝てた所で、レイダスの強さに近づける気がしない。
レイダスがサラルを瞬殺するイメージしか湧かないからだ。
『サラルに勝って、自信をつける!』
レイダスがサラルを瞬殺するイメージしか湧かなくとも、
俺は、あいつと戦いたい・・・。
その為には、サラルに勝利するしかなかった。
『互角じゃなくていいんだ・・・。ただ―――――』
俺の中の闘志をぶつけたい――――それだけだ!
俺は、槍を構えて臨戦態勢を取る。
サラルも『レイピア』をぬき、左腕を後ろに回す。
「決闘ルールはどうしますか?」
『大決闘演武大会』のルールは対戦者同士で、決める。
部外者からの異議は認められない。
「俺が指定してもいいのか?」
とサラルに尋ねると、「はい。」と頷いた。
俺は決闘ルールを提示する。
1、消費アイテムの使用は禁止とする。
2、どちらか一方が戦闘不能になった場合、決闘は終了とする。
3、どちらか一方が降伏した場合、決闘は終了とする。
4、戦闘不能者への追い打ちは禁止とする。
サラルはクスッと笑った。
「お優しいですね。」
「俺はまだ死にたくないんでね。命を賭けようなんて更々思ってねー。」
俺の発言に決闘場の1/3が静かになる。
『上層』の奴らだった。
俺は、国王の顔に気付いていない。
「やらないのか・・・。」と残念な表情を浮かべていたのだ。
「じゃあ!始めようぜ!」
俺は、いつでも戦える状態だった。
「そうですね。」
サラルはレイピアを数度振って構えなおす。
「『大決闘演武大会』決闘・・・開始!」
監督役の合図が出る。
俺は、前に出る――――と同時だった。
サラルが俺の目の前に迫っていた。
『速い!?』
対応が追い付かない。
俺は、走り出した勢いを殺せなかった。
サラルのレイピアをもろに受けた。
「ゲホッ!」
サラルの攻撃力は、低い。
俺の走り出した勢いもプラスしてさらに攻撃力が増した。
そして、手数と速さは俺よりも圧倒的に上だった。
『舐めてたわけじゃねーけど・・・強い!』
俺は、腕だけを動かし、槍をサラルに命中させる。
しかし、防具にかすり傷を付けた程度だった。
サラルは一旦俺から距離を取り、防具に触れた。
「決闘まで勝ち残っただけの事はありますね。私の防具に傷をつけるとは・・。」
サラルは純粋に褒めていた。
『デスマッチ』でレイダスと同様、瞬殺で相手を倒し続けてきたサラル。
防具に傷をつけられたのは彼にとって誤算だった。油断をしていたわけではない。
彼は嬉しかった。
『力を出せる相手と戦える』という喜びに―――――
「ペッ!・・・ありがとよ!」
俺は、口の中の血を吐き出し、槍を構えなおした。
しかし、先程のように飛び出さない。
『俺の速度を逆に利用される・・・。ここは来たところを叩く。』
相手の方が全てにおいて上手だ。
待つのは具策に等しい。
しかし、うかつに飛び出せば、さっきのように攻撃を受けるだけだ。
俺は、敢えて攻めない。
『相手を観察しろ・・・。突破口があるはずだ。』
「そちらが来ないのでしたら・・・。行きますよ!」
サラルが飛び出す。
『やっぱり速い!?』
俺は、槍を上から振り下ろす。
それを前進しながら回避された。
「グあ!」
サラルのレイピアが左肩に刺さる。
俺は、切っ先を掴み、槍を突き出した。
「これでどうだ!」
サラルは武器を離さない。
俺が槍を突き出すことを予測していたのか左に避ける。
俺は、サラルがレイピアを抜こうとすると考えていた。
しかし、逆だった。レイピアをそのまま左肩に押し込まれる。
片手で抑えているのに、肩の奥まで刺される。
「ぐああああ!」
『ぐう! なんて力してやがる!』
細身に似合わない、腕力だった。
『でもな~。懐に入り込みすぎるとこうなるんだよ!』
俺は、右手に持ってる槍をサラルのわき腹に突き刺した。
「うっ!」
サラルに与えた傷は浅い。
腕に力が入らなかったからだ。
サラルはレイピアを引き抜き、後ろに下がる。
レイピアを肩から引き抜かれる際に痛みが走った。
「ぐぁ!」
おもわず、肩を抑える。
「流石です。」
サラルはまたしても俺を褒める。
「しかし――――――」
サラルの雰囲気が変わる。
さっきまでは温和な雰囲気だった。
今では――――
悪寒が走る。
『やばい!何か来る!?』
俺が思考を巡らせている瞬間だった。
「これでどうですか!」
サラルは一気に距離を詰め、レイピアの雨が俺に降り注ぐ。
防具が、ボロボロになる。
俺は、レイピアの連撃で飛ばされ、地面に転がった。
「ゲホッ!オエ!」
口から吐き出される血は止まらない。
『内臓がいったか・・・。』
俺は血を吐きながら、槍で体を支えて立ち上がる。
『俺はレイダスと戦うんだ!寝てられるかよ!』
「はあぁ!ゲホッ!ッ・・・。」
「粘りますね。」
サラルは俺を称賛する。
自分の攻撃を何度受けても立ち上がる姿に敬意を示している。
しかし――――
「これで終わりです!」
サラルは無慈悲にレイピアを振るう。
ボロボロだった俺の防具は完全に破壊される。
「ぐあああああ!!」
レイピアの連撃は止まらない。
俺の体を刺す。斬るを繰り返す。
俺は、地面に転がった。
指一本動かない。
立ち上がろうという意思があっても体が動かない。
『ちく・・・しょーーーー・・・。』
今の俺の実力はここが限界らしい。
俺は意識を手放した。
俺が戦闘不能になったことで勝者の名が宣言される。
「『大決闘演武大会』決闘!勝者『サラル・ユーギニウス』!」
観客席から歓声が上がる。
けれど、俺には聞こえない。
俺は回復要員に治療室に運ばれる。
外見には出ていないが、俺の体は内臓と全身の骨が逝っていた。
俺の治療は、長引いた―――――
目が覚めたのは『大決闘演武大会』が終わった後だった。
―――『大決闘演武大会』4回戦、俺の戦いは今日、終わりを告げた。―――




