『大決闘演武大会』1日目終了 ~トーリカの森へ~
『大決闘演武大会』1日目が終わる。
男は余った時間を有効活用する。採取や採掘を優先に、
依頼を受けて『トーリカの森』へ
依頼内容は、不死狼の討伐だった。
――――『観客席』―――――
俺は観客席から試合を眺めていた。
『ガランの時は大声出しちまった・・・。』
俺が「止まれええ!」と叫んでなかったら―――
ガランがあの時止まらなければ――――
ガランは相手にやられていただろう。
ガランは苦戦を強いられたが結果的に勝利を収めた。
『担架で運ばれていったが、大丈夫か?』
ガランは『魔導士』職の攻撃魔法で『やけど状態』になっていた。
本人も戦闘が長引かなくて幸いだったと安堵していることだろう。
『それにしても・・・。』
ガランと戦っていた女・・・あれは間違いない、『侍』職だ。
細長い剣あれは『長刀』だ。
スキルは使わなかったというより、使えなかったの方が正しいかもな。
『侍』職はスキルを覚えるのが遅い。
lvが高くても、スキルを覚えていない場合がある。
今回はそうだったというだけのことだ。
『スキル:居合斬り』は結構厄介なスキルだ。
間合いに入った瞬間ズバッ!と斬られる。
ガランを攻めていた2人が女を攻撃しなかったのはそれを警戒したのだろう。
『ガランは『侍』職を知らないようだった・・・。』
ガランは真正面から女に突っ込んで行った。
あれは、危険な行為だ。
槍もリーチが長いが長刀の方がわずかに勝っている。
『今度からは本人も学習するだろう。』
俺は、観客席から立ち上がる。
「もう行かれるのですか?」
ゲイルが聞いてくる。
『大決闘演武大会』の開催期間は1週間。
それだけ参加者が多いという事だ。
俺の今日の試合は終わりと判断した結果だ。
「ああ。屋台と店をまわってくる。
今日の俺の試合は恐らく終わりだからな。」
「ああ~。レイダスさんずるい!イリヤも行きたい!」
イリヤも席から立ち上がってついて来ようとする。
「お前はカイルの付き添いだろ?
一緒にいてやれ。」
イリヤは「う~。」と言いながら、席に座る。
余程行きたいらしい。
「観戦が終わったら一緒に行こう!」
とカイルが気を利かせてくれた。
イリヤの顔が明るくなる。
『助かった・・・。』
俺は、ガルムを連れて、決闘場から離れるのだった。
―――――『屋台、店付近』――――――
俺は、屋台を見て回った。
他国の近隣でしか取れないアイテムが置かれている屋台がある。
『こんなのもあるのか・・・。』
俺は、『FREE』について詳しい。
アイテムが取れる場所も大体熟知している。
しかし、この世界に転生してからまだ、
『メイサの森』と王都『グラントニア』と隣国『リゼンブル』しか行っていない。
いつかは行きたいと思っているが、見ていると欲しくなってしまう。
『これが・・・『物欲』というやつか。』
前世でもこれが欲しいとか勿論あった。
けれど、買えなかった。
『チョコバナナとリンゴ飴と同じ理屈だ。』
俺は、屋台に置かれている 鉱石×3と魔物の皮×3 を購入した。
「まいどー!」
俺は、この世界で手に入れた素材で『武器製作』を検討中である。
武器には『耐久値がある。』
『武器が壊れる前』なら手入れや魔法で耐久値を回復させることは可能だ。
しかし、相手が『スキル:武器破壊』を持っている場合に備えなければならない。
『スキル:武器破壊』
発動者が相手に攻撃をした際、相手は攻撃をガードする。
ガードした武器や盾から耐久値を奪うのだ。
耐久値の下がった武器で戦い続ければ、いずれ武器は使い物にならなくなる。
俺の所持する武器はレア度が高い武器ばかりだ。
『なるべく壊したくない!』というのが本音である。
どんな場面でも対応できるようにアイテムは多く所持して置いた方がいい。
俺は、購入したアイテムをカバンにしまう。
屋台を見て回った俺は決闘場の受付に向かう。
確認したいことがあるからだ。
―――――『決闘場 受付カウンター』―――――
「要件は何でしょう?」
受付嬢が席に座って尋ねる。
「『大決闘演武大会』は1週間続く。」
受付嬢が「はい。」と返事をする。
「しかし、アラームは試合時間直前にならないと音を発さない。
予定試合時間を示した表とか・・・ないか?」
受付嬢は「残念ながら」と首を振る。
「ですが、『大決闘演武大会』は参加人数が多い為
最初の1日目から5日間の間は、1人1試合と考えてくだされば大丈夫です。
今日は試合をされたのでしょう?
でしたら、今日の試合は終了と思ってくださって結構です。」
受付嬢の言葉に「そうか。」と俺は頷いた。
俺は、受付嬢に礼を言って冒険者ギルドに向かった。
――――『冒険者ギルド』―――――
俺は、冒険者ギルドの扉を開けた。
酒場には大勢人が集まっている。
深夜でもないのに酒を飲み交わしている。
俺は、受付に直行した。
「依頼を受けたいんだが・・・。」
今日の受付担当はクレアだった。
「どんなご依頼を?」
「『トーリカの森』に行きたい。討伐でも採取でもいい。」
受付嬢は「かしこまりました。」と言って、
カウンターに依頼書を並べる。
俺が依頼書を眺めていると不意に質問された。
「『大決闘演武大会』の方はよろしいのですか?」
「ああ。今日の試合は終わりなんだ。暇な時間を持て余したくない。
できる事はやっておきたい。」
と俺は言った。
『トーリカの森』でしか手に入らない素材がある。
『いつか行ってみたい』と思っていた俺は、早速行動に移したのだ。
「じゃあこの依頼を受ける。」
俺が受けると言った依頼は『不死狼の討伐』だ。
Sランク冒険者が討伐を終えたのに村は未だに被害を受けているという。
『不死狼は弱点の首を斬り落とさないと死なない。』
Sランク冒険者が確認を怠ったのかもしれない。
「畏まりました。では、行ってらっしゃいませ。」
受付嬢は無表情な顔で俺を見送る。
俺は、後ろを向きながら、片手を振る。
そして、冒険者ギルドをあとにした。
『トーリカの森』は王都グラントニアから北に位置している森である。
『メイサの森』とは規模が違い、『メイサの森』の2倍くらいだ。
俺は、王都グラントニアの北門を抜けて、『トーリカの森』に向かう。
――――『トーリカの森』――――
『メイサの森』は大木だらけで太陽の光があまり差し込んでこなかったが、
『トーリカの森』の木はそこまで大きくないようだ。
俺は、アイテムを採取しながら奥へと進んで行く。
『不死狼はガルムにはまだ荷が重い・・・。』
俺は、ガルムに「戦闘はしなくていい。」と促した。
「ワフゥ~。」
ガルムは返事をした。
アイテムの採取をしながら奥に進むと
目的のアイテムを発見する。
「あったぞ!!」
『グラニウム鉱石』
『グラニウム鉱石』はトーリカの森でしか取れない鉱石だ。
緑色の鉱石で『武器製作』に用いると『耐久値自動回復』が付与できる。
今の鍛冶師の腕では付与できないが、俺が製作すれば造作もないのだ。
俺は、質の高い『グラニウム鉱石』を手に入れた。
魔法のカバンに鉱石をしまい、依頼のターゲットを探す。
「不死狼・・・。」
討伐対象の不死狼の数は3体。
不死狼がSランク冒険者から逃れられたのは、
『再生速度』を遅らせたと考えられる。
探す事1時間――――――
「いない・・・。」
俺は、『探知』系のスキルと魔法による『範囲拡張』の両方を発動させて探しているが、
全く見つからなかった。
『森にいないのか? 縄張りを移したか?』
俺は考えた。
不死狼は縄張りを移す習性がある。
『トーリカの森』を去った可能性があるのだ。
「村からは依頼が出ている・・・。」
依頼が出されているという事は、
『トーリカの森』または、村の近くの別の場所にいる証拠だ。
「村の近く・・・。」
俺はガルムと急いで村に向かった。
『嫌な予感がする・・・。』
俺の予感はよく当たる。
ガルムはがっしりと俺の肩にしがみつく。
俺は少し速度を出していた。
「ガルム!もう少し辛抱してくれ!」
「ワフううウウウウウゥ~ーーー!」
ガルムの口元が風で揺れる。
俺が走る事15分――――――
――――村 トトス―――――
俺とガルムは村に到着した。
俺は、魔物の反応を感じた。『3体』
俺は、村に入り、村人の安否を確認する。
「・・・・・・・・・。」
惨状だった。
牙で食いちぎられ、爪で切り裂かれ、
村人たちは死に絶えていた。
俺が一歩足を踏み出すと水の音がした。
足元を見れば、鮮血の池がある。
死体の周囲には血の池ができていた。
村はついさっきまで魔物に襲われていたのだ。
『トーリカの森』の近くに村があるとはいえ、俺のいた位置からは大分離れていた。
スキルと魔法を同時発動していた俺にも脳の限界がある。
村まで範囲が届かなかったのだ。
不意に俺のズボンの裾が引っ張られる。
下を見ると小さな子供だった。
背中には魔物がつけたと思われる深い傷跡があった。
子供は俺を必死に見つめながら言う。
「た・・すけて・・・たす・・けてー・・。」
俺は、村に来るまで焦っていたはずなのに、惨状を目にしてから冷静だった。
『なんでだろう・・・。』
他人だからか・・・。
魔物に襲われたのは仕方がないからなのか・・・。
俺は、子供に回復のポーションをかける。
傷は塞がった。
しかし、子供の精神は疲弊している。
子供は回復しても目がうつろだった。
そこへ魔物が接近してくる。
『不死狼!』
俺は、剣を抜く。
「ガルム!子供を守れ!」
ガルムは子供の前に出て、近づいてくる魔物を威嚇する。
俺は、接近してくる不死狼を討伐すべく、走り出す。
『加減をしないと村ごと吹っ飛ばしてしまう。』
俺は、不死狼を視認した。
俺は不死狼の首を斬り落とす。
上から放たれた斬撃は、地面の奥深くまで到達する。
俺の後ろから不死狼が襲い掛かってくる。
不死狼の口元は鮮血の赤に染め上げられている。
俺は、それを横に回避し、首を斬り落とす。
不死狼の首がボトッ!と落ちる音と共に
『トーリカの森』の木々が何本も倒れる。
そして、俺は、ガルムと子供の元へ向かう。
もう1匹がそっちに向かっているからだ。
俺は、子供とガルムを視認できる位置から
タイミングを計り、斬撃を飛ばす。
不死狼がガルムと子供に襲い掛かろうとした瞬間―――
首が斬り落とされる。
斬撃は強風となって村を襲う。
ガルムは強風に耐える。
『子供は無事か!?』
俺は、子供にかけよる。どうやら無事なようだ。
ガルムがパタパタと尻尾を振る。
「ワフゥ!」俺は、ガルムの頭を撫でた。
ガルムは俺の肩に上り、俺は子供を抱き上げた。
子供の目は虚ろなままだ。
不死狼の死体は素材を残し消えていく。
不死狼の討伐は
不死狼の『死体が消滅するまで』だ。
不死狼を討伐したSランク冒険者はそれを知らなかった。
Sランク冒険者は首を斬り落としたことで、討伐したと勘違いしたのだ。
『回復速度』を遅らせるだけの知能が不死狼にある。
俺は、子供を抱えて冒険者ギルドにむかう。
村の生き残りは子供だけ、放置していけば、血の匂いで他の魔物が寄ってくる。
子供の命はないに等しい。
俺は、この時気づいていなかった。
自分の体が魔物の返り血だらけであることを――――――
――――『冒険者ギルド』―――――
俺は、北門で多少返り血をふき取ってから王都に入った。
北門の黒い番犬なんてドン引きしていた。
『そんなに血だらけだったか?』
冒険者ギルドにたどり着き、受付嬢たちが駆け寄ってくる。
「どうされたんですか!?」
「依頼先でなにか!?」
俺が子供を抱えていたのと血が拭えきれていない両方を見て動揺しているようだ。
1人の受付嬢を除いて・・・・。
「子供は冒険者ギルドが身柄をお預かりいたします。
こちらは、タオルです。血生臭いのでお拭きください。」
俺は、受付嬢に子供を預け、タオルを受け取る。
俺は、血をふき取りながら、受付のカウンターで依頼を報告する。
「不死狼は討伐した。
しかし、村の人間は不死狼に皆殺し。
生き残りはあの子供だけだ。」
と俺は報告した。
子供を連れて行った受付嬢に代わり、
他の受付嬢が対応する。
「そうですか・・・。分かりました。
報酬についてはギルドマスターと相談してみたいと思います。」
俺は、受付嬢の言葉に首を横に振った。
「いや、ギルドマスターとは直接俺が話をする。2階にいるか?」
受付嬢は黙ってうなずいた。
俺は、2階のギルドマスターの部屋に向かった。
――――『ギルドマスターの部屋』―――――
部屋に入ると、ソファに子供が寝かせられていた。
受付嬢が優しく頭を撫でている。
リーゼルが窓の外を眺めたまま動かない。
「話がある。」
俺がリーゼルに言うと、リーゼルは振り返った。
「ああ。話は受付嬢から聞いた。
酷いありさまだった・・・てな。」
リーゼルはデスクの椅子に座り込んで深いため息を吐く。
祭りに浮かれて、テンションが上がっていただろうに・・・。
こんな惨事が起こっているんだ。
ギルドマスターとして、落ち込むだろう。
「話を聞いているのなら早い。報酬の件なんだが。」
俺の言葉に受付嬢とリーゼルがピクッと反応する。
「報酬は既に冒険者ギルドが依頼主から預かってるはずだ。
どうなんだ?」
「ああ。預かってるぜ。」
とリーゼルがデスクの上に置く。
大きい袋だった。おそらく大金だろう。
「お前はこれが欲しいのか レイダス?」
リーゼルは視線だけ俺にむける。
俺は首を横に振った。
「ああ。欲しい。」
リーゼルは黙り込んだ。
依頼主が消えた今、目の前の報酬は行き場を失っている。
依頼を達成した俺が本来受け取るべきだ。
でも、そうした場合生き残った子供は飢え死にだ。
「幻滅したぞ。レイダス。」
リーゼルは報酬の入った袋を俺に投げつける。
「そうか。」
といいながら、俺は受付嬢に優しく投げた。
受付嬢はソファから立ち上がって受け取る。
「何の真似だ?」
リーゼルは俺の意外な行動に不思議がった。
「受け取った報酬はどう使おうが俺の自由だ。
だから、そこで寝ている子供にくれてやった。」
俺は、生き残った子供を指さす。
受付嬢は呆然としていたが、
俺の態度にリーゼルは笑みをこぼした。
「素直じゃねーな。お前は・・・。
前言撤回だ!すまなかった・・・。」
リーゼルは謝る。
「気にするな。回りくどかった俺が悪い。」
俺は、リーゼルにそう言った。
「今日は、休む。体中が血生臭くてたまらん。」
俺は、ギルドマスターの部屋から出ていった。
俺が去った後、きっと二人は笑顔を浮かべている事だろう。
『明日も『大決闘演武大会』か・・・・。』
宿屋は観光客等で一杯だろう。
俺は、『夢見の森』に一時帰宅するのだった。




