『大決闘演武大会』2日目帰宅前
男は『夢見の森』に帰宅しようとしていた所、カイルに呼び止められる。
仕方なく、ガランの見舞いに行った男はボロボロのガランを目にする。
防具も武器も壊れる寸前・・・。ガランは武器の『槍』だけどうしようもないという。
男は、カバンから武器を取り出し、ガランに手渡した。
武器の名は―――――――――――――――
『決闘場=会場』
俺は、カイルと会場に戻ってきていた。
酒を飲んで、『夢見の森』に帰るはずが、カイルに妨害された。
冒険者ギルドを出ると、カイルが大手を振って駆け寄ってきたのだ。
「レイダスさ~ん!!」
汗の量が尋常じゃなかった。
「どこから走ってきたんだ?」
と聞くと「会場から・・・。」と息を切らしていた。
「何かあったのか?」
と聞くと、カイルは息を整えて言った。
「ガランさんの試合見てたんですけど、ボロボロで。」
俺は、カイルの言葉に「そうか。」とだけ答える。
すると、カイルが怒り出した。
「そうかって!?心配にならないんですか?」
俺は、カイルの態度が不思議だった。
『青年は楽しそうに試合を見てたじゃないか・・・。』
カイルは、見ていたはずだ。
大怪我を負って倒れていく出場者たちを・・・・。
「カイル。知り合いだから、身内だから、そんな事を言うのか?」
「え?」
「所詮お前も・・・。」
俺は、言葉を続けなかった。言っても無駄だからだ。
「いいだろう。見舞いに行ってやる。」
俺は、会場に向かった。
後ろからカイルが無言でついてくる。
カイルはうつむいたまま、考え事をしている。
『一生考えてるがいい・・・。』
俺は、心の中でそうつぶやいた。
無言のまま会場に到着し、今に至る。
「確か、実技試験で使用されていた控室が『治療室』として使われてるんだよな。」
カイルは我に返ったように「え?あ!はい!」と返事をする。
俺は、早歩きで、『治療室』に向かう。
すると、男が1人扉を開けて出てきた。
「ててててッ!」
ガランだった。防具を外して、1枚シャツを着ている。
シャツの下は包帯が巻かれているだろう。
「ガラン。」
と俺が声をかけると「おう!」と元気良さそうに返事をする。
「ここじゃ、邪魔そうだ。どこか別の場所で話そう。」
と俺は提案し、俺たちは外に出る。
俺たちは、会場の近くに置かれているベンチに座った。
「青年から聞いた。危なかったらしいな。」
「ハハハッ!」
と笑った後、ガランの表情は曇る。
「あんま、見られたくなかったな・・・。」
その言葉に、ついてきたカイルがビクッと震えた。
「シャツ1枚で包帯を巻いてるという事は『出血』か?」
と尋ねると、ガランは笑みを浮かべて答える。
「流石レイダス!鋭いな。」
俺は「なんとなくだ。」と謙遜する。
「防具と武器はこれからどうするんだ?」
と俺はガランに聞いた。
ガランの横に置かれている防具と武器の『槍』を見ていた。
『耐久値』は下がりきっている。
次の試合に臨めば、武器は『耐久値』を下回り壊れるだろう。
防具も同様だ。強力な一撃を浴びれば、壊れる。
「防具は、これから店に行って新しいのに変えようと思う。
ただ、『槍』がな・・・。」
ガランは座ったまま槍を俺に手渡した。
「その槍は俺に合わせて、オーダーメイドで作ってもらったんだ。
振りなれちまってる俺からしたら、新しい槍はしっくりこない。」
とガランは語る。
俺は、「そうか。」と言って、槍をガランに返す。
「お前の見舞いに来たんだ。ついでに、見舞い品としてこれをやろう。」
俺は、魔法のカバンから武器を取り出す。
カイルとガランは、驚いていた。
『この世界に魔法のカバンを持っている人間がいないのか?』
俺は、驚いているガランに武器を渡す。
『武器製作』で作った『槍』だ。
俺は、余った素材で違う武器を製作していたのだ。
いわば、『練習用で作った試作品』といったところだ。
俺は、槍を使わないから別にガランに渡した所で問題ない。
ガランはベンチから立ち上がって俺に言った。
「いいのかよ!?貰って!?」
かなり動揺しているようだ。
俺は、「構わない」と即答する。
「振ってみたらどうだ?」
と俺はガランに言った。
ガランは頷いて、軽く槍を振るう。
ガランは数度振って、槍の性能を理解したようだ。
「この槍すげー!手にしっくりなじみやがる!」
ガランは槍のなじみ具合にテンションが上がった。
槍をまた振りはじめた。
俺は、ガランにある指示を出す。
「人気のない方向をむいて、魔力を槍に込めろ。
そして、地面に突き立てろ。」
「あ?ああ。」
とガランは槍の先端を地面につけて、魔力を込めた。
すると――――
ドドドドド!!と地面がトゲ状に盛り上がった。
周囲にいた人たちは驚いた。
「ななな、なんじゃこりゃアアアア!?」
一番驚いていたのは槍を使った本人だった。
カイルは呆然としている。
「ハハハハ!」
俺は棒読みで笑った。
「笑い事じゃねーよ!!移動するぞ!」
俺たちは、その場を離れた。
攻撃とみなされ、黒い番犬が寄ってくるのを危惧したからだ。
ガランの判断は正しいと言えるだろう。
――――『冒険者ギルド』―――――
俺たちは冒険者ギルドまで戻ってきた。
カイルとガランは息を切らしている。
『ガランは回復したばかりだしな・・・。』
「なんなんだこの槍!」
と俺が渡した槍をガランは指さす。
「その槍には『土』属性が付与されている。
魔力を込めると『魔法/第2番:クエイク』が発動する仕組みだ。
武器名は『大地の槍』、『土』属性の武器にお似合いの名だ。」
ガランは槍を眺める。
「これはお前が作ったのかレイダス?」
ガランとカイルは俺を見る。
『ここは真実を言わない方がいいだろう。』
「いや、貰い物だ。俺の主な武器は片手剣だからな。
槍は使わない。持っていても宝の持ち腐れだ。
使い手に渡した方がよっぽど役に立つ。」
俺は、『貰い物だ』と説明する。
ガランとカイルは何故か安堵する。
『なんでホッとしてるんだ?』
俺は、首を傾げた。
「で?その槍は使ってくれるのか?」
俺は、ニヤッと笑う。
ガランは槍を握りしめる。
「ああ!ありがたく使わせてもらうぜ!」
俺は、ガランと握手する。
「お前にまた酒奢らねーと。」
ガランは笑いながら言う。
「2回分だ。初戦を忘れて貰ったら困る。」
「ハハハハハッ!そうだった。」
ガランは笑う。俺も笑う。
カイルは1人それを見てほほ笑む。
カイルは、俺の言った意味を理解していた。
きっかけはガランの「あんま、見られたくなかったな・・・。」という台詞だった。
ガランは『戦士』だ。
『大決闘演武大会』に出場する者全員が・・・。
『自分の弱った姿を他人に見せたい』と思う戦士がいるだろうか?
いるわけがない・・・。
カイルはそれを理解していなかった。
カイルは自分の未熟さが死ぬほど嫌だった―――――
カイルは拳を握りしめる。
カイルが求めているのは、俺のような『強さ』だ。
今日まで剣も必死に振ってきた。腕も上げている。
しかし、カイルは『精神』も欠けていた。
カイルはふと笑いながら、小さくつぶやく。
「かなわないなー・・・。」
俺とガランには聞こえない小さなつぶやき――――
カイルは、思っていた。『いつかこの人を追い越したい。』
しかし、カイルは悟ったのだ。『この人はデカすぎる。器が違う。』
カイルの気持ちと目標はは変化する。
『少しでも近づきたい・・・。』
ただ、それだけになった―――――――――
カイルは、ガランに呼ばれる。
「カイル、お前も酒場に寄ってけ!俺のおごりだ!!」
「俺は、もう飲んでるんだが・・・。」
「お前酒豪だろ?いいじゃねーかそんくらい!」
俺とガランのやり取りにカイルは笑う。
「いいですよ。あ!でも、イリヤとゲイルがあとでこっちに来るので、
それまでですよ!」
カイルは、言った。
「そんじゃあ2人が来たら、2人も混ぜようぜ!今日はパー!と飲もう!」
ガランは酒にこだわりまくっていた。
「2日酔いにだけはなるなよ。明日も控えてるんだ。」
俺は、一応注意した。
「分かってるって!」
ガランは冒険者ギルドの扉を開ける。
俺たちは、酒場でイリヤとゲイルがきたあともずっと酒を飲んでいた。
『ガランは勿論爆睡である。』
他の3人も酒で潰れた。
俺は前と同様、酒場のマスターに任せて、
冒険者ギルドをあとにした。
『やっと帰れる・・・。』
―――俺は、『夢見の森』に帰宅するのだった――――
酒場のマスター「毛布かけといて」
酒場の店員「はい。」
酒場の店員『3人増えてる・・・・。』




