『大決闘演武大会』4日目朝
男は、『大決闘演武大会』4日目の朝を迎える。
昨日の今日で、男の精神は疲弊していた。
そして、男の精神には異常が起きていた。
『俺は何を考えてる・・・・?』
『夢見の森 ログハウス』
「ふあぁ~~・・・。」
『大決闘演武大会』開催から4日目の朝だ。
俺は、横で丸くなって寝ているガルムを起こす。
「ガルム。おきろ~。」
「クウゥ~~・・・。」
ガルムは、寝ぼけているようだ。
立とうとするが、ポテっと倒れて、二度寝を始める。
『かわいいなあ・・・。』
俺は、いつもの日課である畑の水やりを始める。
「明日には収穫しよう。」
それから、キッチンで朝食を作る。
ガルムが匂いにつられて覚醒する。
「ワフゥ!!」
俺とガルムは朝食を食べ終えると、
いつものように防具と武器を装備する。
「よし!」
ガルムは肩に飛び乗る。
『今日から決闘ルールだ。』
グレムの『大決闘演武大会』出場者暗殺事件により、出場者は32人になった。
国王『エリック・ツヴァン・グラントニア』の企てに操られたグレムは、黒い番犬に保護されている。
俺は、グレムの件をきっかけに国王がさらに嫌いになった。
考えただけで、気づけば拳を握っている始末だ。
『昨日の事は忘れるんだ・・・。』
俺は深く深呼吸してから魔法を発動させる。
『魔法第8番:空間転移』
俺とガルムはいつものように王都へ向かった。
―――――『王都グラントニア 南門』――――――
「レイダスさん!おはようございます!」
昨日の今日で、ライラは元気そうだった。
「おはよう。ウェルダンさんはどうしてる?」
俺は、少し気になっていた。
メモを見た瞬間真っ青な顔をしていた。
『胃に穴とかあいてないと良いが・・・。』
「ウェルダンさんは、寝不足の為、検問所でまだ眠ってます!」
『やはり、昨日のメモが原因かもしれない・・・。』
俺は、項垂れた。
「レイダスさん落ち込まないでください!ウェルダンさんは感謝しているんですよ!」
『感謝?』
俺は、詳しい話をライラに聞く。
「ウェルダンさんは言っていました・・・。」
ライラ曰く、
「『上層』の住人だけでなく、国王も犯罪に手を染めていたとは驚きだ。
しかし、『上層』が犯した罪の証拠を掴むことができた。
我々は御仁のお陰で大きな一歩を踏み出したのだ。
この国を私は真の平和に導いて見せる!―――」
とウェルダンさんは言っていたという。
俺は笑った。
「あれ!?私おかしなこと言いましたか!?」
ライラは、腹を抱えて笑う俺に動揺する。
「ハハハハッ!・・いや、何でもない。あの人らしいと思ってな。」
ライラは、俺の言葉に笑みを浮かべる。
「はい!」
ライラの笑顔は今日も輝いていた。
「今日は、『大決闘演武大会』決闘ですよね!応援しています。頑張ってください!」
ライラは手を振って俺を見送る。
俺はガルムと一緒に冒険者ギルドに向かった。
――――『冒険者ギルド』―――――
俺は、冒険者ギルドの扉を開けた。
冒険者の人数はいつもより少なかった。
「なんでこんなに少ない?」
見渡せば、1階にいる冒険者は4、5人程度だった。
俺が不思議がっていると受付カウンターの席にいる受付嬢に声をかけられる。
「『大決闘演武大会』の決闘が始まるからです。」
クレアだった。
「決闘は『大決闘演武大会』の目玉です。
冒険者のほとんどが、決闘場に行かれました。」
と受付嬢は説明する。
「そうか。」
俺は、複雑な気分に襲われる。
国王の手のひらの上で踊るつもりは無いのに
強制的に踊らされているような感覚だ。
俺は、早朝から酒場の席に座る。
「マスター。度数の高い酒を頼む。」
「え!?早朝ですよ?それに決闘を控えてるんじゃ・・・。」
「いいから!」
俺は、酒場のマスターの心配をよそに酒を飲みまくる。
『くそ!酔えない!』
俺は、酒をお代わりしまくった結果、樽1個分のウイスキーを飲み干したのだった。
酒場のマスターは呆然として、拭いていたグラスを1つ落とした。
俺は、酒代を置いて冒険者ギルドをあとにした。
『全然酔えなかった・・・。』
俺は、ため息をつきながら会場に向かうのだった。
―――――『決闘場=会場』―――――
決闘場の熱気は最高潮に達していた。
歓声が決闘場外にいる俺にまで届いている。
『決闘がもう始まっているのか・・・。』
俺は、観客席に向かって歩き出す。
しかし、足は止まる。
国王の歪んだ笑みが脳裏をよぎった。
『なんでだ・・・。』
俺は、考えないようにしている。
『なんでだ・・・。なんでだ!』
歪んだ笑みが離れない!
『殺したい!―――――――』
俺の中に蠢く何かがそう囁く・・・。
俺はもう一度、深呼吸をする。
『ログハウスの時を思い出せ―――。』
俺は、一旦落ち着いた。
止まっていた足を動かす。
俺は、観客席へと向かって歩を進める。
俺は、今日冷静に戦える自信がなかった。
俺の中の何かに俺は汚染されている。
いつ、理性がとぶか分からない。
それでも、俺は前に進む。
俺は――――『俺の人生』から――――『逃げない』
―――――『観客席』―――――
俺が観客席についたと同時に歓声が上がる。
「終わったのか?」
俺は、フィールドを見た。
ガランが血を吐き地に伏していた。
「ゲホッ!オエ!」
口から吐き出される血は止まらない。
『何があったんだ!?相手は?』
俺はガランの対戦相手を見た。
金髪で長髪。青い紐で髪をしばっている。
細目の『レイピア』使い。
『『サラル・ユーギニウス』か!』
ガランは血を吐きながら、槍で体を支えて立ち上がる。
「はあぁ!ゲホッ!ッ・・・。」
「粘りますね。」
サラルはガランを称賛する。
自分の攻撃を何度受けても立ち上がる姿に敬意を示している。
しかし――――
「これで終わりです!」
サラルのレイピアがガランに炸裂する。
――――『大決闘演武大会』4日目はまだ始まったばかりだ――――




