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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~初依頼編~
33/218

男は、決闘を申し込む!

男は、クレアの事で悩み続けていた。

採取依頼の報告をしに冒険者ギルドに戻らないといけない。『嫌だああああ!!』

男は、クレアの気持ちが分からないと頭を抱える。

男は、クレアの気持ちの籠った言葉を引き出すべく行動に出る。

「クレア。お前に決闘を申し込む!」

『メイサの森 奥地』


「はああああ~。」

俺は、ため息をつきながら、採取をしていた。

何故ため息なんて・・・?と思うだろう。『冒険者ギルドに戻ったら、クレアがいるんだよ!』

依頼の報告は、ギルドの受付でしかできない。


『他の受付嬢はともかく、受付嬢クレアが担当とは・・・。』

受付カウンターの担当は、日によって違う。

『今日に限って・・・・。』


「はあああああ~。」

俺は、またため息をつく。

俺は、昨日クレアに―――――キレた。

キレた後そのまま、冒険者ギルドを立ち去った俺である。

気まずくなるのは当然だ。

なのに・・・・・・

『クレアの奴・・・ケロッとしてやがった!』


受付嬢クレアはいつもと変わらず、無表情を貫いていた。

『気まずいのは俺だけか!? 俺だけなのか!? (2回言う)』


俺は、軽く地面を蹴る。

ドコン!!と音と共に地面がえぐれる。


『ワザとじゃないんだ・・・。加減してるんだ・・・。』


ガルムは、機嫌の悪い俺を気にしてか、今日はずっと肩から降りて、地面を歩いている。

『情けない主人でごめんなあーーー。』

俺は、心の中でガルムに謝罪する。


「お! 『マッシュドカリー』発見。」

俺は、マッシュドカリーの群生地帯に到着した。

事前に群生地帯を発見していたかいがあり、これなら依頼が早く終わりそうだ。

「はあああああ~。」

俺は、ため息をついてから、採取に取り掛かる。


数分後―――――


「これだけあれば、十分だろう。」

俺は、マッシュドカリーを『魔法のカバン』にしまう。

薬草も道中の間に採取したし、依頼はこれで達成だ。でも、俺の気持ちは・・・・


『戻りたくない・・・。』


戻ったら、『受付嬢クレア』がいる!と思っただけで、これである。

冒険者ギルドに戻るたびに憂鬱さに襲われていては、この先俺の精神はズタズタのボロボロである。


『なんとかしなければ・・・・。』

と考える俺。


しかし、ナイスなアイディアの1つすら思いつかず、頭を抱える。

その時、ふと実技試験の事を思い出す。


『アイツ(クレア)は、ライラの事になると感情的になるよな?』

そう・・・。クレアは、妹のライラの事なると感情的になる。

怒り、悲観、恐怖

『実技試験の時のクレアは感情的だった。』

と俺は頷く。


俺は、1つアイディアを思いつく。しかし・・・・・。

『このアイディアは・・・・。』

俺の思いついたアイディアは、これからの俺に関わってくる内容だった。

下手をすれば一生悪評が付いて回るかもしれない。


だが、俺は迷わなかった。

『クレアとずっとギクシャクするよりはマシだ。』

俺は、覚悟を決める。

冒険者ギルドに報告すべく、俺は戻った。


―――――――――『冒険者ギルド』―――――――――


俺は、冒険者ギルドに戻ってきた。

相変わらず、周囲の視線が痛いほど伝わってくるが、俺は、受付に直行する。

そして、受付嬢クレアに依頼を報告する。


「依頼の報告に来た。」


受付嬢クレアは、黙って依頼書と依頼品を受け取り、数を確認する。


「問題ありません。 お早いお戻りでしたね。」

とクレアは無表情に答える。

俺は、少しイラっとしたが気持ちを抑える。


受付嬢クレア少し話がある。」

俺は、話を切り出した。


受付嬢クレアは首を傾げるが、俺はそのまま言葉を続ける。

「昨日の続きだ。 なにすぐ終わる。」

俺は、クレアに他の受付嬢に仕事を任せるよう指示し、「出てこい。」という。

クレアは頷き、後ろにいた他の受付嬢に受付カウンターを任せる。


俺は、クレアを冒険者ギルドから連れ出し、決闘場へ向かう。

俺は、決闘場のフィールドに入る。

冒険者ギルドからギャラリーも付いてきてしまったが 気にしない。

ギャラリーは、決闘場の観客席からこちらを眺める。


俺は、冒険者になってから、目立ちまくっている。

『視線は、気になるがしょうがない。』

噂が本当なのか・・・。確かめたい輩が大勢いるのだろう。


『覚悟はできているんだ。 ギャラリーが付いてくるのも分かっていたことだ。』

俺は、クレアに向き直り、宣言する。


「俺と『決闘』しろ。」

ギャラリーはざわつきだす。『うるさい!黙ってろ!』


クレアは、しばらく沈黙したが、

「良いでしょう。 その決闘お受けいたします。」

と承諾した。


クレアは、腕に武器を装着する。『ヘビー・ガントレット・・・・か。』

クレアの選択職は『拳闘士』職。

拳が武器とも言える職である。攻撃範囲は狭く、遠距離攻撃は魔法しかない。

攻撃範囲が狭い代わりに、攻撃力が高く、lvが上がるごとに、拳の威力は凄まじくなる。


「決闘ルールはいかがしますか?」

『やる気満々かよ・・・。』と思いながら、俺は、ルールを指定する。


1、挑発行為や発言は許可するものとする。

2、周囲の人間を巻き込む攻撃は禁止とする。

3、制限時間はないものとする。

「4、俺が『死ぬ』、またはクレアの戦闘不能で、この決闘は終了するものとする。」


最後の俺の発言にギャラリーがざわめきだす。

「あいつ・・・・なんて言った?」

ザワザワ・・・・・ザワザワ・・・・・・

「命をかける・・・ってのか・・・・?この決闘に・・・?」


クレアは、最後の俺の発言に「正気ですか?」と尋ねる。


『俺のスキルを知らない奴は皆、狂人の戯言だと思うだろう。』

俺には『不老不死』がある。

死にたくても死ねず――――――老いたくても老いず―――――――

俺は、人間であり、『化け物』である。

でも、この『力』は・・・『世界』は神様が俺にくれた大事なものだ。

俺は、『俺の人生』を手に入れる為なら―――――――――――――『なんだってやってやる!』


俺は、不敵笑みを浮かべて「ああ。」と頷いた。

『この決闘はその第一歩だ。』


俺は、この世界に転生してから色んな人間に出会った。

俺は、気づいてしまったのだ。

『その場しのぎで生きていただけ』だと・・・・。


ただ、生きるだけの人生に何の意味がある?

俺には、何もない空っぽだ。あるのは前世の記憶だけ・・・。

そんな人間が困難に立ち向かわず、ライラのように、ガラッドのように、リリィのように――――

『なれるわけがない!』


俺は、逃げるのをやめる!

『だから、クレアどいてくれ・・・。お前との隔たりをなくして、俺は、前に進む!』



クレアは、息を吐くそして、大きく吸う。

「分かりました。 貴方の目的は分かりかねますが、私に決闘を挑んだことを後悔させてあげます。」

クレアは、殺気を放つ。

『そうだ・・・。もっとだ・・・。』

俺は、不敵に笑みを浮かべる。


「さあ! こい!」と俺は、不敵に笑う。

俺とクレアの決闘は始まった。


――――――――『決闘場 フィールド』――――――――


決闘場のギャラリーは魅了されていた。

「すげー・・・。」


「なんだ・・・あいつ!」


ギャラリーの中には、上位ランカーの冒険者も混ざっていた。

彼らが、驚くような光景が決闘場のフィールドで繰り広げられている。


「はああ!」

クレアが拳を俺の顔面に叩き込む!が、俺は片手で難なく防ぐ。

クレアは蹴りを繰り出すが、俺は、後ろに回避。

俺は、クレアの攻撃を避け続けた。


ギャラリーは呆然している。

冒険者として働き続ける者は皆、クレアがライラの姉であることを知っている。

ライラは強い。それは、職がワンランク上というのもあるが、戦闘のセンスが高いからだ。

上位ランカーの冒険者がライラを評価するのはそこにある。

lvを覆せるほどの実力の持ち主。

クレアもそれを持っていた。

以前、俺のようにクレアに決闘を挑んだ冒険者がいたらしいが、返り討ちにされたという。

この世界での実力者の一人を俺は相手にしている。


しかし、数分経った今でも俺は――――――――――無傷。


普通の冒険者なら、数分間の間に拳の連打を浴び、戦闘不能になっているだろう。

俺は、それをいまだに避け続けている。


「うおあ!」

クレアは、拳を打ち出し続ける。

しかし――――――――当たらない。


俺は、不敵な笑みを浮かべたままクレアを挑発する。

「どうした? お前の実力はこの程度か? 妹の実力の底が知れるな!」

クレアの眉がピクッと動く。

俺は知っている。クレアは、ライラの事になると感情が表に出る。

俺は、それを待っている。


「私の妹を!」

クレアは、拳に力を籠める。


「馬鹿にするなあああああ!」

クレアはスキルを発動させる。


『拳闘士専用スキル:剛拳ごうけん


クレアの拳は、俺の頭部に直撃。

ドコン!という凄まじい音が響く。

その音にギャラリーたちは息をのむ。


クレアは内心『やったか!』と思っただろう。


「―――――甘い。――――」

俺は、健在だった。スキルで強化された拳を俺は、片手で受け止めていた。


「!?」

クレアは、距離を取る。

自分のスキルが通用しなかったことへの動揺。

クレアは思考を整える為距離を取ったのだ。


俺は、ゆっくりクレアに近づいて行く。

「これは、昨日の続きなんだ・・・。もっとだ・・・・。」


クレアは、歯を食いしばる。

「もっと・・・・・俺にぶつかってこい!!」


俺の放った言葉と同時にクレアは叫びとも取れる声を上げる。

「うあああああああああああああ!!」

クレアは、俺に殴りかかる。

俺は、避け続ける。


「なんでよ!!」

クレアは、叫ぶ。


「納得できない!!」

クレアは、両の拳を合わせ、振り下ろす。

俺は、後ろに下がって避ける。


衝撃によって舞い上がった砂が風に流される。

クレアは、泣いていた。


「なにがだ・・・。」

俺に攻撃が当たらない事か―――――――

ライラに重傷を負わせたことか――――


「私はあああああああ!!」

クレアは、思うがままを言葉にする。

クレアは叫ぶたび、俺に攻撃を仕掛けた。


拳を受け止め―――――流し――――――


「ライラがあああ!貴方を認めたことがああああああ!!」

クレアは、気持ちをぶつける。

昨日言おうとして言えなかった気持ちを――――


「許せない!!!!!」

俺は、クレアの拳をあえて受けた。

腹部に直撃だった。

痛みを全く感じない。


俺は、クレアを見つめて言う。

「そうか。それがお前の気持ちなんだな・・・。」


俺は、剣を腰から外す。

鞘に納められたままの剣を振るった。

クレアの腹部に俺の攻撃が入る。


俺の一撃は、手加減しても重い。

クレアの内臓が、骨が、簡単に壊れる感触が手に伝わってきた。

クレアは、宙を舞う。

そのまま地面に叩きつけられ、動かない。


「決闘・・・・。勝負あった。」

俺はそう言って、腰に剣を装備し、クレアの傍に行く。

俺はしゃがみこんで、クレアの顔を覗き込む。


「どうだ? 今の心境は?」

クレアは、真っ青な顔をしていたが、俺の質問に答える。


「あ・・まり・・・・よく・・・ありません。」


「だろうな。」

俺は、フッと笑う。

クレアは、散々よけられた挙句、一撃で戦闘不能にさせられたのだ。


「ですが・・・。」

クレアは、辛いだろうに、言葉を続ける。


「すっき・・・・り・・しました。」

クレアは笑顔を浮かべる。

今までの無表情が嘘のようなスッキリとした笑顔。

軽くほほ笑む程度はあっても、こんな笑顔を見たことがなかった。


自分の気持ちが――――――言いたいことが言えた。

きっと、クレアは、悩んでいたと思う。

昨日、酒場で会話をしていた時、クレアは黙り込んでいた。

『言いたいけど、言えない。』

クレアは、相手の意見や気持ちを尊重する人間だと、俺は思う。


ライラの件にしてもそうだ。ライラの仕事は危険な仕事が多い。

心配なら、「やめて」といえばいいだけなのだ。

だけど、クレアは言わなかった。

ライラが黒い番犬として信念を持っているからだ。


クレアは今回の決闘で溜め込んでいた気持ちの一部を言えたのだ。

それでも、俺は良かったと思っている。


『ライラが俺を認められているのが許せない。と言っていたな・・・。』

クレアは俺の事を少なからず良くは思っていない。

ライラに重傷を負わせたのだ。当然だ。クレアは姉なのだから。

それなのに、ライラは、俺の実力を認め、目標としている。

それが許せないのだろう。


とにかく、俺はクレアとの壁が薄くなったと思っている。


「そうか・・・。」

と俺は、返事をする。


俺は、魔法のカバンから、回復のポーションを取り出し、クレアの腹部にかける。

重症だった怪我は、軽い痛み程度までに回復した。


「たてるか?」

俺は、クレアに声をかける。

クレアは「大丈夫です。」と軽く腹部を抑えながら立ち上がる。


俺はここであることを思い出す。

『ギャラリー!?』

すっかり忘れてたと言わんばかりに俺は、観客席を見る。

『全員、口を開けて放心してやがる・・・。』

俺は、軽くため息をつく。

俺は、この際ギャラリーを放っておくことにした。


「戻るぞ。」と俺はクレアに言う。

クレアは笑顔で「はい。」と返事をするのだった。


―――――――――『冒険者ギルド』―――――――――


冒険者ギルドに戻ってきた俺とクレアは受付に向かう。


「すまない。用事は済んだ。」

俺は、受付カウンターの受付嬢に言う。


受付嬢は「いえいえ。このぐらい大したことではありません。」と言う。


「クレア。仕事に支障はないか?」

と俺は横にいるクレアに尋ねる。


クレアはいつものように返事をする。

「問題ありません。 仕事に支障はありません。」

無表情なクレアに『さっきの笑顔はなんだったんだよ・・・。』と言いたくなる。


クレアは仕事に戻って行った。

俺は、今日の分の依頼は終えたので、残った時間で『夢見の森』に一旦戻る事にする。

俺は、冒険者ギルドをあとにした。



―――――――――『冒険者ギルド 俺が去った後』―――――――――


決闘場で俺とクレアの戦闘を見学していたギャラリーが戻ってきた。

「すごかったな! ぜんぜん動きが見えなかったぜ!」


「クレアと戦ってたやつってランクいくつなんだ?」


「あいつDランクらしいぜ!」


「嘘だろ!? どう見ても素人の動きじゃねーぞ!」

と騒いでいる。


そこへ2階からギルドマスターが降りてくる。

「騒々しい! 書類が進まん!」

1階の騒がしさに仕事に集中できないようだ。


ギャラリーの1人が「すいません・・・。」と謝罪する。


「昨日と言い、今日といい・・・一体何事だ?」

ギルドマスターは受付に言って、尋ねる。


「今度は何の騒ぎだ?」

ギルドマスターの問いに口ごもる受付嬢。

持ち場に戻ってきたクレアが同僚の肩に軽く手を置き、微笑む。

それから、ギルドマスターに言った。


「決闘をしておりました。」

クレアは、真っすぐギルドマスターを見つめる。


ギルドマスターは「決闘だあ~~?」と少し呆れ気味だった。

ギルドマスターは「誰と誰が戦ったんだ?」と尋ねる。


「クレア・シュバーン・へレンツとレイダス・オルドレイです。

勝者はレイダス・オルドレイです。」

とクレアは、フルネームを口にする。


ギルドマスターは驚く。クレアの強さを彼も知っているからだ。

彼は、ますます『レイダス・オルドレイ』という男に興味を持つ。

カウンターに両手をたたきつけ、クレアに尋ねる。


「前に言っただろうが! 今度来るときは俺に知らせろと! あいつは今どこにいる!」

クレアが「あ・・・忘れてました。」とうっかりを謝罪。


「ちくしょおおおおおおお~!!」

ギルドマスターは、頭を両手で抱え込み悔しがる。

彼の叫びが、冒険者ギルド内で響くのだった。



――――――そして、これを機に俺の噂は瞬く間に広がる。――――――

――――――冒険者ギルド 期待の新人ルーキー現ると―――――――

神様「ギルドマスター2回も 男に逃げられてるw」

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