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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~大決闘演武大会編~
54/218

『大決闘演武大会』3回戦―ガランver―

順調に勝ち上がり続ける男とガラン。男の3回戦は終了し、ガランの番が訪れる。

ガランはフィールドに一番乗り!

ガランは相手を待つがいっこうに来る気配がない。

そこへ相手の1人が現れるが、拳には血が・・・。

「てめーー!!やりやがったな!!」ガランは怒る。

『観客席』


俺は、観客席からレイダスの試合を観戦していた。

『あんな方法があるなんてな・・・。』


俺は、『弓兵』職みたいな遠距離職が嫌いだ。

俺たちのような近接戦闘職は近づかなければ攻撃ができない。

その近づくまでが難儀だからだ。


相手の攻撃をガードしながら前進するか――――。

回避しながら前進するか――――――。

相手の攻撃を捨て身で受けるか―――――。


の3通りぐらいしか方法がない。


レイダスは、ユウキの矢を斬り落として『ガード』した。

その後、ユウキを挑発。

これは、ユウキの判断を誤らせる為だと思う。

挑発されたユウキは威力の籠った矢をレイダスに放った。

命中したかと思われたが、魔法でレイダスは防いだ。

ユウキは威力の籠った矢をもう一度放つが・・・。

『そこを利用された・・・。』


矢には効果は小さいが『追尾』が付いていた。

命中率が高くなると、つくことがあるらしい。

レイダスは、ユウキの後ろを取り、矢はユウキに直撃した。


「こえー奴だ・・・。」

俺は、震えた。

俺は今レイダスに恐怖している。

俺がもし、ユウキの立場で戦っていたら、同じ目に合っていただろう。

それでも――――――


『俺は、あいつと戦ってみたい!』

俺は槍を握りしめる。

そこに、レイダスが戻ってきた。


「お疲れ!」

と俺はレイダスに言う。


「おお。ガルム来い。」

レイダスの従魔がレイダスの肩に上っていく。


『何の魔物だ?狼みたいだが・・・。』

俺は、レイダスが従魔にしている魔物を見たことも聞いたこともない。

レイダスは『謎が多い』。


「ガルムを見ててくれたんだろう。ありがとう。」


「いいってことよ!」

『まあいっか!』

他人の詮索はしない。

それは他人を傷つける行いだからだ。

それに、俺の頭で考えても分かるはずもない。


俺のアイテムが音を出す。

「お?」


「今度はお前の番らしい。無理はするなよ?」

レイダスは俺が傷を完治させていないのを見破っていた。


回復要員の治療を受けたが、治りきらなかった。

それだけ、俺の体が弱り、『出血』の効果がすごかったという事だ。

『俺は強くなる。その為ならやせ我慢だってするさ!』


俺は笑って見せた。

「ここまで来たんだ!負けてられるかよ!」


レイダス。ふと笑った。

「そうか。」とだけレイダスはつぶやいた。


この時レイダスは思っていた。

『無茶と無謀は違う・・・。』と。


俺は、『新しい槍』を持ってフィールドに向かう。

「俺は勝って見せる!」

自分に活を入れて、俺はフィールド内に足を踏み入れた。


―――――『フィールド』――――――


俺が、フィールドに一番乗りだった。

俺は、相手が来るのを待つ。


「・・・・・・・。」

アイテムが鳴ってから、5分経過した。

『こねえーー・・・。』


アイテムが鳴ってから

10分を過ぎると棄権と見做され、即失格となる。


「・・・・・・。」

俺が黙って待ち続け、8分が経過した頃。

やっと1人相手がフィールドに入ってきた。


「やっと、き・・・。」

俺は不戦勝になるのかハラハラしていたが、

相手の両腕を見て、驚愕する。


血だ――――

相手の両腕は真紅で染め上げられていた。


『誰の血だ・・・?』

アイテムが鳴ってから、10分が経過した。

残りの2人はフィールドに来なかった。

答えは1つしかない――――――


「やりやがったなてめー!!」

俺は怒る。

『最強』を目指す1人として卑怯な真似はしたくない。

それを俺の目の前にいる相手が平然とやったのだ。


――アイテムが鳴ってから10分以内にフィールドに来なければ失格――


それ以前に殺されていたら?

フィールドに入場する前に拘束されていたら?

憶測はいくらでも立てられる。


『大決闘演武大会』に細かい規制はない。

試合前にトラブルに巻き込まれたとしても黙認されるのだ。


「え~。10分経過しましたので、出場者2名を棄権と見做し、失格と致します!」

監督役が宣言する。

『デスマッチ』は俺と目の前にいる男だけで行われることになった。


「なんでそんなに怒るのかな~?ワタクシには分かりかねます~。」

男の態度に俺の怒りは爆発寸前だった。


『さっさと始めてくれ!早くこいつを・・・・・・!!』

殺してやりたい―――――


俺は、槍を手から血がにじみ出るぐらい強く握った。

殺気が相手に飛ぶ。


「そんな目で~睨まないでくださいよ~。

そんなに見つめられると~・・・。殺したくなるじゃない。」

相手の瞳は笑っている。

人の命を弄ぶように・・・。

両の手についた血を相手は舐める。


「冷静になれ!!」

観客席から声が聞こえた。

俺は振り返る。


「レイダス!?」


「お前は負けてやるつもりか?冷静に集中しろ!!」

レイダスの言うとおりだった。

俺は相手に呑まれていた。

相手の狙いは俺を怒らせて、思考を乱すことだ。


俺は深く深呼吸して、槍を握り返す。

『俺は何のためにここにいる・・・。』

俺は、相手に向き直る。

俺の中に怒りはない。

只、目の前の敵を倒す。それだけだ。


「な~んだ~。つまんないの~。折角いい感じだったのに~~。」

『言ってろ!』


「それでは、始めたいと思います。」

監督役が言う。


俺は足に力を籠める。


「開始!」

監督の合図が出る。

俺は地を蹴って、飛び出す。


何故相手は2人の出場者を殺し、俺を怒らせたのか?

何故俺だけを生かしたのか?

俺は冷静に考えた。

相手は背後から俺を殺せる自信がなかったのだ。

つまり――――――


『相手は俺よりも弱い!!』

俺は、槍を突き出す。

レイダスから貰った槍。『大地の槍』は軽い。そして、俺の手になじむ。

俺は思う存分槍を振るう。


「ひいや~~。」

相手は、俺の槍を避けるがくねくねと変な避け方をする。

『ふざけやがって!』


俺は、大振りになった。

「やばっ!」

俺は、自分で『しまった!』と思った。


相手は笑う。

「ちゃーんす。」

俺は、相手の拳を上体をそらして避ける。

相手の拳が空を切る。

俺は、そのまま宙返り。そこから後ろに一旦下がった。


相手は『拳闘士』職。

相手の攻撃を避けた時、相手の武器を俺は見た。

相手の武器は性能が高い。

効果も恐らく付与されているだろう。

『かすっただけでも危険だ。』


俺は警戒する。

「よ~け~ら~れ~た~。」

相手は拳を緩める。

ひらひらと手を揺さぶった。


相手は俺が大振りになるのを待っている。

ふざけた態度も俺を苛立たせるためだ。


俺は、それを逆手に取る!

俺は前に出た。槍を大きく振る。

予想通り相手は懐に入ってきた。


「も~らい~!」

相手の拳がさく裂すると思われた・・・。


「フン!!」

俺は、頭を前に出す。

相手の頭部にぶつけた。頭突きだ。


「いっ!?」

俺の頭突きに相手はふらつく。

『頭はこうやって使うんだ!』

「効いたかこのやろー!」


俺は、槍を地面に突き立てる。

『使わせてもらうぜ!』


俺は、魔力を槍に込めた。

相手がいる地面が盛り上がる。

そして、棘が相手を突き刺す。


『魔法/第2番:クエイク』!


『浅いか!』

俺が発動させた魔法は、相手のわき腹を貫いていた。

しかし、相手の戦意は喪失していない。


「うおあああああ!!」

相手は拳で棘を破壊する。

そのまま地面に着地するが、傷口から血が噴き出す。


「うっ!」

痛みで相手はふらついている。

『今だ!!』


俺は、相手に向かって槍を振るう。

相手もまた残りの力を使い、拳を振るう。


槍と拳がぶつかり、火花が散った。

ギリギリと武器から音が出る。


「ワタクシは~!勝つんです!どんな手を使っても~!

罵られても~!ワタクシは~!勝つんだあああああああああ!」

ふざけた奴だが、勝利への執念は本物だった。

『称賛してやるよ!お前は強かった!』


俺は相手の拳をはじき返す。

相手は「そんな・・・。」とつぶやき、俺の槍に貫かれた。


「俺の・・・・勝ちだ。」

俺は拳を突き上げる。


「勝者!『ガラン・レーガン』!」

戦いが終わってホッとしたせいか、2回戦の時に負った傷が痛む。


「いて・・・。」

俺は、胸あたりを軽く抑えたが、すぐに槍を回収してフィールドから出ていった。


『出場者の暗殺・・・・か。』

俺も『大決闘演武大会』の出場者である限り、暗殺されるかもしれない。


『レイダスは・・・・ないな!』

一瞬レイダスも暗殺されるかもと思ったが、返り討ちにしているのが想像できた。

俺は、笑いながら観客席に戻るのだった。


――――『観客席』―――――


「よう!レイダス。」

俺はレイダスに声をかけた。

レイダスは振り向いて「よくやったな。」と言う。


『上から目線な気がするが・・・いいか!』

俺はレイダスの隣に座る。


「今日の試合はお互いこれで終わりだ。俺はこのあと用事がある。お前は?」

レイダスは俺に振った。


「俺はこのまま観戦していこうと思う。誰が対戦相手になるか分からないしな。」

レイダスは「そうか。」と言って、観客席から去って行った。


俺は、『大決闘演武大会』を観戦し続ける。

敵は勝てば勝つほど強くなる。

俺は拳を強く握りしめた。


脳裏にあの言葉が浮かび上がったのだ。

「どんな手を使っても!罵られても・・・・。」

『あいつも勝ちたかったんだよな・・・。』


『大決闘演武大会』に出場している者は各々目的がある。

俺は自分の目的しか見えていなかった。

それを理解できた試合だった。


不意に空を見上げると冷たい物が顔に当たる。

「雨・・・か。」


雨は次第に強くなる。

『大決闘演武大会』は雨の中でも行われる。

会場の熱気はそれでも冷める事はない。


俺は雨の中でも、『大決闘演武大会』を観戦し続ける。

『少しでも・・・強くなるために』


「負けるわけにはいかない!」


―――――俺の『大決闘演武大会』3回戦はこうして終わった―――――


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