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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~隣国『リゼンブル』編~
36/218

男は、隣国へpart1

護衛依頼当日。男とテペリは、護衛対象、姫『シャーロット・ツヴァン・グラントニア』と会う。

姫は、リゼンブルの皇子『ファルナ・ベラ・リゼンブル』と会うために隣国に行くという。

道中、魔物に襲われたり、盗賊に襲われたりとトラブル尽くし――――――


そんな中 男は、御者の態度に違和感を持っていた。

『差別意識が強いというか・・・・なんというか・・・・』

石橋を渡り切った後、休憩を取るが――――――――――――――

『冒険者ギルド 早朝』


人気のない『中層』を歩く。

冒険者ギルドの入り口にフードコートを被ったテペリの姿があった。


「早いな。」

俺は、テペリに声をかける。


テペリは鼻を鳴らす。

「ふん! 当然です!」

テペリはない胸を張る。

『何故どや顔・・・。』


俺は、やっぱりテペリは子供だなと思いながら

護衛対象の姫『シャーロット・ツヴァン・グラントニア』が来るのを待った。

俺は空を見上げていた。


『天気悪いな・・・。』

今にも雨が降り出しそうな天気だ。

霧も出ている。


数分後―――――――


馬の蹄の音が耳に届く。

音は段々近づいてくる。

霧の中から現れたのは、馬車だ。

見事な装飾が施されている白を基調とした馬車だ。

『お忍びだよな?』

俺は、『目立ちたいのかな?それとも馬鹿なのかな?』と自分の目を疑う。

馬車は冒険者ギルド前に止まる。

馬を操縦していた御者ぎょしゃが急いで降りる。そして、馬車の戸を開ける。


馬車から出てきたのは、金髪の女性。

俺以外の男が見ていたら、一発で魅了されていただろう。

長い髪は、サラッとしており、白いドレスとまではいかないが、『白い聖女』と思わせる恰好をしている。

俺はここで、分かってしまった。

『この姫様は馬鹿だ・・・。』と


『お忍びのはずだろ? 目立つような格好をするのは、馬鹿としか思えないのだが・・・。』


姫様は俺たちを見て、尋ねる。

「貴方たちが護衛役の方々ですか?」


俺はガルムを肩にのせたまま、テペリと姫様の前に出る。

「俺は、レイダス・オルドレイ。冒険者だ。」


「私はテペリと言います!」

と交互に自己紹介する。

そして、

「今回の護衛は俺とテペリの二人だ。」

と俺は、はっきりいった。


姫様は護衛が2人ということに残念そうな表情を浮かべるが頷く。

 「そうですか・・・。護衛が2人しかいないのは心もとないですが・・わかりました!」


そして、姫様は自分の自己紹介を始めた。

「私は、王都グラントニア 『エリック・ツヴァン・グラントニア』が

一人娘『シャーロット・ツヴァン・グラントニア』と申します。

今回リゼンブルに行くのは、

リゼンブルの皇子『ファルナ・ベラ・リゼンブル』にお会いする為です。

短い間ですが、よろしくお願いいたします。」


自己紹介が終わると、服の裾を軽く上げ、お辞儀する。

姫様のお辞儀の仕方を見て、

『やっぱり・・・姫なんだなー・・・。』

と俺は、心の中で項垂れる。

何故かって?

『護衛対象がまだ商人とかだったら、失敗しても文句を言われるだけで済みそうだからだよ』


「姫様少しよろしいでしょうか?」

とテペリが姫様に言うと姫様は「はい。」と頷いた。


「移動を開始する前に、役割と対策を練っておきたいのですが・・・数分で構いません。

時間を頂けますでしょうか?

決まり次第、ご説明させていただきますので、馬車の中でお待ちください。」

とテペリが姫様に言う。


俺は、テペリの意見に賛成だった。

姫様は「わかりました。」と軽くうなずき、馬車の中へ戻る。


「どうされますか?」

と突如俺に振るテペリに、俺は驚く。

『全部俺に丸投げかよ・・・。』


もし、護衛が失敗すれば俺たちの首は恐らくとぶことになるだろう。

俺は、死なないだろうが、テペリは死ぬ。

立案者に全てを擦り付ければ自分だけは罪を免れるとテペリは考えているのだろう。

『だから、他人は嫌いなんだ!』

俺は、怒りを抑える。


「疾走するヴァルファーンをリーゼルが用意してくれている。

馬車を中心に俺は右後方、テペリには左を警戒してもらう。」

テペリは頷き、質問する。


「私も左後方に下がるべきでは?」

俺は、「その必要はない。」という。


俺は、地形を把握している。

今から俺たちが向かう隣国『リゼンブル』は王都『グラントニア』から東に真っすぐ進んだ先にある。

左には緑の平地が広がり、右には、森がある。


「左は平地が広がっている。警戒するなら右だ。疾走するヴァルファーンなら対応も追いつくだろう。」と説明した。


テペリは頷いて納得した。

護衛の役割は決まった。

俺は、テペリに「姫に言ってきてくれ」と頼んだ。

『姫と話したくないんだ・・。』という本心を隠しながら・・・。


テペリが馬車の戸をノックしようとした時、テペリは御者に止められた。

「な、なんですか!?」

とテペリは妨害されて驚いている。


「姫様には、私がお伝えしましょう。」

と御者がニッコリと笑みを浮かべて答える。


しかし、テペリは引かない。

「いえ、私が直接お伝えするので、結構です。」


御者とテペリがバチバチと火花を散らす。

しかし、馬車の戸は、ノックされる前に開かれる。


「じい! やめてください。この方は、私と直接お話したいといっているのです!

下がっていてください!」

俺は、首を傾げた。『じい? お付きの人間か?』


御者は姫様の言葉に渋々下がる。

テペリは直接姫様に説明した。


その時、俺は胸のあたりがチクチクしていた。あの棘に刺されるような感覚だ。

『なんだよ・・・この感じ・・・。』

俺は、理解できない感覚に嫌気がさす。


『あの御者・・・。なんか引っ掛かるんだよな。』


俺は、リーゼルが用意してくれた馬を冒険者ギルドの裏手から手綱を引っ張って連れてくる。

俺は、テペリに一頭預け、手綱を握らせた。


王都『グラントニア』は『身分差別国』として『FREE』をプレイしていた当時から有名だった。

外から来る人間は、『中層』に入ることはできるが、『上層』へは上がれない。

それは、転生したこの世界でも変わらないようだ。


俺は、身分による差別が嫌いだ。

ゲームでも『奴隷』を買っているプレイヤーをみると苛立つ。

決闘を申し込んでボコボコに痛めつけるぐらいに・・・。


俺たちは、疾走するヴァルファーンにまたがり、出発する。

東門をくぐり、外に出る。


数十分後――――


俺たちは、今の所順調に進んでいた。

『平和が一番だ・・・。』

俺は、右と後方を警戒しながら、左のテペリを気にしていた。


『テペリはこの世界で強いといっても子供だからな・・・。』


俺は、冗談交じりにテペリに言う。

「護衛依頼を放棄したければしていいぞ。」

『子守りはごめんだ。』


テペリは俺の言葉に、後ろを振り返る。

「何言ってるんですか!? 放棄はしません!」

テペリは、俺に怒鳴ると手綱を力強く握った。


俺は、笑う。

テペリの顔はむくれていた。


テペリと会話をしていると俺は、敵を『探知』した。


『剣聖専用スキル:魔物探知』

『剣聖専用スキル:気配探知』

『魔法/第10番:探知拡張』

を出発してから発動を続けていた。

範囲を拡張しすぎると頭痛に襲われる為、範囲は、ギリギリにとどめている。


『右の森林内に反応・・・。人間ではないな。・・・魔物だ。』

魔物は、真っすぐ馬車に近づいている。


只、妙だと俺は思った。

『直進的すぎないか?』

魔物がこちらを視認できる距離ではないのだ。

それに右側には森林がある。木々が妨害して、直進は不可能なはずなのだ。

『様子を見に行くべきか・・・。』


そう考えている間に魔物の移動速度が上がる。

『そっちから来るのなら迎え撃つまで!』

俺は、剣を抜く。


「テペリ! お客さんだ!」


「わかりました!」

とテペリは返事をする。


上空を俺とテペリは見上げる。

そこには魔物の姿があった。


大火鳥ジャイアントファイアバード!」

テペリが魔物名を叫ぶ。


御者は魔物の大きさと魔物が出現したという恐怖に怯える。

「ひ、ひいいいいいいい!!」


「何事ですか!?」

と馬車の中の姫様は尋ねるが、馬車の窓から魔物が見えない。

俺は、姫様に「馬車の中でじっとしてろ!」と言う。


それから、御者とテペリに指示を出す。

「御者は馬車を一旦停止! テペリは、魔物のブレスに警戒だ。」

テペリは「了解!」というが、御者は返事をしない。


恐怖のあまり、声が届いていないようだ。

俺は、御者の傍まで馬を寄せて大声で指示を出す。

「馬車を止めろ!!」


御者は我に返り、馬車を停止させる。

俺は、疾走するヴァルファーンからおりる。ガルムは、馬の上で待機。

俺は軽く地面を蹴り跳躍する。

俺の跳躍で地面にクレーターができた。

俺は、大火鳥ジャイアントファイアバードに一直線に飛んでいく。


『ブレスの準備に入ってやがる!』

俺は、加減して跳躍した。それは、跳躍してから着地までに時間がかかるからだ。

大火鳥ジャイアントファイアバードのブレスが放たれるまでに俺の攻撃は届かない。


「なら、届かせるまでだ!!」

『剣士』職は遠距離攻撃ができない。それは、低lvの場合と派生先による。


――『剣聖』――それは、剣の高みに立つ者へ与えられる職にして称号である―――


俺は、大火鳥ジャイアントファイアバードとまだ離れているにも関わらず剣を振るう。


俺は『FREE』をしていた時を思い出す。

『飛ぶ斬撃とかあったら無敵じゃね?』

誰もが再現したいと思っただろう。しかし、現実でそれは不可能だ。

『じゃあ・・・ゲームの世界が現実だったら?』

俺のいるこの世界はゲームの世界が現実だ。

だから・・・可能なはずだ!


俺の振った剣から、強烈な斬撃が放たれる。

それは、空気の刃となって 大火鳥ジャイアントファイアバードに飛んでいく。

俺の放った斬撃は、大火鳥ジャイアントファイアバードを斬り、雲を斬り裂いた。

雲の間から光が差し込む。

大火鳥ジャイアントファイアバードの体が縦に割れ、馬車の左右に落ちる。


テペリと御者は、その光景に呆然としている。

馬車の中にいた姫様は大火鳥ジャイアントファイアバードの死体に目を背ける。


テペリはつぶやく。

大火鳥ジャイアントファイアバードを一撃・・・?」


大火鳥ジャイアントファイアバードは、巨大で炎のブレスを吐く魔物だ。

平均lvは25この世界に生きる者からしたら、強敵だ。

それを俺は一撃で屠ったのだ。


跳躍していた俺は空から戻ってくる。

「よっ!」

俺は、量の足でしっかりと着地した。

ガルムが戻ってきた俺の肩に飛び乗る。


俺は、疾走するヴァルファーンにまたがり、呆然としている御者とテペリに声をかける。

「魔物は討伐した。行くぞ!」


テペリは動揺しながらも返事をする。

御者は、「先ほどの光景はきっと夢だ・・・そうにちがいない・・・」とブツブツ言っている。


俺は、それを気にせず、馬を走らせる。

そんな俺を姫様は馬車の中から見つめていたのだった。


―――――――『リゼン運河』―――――――


俺たちは、リゼン運河に差し掛かる。

『FREE』をしていた時のままであれば、リゼンブルとグラントニアの国境線とされているはずだ。

運河ができる前は、領土問題でもめていたという。


俺たちは、リゼンブルとグラントニアを繋ぐ唯一の橋をこれから渡る。

石造りのしっかりした石橋だ。

両国は、領土問題が解決してから、輸出輸入をする仲となった。

その為、橋には商人の姿が見受けられる。


俺たちは、石橋をゆっくりと進む。

俺は、右後方にいたが、前に出て馬車の右側につく。

『こういう場所が一番危ないんだよ・・・。』


テペリも馬車の左側についたまま、商人たちの様子を伺っている。


『安全地帯だろう』と逆に気が緩みそうになるがそれが命取りになる。

俺たちが護衛しているのは一国の姫だ。

暗殺者アサシン』、盗賊等の危険人物が潜んでいてもおかしくないのだ。


俺たちが、石橋の2/3進んだあたりで動きがあった。


「まさか・・・姫様じゃないかい?」

1人の商人らしき男が左から馬車に近づく。

それをテペリは、妨害する。


「私たちの依頼主になにか御用でしょうか?」

とテペリは芝居を始める。『姫』とは口にしない。


「お顔を拝みたいのですが・・・。」


「ダメです。」

テペリははっきりと断る。


俺は、スキルを発動させる。

『スキル:念話』


『テペリ、時間稼ぎか?』

と俺は、尋ねる。


『!? 念話を使えるのですか?』

テペリは、念話を使える俺に驚いている。

俺は、もう一度テペリに尋ねる。


『もう一度聞くぞ。時間稼ぎされてると思うか?』

テペリは答える。


『おそらくは・・・。 早く渡った方が良さそうです。』

俺も同意だった。

俺は、スキルの発動を切る。

テペリは、商人らしき男を無視し、俺も馬車も前進する。


『やっぱり目立ってんだよ・・・。この馬車。』

俺は、馬車に目をやる。見事なまでの装飾は、金に飢える人間を惹き付ける。

戦闘狂が強者に惹かれるのと同じ理由だ。


俺たちは、石橋を渡り切った。

直後、後ろから身を隠していた盗賊が襲い掛かってきた。


「ひゃはっはっ! てめーらの身ぐるみ全部いただくぜ!」

盗賊から盗賊らしい言動が出たことに俺は、笑う。


「笑ってる場合じゃありません。」

俺は、テペリに叱られた。

『すいません・・・。面白かったんだからしょうがないだろ?w』


テペリは、盗賊の後ろを取る。

「な!?」

盗賊は、驚く。

目の前にいた人物の一人がいつの間にか自分の後ろにいるのだから。

俺は、全然驚かない。鑑定でスキル『絶影』を所持している事ぐらい分かっていたからだ。


テペリは、武器『ダガ—』を振るう。

「さよなら!」

テペリは容赦なかった。盗賊は、首を跳ね飛ばされる。

胴は、頭を探して、暫く、よたよた歩くが運河へと落ちていった。


「行きましょう!」

テペリはそう言って、馬にまたがる。

俺たちは、前進する。

隣国『リゼンブル』まで まだまだ距離がある。

俺たちは、移動速度を少し上げるのだった。


―――――――『中間地点』―――――――


俺たちは、隣国『リゼンブル』まで残り半分の所まで来ていた。

けれど、馬車の馬と疾走するヴァルファーンが限界だったため休憩を取っている。

岩と木に囲まれた場所だが、今の所俺の『探知』に反応はない。


俺とテペリは岩を椅子代わりにして、自分たちで用意していた食料を食べる。

「む! おいしそうですね!」

とテペリは、自分の食料を食べながら、俺の食料を凝視する。


『やっぱり子供だ・・・。』


俺は、ため息をつきながら、食料をテペリに優しく放り投げる。

「え! いいのですか?」

テペリは俺の投げた食料をキャッチし、尋ねる。


「ああ。食べないと背が伸びないぞ。」

と俺は言う。

テペリは、ムッとした顔で俺の食料を食べる。

『最悪の場合は、魔物を狩るさ・・・。』


そこへ馬車に乗っていたはずの姫様がやってくる。

「姫様いけません!!」

と御者が止めるが姫様は近づいてくる。


「私も混ぜて貰えませんか?」

と姫様は言う。


テペリは「こちらへどうぞ!」と座りやすそうな岩へ手招きする。


姫様は、岩に座り込み、お弁当を開く。

中身は豪華な料理がぎっしり詰め込まれていた。

姫様は、弁当を口にする。


「おいし~~。」と言う声が漏れる。


テペリはその様子をジーッと見つめる。

その様子に気付いた姫様が具を取り分けて、テペリに差し出す。

「いかがですか?」


「! よろしいのですか? でも・・・・」

とテペリは言う。

一国の姫から分けて貰うのは気が引けるのだろう。

しかし、フードコートで隠れているとはいえ、尻尾が揺れている。

『欲しいんだな・・・。』


そこへ御者がやってきて止めに入る。

「いけません姫様! 平民風情にそのような行為をしては!」


俺は、御者の発言にむかついた。

『別に御者が権力を握ってるわけじゃないだろ?』


姫様は御者に言い返す。

「良いではないですか!国とは民があってこそ国なのですよ!それを貴方は!」

姫様は立ち上がり、御者に近寄って行く。

御者は姫様の勢いにけおされて、後ずさる。


「それに、先ほど助けて頂いたではないですか!どうして、じいは差別するのですか!」


俺は、差別と言う言葉に反応する。

『やっぱりこの御者・・・見下してやがったのか。』


テペリが姫様と話をしようとしたときもそうだ。

御者は止めに入った。

御者は懸念に思っているのだ。

姫様と平民を触れ合わせたくないのは、王族の品位が問われるからだろう。


「うっ・・・・・それは。」

御者は口ごもる。


「姫様・・・。私は、『奴隷制度の撤廃』なぞ・・反対です。」

御者は姫様に言った。

『奴隷制度の撤廃?』


「私は嫌です・・・。今の暮らしを捨てたくありません。」

御者の様子がおかしい。


「姫様・・・・死んでください!」

御者は、隠し持っていたナイフを姫様に振りかざす。


「姫様!」

テペリは反応が遅れる。

姫様の前に咄嗟に飛び出したはいいが、武器のダガ—を構える時間がない。

ナイフがテペリに迫る。


「テペリさん!?」

姫様は驚愕と同様のなか、テペリの名を叫ぶ。

テペリは、目をギュッと閉じた。『殺される!!』

テペリは覚悟した。


けれど、御者のナイフは、横から投げられた石つぶてに弾かれる。

「グッ!!」

俺が投げた石だ。


俺は、違和感を取り除けてスッキリしていた。

俺は時折、胸のあたりがチクチクしていた。あの棘に刺されるような感覚だ。

あの正体がようやくわかったのだ。


俺は、嫌だと思っても、多少我慢する。多少な――――

でも————気に喰わないものは気に喰わないんだ・・・。


『あの御者・・・。なんか引っ掛かるんだよな。』

と初めて会った時からずっと思っていた。


「俺の勘は間違ってなかった・・・・。」

俺は、小石をを片手にいくつか握り、立ち上がる。

ナイフを握っていた腕を抑える御者。


「俺は、お前が気に喰わない・・・。」

『御者・・・。』


俺は、差別が嫌いだ。

見下されるのが嫌いだ。

俺は、見下され続けてきた―――

俺は、『力』の平等は願わない。人生は己の力で乗り越えるものだ。

俺は、権力の平等化を願っている。それは、不幸な人間を生み出したくないからだ。

『『奴隷制度の撤廃』と言っていたな。俺は賛成だ。』

俺は、姫様を馬鹿だと思っていたが、撤回する。

『馬鹿だけど、良い奴だ。』


「レイダスさん・・・。」

テペリが俺の名を呼ぶ。

テペリの声が震えている。

姫様も震えているようだった。

俺は、どんな顔をしているんだろう。


「今の暮らしを捨てたくない?御者・・・お前はどんな暮らしをしてきた?」

俺は小石をジャラジャラと手の中で動かす。

御者は、ゆっくりと立ち上がり、その場で俺の問いに答えた。


「私は、姫様のお付きを初めて10年経った。

私は上層の優雅な暮らしを手に入れたんだ!

毎日豪華な料理を食べ、遊戯にはまり、それでも使い切れないだけの財を手に入れたんだ!

奴隷とは、上層に住む者の証なのだ!」


ここにいる誰もが御者の発言にこう思っただろう。

「狂ってる。」

俺は、代表して言ってやった。

俺は、御者に小石を軽く投げつけた。

俺の投げた小石は、光の速さで飛んでいく。


御者の右腕が勢いよくはじけ飛ぶ。

「ぎゃあああああ!! 腕がああああ! 腕がああああ!!」

御者は地面に転がる。


「きゃあああああああああああ!!」

姫様は泣き叫ぶ。

テペリは、姫様の視線を御者に向けないようにかがませ、抱きしめた。

「姫様! 大丈夫です!大丈夫ですから!」

姫様の震えがテペリに伝わる。

テペリは、視線を俺にむける。


「レイダスさん! 終わらせてください!」

俺は、テペリの指示に返事をする。


「了解・・・。」

俺は、小石を御者に投げつけた。

光の速さで飛んで行った小石は、御者の頭に直撃する。

御者の頭は、はじける。


「っ!・・・・・・。」

テペリも見ていられなくなったのか目を背けた。

御者の体は地面に倒れる。

『良かったな。死はお前を歓迎するだろう。』


俺は、テペリと姫様に終わったことを伝える。

「終わったぞ。立て。」

テペリは、姫様を支える。

姫様の体はずっと震えている。

長年仕えてきた使用人が自分を刺そうとして、逆に殺されたのだから・・・。


「ど・・・して・・・ですか?」

姫様は震える声で言う。


「どうして・・・殺したんですか?どうして私を・・・殺そうとしたんですか?」

姫様の発言には混乱が見受けられた。


俺は、テペリに提案した。

「テペリ、もう少し先に行けば野宿ができる高台がある。今日はそこで、休もう。

今の姫様の状態じゃあ・・・な。」

俺は、頭をかきながら、姫様から目を背ける。


『惨劇を見せないよう処理すべきだった。』

俺は、考えなしに御者を殺害したことに反省する。


テペリは、俺の提案に賛成する。

「分かりました。馬を1頭残していきましょう。私が馬車の操縦をしますので。」

俺は、疾走するヴァルファーンにまたがる。

テペリは、姫様を馬車に乗せ、出発した。



――――俺たちの隣国行きはまだ始まったばかりだ。――――

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