『大決闘演武大会』2日目―男ver―アドラスの戦い
男が、観客席に行くとアドラスが試合をしていた。
相手の3人は全員、遠距離攻撃職だった。
「あいつどうする気だ?」
男は観客席からアドラスの戦いを観戦する。
アドラスは、不利な状況をどう覆すのか!
『夢見の森 ログハウス』
俺は、依頼を終えた『次の日の早朝』、ログハウス内であることを実行中だ。
『武器製作だ!』
「俺はこれから武器を製作する!」
何故かすごくテンションが上がる。
『武器づくりって楽しいじゃん! 強くなった気がするじゃん!』
俺はここでしょげる。
「俺・・・既に強いんだった。」
ガルムはベットの上で伏せている。
俺のテンションの上がり下がりに首を傾げる。
『ガルムに恥ずかしい所見られた!』
俺はおもわず、顔を両手で隠す。
『俺だって恥じらいはあるんだ!!』
俺は、一旦落ち着いてガルムに言う。
「ガルムベットの上で待っててくれ。」
ガルムは「ワフゥ!」と返事をした。
俺は、ガルムを待たせて2階の空き部屋に行く。
『この世界で初めての武器製作だから、集中したい。』
俺は、部屋の中央に立ち、自分を中心に鉱石を周りに置く。
そして、スキルを発動させた。
『スキル:武器製作』
今は片手剣の刀身を製作する。
武器の素材を1つにする。『合成』
合成した素材を刀身に作り替える『鍛錬』
『鍛錬』はイメージが大事だ。
イメージがぶれれば、刀身が歪んだ形になってしまう。
合成した素材から効果を引き出す『覚醒』
己の中の魔力を刀身に注ぎ込む。
製作者の魔力の高さで付与成功率が変化する。
俺は順番に工程を進めていく。
『・・・・・。難しいな・・・。』
俺は、集中する。
刀身が形になって、俺の手の中に納まる。
「初めてにしては中々だな。」
俺は、刀身の出来を評価する。
俺がイメージしたのは、『シルバーレイク』のような刀身だ。
少し長くなったが多少は気にしない。
『グラニウム鉱石』を素材にしたのもあり、刀身は『薄緑色』になった。
俺は刀身を鑑定した。
無名/レア度5/攻撃5000↑『耐久値自動回復』付与
『グラニウム鉱石』を素材にしたことで効果も付与された。
『剣名』が無名になっているのは、まだ刀身しかできていないからだ。
これから『柄』と『鞘』を製作する。
俺は、先程と同様に自分を中心に素材を周りに置く。
そして、スキルを発動させる。
『スキル:武器製作』
流れも先程と同じだ。
しかし、『覚醒』の工程は省略する。
『柄』は剣を握るだけ、『鞘』は剣を収めるだけだからだ。
本当に強い武器を製作したいときだけ、レア度の高い素材を使うが
今、俺が求めているのは『耐久値自動回復』だ。
刀身に付与された時点でそれは達成されている。
刀身に柄と鞘が定着され、武器は完成した。
『グラニウム鉱石を使った武器だ。刀身も薄緑だし・・・。よし!』
「エスメラルダ!この剣の名は『片手剣エスメラルダ』だ!」
俺は、剣に名を与え再度鑑定する。
片手剣エスメラルダ/レア度5/攻撃5000↑『耐久値自動回復』付与
こうして俺の新しい武器は完成した。
俺は腰に装備する。
「位置もばっちりだな。」
俺は、1階におりて、畑に行く。
俺の日課だ。畑になっていた小さい実は前より増えている。
俺は、水をあげて、ガルムを呼ぶ。
ガルムは俺の肩に飛び乗った。
ログハウスの戸締りをして、俺は魔法を発動させる。
『魔法/第8番:空間転移』
俺は、その日も王都に向かう。
『大決闘演武大会』2日目が始まる―――――――
――――――『決闘場=会場』―――――――
俺は、決闘場の入り口にやってきた。
今日も中層は賑わいを見せている。
『決闘場はずっと試合を続けてるんだろうな・・・。』
決闘場は、まだ早朝だというのに熱気を放っている。
それだけではない、決闘場周辺は昨日よりも人が集まっていた。
『エルフ種に獣人種もエントリーしてるのか・・・。』
観光客たちに紛れて出場者らしき人物がちらほらいる。
他国から来た実力者たちだろう。
『そんなに最強の称号が欲しいのか?』
俺は、この世界のlvを知れればそれでいい。
しかし、『最強の称号』に興味はない。
『国王の手のひらで踊るのはごめんだしな・・・。』
『最強の称号』を餌に命を玩具にする国王は狂気に満ちている。
俺はそれが気に喰わなかった。
姫様が御者に殺されそうになったのを思い出す。
『国王も姫様を殺そうとするかもな・・・。』
国王は奴隷制度賛成派、奴隷制度反対派の姫様が邪魔なはずだ。
「どうしてるんだろうな。」
姫様を隣国に届けてからその後は知らない。
『冒険者ギルドに依頼して王都に戻ると言ってたが・・・。』
俺は、頭を振った。
『姫様が1人で戦うと決めたんだ。』
俺は、姫様に何も言わない。
今は目の前の『大決闘演武大会』に集中しよう。
俺は観客席に向かい、試合を観戦しに行くのだった。
―――――『観客席』―――――
俺は、国王の席から反対側の席に座った。
『あまり近くにいたくない・・・。』
俺は、フィールドを眺める。
「ん? あれは、アドラスか?」
フィールド内で大剣を振るう男がいた。
赤い鎧に赤い髪、間違いなかった。
相手は『ヒーラー』職、『弓兵』職、『拳銃』職のようだ。
『拳銃』職は遠距離職だ。
拳銃から打ち出された銃弾の速さは
銃弾を放った本人の『速度』によって変化する。
拳銃の『銃弾』は消費アイテム扱いで、短期決戦が求められる。
『弾が尽きれば、魔法職系と同様、じり貧だ・・・。』
利点と言えば、銃弾に様々な効果が付与できる事だろう。
『拳銃』職には、銃弾に、スキルで一時的な効果付与ができる。
発動にはデメリットとして『魔力量』を消費するが、痛手にはならない。
lv100に到達していれば、相手に状態異常を大量につけることから
『FREE』プレイヤーからは『デバフキング』と言われたぐらいだ。
『俺には状態異常無効があるけどな。』
アドラスの戦闘を俺は観戦する。
情報収集は相手を攻略するためには必要だ。
俺の場合は、殺さずに攻略する方法を模索しなければならない。
アドラスは、相手に接近しようと試みるが、3人の攻撃を防ぐのでやっとだ。
懐に飛び込まなければ、アドラスに勝機はないだろう。
俺は、アドラスの動きを観察する。
『ん?鎧の隙間から・・・。』
アドラスは『弓兵』職の相手に何かを投げつけた。
『ナイフか。』
『弓兵』職の肩に深々とナイフが突き刺さっている。
アドラスは『弓兵』職に向かって走った。
『ヒーラー』職と『拳銃』職がアドラスに攻撃を仕掛けるが
アドラスの速度が上をいっているようだ。
攻撃は全て外れる。
アドラスは『弓兵』職の場所に到達。
アドラスは片手でナイフを押し込んだ。
ナイフは『弓兵』職の肩を貫通。
アドラスは、ナイフを再使用する為、反対側から抜き取る。
『1人脱落だな・・・。』
相手の『弓兵』職の肩はもう使い物にならない。
その場で倒れた。痛みで苦しんでいるのが分かる。
アドラスは再びナイフを投げる。
『拳銃』職の肩に深々と刺さる。
『ナイフの命中率が高いな・・・。』
アドラスと当たる時に鑑定することにしよう。
アドラスは『拳銃』職に向かわず、『ヒーラー』職に向かう。
『その判断は誤りだな。』
俺だったら、『拳銃』職に攻撃を仕掛ける。
『ヒーラー』職の攻撃魔法は回避しやすいからだ。
アドラスは大剣を振るう。
『ヒーラー』職はアドラスの大剣に威圧されて動けない。
アドラスの大剣は『ヒーラー』職を斬る。
『ヒーラー』職がフィールドの壁側に立っていたのもあり、
大剣の衝撃で壁に打ち付けられる。
『これで、残り1人だな・・・。』
『ヒーラー』職は壁に打ち付けられた衝撃とアドラスの斬撃に意識を手放す。
残ったのはアドラスと『拳銃』職の2人のみだ。
ここでアドラスは『拳銃』職の攻撃を受ける。
足に銃弾が命中した。
アドラスはバランスを崩す。
「動きを封じられたな。」
足に怪我を負うという事は、速度が失われるという事だ。
アドラスは、銃弾の雨を大剣を盾に受ける。
アドラスは、痛みを堪えて前に出た。
銃弾が胸、腕、腰、と当たるがアドラスは足を止めない。
地を蹴るたびに撃たれた足から血が噴き出す。しかし、前に出る。
『拳銃』職の銃弾の雨が止む。
『100発だな。』
『拳銃』職の銃弾が底をついたのだ。
アドラスの迫ってくる勢いに気圧されたのもあるが、
『拳銃』職は無駄打ちしすぎた。
アドラスの大剣がゆっくりと振り上げられ、『拳銃』職に向かって振り下ろされる。
『拳銃』職の相手も大剣の衝撃に吹き飛ばされる。
アドラスは、荒い息を上げながら、右腕を掲げる。
勝利宣言だ――――――
「勝者!『アドラス・ネーガウス』!」
歓声が上がる。
アドラスは一瞬こちらを見た。
俺が観戦していたのを途中から気付いていたようだ。
『ヒーラー』職に向かって行ったあたりだろう。
アドラスの試合が終わると同時に
受付嬢から貰ったアイテムが鳴る。
「次は俺か・・・。」
「ガルム、フィールド内に入らないと約束できるか?」
とガルムに尋ねると
尻尾を振って肯定した。
俺は、ガルムをフィールドの入り口に待たせて、
フィールド内に入っていく。
俺は、戦闘狂じゃない。国王の手のひらで踊るつもりもない。
ただ、純粋に俺の戦いをしよう――――――。
空がまぶしい。
今日も快晴だ。
俺は、敵を見据える。
――――俺の2試合目がいよいよ始まる。―――――




