~おまけ~カイルの一夜
カイルは男と別れたあと、ゲイルとイリヤと反省会をする。
実技試験は通過したけど、試験官と相打ちのような終わり方だったカイル。
ゲイルは、カイルが指示されたという男の作戦を聞き、カイルに事実を突きつける。
※おまけなので、ちょっと雑ですw
レイダスさんは言う。
「ああ。構わない。案内してくれてありがとう。 また会う機会があれば、酒でも飲もう!」
俺は、レイダスさんに言う。
「その時は、俺が奢らせていただきます!」
俺とゲイルとイリヤの3人は宿屋―青薔薇―をあとにする。
――――――――『宿屋に移動中』―――――――
俺は、不満だった。
レイダスさんは『お礼なんてしなくていい』って言っていたけど、俺は、どうしてもお礼がしたかった。
レイダスさんと再会したとして、お酒を奢るだけでも足りない。
俺は、冒険者になれた。
それは、レイダスさんのおかげだ。
レイダスさんが俺に『戦い方』を教えてくれた。
もし、レイダスさんがいなかったら俺は冒険者に一生なれなかったかもしれない。
冒険者の道を―――――――あきらめていたかもしれない。
俺は、レイダスさんみたいに―――――
「強くなりたい!」
俺はおもわず大声を出してしまった。
イリヤとゲイルが急に出した大声に驚愕している。
「ど、どうしたの急に? ビックリしたよ~。」
「わ、私もだ。カイル、大声を出すなら前もって言ってくれ。」
ゲイルに俺は注意された。
「ご、ごめん・・・。考え事しててさ・・・。」
俺は、ゲイルとイリヤに謝り、項垂れる。
「どうしたんだ? お前らしくもない。」
元気のない俺を見て、ゲイルが心配そうな表情をする。
俺は、ゲイルとイリヤにいつも心配をかけさせてしまっている。
本当は、『俺のせいで、そんな表情をしてほしくない。』
その為にも『力』をつけたい。
俺もレイダスさんみたいに――――強くなりたい。
俺は、その気持ちをゲイルとイリヤに伝える。
「レイダスさんみたいに・・・・か。」
イリヤがつぶやきながら、遠い目をする。
俺は、レイダスさんの『力』は新人冒険者に収まらないと思っている。
きっと俺が思っている以上にレイダスさんは強い。
イリヤもそう思っているに違いない。
『雰囲気から違うもんな・・・。』
「カイル・・・。それは厳しいと思うぞ。」
ゲイルが断言する。
「分かってるよ・・・。自分がどれだけ無茶な事を言ってるかぐらい。」
今の俺は、『弱い』という自覚がある。
俺は、今回の試験者の中で1番弱かった。
「では・・・。」
ゲイルは間をあける。
「剣の腕を必死に磨かないとな!」
そして、笑みを浮かべる。
ゲイルは、俺を心の底から応援してくれていた。
俺は、幸せ者だ。
イリヤのような幼馴染がいて―――――
ゲイルのような親友がいて――――――
俺は本当に幸せ者だ。
ゲイルが「早速、宿屋に行って、カイルの試験の反省会でもしよう。」と提案する。
「反省会って! 俺合格したんだぞ!」
と俺は他愛ない会話をしながら、宿屋に向かう。
――――――――『宿屋―赤髪ジャレッド亭―』―――――――
俺たちが予約していた宿屋に到着した。
俺たちは、2つ個室を借りている。当然、イリヤがいるからだ。
俺たちは、眠る前に、1つの個室に集まって反省会を開く。
今回の試験の反省会だ。
俺は、宿屋に向かう道中イリヤとゲイルにどんな試験官と戦ったか話していた。
結果、ギリギリな勝利だったことも――――
「レイダスさんの作戦はうまくいっていたんだ。 気配が隠し切れなかった俺が悪いんだ。」
俺が未熟だったから、最後の一撃で相打ちになった。
「・・・・。」
ゲイルは、黙っている。自分から『しよう!』と言ってきた反省会なのに・・・。
ゲイルに声をかける。
「どうしたんだゲイル。黙り込んで・・?」
「いや・・・。改めてお前の話を聞いていると、レイダ・・・いや・・・『オルドレイ殿』がすごい方なんだなと思ってな。」
「?」
イリヤは首をかしげる。
「相手の強さを見抜く洞察力――――地形を活かした戦法。恐らく、オルドレイ殿がこの作戦をカイルに指示したのは、カイル自身の強さを熟知してだと思う。」
「どうしてわかるの?」
とイリヤはゲイルにズイッと顔を近づける。
「む! 説明するから離れてくれないかイリヤ。」
ゲイルは、イリヤから目を背ける。
「ん。わかったよ~。」
イリヤはゲイルから離れた。
ゲイルは一息つき、説明を始める。
「私が思うに、オルドレイ殿は、カイルの防御力を考慮したのだろう。」
「俺の防御力?」
俺は、試験で防具が壊れた為、新しい防具を調達しなければならない。
明日調達する予定だ。
自身の中で、防御力は低くないと思うのだが・・・。
ゲイルの話を聞いていると俺の防御力が低く聞こえる。
「私たち田舎の村出身の者からしたら、鑑定石なんて到底購入できない高価なアイテムだ。
自身の習得したスキルや魔法は発動できるが、ステータスの高さは感覚でしか理解できない。」
ゲイルは淡々と説明する。
「カイルの防御力は、カイル自身が思っている以上に『低い』という事だ。」
俺は、ゲイルの発言に体に手を当てる。
心臓の鼓動が大きく聞こえる。
「俺の・・・防御が・・・低い?」
納得できないが、納得するしかなかった。
「オルドレイ殿の作戦は大きく分けるとこうだ。
1、『ヒーラー』職の試験官の魔力量を減らし、回復に回させない為、
2、試験官の視覚を奪う為だと思われる。」
「それは、俺もレイダスさんから言われた。」
と俺は、ゲイルに言う。
「しかし、カイル。これは、作戦を大まかに分けただけなんだ。細かく分けるとこうなる。
まず、最初に言った。
『ヒーラー』職の試験官の魔力量を減らし、回復に回させない為、
試験官の視覚を奪う為
そして、さらに細かくすると、
カイルの体力をMAX状態を維持し続ける為
最後の試験官による攻撃魔法を想定し、防具の耐久値を高く保つ為だと思われる。」
とゲイルは続ける。
「オルドレイ殿は、カイルの体力をMAXに確実に保ち、最後の攻撃魔法に備えさせた。何故?
もし、カイルの防御力が高ければ、そんな作戦を立てる必要はなかっただろう。
カイル・・・。お前はどう思う?」
ゲイルは俺に振る。
俺の鼓動が、大きくなる。
『俺の防御力が高ければ・・・。必要がなかった作戦・・・。俺の防御力が高ければ、正面から戦えていたのか?』
俺の手は震える。
俺は、やっぱり――――――――――『弱いんだな。』
「レイダスさんは俺の弱点を見抜いてたんだな。」
俺は震える手を力強く握る。
「じゃあ! 明日防具を調達するときに~。 防御の高そうなのを買おうよ! 費用はかさむけど、カイルも冒険者になれたんだし! いいよね!ゲイル!」
イリヤが提案した。
『防御力が低いのなら、防御力の高い装備を着用すればいい。』それが彼女の案だった。
「そうだな。 実力が付くまでは、防具でやりくりするしかないだろう。」
とゲイルがイリヤの案に賛成してくれた。
「2人ともいつもありがとな。」
俺は二人に礼を言う。
俺は2人の頼もしい仲間に支えて貰っている。
俺たちの―――――俺の反省会はこうして幕を閉じた――――――
男「ゲイルの頭の良さと推理力が恐ろしい・・・・。」
男「俺の事・・・。過大評価しすぎ!!」




