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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~隣国『リゼンブル』編~
41/218

男は、追いかけまわされる。

男は、マイホームで頭痛に襲われ倒れ込む。

頭痛で苦しむ中『懐かしい声』を聴いた男だが、起き上がった頃には忘れていた。

起き上がった男は、ガルムと冒険者ギルドに向かう。

扉を開けると冒険者たちの視線が男をとらえていた。

獲物を狩る獣の目をしている。男と冒険者たちの追いかけっこが始まるのだった。

『夢見の森 ログハウス』


俺は、ガルムとマイホームに帰ってきていた。

これまで魔法のカバンに溜め込んでいたアイテムと大金を倉庫に保管する為だ。

『これで、新しい料理にチャレンジできる!』


目的はそれだけではない。

俺自身を鑑定することだ。

『驚愕の余り大声出しそうなんだよ・・・。』

俺は、これまで数々の戦闘を繰り広げてきた。

lvとステータスが上がっているはずだ・・・。間違いない。

俺は、今日まで自分の力が上がっているのを実感していた。


『絶対驚かないからな!』

と覚悟を決める。「――――鑑定!――――」


lv/425 名前/レイダス・オルドレイ


体力/2650000

防御/1350000

攻撃/1900000

速度/1400000

持久力/3600000

魔力/1300000

魔力量/2000000

魔法適正/SSS

剣術適正/―測定不可―


「・・・・・・。もう1回・・・。」


lv/425 名前/レイダス・オルドレイ


体力/2650000

防御/1350000

攻撃/1900000

速度/1400000

持久力/3600000

魔力/1300000

魔力量/2000000

魔法適正/SSS

剣術適正/―測定不可―


「ぬおあああああああ!!」

俺の覚悟は簡単に崩れ去った。


剣術適正が測定不可能になっている。『カンスト』したという事だろう。

俺は、相手の太刀筋を一度見ただけで、強さが分かる。

剣術適正がカンストした影響だろう。


ガルムは鑑定しなくても以前と変わっていない。

『メイサの森』以降、ガルムは戦闘に参加することがなかったからだ。

それでもガルムの戦闘能力の高さは、新人冒険者に引けを取らない。

lv上げは、もう少し先に延ばしていいだろう。


俺は、2階の魔法倉庫の部屋へ向かう。

俺の力を少しでも抑える為、攻撃力の低い丈夫な片手剣に変えるのだ。


片手剣シルバーレイク/レア度8/攻撃6500↑

を魔法のカバンにしまい、倉庫から新たな武器を取り出す。


片手剣レイザーエッジ/レア度4/攻撃3000↑『疲弊』付与

を装備する。刀身は赤い。綺麗な真紅だ。



レイザーエッジは攻撃力が低い代わりに、『疲労』効果が付与されている。

レイザーエッジの攻撃を受けた相手は、かすっただけでも、どんどん疲労する。

相手のスタミナと移動速度を奪い、戦闘不能へ追いやる。


『レア度が4にも関わらず、なかなかにエグイ・・・。』

戦闘が早く終わるのであれば、俺はそれでいい。

相手が無理に戦闘を続行しない限り、剣を振るう事はない。


「あとこれとこれを持っていこう。」

俺は、回復ポーションを2本と巻物スクロールを1つ取り出した。

巻物スクロールは消費アイテムの1つだ。

魔力量を消費せず、魔法の発動ができる使い捨てアイテムだ。

ただし、発動される魔法は巻物スクロールに記されているものだ。


『錬成合成』によって生み出すことができる。

素材は、『羊紙』が必要になる。

レア度は高くないが、己の魔法と合成させるため、自分の魔法が弱いと

巻物スクロールの効果も弱くなる。


『今度試してみよう。』

俺は、取り出したアイテムを魔法のカバンにしまう。


俺は、1階におりて、服と装備を綺麗にたたんで、

シャツと短パンでベットにダイブする。

今日は、1日ログハウスで過ごす予定なのだ。

『畑に水やりもしないといけないし・・・。』


俺は、昼間にも関わらず、睡魔に襲われる。

『ベットがふかふかな・・・せいかなー・・・zzz』


―――『夢見の森 ログハウス 早朝』―――


ガガガ・・・ガガ・・・魔法・・・第・・40・・番・・・解放・・習得・・

・開始―――――完了・・・スキ・・ル・・解・・放・・習得・・・開始―――完了・・・


「・・・・・んあ?・・・」

俺は、目を覚ました。

『俺いつの間に寝たっけ・・・?』

ベットから起き上がると朝だった。


ガルムが俺の顔をじっと見ている。

「腹が減ったのか?」

俺は、ガルムの頭を優しく撫で、キッチンに向かう。

ガルムの好きな『スパゲッティ』を作ってあげた。


「ほれ。」

ガルムに皿を差し出す。

嬉しそうに食べる姿に俺は、癒された。


俺は、ガルムを置いて畑に水をやりに行く。

『もう少しで収穫できそうだな。』

畑に植えていた植物に小さな実がいくつかなっていた。


俺は、ログハウス内に戻って、服と防具を装備する。そして、武器を装備した・・・。

時だった―――――――――


「グああ!!・・・グウッ!」

突然激しい頭痛に襲われる。

『なんだ!?この痛みは!?』

頭の中に音声が流れる。


「スキル・・・・習得・・・完了・・・魔法・・・習得完了・・・。

派生・・・検索・・・確・・・認・・完了・・・さらに・・・習得・・します。

派生先・・・拡張・・・完了・・・。終了・・・します。」


俺は、頭痛のあまり倒れ込む。

俺は意識を手放した。

『どこかで・・・聞いたことが・・あるような・・』

懐かしい声だった。


「クウウウウン!! ワフ!!」

俺は、ガルムの声に目を覚ます。

『うう・・・。思い出せん・・・。』

俺は、なんで倒れたのか覚えていなかった。

俺は、立ち上がる。

頭を振ってみたが、頭痛はない。


『疲れていたのか・・・?』

俺は、精神疲労で倒れたと思い深く考えなかった。


俺はのちに後悔と喜びに震える。

それは、まだ先の話だ――――――――――



―――――『冒険者ギルド』―――――


俺は、冒険者ギルドに訪れる。扉を開けたと同時に、

ギルド内の人間の動きが止まった。


『な、なんだ・・・。この空気は・・。』

俺に視線が集まっている。

その視線は、獲物を狙う獣のそれだった。

冒険者たちが一斉に俺に駆け寄ってくる。

その威圧と視線に俺は動揺してうまく動けない。


『なんなんだあああああ!?』


後ずさりするも、扉にぶつかる。

ドアノブをまわさないと扉は開かない。

『に、逃げ場がない!!』


俺は、息をのむ。

『ここが俺の墓場か!・・・不死だけど!!』

俺は、覚悟を決める。

『さあ!来い!』


冒険者たちは、俺から1メートル離れた位置で急停止。

冒険者たちから飛び出す発言は意外なものだった。

「レイダス・オルドレイさんですよね!?」


「あ、ああ。」

名前を尋ねられた俺は、頷く。


「俺たちとパーティ組みませんか!?」

『は?・・・パーティ・・?』

話しかけてくる冒険者を押しのけて、違う冒険者が前に出る。


「抜け駆けはさせねえ! 俺たちのパーティに入ってください!」


「ダメよ!私たちが狙ってたんだから!あんたたちは引っ込んでて!」


「なにおおお!?」

もめだす冒険者に気付かれないよう俺は、こっそりとギルドの扉を開け、外に出た。

『なんなんだよ・・・。』

ホッとしたのもつかの間だった。

扉が勢いよくこじ開けられ、俺は、押しのけられる。

「うお!?」

肩に乗っていたガルムは、地面に着地する。

冒険者ギルド内にいた冒険者が次々と出てくる。


「逃げるなああ!!」


「まて!レイダス・オルドレイ!!」

冒険者たちの群れが俺に向かってくる。

俺は、逃げた。逃げる一択!

俺は、ガルムと店が集まる広場まで逃げた。

『あそこなら人が多いからな!まけるだろう!』

俺は、走る。


俺が走っていると、とある店に視線が行く。

店の店員が手招きしていた。

『あの店は・・・!』


俺は、店内に急いで入る。


俺を追いかけていた冒険者は、俺を見失ったようだ。

「あっちを探せ!遠くに行っていないはずだ!」


「まだこの辺にいるかも・・。探すわよ!」

しかし、周辺にワラワラと群がっている。

『これじゃあ。出られない。』


俺は、助けてくれた店員に礼を言う。

「ありがとう。助かった・・・。久しぶりだな。鍛冶師の腕は上がったか?」

俺を助けてくれた人物は、俺が以前立ち寄った武器屋の店員だった。


「お久しぶりです。まだ、少ししか・・・。しかし、以前よりは出来はいいかと!」

と店員は自信を持って答える。


挨拶を終えると、店員は質問してきた。

「何故追われていたんですか?・・・あれ、冒険者の方たちですよね?」

と店員は指さす。


俺は、立ち上がって腕を組む。

「分からん。俺たちのパーティに入れだの、なんだので追いかけまわされてる。」

そういうと、店員は「ソロなのですか?」と聞いてきた。

俺は、「ああ。」と肯定する。


そこへ店長がやってくる。

「そりゃ。強い奴はパーティに入れたくなるだろうよ!」


俺は、首を傾げた。

「なんで、俺にこだわる必要がある。強い新人冒険者はいくらでもいるだろう?」

『ガランとかフェノールとか・・・。』


「わかってねーな! あんたの噂は中層では有名なんだ!」


「噂?詳しく聞かせてくれないか?」

俺は、店長に話を聞く。


店長によると、黒い番犬ライラを倒し、姉のクレア、ギルドマスターに無傷で勝利。

DからAランクへ昇格したという噂が中層全体に既に広がっているという。

『情報漏洩レベルじゃないか!?』


「つまり、新人は新人でも格が違うんだ。

強い奴が一人でもパーティに入れば、名が上がるしな。」

俺は、思いっきり項垂れる。

俺は、そのまま座り込んだ。


「どうすれば・・・。」

俺は、頭を抱えて悩む。

そんな俺を店員が心配する。


「いっそみんなの前で宣言しちまえばいいんじゃないか?」

店長は顎をさすりながら、発言した。


「お客さんは、ソロでやりたいんだろ?」

俺は、頷く。


「それをはっきり言っちまいな!」

大胆な行為に俺は気が引けた。


「言わないとダメか・・・・・。」

俺は、すごい嫌だった。主張するのが苦手なんだ。


「逃げてばかりじゃ始まんねーさ。」

俺は、店長の言葉に笑みを浮かべる。

「そう・・だな。 よし!行ってくる。恥ずかしい所を見せたな。

迷惑をかけてすまない。」


俺は、元気になった。

「いいってことよ!」と店長は笑う。

店員も「頑張ってください!」と応援してくれた。

俺は、頷いて外に出る。


「いたぞ!あそこだ!!おえーー!!」

俺は、冒険者ギルドにむかって走る。


数十分後――――


―――――『冒険者ギルド 入り口』―――――


俺を探して、追いかけて息を切らす冒険者たちが目の前にいる。

俺は、深く深呼吸して、冒険者たちに言った。


「俺は、お前たちのパーティに入らない!!」

冒険者たちは、汗をぬぐいながら俺の話を聞く。


「俺は、ソロでここまで来た!それは自分の腕を磨いてきたからだ。」

『精神はもろいけど、耐える。殺意は理性でおさえる。』


「お前たちはそれでいいのか?他人に頼り胡坐をかけば、いずれ足元をすくわれる!」

冒険者たちは、黙る。俺の発言が正論だからだ。

自分の腕を磨く。

それは、自分を守る力であり、自分たちが欲している『名声』を手に入れる手段だ。

他人に頼るのは別にいい。

しかし、それは他人のものであって、自分たちが手に入れた『名声』ではない。

冒険者たちは、手段の1つを捨てたのだ。

最も楽な、『他人に頼る』という手段を残して・・・。


「俺は、未熟だ。腕を磨いて強くなる!

1人で勝てない強敵はいるだろう。その時に協力を要請したい!

今はそれで許してほしい!頼む!!」


俺は叫ぶ。

俺は、未熟だ――――精神が・・・。

俺がパーティでやっていけるとは思えない。

俺は、まだ他人を信用できない。命を預けられない。

俺は、生きていることを恐怖に感じる。

『助けて』と手を伸ばした時に、俺を見捨てるんじゃないか?

その恐怖が離れない。だから―――――――――――――


冒険者の1人が叫ぶ。

「すいませんでした!!」

そして頭を下げる。

「俺が、俺たちが間違ってました!!」

1人の冒険者に続いて、1人また1人と頭を下げて謝罪する。


「私たち、僕たちが間違ってました!」と・・・。


俺は、安堵する。

『世の中には、言えば理解してくれる奴がいるんだな・・・。』


俺は、冒険者たちに言う。

「分かったのなら、己の鍛錬に励め!」


冒険者たちは、一斉に返事する。

「「「「「はい!!」」」」

そして、冒険者たちは解散していった。



――――半日だけの追いかけっこはこうして幕を閉じた。――――

冒険者ギルド内の受付嬢やギルドマスターが感動泣きしているのを俺は知らない。

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