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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~隣国『リゼンブル』編~
37/218

男は、隣国へpart2

男は無事姫様をリゼンブルに送り届けた。

護衛依頼達成を報告しに、リゼンブルの冒険者ギルドに行く。

馬や馬車の事もあり、ギルドマスターと話をするが、変人だった。


―――――――『野宿 高台』―――――――


高台に到着した頃には夜になっていた。

俺は、スキルがあるから夜目がきく。ガルムもだ。

俺とガルムは夜の見張りをするのだった。


俺は、姫様に見せなくていい『惨劇』を見せてしまった。

考えなしに行動した結果だった。

姫様は、御者だった『じい?』が死んだことで、精神が疲弊してしまったようだ。


今は、馬車の中で横になって眠っている。


「レイダスさん・・・。」

テペリが俺の背後に立つ。


「『暗殺者アサシン』が俺の背後に立つな。」

俺は、後ろを振り返らない。テペリから殺気を感じないからだ。


「俺に用か?お前も疲れただろう。眠ったらどうだ。」

そういうとテペリは、俺の横に座った。


「いいえ。まだ寝ません。レイダスさん・・・何故御者を殺したんですか?」

テペリは、俺に質問する。


「御者は、自分の私利私欲の為に姫様を殺そうとした。その時点で、敵対と見做しただけだ。」

俺は、逆に質問してみた。


「テペリ・・・。もし仮にお前が俺の立場だったらどうしていた?」

テペリは少し考えてから、答えた。


「多分、同じことをしたと思います。

御者を逃がしていたら、報復しに戻ってきたかもしれません。」

俺は、「そうだな。」と頷いた。


「ただ、姫様の気持ちを考えると揺らぎます。」

御者は10年間、姫様に仕えていたという。

姫様は御者があのような行動に出ると想像していなかったのだろう。

上層で暮らすうちに御者は歪んで行ったのだ。


「俺は、揺らいだとしても御者を殺しただろうな。」

俺は、御者が気に喰わなかった。それだけで殺しただろう。


俺も『歪んでいるのかもな・・・。』


テペリは、俺の言葉に空を見上げながら「そうですか・・・。」と言う。

テペリは、そこから話題をかえた。


「レイダスさんは・・・姫様がしようとしていることが分かりますか?」


姫様は、リンゼルの王子に会いに行くと言っていた。

そしてこの護衛依頼は、お忍びだ。身分を隠して、リンゼルに向かう。

グラントニアは身分で上層、中層、下層と分かれている。

そして、御者が残した。『奴隷制度の撤廃』という言葉。


「リンゼルの王子は、姫様と同じ考えを持っているのか?」

俺の言葉にテペリは頷く。


「レイダスさんは、知らないと思いますが、奴隷の大半は獣人種なんです。

姫様は、奴隷はよくない!皆平等であるべきだ!と言ってくださる奴隷制度反対派のおひとりなのです。私は、そんな姫様を応援したいと思っています。」


テペリは、きっと姫様の護衛依頼が来た時ギルドマスターのリーゼルに志願したのだろう。


「しかし、上層の奴隷制度の反対派は姫様お一人だけ・・・。」


上層は腐っている。奴隷の人間を獣人をおもちゃとしか思っていない。

姫様はまだまともと言えるだろう。

『いや・・・唯一まともと言うべきか。』


「安心しろ。俺も奴隷制度は嫌いだ。国と言うのは民があってこそ成立する。

奴隷制度がある限り、いずれ王都『グラントニア』は崩壊を迎えるだろう。

姫様はそれが分かっているからリンゼルに行くんだ。

『一人でも道を切り開くのが姫様の人生なんだろ。』」


テペリは、俺の言葉に呆然としている。

俺は、「どうした?」とテペリに尋ねる。


「いえ・・。何でもありません。少し意外だったというか・・。

レイダスさんの言葉に安心しました。」

とテペリは、笑う。


暫く、空を見つめてテペリは、「私はもう寝ます!」と行ってしまった。

俺は、そのまま空を見つめる。

『星空ってこんなにきれいなんだな・・・。』


俺は、星空の美しさを堪能するのだった。


―――――――『高台 朝』―――――――


俺は、テペリを起こす。

「おい。朝だぞ。起きろ!」


「ん~・・・。もう5分・・・・。」

『こいつ寝起きが悪いのか?』

俺は、テペリの毛布を無理やり取り上げた。


「起きろ!!」


「うわあああああ!!」

テペリは、飛び起きる。


「レ、レ、レイダスさん!?おはようございます!?」


「おう。おはよう。」

俺は、テペリに挨拶した。


「早速で悪いんだが、姫様を起こしてくれないか?」

俺は、親指で馬車を指さす。


「分かりました! 行ってきます!」

と元気よくテペリは、馬車へ向かう。


『子供だな・・・。』


俺は遠目から、姫様とテペリの様子を伺う。


「姫様! 朝ですよ! 起きてください!」

テペリは、姫様を揺する。


「ん~~・・・。あと5分・・・。」

『テペリと同レベル!?』


テペリは、姫様の毛布を取り上げる。


「ああ! 私の毛布! テペリさんひどいです!」

姫様はテペリとじゃれあっている。

『これなら、いけそうだな・・・。』


俺は、正直不安だった。

昨日の今日で心が折れていたら、王都に引き返すことも検討していた。

テペリとじゃれているのを見る限り、大丈夫だと判断する。


俺は、馬車に近づき、朝食をテペリと姫様に渡す。


「これは?」

「ん?」


2人は、包みを不思議に見る。

「サンドイッチという。パンに具材を挟んだ食べ物だ。」

2人は包みを開け、サンドイッチを食べる。

満足そうな顔を浮かべている。


俺とガルムも朝食を食べる。

「ガルム悪い。今日は、お前もサンドイッチだ。」

と謝罪する。

ガルムは、黙って食べてくれた。

俺は、ガルムを優しく撫でる。


俺たちは、朝食を済ませ、出発するのだった。


―――――『隣国『リゼンブル』まで数キロ地点』――――――


「見えてきましたよ!あれが隣国『リゼンブル』です。」

とテペリが指さす。


俺は、転生してから、『リゼンブル』に来るのは初めてである。


『FREE』をしていた時の『リゼンブル』を思い出す。

『グラントニア』と違い階層は存在しない。

ただ、治安が悪かった。

野蛮な人間のたまり場がいくつかあって、そこに迷い込むと100%絡まれる。

『リゼンブル』を訪れる時は、たまり場に気を付けてね!と言われるくらいだ。


俺は、息をのむ。

『気を引き締めていこう!』


―――――――『隣国『リゼンブル』―――――――


俺たちは、隣国『リゼンブル』に到着した。

国を覆うように壁があるのは『グラントニア』と同じだ。

俺たちは、正門から入国する。


街並みは、『グラントニア』と似ているが、武器屋や防具屋等より、消費アイテムや食材系のアイテムを売っている店が多い。

『市場だな・・・。』


俺たちは、広い道をまっすぐ進んで行く。

その先には、大きな城が君臨していた。


『中に入れば、天井にシャンデリアがいくつもぶら下げられていそうだ。』

俺は、想像を膨らませる。


俺たちは、城の入り口に到着。

姫様が、馬車から降りる。

「御二方、ここまでの護衛感謝いたします。報酬は、後日冒険者ギルドからお受け取りください。」

と馬に乗る俺とテペリに言う。


テペリは尋ねる。

「ここまででよろしいのですか?」

テペリは、姫様を応援している。

心配しているのだろう。

俺たちが去れば、彼女は城で1人だ。


姫様は目を伏せながら言う。

「ここからは、私にしかできない戦いなのです!

帰路はリゼンブルの冒険者ギルドにご依頼させていただきます。」


テペリは、残念そうな表情を浮かべるが、姫様がテペリに声をかける。

「テペリさん! 私とお友達になりましょう!

私には、お友達がいません。ずっと王城に1人です。

またこのような機会があった時!こうして、お話の出来るお友達になってくれませんか?」


テペリは、姫様の言葉に涙をこぼした。

「はい! こんな私で良ければ、また会う日まで!!」


ここに友情が誕生した。

1人は孤独に戦い続ける姫。

1人は獣人にして戦い続ける冒険者。


『俺は、部外者だな・・・。』

と思いながら、心の中で『おめでとう テペリ』と祝福するのだった。


―――――『リゼンブル 冒険者ギルド』――――――


冒険者ギルドは1つではない。国ごとに1つずつ支部がある。

さしづめ、『リゼンブル支部』と言ったところだ。


俺たちは、冒険者ギルドの受付に行き、

護衛依頼の報告 と 依頼で使用した疾走するヴァルファーンと馬車を預けたいという。


「護衛依頼で来られた方ですね。

リゼンブルのギルドマスターが丁度おられますので、2階に上がった右手の部屋にお入りください。」

と受付嬢の指示を受け、テペリと俺は2階に行く。


冒険者ギルドの内装と外装はグラントニアと変わらない。

『FREE』をプレイしていた時からそうだ。


俺は、ギルドマスターの部屋に入る。

「失礼する。」


デスクの位置もグラントニアの冒険者ギルドと同じだった。

違うと言えば、書類の量だろうか。

デスク内に収まる量だ。

『リーゼルの部屋とは、違うな・・・。』


書類に向き合い、サインをしているギルドマスターの姿があった。

ギルドマスターは俺たちに気付き、手を止める。


「やあ。こんにちは。」

ギルドマスターは眼鏡をかけている。優男だった。

身長は、俺よりも高い。学者に近い見た目から

『頭がきれるのかな?』と想定する。


「話は、リーゼルから聞いてるよ!リゼンブルにようこそ!

僕は、リゼンブルのギルドマスター『ジョナサン・ハーレイ』という。」

ジョナサンはニコニコと自己紹介をする。


「馬と馬車の件だよね。もう1頭いたよね?道中問題でもあったのかい?」

俺たちは、御者に襲われたことを説明する。


「そうだったのか。災難だったね。・・・うん!馬車と馬はこちらで預かるよ。

せっかくここまで来たんだ。リゼンブルを堪能してから帰るといい。」

俺は、ジョナサンの『大歓迎!』という態度が信用できなかった。


「なにか企んでるだろ。」

俺は、言った。


「ん? そんなことないよ。疑り深いのはいいことだ。でも、僕は嘘をついていないよ。」


テペリが俺の裾を引っ張って「嘘ついてません。」と言う。

『本当か?』


信用していない俺にジョナサンは近づいてくる。


「この瞳が嘘をついているように見えるのかい!!」

ジョナサンは、顔をズイズイと近づける。

俺は、悪寒を感じ、ジョナサンをを引っぺがした。


「分かったから。近づいてくるな!」


ジョナサンは剥がした際に変な声を上げた。

『なんなんだこいつ!? 変人か!?』


俺は、ジョナサンが気持ち悪くて仕方がなかった。


「と、とにかく。今日は宿を取って泊まって行きなさい・・・。

明日、グラントニア行きの馬車が冒険者ギルドから出るはずだ。」


俺とテペリはそうすることにした。

俺は、『空間転移』で戻れるが、

ジョナサンが言うように折角きたのだから、少し見ていくことにする。


俺とテペリはギルドマスターの部屋から出ていった。



―――――『ギルドマスターの部屋』――――――


俺がギルドマスターの部屋から去ったあと

ジョナサンは1人不気味に笑っていた。


「リーゼルが言っていた通りだ。

面白いな彼は・・・。」


ジョナサンは、俺の底知れぬ強さを感じていた。

ジョナサンは洞察力にたけている。

人を見る目はある方だと思っている。


「肩にのっていた従魔も高い戦闘力を有しているようだった。」

ガルムは、新人冒険者より強い。

このまま成長すれば、俺の次に続く強者となるだろう。


「いつか戦ってみたいな~。」

ジョナサンは、俺が言ったように変人だった。

1人の冒険者であり、学者であり――――戦闘狂だ。


「フフフハハハハハ!!」

ジョナサンは1人笑う。


―――――『楽しみが1つ増えた』という喜びに――――

男「この世界のギルドマスターは全員戦闘狂か!?」

神様「ドンマイw ガンバw」

男「なに他人事みたいなこと言ってるんですか!?」

神様「他人事じゃしw」

男「畜生おおおおおお!」

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