男は、王都に帰ってきた。
男は、王都に帰ってきた。
冒険者のランクはDからAに一気に上昇!普通だったら喜ぶが、
男は異議を申し立てる。『他の冒険者たちの反感をかうだろう!!』
『王都グラントニア』
俺たちは、王都グラントニアに戻ってきた。
ジョナサンとリーゼルは連絡をやり取りしているらしい。
護衛依頼達成の報告は既に届いているだろう。
『そういえば、報酬いくら貰えるのかな?』
隣国『リゼンブル』にたどり着くまでに、魔物や盗賊、御者に襲われるものの
姫様を無事送り届けることができた。
『後日お受け取りください。って言っていたから、もう貰えるのか・・・。』
俺たちは、1日かけて王都に戻ってきている。
道中野宿して、1日経過しているのだ。
馬車は、南門をそのまま通過し、冒険者ギルドまで行く。
着いてから聞くとしよう。
―――――『冒険者ギルド』―――――
俺とテペリは、冒険者ギルドの扉を開けた。
すると、冒険者たちがざわめきだした。
『な、なんだ・・・。視線が痛いぞ!?』
俺たちは、冒険者ギルドの受付に歩いて行く。
今日の受付嬢はクレアだった。
「隣国までの護衛お疲れさまでした。事情はギルドマスターよりお聞きしております。」
と受付嬢は言った。
「話が早くて助かる。報酬を受け取りに来た。」
と俺が言うと、受付嬢は少しかがんで、大きい袋をカウンターの上に置いた。
袋は2つある。
「金額ですが、依頼主から200万ギニーお預かりしております。」
俺とテペリは驚いた。
『護衛依頼でこんな額がもらえるのか!?一国の姫様だからか!?』
「1袋100万ギニー入っておりますので、2人で山分けしてはいかがでしょう?」
『俺は、別に独り占めしたいなんて言ってないぞ!』と突っ込もうと思ったが、やめた。
俺は、袋をテペリに1つ放り投げた。
「うわっと!」
テペリは子供だ。袋の大きさと重さに少しふらついた。
「な、投げないでください!」
とテペリは怒るが俺は気にしない。
俺は、テペリをいじる。
「やっぱり子供だなー。」
テペリと俺が話をしていると受付嬢が話に割り込んできた。
「楽しそうな所大変申し訳ありません。ギルドマスターが2階でお待ちです。」
と受付嬢は「2階へどうぞ」と頭を下げる。
俺は、魔法のカバンに金をしまい、テペリは、袋を抱えたまま2階に上がる。
―――――『ギルドマスターの部屋』―――――
「よお! ジョナサンから話は聞いたぜ!無事依頼達成だってな!」
リーゼルは、嬉しそうに語る。
『相変わらず、書類だらけの部屋だな。』
「俺の目に狂いはなかったな!」
とリーゼルは、ソファにドカッと座る。
「世辞は言い、俺たちを呼んだ要件は?」
俺がそう尋ねると、「そうだった!」と言ってリーゼルはデスクに戻る。
「実はな。お前たちの冒険者ランクを特例として、上げる事にした。」
リーゼルは、真剣な目をして語る。
俺は、ランクポイントを満たしていない。
その為いまだにDランクだ。
「どれだけ上がる?」
俺はリーゼルに尋ねる。
リーゼルはニンマリと笑みを浮かべて答える。
「テペリはCからBへ上げる。レイダス・・・。お前はDからAだ。」
ありえなかった。
テペリはともかく、俺は冒険者になって日が浅い。
急なランクの上がり方に俺は異議を申し立てる。
「テペリはともかく、Dの俺がいきなりAとはどういうことだ?
俺は冒険者になって、日が浅い。
他の冒険者から反感をかうことになるぞ?」
『それでもいいのか!?』
リーゼルは大声をあげて笑う。
「ハハハハッ!! 実力に見合うだけのランクを付けて何が悪い?
レイダス・・・。お前は周囲の冒険者からどういう目で見られているか知っているか?」
俺は、知らなかったし知りたくなかった。
悪評だと俺が決めつけているからだ。
リーゼルの発言でそれは覆される。
「実技試験ではライラを倒し、決闘では、クレアと俺に無傷で勝利。
他人の力を見抜く洞察力の高さ。そして、今回の護衛依頼。お前の功績は素晴らしい!」
『世辞がうまいな・・・。』
「俺は、高くお前を評価している。俺だけじゃねー!
周囲の冒険者もお前を評価している!」
『俺を?』
俺は、評価されるような行いをしている自覚がない。
他人には極力関わらない。
「レイダス。お前が助けた冒険者を覚えているか?
実技試験を一緒に受けた同期の冒険者は覚えているか?」
俺は、頷いた。忘れるはずがない。
ガラン、フェノール、カイル、リリィ・・・。
「俺は、そいつらから話を聞いたんだ。すると、みんな揃ってこういうんだ。
レイダスは、冒険者に収まる器じゃねー!てな。」
『あいつらそんなこと言ってたのか・・・。』
「皆お前を尊敬してんだよ!期待の新人ルーキー! かくいう俺もな!
皆、強くなろうと必死なんだ。納得しなくていい。だから・・・。」
リーゼルは、言葉を続けようとするが、俺は止めた。
「分かった・・・・。それ以上言わなくていい・・・。失礼する。」
俺は、リーゼルのランク上げに同意した。
納得はしていない。しなくていいとリーゼルが言ったからだ。
俺は、すぐさま階段をおりて外に出る。
人気のない場所で、一人しゃがみこむ。
ガルムが俺の様子に戸惑ってくるくると走り回る。
『ガルム・・・大丈夫だから・・・。』
俺は優しくガルムを撫でる。
初めてだったんだ。他人に評価をされるのが――――。
初めてだったんだ。他人に認められるのが――――。
目から何かが溢れてくる――――水かな?―――
俺は涙をながさないからな―――――――
俺は、暫くその場から動かなかった。
―――――『ギルドマスターの部屋』―――――
俺は部屋を飛び出して行った。
テペリとリーゼルが話をしている。
「ああ~・・・。まずいこと言ったか俺・・・?」
自覚のないリーゼルにテペリはため息をつく。
「褒めすぎなんです。」
リーゼルがテペリの発言に首を傾げる。
「なんでだ! 本当の事だろ!?」
テペリは、「それがいけないんです!」と大声で言う。
テペリは言う。
「おそらく、レイダスさんは周囲の視線をずっと気にしてました。
悪評を言われていると思っていたんじゃないでしょうか?
本当は反対だったなんてレイダスさんは信じられなかったんです。きっと」
テペリは護衛依頼を思い出す。
俺の態度や言動を―――――――。
「私が獣人種の奴隷問題で苦しんでいるように、
レイダスさんもきっと何かに苦しんでるんです。」
テペリは、胸に手を当てる。
「・・・・・・・。」
リーゼルは暫く沈黙する。
「今度からは、過大評価しないよー気ーつけるよ。」
とリーゼルは言うのだった。
それから、テペリは、お金を安全な場所に保管。
リーゼルは溜まっている書類の片づけに追われるのだった。
―――――『解体場』―――――
俺は、『解体場』にやってきた。
『大分遅くなってしまった・・・。』
俺は、最初に訪れた時の建物の扉を開ける。
相変わらず、低lvの魔物の解体に追われているようだ。
「おらおら! てーやすめんじゃねー!」
ガラッドも相変わらずだった。
部下たちをしごいている。
「ガラッド。久しぶりだな。」
俺は、ガラッドに声をかける。
俺に気付いたガラッドの態度は一変した。
「おおおおお!やっときたか!待ってたんだぜお前さんをよ!」
ガラッドは笑いながら、俺の背を叩く。
『まるで、ガランだな・・・。』
「ここで話すのもなんだ・・・。前回の部屋覚えてるか?あそこで話そう。」
俺は、ガラッドについて行く。
以前の素材換金取引を行った部屋だ。
俺とガラッドは席に着く。
「で、どうだったんだ?」
俺は、素材をガラッドに預けていった。
今日は、その金を受け取りに来たのだ。
『3日後と言って置きながら、遅れたからな・・・。』
ガラッドはニヤッと笑う。
「5億ギニーだ。」
『・・・・は?・・・』
俺は、耳がおかしくなったんじゃないかと疑う。
俺は、もう一度確認の為尋ねる。
「5億といったか?・・・」
ガラッドは、「ああ。」と頷く。
『何故そんな額に!?』
俺は、心の中で動揺する。
護衛依頼の報酬で100万ギニー受け取っているのに、さらに5億ギニーって!?
「どうしてそんな額に? 誰が購入したんだ?」
『5億なんてそんな大金持ってる奴がいるのか?』
ガラッドは語る。
「売りつけた相手は『上層』の貴族連中さ。実はな、お前さんの持ってきた鉱石・・・。
武器化できる鍛冶師がいないんだ。
そこで、目を付けたのが貴族だ。貴族は、希少な物に目がない。
レア度の高い素材となればな。
お前さんの鉱石を持っていくと貴族がわんさか集まってきて、オークション沙汰になっちまった。」
「で、5億ってわけか・・・。」
ガラッドは頷く。
『上層は腐っても『金の宝庫』ってことか・・・。』
「俺たちの取り分を差し引いてその金額だ。お前さんには感謝してるぜ!」
とガラッドは、頭を下げる。
「これは取引なんだ。感謝されるようなことはしていない。
これは、上層に目を付けたガラッド。お前が評価されるべきだ。
礼をするのはこっちの方だ。」
と俺は言う。
ガラッドはつぶやく。
「お前さんは・・・・いい奴すぎる・・・・。ぐすっ」
俺は、大の男を泣かせてしまった。
俺は、ガラッドを元気づけようと魔法のカバンからある素材を取り出す。
「俺からの感謝の気持ちだ。受け取ってくれ。」
取り出したのは、護衛依頼中に倒した。
大火鳥の爪だ。
俺は、解体するときいつも自分の片手剣でしているのだが、
本来はちゃんとした解体用道具が存在する。
大火鳥の爪は解体道具を製作する材料の1つだ。
『礼にはちょうどいいだろう』と思ったのだ。
「いいのか!?」
とガラッドは驚いている。
俺は頷いて肯定した。
「これがあれば、質の高い解体道具が作れそうだ!」
ガラッドは、爪を持ち上げて、眺める。
「解体作業に役立ててくれ。冒険者である俺が助かる。」
事実、解体作業の効率が上がれば、ガラッドとゆっくり取引ができる。
それに・・・可能性は低いが、俺が解体できない魔物に出会ったとき、
『解体場』の職人たちの腕が上がっていれば、大助かりだ。
「分かった。お前さんの為にも腕を上げておこう!期待していてくれ!」
ガラッドの言葉は自信とやる気に満ちていた。
俺は、そんなガラッドに「ああ。期待している。」と握手するのだった。
――――俺はこうして――――――
―――護衛依頼で100万、素材の換金で5億という大金を手にするのだった。―――
神様「何を買うんじゃ?」
男「貯めます。」
神様「なぬ? パパッと使わんのか?」
男「貯めます。」
神様「遊びにがっぽがっぽ使えばいいだろうに~。」
男「貯蓄のできない人間に未来はない!!」
神様「・・・・はい。・・・・ (・w・)」




