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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~初依頼編~
28/218

男は、初依頼を受ける。part2

男は、薬草採取の為『メイサの森』を訪れる。

ガルムに戦闘を任せ、依頼分の薬草は確保した。

そんな時――――――――男の『探知』に反応があった。反応は4つ。

男は、木の上に身を潜める。

『中層 南門』

俺は『解体場』をあとにし、中層の南門まで来ていた。

門は『上層』から『下層』まで直通である。

俺は、『認可証』を持っている。しかし、中層と下層しか行き来ができない。


俺は、中層から下層におり、外へ抜ける。

『なんか懐かしい気がするな。』

昨日王都に来たばかりのはずなのに、懐かしい気がする。


『ライラに連行された時を鮮明に覚えているせいか?』

俺は、顎に手を当てて考える。


そこへ『噂をすればなんとやら・・・。』


「レイダスさーん!」

ライラが走ってくる。

『また連行されるうううう!』

俺は、反射的にライラと反対方向に走る。


「あ! なんで逃げるんですか!? 待ってくださーーい!」

ライラは俺を追いかけてくる。

俺は、ライラと一定距離を保ちながら走っていたがライラの足が途中で止まる。

『ライラの持久力ならまだ走り続けられるだろうに・・・。どうしたんだ?』

俺は、反転しライラに近づく。


「すまない。つい反射的に・・・。」

俺はライラの顔色を伺う。顔が真っ青になっている。

『まさか・・・。』


「いえ・・・ハー・・・。大丈夫です。私こそ・・ハー・・・すいませんでした。」

ライラは笑みを浮かべるか、顔色は悪い。明らかに彼女は無理をしていた。


「実技試験の傷が治りきっていないんだな?」

俺はライラに言う。


ライラは頷く。

ライラは、走っていた足を止めてから、腹部を抑えたままだ。


これは、俺のせいだ・・・。

俺は、実技試験でライラと戦うことになった。この世界で初の対人戦だった。

俺は、『手加減ができない』。

ライラは、重症で留めたが、本当なら死んでいたかもしれない。

生きていたこと自体が奇跡なのだ。

あれから、治療を受けたようだが、完治していなかったらしい。


『これは、俺のせいだ。俺の責任だ。』

前世の俺なら、奉仕なんてしなかったはずだ。


俺は、片手剣を外し、ライラの腕をどかす。

「レ、レイダスさん!? なにお・・・!?」

『触られるのは嫌だろうが・・・我慢してくれ』


「今から、治療をする。嫌だろうが、少し我慢してくれ。」

俺は、ライラにそう言って、腹部に手を当てる。


「っ!・・・・・・。」

腹部に触れられて痛みを堪えるライラ。


俺は、魔法を唱える。本来詠唱が必要な魔法だが、俺には、

『スキル:魔法無詠唱化』

がある為、詠唱時間を短縮することができる。


『聖職者専用魔法第10番:完全回復パーフェクトヒーリング


ライラを中心に魔法陣が出現する。

浮かび上がる魔法陣の模様は、変化を繰り返し、同じ模様を浮かべない。

魔法陣はやがて、ライラに吸収されるように消えていった。


「い、今の魔法は?」

俺はライラの言葉を無視する。


「動いてみろ。」

ライラは、俺の命令で体をくまなく動かす。

最後に痛がっていた腹部に触り、ライラはつぶやく。


「いたく・・・・・・ない??」

ライラは不思議がった。

監督役の全力の回復魔法でも治りきることがなかった怪我が完治したのだ。

『聖職者の回復魔法の中で、一番強力な奴を使ったからな・・・。』

俺は、外していた片手剣を装備する。


「で、俺に用があったんじゃないのか?」

俺は傷が治ったライラに尋ねる。

ライラは呆然としていたが、直ぐに我に返る。


「は! そうでした。 あ!えっと・・・その前に、治療してくださり、ありがとうございます!」

ライラは俺に頭を下げて、感謝する。

『俺のせいなのになー・・・。』

俺が彼女を実技試験で殺しかけた――――。それなのに彼女は・・・ライラはまったく気にしていない。

『敵わないな~・・・。』


「えっとですね! レイダスさんにお伝えしなければいけない事があるんです。 他の冒険者の方にもお伝えしているんですけど、『メイサの森』に行かれるのですよね?」


俺は、「ああ。」と肯定する。


「やはりそうでしたか! 実は、最近『メイサの森』でボアル・ベアの死骸が発見されたんです!

もしかしたら、ボアル・ベア以上に危険な魔物が森に潜んでいるかもしれません。レイダスさんなら大丈夫かもしれませんが、念のためです! 気を付けてくださいね!」

俺は、ライラから注意を受けた。

『ボアル・ベアの死骸と言ったか・・・?』

俺は、ライラに確認をする。


「ライラ。ボアル・ベアがどのように死んでいたか分かるか?」

ライラは俺の質問に不思議そうだったが、「いいですよ!」と言って教えてくれた。


「ボアル・ベアの死骸は、四肢を斬り落とされ、心の臓を一突きにされていたそうです。」

『ああ・・・・。それ俺だわ・・・。』

俺は、項垂れながら、片手で顔を抑える。


「どうしたんですか!? まさか、ボアル・ベアを襲った魔物に心当たりが!?」

『ボアル・ベアの心臓を一突きと言う時点で気づかないのか!?』

俺は、心の中でライラに突っこみを入れる。


「なんでもない。 ちょっと疲れただけだ。」

と俺は、誤魔化す。


「そうですか・・・。では、私は仕事に戻ります! レイダスさんお気をつけて!」

ライラは、そう言って『検問所』へ戻っていく。

俺は、ライラを見送り、そのまま『メイサの森』へ向かう。


その後―――――ライラは、『検問所』で1日中顔が真っ赤だったという。


――――――――――――『メイサの森』―――――――――――――


俺は、メイサの森に足を踏み入れる。


「ガルム今日は、お前のlv上げも兼ねている。戦闘になった時は、お前に任せるぞ。」

俺がそういうと、ガルムは俺の肩から降りて返事をする。「ワフ!」


メイサの森はlv1からlv10代の魔物が生息している。

『ライラでlv20だから、メイサの森の攻略は、ソロで厳しいのかもしれない。(俺を除いて)』

俺とガルムは森の奥へと進んで行く。


「お! 早速、薬草発見。」

木の根元に生えているのを俺は見つけた。

薬草は、木の根元に生えていることが多い。

その為、木の根元を見ておけば、薬草は容易に発見できるのだ。

俺は、薬草をつみにかかる。


すると、奥の茂みがガサガサ揺れた。

俺は、スキルで『探知』系を発動させている。

「ガルム魔物だ。相手をしろ!」

俺は、薬草をつみ、ガルムの後ろに下がる。


ガルムのステータスはこうだ。

魔物/テンペスト・ウルフ/幼体

lv/5 ガルム


体力/1500

防御/ 700

攻撃/ 800

速度/ 800

持久力/1000

魔力/ 500

魔力量/1200

魔法適正/A


状態:従魔


テンペスト・ウルフは元々上位の魔物だ。

lvが低くても、メイサの森のlvならどうにかなるだろう。

あと、俺の鑑定で、相手の強さも把握済みだ。ガルムなら負けるはずがない相手だ。

魔物が茂みから飛び出す。


魔物/赤いレッドスネーク/成体

lv/8


体力/1000

防御/ 600

攻撃/ 900

速度/1000

持久力/1500

魔力/ 400

魔力量/1000

魔法適正/C


赤いレッドスネーク、名前の通り赤い蛇だ。

防御は低いが速度が速く、捕らえるのは難しい魔物だ。

この魔物の最大の武器は、『毒』だ。

『スキル:毒牙』で噛まれると高確率で毒状態になる。


俺は、ガルムの戦闘を見守る。

『さあ ガルム! お前の初陣だ!』


先制攻撃を仕掛けたのは赤いレッドスネークだ。

素早い動きで、ガルムを翻弄する。


「ワフ!?」

ガルムは赤いレッドスネークの速さについていけていない。

赤いレッドスネークの方が速度は上なのだ。


「シャアアアア!!」

赤い蛇は、ガルムに噛みにかかる。


「ガルム! 毒牙だ! 避けろ!」

俺の声にガルムは、上に跳躍。

ガルムは、落下しながら、赤いレッドスネークにかみつく。


「シャア!アアアア・・・・・!」

ガルムのかみつきから逃れようと赤いレッドスネークは暴れまわる。

しかし、ガルムは地に足をガッシリとつけている。

ガルムは顎に力を入れ、牙を深々とくい込ませる。


『体は小さいが、魔物としての本能が働いているのかもしれないな・・・。』


赤い蛇は、徐々に暴れなくなり、ガルムによって命を奪われた。

ガルムは赤いレッドスネークが死んだことが分かると、ボトッと落とす。


「クアウウウン!」

ガルムは、『褒めて褒めて!』と言わんばかりに尻尾を振る。

「よくやった! 来い!ガルム!」

俺の声にガルムは俺の懐に飛びつく。俺は、それを受け止め、ガルムを撫でまわす。


「クウウウウウーン~。」


ガルムは、俺の肩によじ昇り、定位置につく。

俺は、赤いレッドスネークを解体し、素材を回収した。

そして、戦闘を終えたガルムを俺は、鑑定する。

『おっ! lvが上がってる。』


魔物/テンペスト・ウルフ/幼体

lv/7 ガルム


体力/1900

防御/1000

攻撃/1200

速度/ 900

持久力/1500

魔力/ 700

魔力量/1300

魔法適正/A


状態:従魔


ガルムのlvが2も上がり、俺は喜んだ。

俺は、ガルムの頭を再び撫でる。

『このまま行けば、あっという間にlv10代になれそうだ。』


そして、薬草採取を続ける事数時間――――――

ガルムは、魔物3体と戦闘し、lv10になった。


魔物/テンペスト・ウルフ/幼体

lv/10 ガルム


体力/2300

防御/1300

攻撃/1500

速度/1100

持久力/2000

魔力/ 800

魔力量/1600

魔法適正/A


状態:従魔


相手の魔物のlvが低く、lv1ずつしか上昇しなかったが、lv10代になった。

『新人冒険者より強いんじゃないか?』

ステータスの上がり方は『良好』だ。

俺も目的の薬草を十分に採取した為『冒険者ギルド』に戻ることにした。


「ガルム戻るぞ!」

ガルムは俺に近づいてくる。

「ワフッ!」


その時だった――――――――

俺の『探知』に反応があった。反応は4つ――――

『人間の反応だな・・・。近づいてきてるな。』

反応は、確実にこちらに近づいてきている。

『盗賊か?』

俺は『探知』を最大限フルに使った為、頭痛に見舞われる。

『ぐっ! やっぱり慣れない・・・。』

姿までの確認ができなかった俺は、ガルムを肩にのせ、静かに跳躍する。

木の上に上り、気配を消した。


俺とガルムは、静かにその正体を目撃する。

『冒険者か?』

4人の人間が、姿を現した。

俺は、鑑定を使用し、lvと職と名前の3つを割り出す。


人間種/『弓兵アーチャー』職

lv15 名前/リリィ・マクラード


人間種/『剣士』職

lv/15 名前/グラド・マクラード


人間種/『騎士』職

lv/16 名前/アルテール・バラン


人間種/『ヒーラー』職

lv/15 名前/ヴィヴィ・バレッティー


lvは高くない。職を見た所パーティだろう。

リリィとグラドは恐らく兄妹だ。

『同じ茶髪に、『マクラード』だし・・・。』

防具は、カイルたちと似ている。


4人の中で、アルテールが一番目立っていた。『全身白い』防具を着用している。

防具だけなら良かったが、武器の槍や盾も白い。

『なんであんなに白いんだ? 全身赤い俺が言えた義理じゃないけどさあ・・・。』


ヴィヴィ・バレッティーは、水色のフードコートを着ている。フードのせいで顔は見えないが、

オドオドしている。


アルテールがリリィになんか言っている。俺は、気配を消しながら、耳を傾ける。

「貴方とは、もうパーティなんて組めません! 解散です!」

アルテールが、リリィに怒鳴っている。


「それはこっちの台詞よ! アルテールがドレッド・ベアをちゃんとガードして引き付けてくれないから逃げられたんじゃない!」

リリィも負けじとアルテールに怒りをぶつける。


「ふ、2人ともやめてよお~!」

ヴィヴィが止めるように2人に言うが、全く届いていない。


「リリィ!いったん落ち着け! もう一度冷静に話し合おう!」

グラドがリリィをなだめる。


『え?・・・なに?・・・喧嘩・・・? 仲間割れ・・・?』

どうやら、魔物を狩りに『メイサの森』に来たパーティのようだ。

けど、パーティの連携が機能せず、イライラが募り、お互いのせいにしているようだ。

『ドレッド・ベア限定ということは、依頼で森にきたのか?』


ドレッド・ベアの素材納品依頼か、ドレッド・ベアの討伐依頼か・・・。

俺は、悩んだけど『俺には関係のないことだからいいか。』と考えを放棄する。


考えている内に、俺の『探知』に魔物が引っ掛かった。

『この反応は・・・・ドレッド・ベアだな。』

ゆっくりと喧嘩をしているパーティに近づいて行く。

パーティは魔物が近づいているのに喧嘩に白熱していて気づいていない。


『まずいかもな・・・。』

しかし、俺は動かない。

俺は他人になるべく関わりたくない。『信用できないから・・・。』


『ここは、あいつパーティの腕を見せてもらうとするか。』

俺は、外野を決め込み様子を見るのだった。

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