『大決闘演武大会』3回戦―ガランver―
順調に勝ち上がり続ける男とガラン。男の3回戦は終了し、ガランの番が訪れる。
ガランはフィールドに一番乗り!
ガランは相手を待つがいっこうに来る気配がない。
そこへ相手の1人が現れるが、拳には血が・・・。
「てめーー!!やりやがったな!!」ガランは怒る。
『観客席』
俺は、観客席からレイダスの試合を観戦していた。
『あんな方法があるなんてな・・・。』
俺は、『弓兵』職みたいな遠距離職が嫌いだ。
俺たちのような近接戦闘職は近づかなければ攻撃ができない。
その近づくまでが難儀だからだ。
相手の攻撃をガードしながら前進するか――――。
回避しながら前進するか――――――。
相手の攻撃を捨て身で受けるか―――――。
の3通りぐらいしか方法がない。
レイダスは、ユウキの矢を斬り落として『ガード』した。
その後、ユウキを挑発。
これは、ユウキの判断を誤らせる為だと思う。
挑発されたユウキは威力の籠った矢をレイダスに放った。
命中したかと思われたが、魔法でレイダスは防いだ。
ユウキは威力の籠った矢をもう一度放つが・・・。
『そこを利用された・・・。』
矢には効果は小さいが『追尾』が付いていた。
命中率が高くなると、つくことがあるらしい。
レイダスは、ユウキの後ろを取り、矢はユウキに直撃した。
「こえー奴だ・・・。」
俺は、震えた。
俺は今レイダスに恐怖している。
俺がもし、ユウキの立場で戦っていたら、同じ目に合っていただろう。
それでも――――――
『俺は、あいつと戦ってみたい!』
俺は槍を握りしめる。
そこに、レイダスが戻ってきた。
「お疲れ!」
と俺はレイダスに言う。
「おお。ガルム来い。」
レイダスの従魔がレイダスの肩に上っていく。
『何の魔物だ?狼みたいだが・・・。』
俺は、レイダスが従魔にしている魔物を見たことも聞いたこともない。
レイダスは『謎が多い』。
「ガルムを見ててくれたんだろう。ありがとう。」
「いいってことよ!」
『まあいっか!』
他人の詮索はしない。
それは他人を傷つける行いだからだ。
それに、俺の頭で考えても分かるはずもない。
俺のアイテムが音を出す。
「お?」
「今度はお前の番らしい。無理はするなよ?」
レイダスは俺が傷を完治させていないのを見破っていた。
回復要員の治療を受けたが、治りきらなかった。
それだけ、俺の体が弱り、『出血』の効果がすごかったという事だ。
『俺は強くなる。その為ならやせ我慢だってするさ!』
俺は笑って見せた。
「ここまで来たんだ!負けてられるかよ!」
レイダス。ふと笑った。
「そうか。」とだけレイダスはつぶやいた。
この時レイダスは思っていた。
『無茶と無謀は違う・・・。』と。
俺は、『新しい槍』を持ってフィールドに向かう。
「俺は勝って見せる!」
自分に活を入れて、俺はフィールド内に足を踏み入れた。
―――――『フィールド』――――――
俺が、フィールドに一番乗りだった。
俺は、相手が来るのを待つ。
「・・・・・・・。」
アイテムが鳴ってから、5分経過した。
『こねえーー・・・。』
アイテムが鳴ってから
10分を過ぎると棄権と見做され、即失格となる。
「・・・・・・。」
俺が黙って待ち続け、8分が経過した頃。
やっと1人相手がフィールドに入ってきた。
「やっと、き・・・。」
俺は不戦勝になるのかハラハラしていたが、
相手の両腕を見て、驚愕する。
血だ――――
相手の両腕は真紅で染め上げられていた。
『誰の血だ・・・?』
アイテムが鳴ってから、10分が経過した。
残りの2人はフィールドに来なかった。
答えは1つしかない――――――
「やりやがったなてめー!!」
俺は怒る。
『最強』を目指す1人として卑怯な真似はしたくない。
それを俺の目の前にいる相手が平然とやったのだ。
――アイテムが鳴ってから10分以内にフィールドに来なければ失格――
それ以前に殺されていたら?
フィールドに入場する前に拘束されていたら?
憶測はいくらでも立てられる。
『大決闘演武大会』に細かい規制はない。
試合前にトラブルに巻き込まれたとしても黙認されるのだ。
「え~。10分経過しましたので、出場者2名を棄権と見做し、失格と致します!」
監督役が宣言する。
『デスマッチ』は俺と目の前にいる男だけで行われることになった。
「なんでそんなに怒るのかな~?ワタクシには分かりかねます~。」
男の態度に俺の怒りは爆発寸前だった。
『さっさと始めてくれ!早くこいつを・・・・・・!!』
殺してやりたい―――――
俺は、槍を手から血がにじみ出るぐらい強く握った。
殺気が相手に飛ぶ。
「そんな目で~睨まないでくださいよ~。
そんなに見つめられると~・・・。殺したくなるじゃない。」
相手の瞳は笑っている。
人の命を弄ぶように・・・。
両の手についた血を相手は舐める。
「冷静になれ!!」
観客席から声が聞こえた。
俺は振り返る。
「レイダス!?」
「お前は負けてやるつもりか?冷静に集中しろ!!」
レイダスの言うとおりだった。
俺は相手に呑まれていた。
相手の狙いは俺を怒らせて、思考を乱すことだ。
俺は深く深呼吸して、槍を握り返す。
『俺は何のためにここにいる・・・。』
俺は、相手に向き直る。
俺の中に怒りはない。
只、目の前の敵を倒す。それだけだ。
「な~んだ~。つまんないの~。折角いい感じだったのに~~。」
『言ってろ!』
「それでは、始めたいと思います。」
監督役が言う。
俺は足に力を籠める。
「開始!」
監督の合図が出る。
俺は地を蹴って、飛び出す。
何故相手は2人の出場者を殺し、俺を怒らせたのか?
何故俺だけを生かしたのか?
俺は冷静に考えた。
相手は背後から俺を殺せる自信がなかったのだ。
つまり――――――
『相手は俺よりも弱い!!』
俺は、槍を突き出す。
レイダスから貰った槍。『大地の槍』は軽い。そして、俺の手になじむ。
俺は思う存分槍を振るう。
「ひいや~~。」
相手は、俺の槍を避けるがくねくねと変な避け方をする。
『ふざけやがって!』
俺は、大振りになった。
「やばっ!」
俺は、自分で『しまった!』と思った。
相手は笑う。
「ちゃーんす。」
俺は、相手の拳を上体をそらして避ける。
相手の拳が空を切る。
俺は、そのまま宙返り。そこから後ろに一旦下がった。
相手は『拳闘士』職。
相手の攻撃を避けた時、相手の武器を俺は見た。
相手の武器は性能が高い。
効果も恐らく付与されているだろう。
『かすっただけでも危険だ。』
俺は警戒する。
「よ~け~ら~れ~た~。」
相手は拳を緩める。
ひらひらと手を揺さぶった。
相手は俺が大振りになるのを待っている。
ふざけた態度も俺を苛立たせるためだ。
俺は、それを逆手に取る!
俺は前に出た。槍を大きく振る。
予想通り相手は懐に入ってきた。
「も~らい~!」
相手の拳がさく裂すると思われた・・・。
「フン!!」
俺は、頭を前に出す。
相手の頭部にぶつけた。頭突きだ。
「いっ!?」
俺の頭突きに相手はふらつく。
『頭はこうやって使うんだ!』
「効いたかこのやろー!」
俺は、槍を地面に突き立てる。
『使わせてもらうぜ!』
俺は、魔力を槍に込めた。
相手がいる地面が盛り上がる。
そして、棘が相手を突き刺す。
『魔法/第2番:クエイク』!
『浅いか!』
俺が発動させた魔法は、相手のわき腹を貫いていた。
しかし、相手の戦意は喪失していない。
「うおあああああ!!」
相手は拳で棘を破壊する。
そのまま地面に着地するが、傷口から血が噴き出す。
「うっ!」
痛みで相手はふらついている。
『今だ!!』
俺は、相手に向かって槍を振るう。
相手もまた残りの力を使い、拳を振るう。
槍と拳がぶつかり、火花が散った。
ギリギリと武器から音が出る。
「ワタクシは~!勝つんです!どんな手を使っても~!
罵られても~!ワタクシは~!勝つんだあああああああああ!」
ふざけた奴だが、勝利への執念は本物だった。
『称賛してやるよ!お前は強かった!』
俺は相手の拳をはじき返す。
相手は「そんな・・・。」とつぶやき、俺の槍に貫かれた。
「俺の・・・・勝ちだ。」
俺は拳を突き上げる。
「勝者!『ガラン・レーガン』!」
戦いが終わってホッとしたせいか、2回戦の時に負った傷が痛む。
「いて・・・。」
俺は、胸あたりを軽く抑えたが、すぐに槍を回収してフィールドから出ていった。
『出場者の暗殺・・・・か。』
俺も『大決闘演武大会』の出場者である限り、暗殺されるかもしれない。
『レイダスは・・・・ないな!』
一瞬レイダスも暗殺されるかもと思ったが、返り討ちにしているのが想像できた。
俺は、笑いながら観客席に戻るのだった。
――――『観客席』―――――
「よう!レイダス。」
俺はレイダスに声をかけた。
レイダスは振り向いて「よくやったな。」と言う。
『上から目線な気がするが・・・いいか!』
俺はレイダスの隣に座る。
「今日の試合はお互いこれで終わりだ。俺はこのあと用事がある。お前は?」
レイダスは俺に振った。
「俺はこのまま観戦していこうと思う。誰が対戦相手になるか分からないしな。」
レイダスは「そうか。」と言って、観客席から去って行った。
俺は、『大決闘演武大会』を観戦し続ける。
敵は勝てば勝つほど強くなる。
俺は拳を強く握りしめた。
脳裏にあの言葉が浮かび上がったのだ。
「どんな手を使っても!罵られても・・・・。」
『あいつも勝ちたかったんだよな・・・。』
『大決闘演武大会』に出場している者は各々目的がある。
俺は自分の目的しか見えていなかった。
それを理解できた試合だった。
不意に空を見上げると冷たい物が顔に当たる。
「雨・・・か。」
雨は次第に強くなる。
『大決闘演武大会』は雨の中でも行われる。
会場の熱気はそれでも冷める事はない。
俺は雨の中でも、『大決闘演武大会』を観戦し続ける。
『少しでも・・・強くなるために』
「負けるわけにはいかない!」
―――――俺の『大決闘演武大会』3回戦はこうして終わった―――――




