『大決闘演武大会』初戦―ガランver―
ガランの初戦が始まる。
男の試合を観戦していたガランは自分も負けじと奮闘する。
しかし、剣士と魔導士2人がかりで攻められ、女の細長い剣に翻弄されるガラン。
ガランはデスマッチで勝利できるのだろうか!?
―――――『観客席』―――――
「ハハハハハッ! 流石レイダスだ!」
俺は、レイダスの試合を見ていた。
実技試験の時からあいつが強いのは知っていた。
しかし、あいつは俺の予想を超えていた。
『太刀筋が全く見えなかったんだ・・・。』
レイダスは全く本気を出していない。
レイダスは相手の攻撃を完全に見切っていた。
俺は、腕を斬り飛ばしたレイダスの剣が全く見えていない。
最後に残った『鎌使い』も相当強いはずなのに、それを瞬殺した。
はっきり言って『異常』だ。
その強さに俺は恐怖を抱くと同時に憧れる。
俺もあいつぐらいに強くなりたい!
レイダスの試合が終わってから1時間後――――
「お? 受付嬢から貰ったアイテムが鳴ってるな。」
『次は俺の番か・・・。』
俺は、武器の槍を持ってフィールド内に向かう。
『緊張するな・・・。』
俺は自分の性格を理解しているつもりだ。
元気で、前向き。それが俺だ!
俺は、フィールドに向かう途中で、両手で顔を叩く。
『気合いだ!気合い!』
俺は、緊張を取って、フィールドに向かって走り出す。
『レイダスが勝ったんだ!俺も勝ちてえ!』
――――『フィールド内』―――――
『俺の相手は左が『剣士』、真ん中が『魔導士』、右が・・・。』
俺が知らない武器を持っていた。
剣だけど――――長くて細い。
俺は右の相手に興味を持った。
女で、和服を着ている。この国で和服は珍しい。
他国の人間かもしれない。
『この試合が終わったら、聞いてみよう!』
俺は、槍を構える。
他の3人も臨戦態勢に入る。
「開始!」
監督役の合図で試合が始まる。
魔導士が魔法を放つ
『魔法/第1番:ファイアボール』!
魔法は俺に飛んでくる。
「うらあ!」
縦に魔法を斬り裂いた。
俺が、魔法に気が取られていると、剣士が横から片手剣を振るう。
「ウっ!」
俺は、左二の腕を斬られたが浅い。
俺は右腕で槍を突き出す。
「うらああ!」
突き出した槍は剣士の右肩に突き刺さる。
「ぐおう!」
剣士は、一旦態勢を立て直すべく、下がる。
『決闘とは違う。視野を広く保たねーと・・。これがデスマッチか。』
俺は、1対1には自信がある。
だけど、多人数に攻めよられるのは好きじゃねー。
『魔法/第1番:ファイアボール』!
魔導士から魔法が飛んでくる。
俺は、今度は回避した。
『さっきみたいに襲われるからな!』
すると、俺はあることに気付く。
『右の女・・・動いてねー?』
細くて長い剣を持つ女だ。開始してから動いてないのだ。
『なんで動かない?それに、この2人もだ。なんで女を攻撃しない?』
俺を攻め続ける魔導士と剣士。
正直うっとうしくて仕方ない。
俺は、右の女に攻撃を仕掛けた。
「くらええええ!」
俺は、女に向かって槍を突き出すが――――――
「止まれええ!!」
観客席から聞こえた大声に止まる。
『誰の声だ?レイダス??』
気が付けば女が目の前まで迫っていた。
『うっ!?』
悪寒がする。
俺は、上体をそらした。
上体をそらしたことで反対側が見える。
剣士が女の細い剣に斬りつけられている。
俺を襲おうとしてたのか・・・剣士は俺の背後にいた。
上体をそらした俺は、地に両手を付けて跳躍すると同時に
女の剣を靴底で弾く。
『俺の靴底は特注なんだぜ!』
剣士から女の細い剣は抜けるが、俺は剣士を逃がすつもりはない。
『散々俺ばっかり攻めやがって・・・。』
「くらえ!!」
俺は、スキルを発動させる。
『スキル:投擲槍』
俺の槍は剣士の胸に突き刺さる。
「これで1人目だ!」
というのも束の間横から魔法が飛んでくる。
『魔法/第1番:ファイアボール』
「うおあ!」
魔法が直撃した。
右半身が暑い・・・。
『やけど状態か・・・くそ!』
俺は、痛みを堪えて剣士から槍を引き抜く。
『魔法攻撃に備えねーと!』
と思っていたら魔導士から悲鳴が上がる。
「あぐああああ!!」
女の剣が魔導士の武器『魔導書』を持つ手を斬りつけていた。
女の攻撃は続く。
腕、首、胴、足と斬撃が魔導士を切り刻んでいく。
「うああ!ぐうおああああ!」
魔導士は仰向けに倒れる。
指を失い、片足は皮一枚でつながっている状態だ。
『俺が言えた義理じゃねーけどよ・・。』
女の笑みが俺にむけられる。
悪寒が背筋を走る。
はたから見たら、『良い笑顔』と思うだろう。
だけど、俺はその笑みが歪んで見える。
『攻め方がわからない!』
俺は、女と一定距離を保ちながら息を整える。
右半身は、熱さと痛みで感覚がマヒしている。
右腕が槍に触れている感触がない。
俺は、内心焦っている。けれど、相手は待ってくれない。
女が動いた。
『速い!?』
細長い剣を俺は、槍で受け止める。
細い剣とは思えない衝撃が手に伝わってくる。
「くっ!」
俺は、痛みと衝撃に声を漏らす。
女は苦しむ俺を見て笑みを浮かべる。
女は細長い剣でついてきたが、俺は、斜め後ろに回避する。
女の攻めは止まらない。
「なら!!これならどうだ!!」
俺は、足で砂をかけた。
女は目に砂が入り、俺が見えていない。
『この女は強い!』
俺は、チャンスと思って踏み込まず、敢えて剣を持つ肩に槍を突きたてる。
「ああ!」
女は声を上げる。
俺は槍を抜く。
『女はひるんでいる。ならば!』
俺は、槍で女の足を地面と一緒にくし刺しにした。
「あああああああああ!」
俺は、武器を所持していない。
だけど、相手の武器を素手で落とさせるぐらい造作もない!
俺は、拳で女の剣を落とさせる。
『女の腕力が攻撃力が高いと感じたのは、俺の体が弱ってるからだ。』
女は、おそらく速度が速いだけだ。
魔導士を切り刻んでいた女の剣を見て確信した。
攻撃力が高ければ、1,2撃で終わるはずだ。
俺は、女の顔を殴る。
「ぐうう・・・・あ!」
『俺は女だからって容赦しない!!』
俺は、女を殴る。
腹を殴れば、顔が出る。顔が殴れば、腹が出る。
女の意識が朦朧としている間に、槍を引き抜く。
「これで終わりだああ!!」
俺は、槍に力を籠める。
槍の刃は女の肩に食い込み、そのまま斜めに斬り込む。
最後に槍を胸に押し込み、貫通させた。
「げぼあああッ・・・。」
女は動かなくなる。
「はあ・・・はあ・・・。」
『終わってくれ・・・俺はこれ以上動けねえ・・・。』
監督役が宣言する。
「勝者!ガラン・レーガン!」
観客席が湧いた。
『俺勝ったのか?』
回復要員が出てきて治療を始めた。
俺も治療される。
「動かないでくださいね?」
回復要員に俺は言った。
「動きたくても・・・動けねーよ・・。」
勝てたけど、ギリギリの勝利だった。
あの時の声がなかったら負けてたかもな・・・。
俺は思い出す。
『止まれええ!!』
あれは、間違いなくレイダスの声だった。
あそこで止まってなかったら、俺は女の細長い剣で貫かれていた。
「あいつに感謝しとかねーとな・・・。」
俺は、回復要員の治療を受けながら勝利の余韻に浸る。
疲れて眠った俺は、担架で運ばれた。
目を覚ましたのは試合から2時間後だった。
カイル「ど、どうしたんですか急に大声なんて!?」
ゲイル「オルドレイ殿!ビックリしたじゃないですか!」
イリヤ「耳が~・・・。」
男「すまん。」
男『勝てて良かったな。ガラン・・・。』




