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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~はじまり~
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男は、森へ

男は、いよいよ外へ!

『夢見の森』を歩いているとテンペスト・ウルフに遭遇する。

ステータスの高いチートの男からしてみれば容易なことだった。躊躇もなく、男は、魔物を切り捨てる。

「『保護』で飼ってただけだしな。」

しかし、男は後に後悔することになるのだった。

「ふあ~――・・・。」

転生して2日目の朝を迎えた。


「こっちの世界での時間が知りたい。」

俺の素直な気持ちだった。

ログハウスには時計がない。そもそもこっちは1日=24時間なのだろうか?


「・・・・・・」


取り敢えず時間については置いておくことにしよう。

暗くなり、眠くなったら寝る!

そうしよう、そうしよう。


「難しいことを考え悩んでいたらこっちの身が持たないからな。」

俺は、ベットから降りて、キッチンに向かう。

朝食だ。

今日の朝食は、『ハムとチーズのサンドイッチ』

冷蔵庫を開いたとき、『統合』の影響でいろいろな食材が入っていた。

ただ、こちらの食材をどう調理すればいいか分からない、毒とか麻痺とか変な効果があっても困るしな。

というか、見た目がグロテスクな食材もあるし・・・。

その食材の中でまともなものを選んだ結果が今日の朝食なのだ。

ハムは『モブタ』という魔物の肉で、チーズは『モンスルー』という魔物の乳からできている。

日本で言えば『豚』と『牛』に近い魔物だ。


「食べてみると意外といけるんだよな。」

モシャモシャと朝食を完食し、外に出る支度をする。

俺のいるここが本当に『FREE』の世界なら今いるここは―――――――


――――――『夢見の森』――――――


『FREE』にはマイホーム機能があり、lv80になると使うことができるシステムの一つ。

『夢見の森』は『FREE』の世界にあるが普通に入ることはできない場所である。


理由は単純明快で、『夢見の森』は異空間にあるのだ。

lv80になると、職業、種族問わず、ある魔法を習得することができる。


『魔法/第8番:空間生成』

『魔法/第8番:時空維持』


第~番というのは

魔法を発動できるlvを示している。


例えば、『魔法/第5番:フレア・アローレイン』

火の矢を雨のように降らせる魔法なのだが、第5番=lv50以上でないと発動できない。

そしてlv50以上でなければ覚えられないことを示している。


『空間生成』と『時空維持』は少々特殊な魔法で、消費する魔力は、最初の発動のみ。


つまり、それ以降の魔力の消費はないのだ。まあ、魔力の大半が持っていかれてしまうのだが・・・。

『空間生成』で異空間を生み出し、『時空維持』で異空間を維持し続ける。

こうしてマイホームは誕生し、あり続けるのだ。

しかし、だからと言って無数に異空間を作り出せるわけではない。


『FREE』のシステムにより『空間生成』と『時空維持』による異空間は1人1つしか作り出すことができないのだ。


じゃあその生み出した異空間からどうやってでるかって?

lv80で覚えられる魔法の中に


『魔法/第8番:空間転移』

がある。

この魔法を発動することで異空間と『FREE』の世界とを行き来ができるのだ。

しかし、俺には本当の意味での外に出る前に、

マイホームが存在している『夢見の森』を調べなければいけないのだ。

『統合』の影響は計り知れない。そしてマイホームが存在している『夢見の森』はマイホーム以外にも魔物が生息するエリアや森や川等、緑があふれるエリアもある。


もちろんそのエリアを設定し、作ったのも俺だ。

「『統合』の影響で魔物が強くなっていたり、数が増えてたら厄介だな。」

俺も統合で強くはなったがまだ戦ってすらいない。通用するのだろうか・・・。


魔物は生け捕りができる。食料や素材を手に入れるのをより効率よくさせるため『夢見の森』で俺が飼っていたのだ。『夢見の森』は俺が作り出した。魔物が影響を受けていてもおかしくはない。

こんなことになるのなら――――


「魔物なんて飼うんじゃなかった・・・。」


俺はため息をつきながら外につながるログハウスの扉を開けた。

俺は景色を眺める。

転生するまで気づかなかったかもしれない。


「幻想的だな。」


ゲームは所詮ゲームでしかない。いざそれがリアルになると現実味を帯びるものだ。

俺は、俺が作り上げた『夢見の森』に見惚れていた。

が、


「時間は有限だからな。」


前世で若いうちに死んだせいなのか、俺の性格からきた発言なのか

『不老不死』のスキルを持つ者がする発言ではなかった。


俺は、ログハウスの扉を閉める。

ログハウスを出たすぐ先には、段差があり、滑らないようゆっくり降りていく。

地面を見れば、回復薬に使える薬草に食用キノコがいくつか生えている。

俺の知識にない植物も生えている。

俺は、躊躇なく森のほうへと進んでいく。


途中に川を見つけて足が止まる。

「聖水の川か。リアルになるとこんなにも綺麗なのか。」

東京の水道はおいしくもなければ、綺麗でもない。

それに比べ、この川は、澄んでいて、清らかさを感じる。


「邪なる者を滅ぼす劇毒・・・・だったか。」

『FREE』の世界に古くから伝えられている言葉だ。ただの人間には無害だ。

『邪者』と呼ばれる邪神の信徒と言われる魔物がいる。人間と魔物の中間と言えばいいだろうか。

邪神を崇拝するあまり、魂を捧げ魔物になったという。

捧げられた魂は戻らない。

『邪者』は魔物に過ぎないのだ。『聖水』は『邪者』を倒す必須アイテムの一つ。


「いつか聖水も役に立つかもな。」


俺は、空き瓶を魔法のカバンから取り出し、聖水を汲んだ。


「3本あれば十分だろう。」


俺は、止まっていた歩を進める。

森の中間地点に差し掛かり再び歩を止めた。


「気配がするな。」


『剣聖専用スキル:魔物探知』

『魔法/第10番:探知拡張』


『剣士』職で習得できるスキルと魔法を同時に使用することで探知範囲を拡大した。

反応は5つ。

俺を囲むようにしてゆっくりと近づいてくる。


「複数体で1匹の獲物を確実に狩る。 『テンペスト・ウルフ』か。」

過去に『FREE』でテンペスト・ウルフからとれる毛皮は人気が高く、乱獲されていた。

俺は、毛皮は欲しかったが乱獲をするつもりはなく、テンペスト・ウルフに関しては『保護』目的で森に置いていた。


「やっぱり、魔物なんて飼うんじゃなかったな。」

成長したテンペスト・ウルフがじりじりと間合いを詰めていく。

そして―――――

5匹のテンペスト・ウルフが一斉に飛び出した。


「グルオオオオオ!!」


切り裂き、かみ砕こうとする捕食者。

俺は、腰に携えていた『片手剣シルバーレイク』を抜くと同時に

瞬時にテンペスト・ウルフの首を刈り取った。


ギャッ・・グエ・・・


躊躇はなかった。

テンペスト・ウルフの返り血を浴びる。

俺は『保護』していたはずのテンペスト・ウルフたちを殺した。

テンペスト・ウルフの5つの首がごろりと地面に転がっている。


「どうせ、生きている限り、いつかは死ぬんだ。」


切り落とした断面からは血があふれ出ている。


俺が、テンペスト・ウルフの素材を回収しようとした時だった。


「クウウーーン」


森のさらに奥から鳴き声が聞こえたのだ。

俺は素材の回収を後にし、鳴き声がした場所へと向かう。

その正体を知り、俺は困惑した。


「テンペスト・ウルフの・・・子供?」


そう子供だった。立って歩くことすらできないテンペスト・ウルフの子供だった。


「ははは・・・。そうかよ。」


「俺が切り殺したのは、お前の『親』か」


襲ってきたテンペスト・ウルフは5匹。きっとあの中にはこいつの親が混ざっていた。

子供にえさを与えるために―――――

このままテンペスト・ウルフの子供を放置していけば、遅かれ早かれ子供は死ぬことになる。


――――俺はずっと一人だった――――

――――仲間なんていなかった―――――

――――助けてくれる奴がいただけでもお前は幸せ者じゃないか?――――

――――いずれ生きている限り死ぬんだ―――――

――――なんでだよ・・・・――――――

どこからともなく怒りがこみ上げてくる。

俺は両の手を握りしめ、子供に向かって言うのだった。


「生き抜いて見せろよ!!」


俺が持っていなかったものを持っていながら死にかけている

魔物の子供への怒りなのか――――

子供の親を殺してしまった俺への怒りなのか―――――――

それともその両方なのか――――――


俺は辛いことがあっても、嫌なことがこの先待ち受けていようと

『不老不死』のスキルがある限り生きていかなければならない。


「クぅーーー・・・・ん」

テンペスト・ウルフの子供の泣き声は弱弱しくなっていく。

どうしたらいい――――


見捨てるか―――――――

生かすか―――――――――

俺は―――――


「クッソ!!!!」


考えなかった何も、もう頭の中は真っ白だ。

「メンタル弱すぎだろ」と自分に呆れてしまう。

気づけば森を抜け、ログハウスにテンペスト・ウルフの子供を抱えて戻ってきていた。

俺は、テンペスト・ウルフの子供を治療し、餌を与えてそのままベットにダイブした。


「今日はもう何もしたくない。」


返り血を浴びた防具を気にせず、布団を深々とかぶる。


「・・・立ち直った後は、洗濯しよう。」


それから3日間

俺はベットでゴロゴロ過ごす事となる。

神様「えー、あやつはふて寝して顔を出さん。代わりに私がいっぱい語ってやるぞ!!」

神様「・・・・しかしなー・・・あやつメンタル弱すぎじゃないか?」

神様「まあ、いずれ立ち直るだろう。幸せも不幸も半々だしな!」

神様「次回は、少し変わった話になる予定らしい。 期待しているが良い!!」

男「・・・・・んなわけねーだろうが。」

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