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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~大決闘演武大会編~
49/218

『大決闘演武大会』2回戦-男verー

『大決闘演武大会』2回戦!

男は、相手2人を瞬殺する。問題は残り1人だった。

獣人の女。彼女は奴隷だった。

男は、彼女を奴隷から解放する為、スキルを発動させるのだった。

『決闘場 フィールド内』


観客たちの熱気が凄まじい。

「やれやれ!」と言わんばかりの観客たちに俺はドン引きする。


『国王に洗脳されてるだろ・・・。』


国王が『エリック・ツヴァン・グラントニア』になってから開催された

このイベントは、『上層』から多く支持を集めている。


観客席にいる1/3は上層の人間だろう。


『俺は、俺の目的を達成する。

俺は、俺の戦いをする。』


俺は、雰囲気に呑まれないよう自分に言い聞かせて剣を抜く。

そして、鑑定する。


『左と真ん中の相手はlv25か』

右の獣人を鑑定した時だった。


獣人種/『拳闘士』職

lv/30 名前/なし


体力/12000

防御/ 5900

攻撃/ 7000

速度/ 5000

持久力/10000

魔力/ 3500

魔力量/4000

魔法適正/C

拳闘適正/B


状態:奴隷


俺は、驚く。

『あの獣人・・・奴隷なのか!?』

よく見ると、獣人の女は目が虚ろで体中汚れている。


ブツブツとデッズの時みたいに何かつぶやいている。

「ころ・・・して・・・私を・・・ころし・・・て」

死を懇願していた。

相当ひどい仕打ちを受けているのだろう。

観客席から獣人奴隷に声がかかる。


「てめーを買ったのは俺だ!この時の為にお前を買ったんだ!ぜってー勝てよ!

分かってんのか!」

観客席から獣人奴隷に声をかけた男は福与かな体をしていた。

金を片手に握っている。上層の住人だろう。


獣人奴隷はうつむく。

瞳は恐怖で揺れ、怒りで体が震えている。

表情は真っ青でこの後の仕打ちを考えているのだろう。


俺は、監督役の合図を待った。

『獣人の奴隷・・・。お前の楔、俺が取ってやる。』


「開始!」

監督役の合図と同時に左の相手と真ん中の相手が俺に向かってくる。

遅れて獣人奴隷も俺に向かう。


俺は、左の相手の両腕を斬り飛ばし―――

真ん中の相手の肺を一突きにした。


一瞬の出来事に観客たちは呆然とする。

「あいつ強すぎねーか!?」

「今何が起こったんだ!?」

観客たちは、歓喜と動揺の声を上げる。


残った獣人奴隷は距離を取る。

彼女は直感で感じていたのだ。

『この男は危険だ!』

死を望んでいたはずなのに、彼女は生きようとしていた。

俺は、そんな彼女に言う。


「それでいい。」

『それが―――――生きるという事だ。』


しかし、獣人奴隷に観客席の男から指示が出る。

「さっさとそいつを倒せ!てめーはその為だけにいんだよ!俺の言うとおりにやりやがれ!」

獣人の体は震える。

奴隷は『契約』の一種だ。主従関係である以上、

福与かな男の指示に彼女は逆らえない。


「うあああああああああ!!」

獣人奴隷は距離を詰め、俺に攻撃を仕掛ける。

殴る蹴る。殴る蹴るを繰り返すが全て素手で受け止める。


獣人奴隷のラッシュの勢いに俺は距離を取る。

『観客の目もある。少しは追い込まれたふりをしとかないとな。』


獣人奴隷は距離を詰める。

俺は大振りになった拳を難なくよけ、掴む。

俺は、優しく壁に投げた。


獣人奴隷は壁に勢いよく飛んでいき、めり込む。

「ゲホッ!」

『息はあるようだ』

獣人奴隷は壁にぶつけられた衝撃で動けない。

そして、衝撃によって砂が舞い上がっている今がチャンスだと思った。


俺は、スキルを発動させ、彼女の首に巻かれているチョーカーを剣で破壊した。

俺が鑑定したとき、彼女の首に巻かれているチョーカーに奴隷効果が付与されていた。


俺は、『スキル:契約破壊』


を使い、『契約』である奴隷効果を消し去ったのだ。

チョーカーは地面に落ちる。


獣人奴隷の女は動けるようになり、

壁から抜け出す。彼女は首周りを触り始めた。


「な・・・・い・・・・。」

奴隷だった彼女の目から涙がポロポロこぼれる。


「ない・・・・私は・・・・。」

彼女の瞳に色が戻る。澄んだ瞳は綺麗だった。


俺は、小さく彼女につぶやく。

「お前は、自由だ。行け。」


獣人奴隷だった彼女は頷いて、フィールドからでていく。

舞い上がっていた砂は収まり、俺の姿が現れる。

壁には大きなへこみと俺の剣が突き立てられている。

観客たちは思っただろう。砂の舞い上がった中で『激戦が繰り広げられていた』と。

俺は、嘘をついた。


「・・・ああ~。逃げられた。」

俺の態度に監督役は宣言する。


「棄権と見做し、勝者!『レイダス・オルドレイ』!」

観客が歓喜する中で、1人の男が観客席を立つ。


「俺の奴隷が!?待ちやがれえええ!」

獣人奴隷だった彼女を追いかけて福与かな男は消えていった。

俺は、壁から剣を抜き、鞘に納める。


俺はフィールドの入り口で待つガルムを迎えに行った。

「ガルム行くぞ。」

ガルムは俺の肩に乗る。

嬉しそうにガルムは尻尾を振っていた。


俺とガルムはそのまま冒険者ギルドに向かうのだった。


―――――『冒険者ギルド』―――――


俺は、冒険者ギルドの扉を開けた――――

途端、冒険者たちに詰め寄られた。


「サインください!」

『は?サイン??』


俺は、動揺していた。

そこへ受付嬢がやってくる。


「レイダスさんのサインが欲しいって聞かなくって・・・。

『大決闘演武大会』が終わるまで待ってたみたいなんです。」

と説明する。


冒険者たちの目を見ると、キラキラと憧れの人を見る目をしていた。

『俺は、尊敬されるような人間じゃないぞ。』


俺は、お断りする。

「断る。俺は、尊敬されるような人間じゃない。

俺以上に強い奴はいくらでもいるだろう。」


「レイダスさんのサインが欲しいんです。

俺たちの憧れなんです!お願いします!」

と冒険者たちは引かない。


『なんで俺なんだよ!!』

俺は、心の中で項垂れる。

俺は、その場しのぎである提案をする。


「そこまで言うのなら、俺から試練を与える。

出来た冒険者だけにサインしてやる。」


冒険者たちは「おおおお!」と歓喜する。


俺は、冒険者たちを連れて、外に出る。

「ルールはシンプル。俺は攻撃をしない。全員でいい。

1時間以内に俺から一本取れたら勝ちだ。」


冒険者たちはルールを聞くや否や武器を構える。

『そんなに俺のサインが欲しいのか?』

俺は呆れる。

試験は受付嬢の合図で始まる。


「開始!」


冒険者たちは一斉に俺に飛び掛かる。

俺は、冒険者たちの間を抜ける。

1人が反転して剣を振るうが上体をそらして回避する。

そして――――


1時間後――――――


「やめ!」

受付嬢の合図で俺の試験は終了する。

冒険者たちの攻撃は俺にかすりさえしなかった。


「うそ・・・だろ・・。」

「あり・・・えねーーー。」

冒険者たちはスタミナ切れで倒れている。


「出直してこい。」

俺は、冒険者たちにそう言って、冒険者ギルドの中に戻る。

スタミナ切れの冒険者たちは、悔しさを噛みしめていたのだった。


俺は、受付嬢に尋ねる。

「例の子供は?」


「はい。今は元気に回復しました。

ギルドマスターの部屋にいると思いますよ。」

俺は、頷いてギルドマスターの部屋に向かう。


扉を開けると面白い光景が広がっていたのだった。


――――――『ギルドマスターの部屋』――――――


「いだだだだだだだ!?」

リーゼルがソファで眠っている子供に髪の毛を引っ張られている。

『我慢だ俺・・・・笑っちゃだめだ・・・・。』

俺の体はプルプルと震える。


「ぶはっ!はははは!」

俺は耐えられず笑った。


「レイダス!!笑ってねえで助けろやーー!!」

リーゼルは必死だった。


「わかった・・・。今たすけ・・ぶふっ!」

俺は、笑いをこらえて、リーゼルを子供の手から救出した。


この世界で大声をだして笑ったのは初めてかもしれない。

俺は子供に少しだけ感謝する。


「ふう~。ひどい目に合ったぜ。」

リーゼルは引っ張られていた髪を整えている。


「なんであんな状況になっていたんだ?」

『子供に髪を引っ張られるなんて意地悪でもしたんじゃないのか?』

俺はジト目でリーゼルを見る。


「何もしてねーよ!そんな目で俺を見るな!」

と言われたので、ジト目をやめる。


「寝顔を見ていたら、いきなり掴まれたんだ。

『お父さん、お母さん行かないで』ってな・・・。」

リーゼルはうつむいた。


俺がトトスに行ったとき、生き残りはこの子供1人だけだった。

不死狼アンデットウルフに殺された村人たちの中に両親がいたに違いない。


「で?どうするんだ?」

俺はリーゼルに尋ねる。

冒険者ギルドでずっと面倒を見るわけにはいかないだろう。


「・・・・・・・。」

リーゼルは黙っている。

悩んでいるようだ。


「リーゼル。俺から提案がある。」

俺は腕を組む。


「本当か!?」

リーゼルは驚く。


「ああ。でも、タダじゃない。子供には働いてもらう。」

俺は、リーゼルに説明する。


「俺の知り合いで、店を経営している奴がいてな。人手が足りないらしい。

経営者も身近な人間を失っている。

子供の面倒ぐらい見てくれるだろう。」

俺の説明にリーゼルは頷く。


「それでも、餓鬼が助かるならいいじゃねーか・・・。」

リーゼルは子供の頭を優しく撫でる。

ギルドマスターだからか、リーゼルは子供に優しかった。


「そうと決まれば、経営者に連絡だな。

場所と経営者の名前は教える。後は任せていいか?」

俺の言葉にリーゼルは「おうよ!」と返事をする。


「店名は『ワルプール』、経営者は『リリィ・マクラード』

解体場近くで店を経営している。」

リーゼルは頷き、メモを取る。


「それじゃあ。俺は行く。」

俺は、ギルドマスターの部屋をあとにし、酒場で酒を堪能した。

『酒うめ~。』


俺は、酒を堪能したのち『夢見の森』へ戻ろうとするが、

冒険者ギルドを出ると、知った人物が大手を振って駆け寄ってきた。

『カイル・・・?』


――――俺の『大決闘演武大会』2日目はまだ終わらない。――――


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