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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~大決闘演武大会編~
51/218

『大決闘演武大会』2日目帰宅前

男は『夢見の森』に帰宅しようとしていた所、カイルに呼び止められる。

仕方なく、ガランの見舞いに行った男はボロボロのガランを目にする。

防具も武器も壊れる寸前・・・。ガランは武器の『槍』だけどうしようもないという。

男は、カバンから武器を取り出し、ガランに手渡した。

武器の名は―――――――――――――――

『決闘場=会場』


俺は、カイルと会場に戻ってきていた。

酒を飲んで、『夢見の森』に帰るはずが、カイルに妨害された。


冒険者ギルドを出ると、カイルが大手を振って駆け寄ってきたのだ。

「レイダスさ~ん!!」

汗の量が尋常じゃなかった。


「どこから走ってきたんだ?」

と聞くと「会場から・・・。」と息を切らしていた。


「何かあったのか?」

と聞くと、カイルは息を整えて言った。

「ガランさんの試合見てたんですけど、ボロボロで。」


俺は、カイルの言葉に「そうか。」とだけ答える。

すると、カイルが怒り出した。


「そうかって!?心配にならないんですか?」

俺は、カイルの態度が不思議だった。


『青年は楽しそうに試合を見てたじゃないか・・・。』

カイルは、見ていたはずだ。

大怪我を負って倒れていく出場者たちを・・・・。


「カイル。知り合いだから、身内だから、そんな事を言うのか?」


「え?」


「所詮お前も・・・。」

俺は、言葉を続けなかった。言っても無駄だからだ。


「いいだろう。見舞いに行ってやる。」

俺は、会場に向かった。

後ろからカイルが無言でついてくる。

カイルはうつむいたまま、考え事をしている。


『一生考えてるがいい・・・。』

俺は、心の中でそうつぶやいた。


無言のまま会場に到着し、今に至る。

「確か、実技試験で使用されていた控室が『治療室』として使われてるんだよな。」

カイルは我に返ったように「え?あ!はい!」と返事をする。


俺は、早歩きで、『治療室』に向かう。

すると、男が1人扉を開けて出てきた。


「ててててッ!」

ガランだった。防具を外して、1枚シャツを着ている。

シャツの下は包帯が巻かれているだろう。


「ガラン。」

と俺が声をかけると「おう!」と元気良さそうに返事をする。


「ここじゃ、邪魔そうだ。どこか別の場所で話そう。」

と俺は提案し、俺たちは外に出る。


俺たちは、会場の近くに置かれているベンチに座った。

「青年から聞いた。危なかったらしいな。」


「ハハハッ!」

と笑った後、ガランの表情は曇る。


「あんま、見られたくなかったな・・・。」

その言葉に、ついてきたカイルがビクッと震えた。


「シャツ1枚で包帯を巻いてるという事は『出血』か?」

と尋ねると、ガランは笑みを浮かべて答える。


「流石レイダス!鋭いな。」

俺は「なんとなくだ。」と謙遜する。


「防具と武器はこれからどうするんだ?」

と俺はガランに聞いた。


ガランの横に置かれている防具と武器の『槍』を見ていた。

『耐久値』は下がりきっている。

次の試合に臨めば、武器は『耐久値』を下回り壊れるだろう。

防具も同様だ。強力な一撃を浴びれば、壊れる。


「防具は、これから店に行って新しいのに変えようと思う。

ただ、『槍』がな・・・。」

ガランは座ったまま槍を俺に手渡した。


「その槍は俺に合わせて、オーダーメイドで作ってもらったんだ。

振りなれちまってる俺からしたら、新しい槍はしっくりこない。」

とガランは語る。


俺は、「そうか。」と言って、槍をガランに返す。


「お前の見舞いに来たんだ。ついでに、見舞い品としてこれをやろう。」

俺は、魔法のカバンから武器を取り出す。


カイルとガランは、驚いていた。

『この世界に魔法のカバンを持っている人間がいないのか?』


俺は、驚いているガランに武器を渡す。


『武器製作』で作った『槍』だ。

俺は、余った素材で違う武器を製作していたのだ。

いわば、『練習用で作った試作品』といったところだ。

俺は、槍を使わないから別にガランに渡した所で問題ない。


ガランはベンチから立ち上がって俺に言った。

「いいのかよ!?貰って!?」

かなり動揺しているようだ。

俺は、「構わない」と即答する。


「振ってみたらどうだ?」

と俺はガランに言った。


ガランは頷いて、軽く槍を振るう。

ガランは数度振って、槍の性能を理解したようだ。


「この槍すげー!手にしっくりなじみやがる!」

ガランは槍のなじみ具合にテンションが上がった。

槍をまた振りはじめた。


俺は、ガランにある指示を出す。

「人気のない方向をむいて、魔力を槍に込めろ。

そして、地面に突き立てろ。」


「あ?ああ。」

とガランは槍の先端を地面につけて、魔力を込めた。

すると――――

ドドドドド!!と地面がトゲ状に盛り上がった。


周囲にいた人たちは驚いた。

「ななな、なんじゃこりゃアアアア!?」

一番驚いていたのは槍を使った本人だった。

カイルは呆然としている。


「ハハハハ!」

俺は棒読みで笑った。


「笑い事じゃねーよ!!移動するぞ!」

俺たちは、その場を離れた。

攻撃とみなされ、黒い番犬が寄ってくるのを危惧したからだ。

ガランの判断は正しいと言えるだろう。


――――『冒険者ギルド』―――――


俺たちは冒険者ギルドまで戻ってきた。

カイルとガランは息を切らしている。

『ガランは回復したばかりだしな・・・。』


「なんなんだこの槍!」

と俺が渡した槍をガランは指さす。


「その槍には『土』属性が付与されている。

魔力を込めると『魔法/第2番:クエイク』が発動する仕組みだ。

武器名は『大地の槍』、『土』属性の武器にお似合いの名だ。」


ガランは槍を眺める。

「これはお前が作ったのかレイダス?」

ガランとカイルは俺を見る。

『ここは真実を言わない方がいいだろう。』


「いや、貰い物だ。俺の主な武器は片手剣だからな。

槍は使わない。持っていても宝の持ち腐れだ。

使い手に渡した方がよっぽど役に立つ。」

俺は、『貰い物だ』と説明する。


ガランとカイルは何故か安堵する。

『なんでホッとしてるんだ?』

俺は、首を傾げた。


「で?その槍は使ってくれるのか?」

俺は、ニヤッと笑う。


ガランは槍を握りしめる。

「ああ!ありがたく使わせてもらうぜ!」

俺は、ガランと握手する。


「お前にまた酒奢らねーと。」

ガランは笑いながら言う。


「2回分だ。初戦を忘れて貰ったら困る。」


「ハハハハハッ!そうだった。」

ガランは笑う。俺も笑う。

カイルは1人それを見てほほ笑む。


カイルは、俺の言った意味を理解していた。

きっかけはガランの「あんま、見られたくなかったな・・・。」という台詞だった。

ガランは『戦士』だ。

『大決闘演武大会』に出場する者全員が・・・。

『自分の弱った姿を他人に見せたい』と思う戦士がいるだろうか?

いるわけがない・・・。

カイルはそれを理解していなかった。


カイルは自分の未熟さが死ぬほど嫌だった―――――

カイルは拳を握りしめる。

カイルが求めているのは、俺のような『強さ』だ。

今日まで剣も必死に振ってきた。腕も上げている。

しかし、カイルは『精神』も欠けていた。


カイルはふと笑いながら、小さくつぶやく。

「かなわないなー・・・。」

俺とガランには聞こえない小さなつぶやき――――


カイルは、思っていた。『いつかこの人を追い越したい。』

しかし、カイルは悟ったのだ。『この人はデカすぎる。器が違う。』

カイルの気持ちと目標はは変化する。

『少しでも近づきたい・・・。』

ただ、それだけになった―――――――――


カイルは、ガランに呼ばれる。

「カイル、お前も酒場に寄ってけ!俺のおごりだ!!」


「俺は、もう飲んでるんだが・・・。」


「お前酒豪だろ?いいじゃねーかそんくらい!」

俺とガランのやり取りにカイルは笑う。


「いいですよ。あ!でも、イリヤとゲイルがあとでこっちに来るので、

それまでですよ!」

カイルは、言った。


「そんじゃあ2人が来たら、2人も混ぜようぜ!今日はパー!と飲もう!」

ガランは酒にこだわりまくっていた。


「2日酔いにだけはなるなよ。明日も控えてるんだ。」

俺は、一応注意した。


「分かってるって!」

ガランは冒険者ギルドの扉を開ける。


俺たちは、酒場でイリヤとゲイルがきたあともずっと酒を飲んでいた。

『ガランは勿論爆睡である。』

他の3人も酒で潰れた。


俺は前と同様、酒場のマスターに任せて、

冒険者ギルドをあとにした。


『やっと帰れる・・・。』

―――俺は、『夢見の森』に帰宅するのだった――――

酒場のマスター「毛布かけといて」

酒場の店員「はい。」

酒場の店員『3人増えてる・・・・。』

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