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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~隣国『リゼンブル』編~
38/218

男は、隣国へpart3

男は、『リゼンブル』を観光する。

市場で食材を買いまくる男だったが、男は、怒号を耳にする。

冒険者らしき人物が店の人間に文句を言っていた。

『関わったら、報復される。』と思った男は、無視するがそこへ小さな女の子が現れる。

その女の子はテペリだった。

「人に迷惑をかけてはいけませんとお母さんに教わらなかったのですか?」

男は、項垂れるのだった・・・・。

『リゼンブル』


俺たちは、『リゼンブル』の宿屋に宿泊した。

俺とガルムは『リゼンブル』を堪能した後、

冒険者ギルドからグラントニア行きの馬車が出るというので、

それに乗って、『グラントニア』に戻る予定だ。


テペリはどうするのか知らない。

護衛依頼は終わったのだ。共に行動する必要はないのだ。


俺は、装備を装着し、宿屋を出る。

早朝から、『リゼンブル』は賑わっている。

『食材系の店が多いからだろうか?』

果物系や野菜系の消費アイテムを積んでいる荷台が行き来している。


『リゼンブル』は、正門をくぐると王城へと続く道がある。

王城は、リゼンブルの北側、1番奥に位置している。

正門から右に真っすぐ行くと宿屋が集中しており、俺たちはそこに泊まっていた。

正門から王城に向かって行く途中、左に曲がった先に市場がある。


俺とガルムはこれから市場に向かう。

改めて、『リゼンブル』の中央通りに出たが、幅が広い。


『式典や凱旋をするんだろうな・・・。』


俺とガルムは中央通りをまっすぐ進み左に曲がる。

人々が集まり、声が飛び交う。

「いらっしゃい! 安いよ! 今なら2割引きだよ!」


「取れたての魚はどうだい!」


俺は、人に酔いそうになるが、順番に店を回る。

見たことのあるアイテムばかりだが、俺はレア度の低いアイテムをあまり所持していない。

この機会に購入していくことにしよう。


「これを5つくれない?」

俺は、店の人に欲しいアイテムを指さす。


「あいよ! 『レッドカラーム』5つね! 100ギニーだよ。」

俺は金を払う。


「毎度ありー。」


『レッドカラーム』は砕いて粉にすれば、味が『唐辛子』になる。

香辛料になるのだ。


俺は、次の店に移動する。

「すまない。コレとコレと・・・あとコレを!」


「あ! はい~。 250ギニーになりまーす。」


食材はあって損はない。

『不老不死』だから、食べなくても死ぬことはない。

しかし、生きている間はおいしい食べ物を食べたいと思う。

俺は、転生してやっとおいしい食べ物や食材と巡り合ったのだ。

神様からもらったチャンスを俺は無駄にしたくない。


俺は、次々に店によっては、食材を購入していく。


「おらぁああ!!」

怒号が聞こえた。


『なんだ!?』

と聞こえた方向を見ると、とある店が絡まれていた。


「もうちょっとまけてくれよー。なああぁ!!」

怒号を放つ男は店の品をわし掴んで片手で握り潰して見せた。

『力』があることを主張したいのだろう。


「ひ、ひいいい・・・。こ、これ以上は・・・。」

店の人間は最低価格を提示するが、男は納得しない。

男は、店の人間の胸ぐらを掴み上げた。


『止めに入るべきなんだろうな・・・。』

しかし、俺は、赤の他人で、たまたま偶然その場に居合わせただけの人間だ。

肩入れはしたくない。

男の恨みを買って、報復に来られても困る。


「やめなさい!」

フードコートを被った小さい女の子が男に怒鳴る。

『おお。勇気あるな・・・。』


「あぁ!? 餓鬼はすっこんでろ!!」

と男は、店の人間から手を放し女の子に殴りかかる。

女の子は華麗に避け、男の背後を取る。

『あの動きは・・・。』


女の子は、男の首にダガ—の切っ先を当てる。

「うっ!」

避けた拍子に女の子のフードが取れる。

茶色の耳茶色い髪・・・見間違えるはずがない。

『テペリ!?』


男は、テペリの姿を見て驚く。

「獣人が!んでこんな場所に嫌がる! ぐえ!」

男は、テペリに頭を地面に押し付けられる。


「暴れないでください。貴方がいけないんですよ?

お店の方に迷惑をかけてはいけませんとお母さんに習わなかったのですか?」

とテペリは、男を小ばかにする。

しかし、男は抵抗しない。テペリとの力の差がありすぎるからだ。

騒ぎは、これにて一件落着。

俺はすぐさまその場を離れた。


が、スキルで俺の背後にテペリが立つ。

『絶影って便利だな・・・。』

俺は心の中で唾を吐く。


「何故あの男を止めなかったのですか?レイダスさん。」

テペリは、俺の横に立って、話しかける。


「面倒ごとを避けるためだ。」

と俺は、きっぱりと言う。

俺の言葉にテペリは、「ふ~ん。そんな考え方もあるのですね。」と答える。


俺は、テペリに尋ねた。

「お前、『リゼンブル』に残るのか?」

おそらくテペリは、グラントニアに戻らない。

それは、獣人が奴隷として扱われているからだ。

テペリのフードが取れても、『リゼンブル』の人間は男以外特にこれと言った反応を示さなかった。


『『リゼンブル』の皇子もまた奴隷制度を失くそうとしている。』

奴隷は、グラントニアほどではないが、リゼンブルにもいる。

姫様は皇子に協力を仰ぎに来たのだ。

他国といえど、両国は仲が良い。

なにより、グラントニアで、奴隷制度反対派は姫様1人だけだというのが決定的だ。

『同じ意見を持つ同志として助け合いましょう!ってとこだな・・・。』


「いいえ。テペリは『グラントニア』に戻ります。」

俺の予想は大きく外れた。

『リゼンブル』にいれば、辛い思いはしないというのに・・・。


「姫様と私は、お友達になりました。姫様はグラントニアへ戻られます。

私は、見下されようと姫様の傍にいたい。」

テペリと姫様は友達になった。

テペリは友達を選んだのだ。


「そうか・・・。それがお前の『生き方』なんだな。」

と俺は、テペリの頭を撫でまくった。


「あわわわっ! やめてくださいいいい~。」

俺は、撫でるのをやめる。


俺は、テペリを少しからかう。

「まだまだ、子供だな。」


テペリは、顔を膨らませて怒鳴る。

「私は、子供じゃありません!」

そして、俺の横腹をぽかぽか殴る。

『ハハハ! そんなのへでもない!』


「反抗的になるのは餓鬼の証拠だ。」

というと、テペリは、耳と尻尾を逆立たせた。

「餓鬼じゃありません! 私は大人です!」


俺は、テペリをからかいながら、中央通りに出るのだった。


「そろそろ時間だな。」

俺は、冒険者ギルドに行くことにした。

グラントニア行きの馬車がでる時刻だ。

あれからテペリはずっと俺についてきている。

『グラントニアに帰ると言っているし、いいか・・・。』


俺たちは、冒険者ギルドに向かう。


―――――『冒険者ギルド 入り口』――――――


『冒険者ギルドの方から音がしないか?』

「テペリ・・。」


俺は、テペリに視線を向ける。

テペリはコクリと頷いた。

『揉め事か?』


俺たちは、冒険者ギルドの入り口に走る。

俺たちは、驚く。


「馬車が!!」

馬車が見るも無残な形になっていた。

車輪は粉々に砕かれ、馬車の胴体部分は潰されてしまっている。

馬車を引っ張る馬は、怪我をして起き上がれないようだ。


「はっ!ようやくきたか・・。」

不敵な笑みを浮かべながら、馬を踏みつける男がいた。

『あの男は、市場にいた・・・。』


市場でテペリにこっぴどくやられていた男だ。

報復しに戻ってきたのだ。

『何故馬車を・・・・。』


男は、馬から足をどけ、一定距離を保ちながら歩く。

「俺も冒険者だからよー。 冒険者らしく決闘といこうや!」

男は大剣の切っ先をテペリにむける。


『なるほどな・・・。』

俺たちの情報がどこかから洩れたのだろう。

恐らく、冒険者ギルドに立ち寄った際、俺たちがグラントニアから来たことを知ったんだ。

男は、決闘と言いながら、自分の仲間を呼び集めていたようだ。

ぞろぞろと男の仲間が男の元に集まっていく。数は男を含め10人。


「どうするんだテペリ。」

正直、俺には関係ない。

俺は男に報復されるような行為をしていない。

やったのはテペリだ。


「私は、あの男を含めて、5人相手いたします。残りの半分はお任せします。」

『そういう意味じゃねーよ!!』

テペリは、そう言って俺に残りの相手を押し付けた。

俺は、テペリに巻き込まれた。


『俺は、ゆっくり観光してただけなのに・・・。どうしてこうなる。』

俺は、不幸の星の元に生まれた。

トラブルに巻き込まれるのもそのせいなのだろう。

俺は、項垂れる。


「仕方ない。早く倒して、新しい馬車を用意してもらおう。」

俺は鞘を腰から外す。鞘に収めたまま剣を構えた。

これは、決闘じゃない。

決闘は1対1で行われるシステムだ。

よって、これはなんでもOKな『デスマッチ』。

俺とテペリは、それぞれ5人を相手に立ち回る。


その様子を2階の窓から眺める、ジョナサンの姿があった。

「さあ。お手並みを拝見させてもらおうか!」


テペリは『暗殺者アサシン』職の1つ上の『常闇』職だ。

俺は、テペリが負けるとは微塵も思っていない。

男の仲間を鑑定するとlvが低かったからだ。

テペリは速度がある。うまく背後を取って、戦闘不能にしていくだろう。


『問題は、俺の方だ・・・。』

俺は、敵の動きを避け続けている。

反撃はしない。

俺が反撃すると殺してしまうからだ。

ライラ、クレア、リーゼルと決闘をしたが、彼らは死ななかった。

それは、彼らがこの世界の実力者だからだ。

彼らよりも劣る男の仲間が俺の一撃に耐えられるはずがない。

俺には、回避以外の選択肢がないのだ。


「しねやあああぁ!!」

と叫びながら、敵が集団で襲い掛かってくるが、避け続ける。


『相手のスタミナ切れを待つとしよう。』

時間はかかるが、相手を殺さずに済む良い方法だと俺は思った。


俺の視線はテペリに向く。

テペリは相手の背後をとって、1人ずつ倒していく。

そして、あの男の背後も取った。

がテペリのダガ—が弾かれる。


「な!?」

テペリからあがる驚きの声。

男の服の下からミスリル性の帷子が露わになる。

男は、テペリの攻撃を防ぐために用意していたのだろう。


「何よそ見してやがる!?」

俺の方に男の仲間が迫ってくる。

振るわれる剣を俺は、片手で受け止め、へし折る。

男の仲間は驚愕のあまりたじろぐ。

『そうか・・・。最初からこうしておけばよかった・・・。』


俺は、相手の前に瞬時に現れては、武器をへし折って行った。

一瞬の出来事に男の仲間は目を疑う。

俺は、武器の破片を見せびらかして、不敵な笑みを浮かべる。


「まだやるか?」

俺の強さに男の仲間は恐怖で逃げ出す。

「ひ、ひいいいい、結構ですウウウウう!!」

俺の方はこれで一件落着だ。


一方残った男は俺から逃げ出していく仲間に怒鳴る。

「にげんじゃねー!!」

しかし、男の声は、仲間に届かない。

テペリの方にまわっていた他の4人も武器を投げ捨て、逃げ出した。

「こ、こんなの・・・やってられっかよ!」

男は、仲間の捨て台詞に舌打ちする。


「よそ見はいけませんよ!」

テペリのダガ—が男の腕を斬る。

「ぐあああ!」

帷子が斬れなければ、斬れる箇所を攻めるだけ・・・。


『いい判断だ。』

俺は、テペリの戦闘を眺めていた。


男は、テペリに手も足も出ず、切り裂かれていく。

そして、地面に膝をついた。

男は、荒い息を上げ、テペリを見る。

男の目の前にはテペリが突き付けたダガ—がある。


「まだ続けますか?」

テペリは殺気を放つ。

『これ以上自分たちの邪魔をしようものなら殺す。』という脅しだ。


男は、汗を流しながら、頭を下げる。

「すまなかった・・・・。」


『頭を下げて許されるはずがないだろう・・・。』

俺だったら許さない。

謝罪とは、その場の一時しのぎに過ぎない。

謝罪をしては、報復を繰り返す。そういう輩を俺は知っている。

『器の広い人間はいつか不幸を見る』のはそれが理由だ。


テペリは、武器をおさめた。

「いいでしょう。許します。

しかし、今後同じような報復をすれば、私は迷わず貴方を殺します。」


テペリは男を許した。

『優しいな・・・。』

優しさで世界が救われるのなら、とっくに世界は平和になっているだろう。

『俺が生きていた世界もそうだったら良かったのに・・・。』

と俺は思う。


男は、テペリの許しを得て、逃げ出して行った。

「あれでよかったのか?」

俺は、テペリに尋ねた。


「はい。」

と即答だった。

俺は、黙る。何も言わない。

テペリがそう決めたのだ。俺が口出しすることではない。


俺たちは、「新しい馬車を頼む」と冒険者ギルドの受付に言った。

「外が騒がしいと思ったら・・・。分かりました。急いで用意いたします。」

と受付嬢は承諾した。


俺たちが、『リゼンブル』を出発したのは、それから1時間後だった。


―――――『ギルドマスターの部屋』――――――


ジョナサンは笑みを浮かべていた。

「いやあ~。いい腕してるなあー。」

ジョナサンはずっと俺とテペリの戦闘を見ていた。


彼としては、俺の攻めに転じた姿を見たかったのだろう。

ジョナサンは不満そうな顔を浮かべる。


ギルドマスターとして、冒険者の揉め事は見過ごせない。

ジョナサンは、俺とテペリに報復を仕掛けた冒険者の男に

後日処罰を与える事にした。


そして、ジョナサンは寂しそうな表情を浮かべて、デスクにもたれかかる。

「はあ~。帰っちゃうのか彼・・・・。」

ジョナサンは俺と戦ってみたかった。

彼は、ギルドマスターにして、変人だ。


俺に興味を抱いている。

「次回彼が、リゼンブルを訪れた時は、『決闘』を申し込もう!」

とジョナサンは決める。

デスクから上体を起こした彼は、早速仕事を始める。


――――ジョナサンの仕事は今日も忙しいのだった。――――

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