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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~冒険者ギルド試験編~
19/218

男は、試験を受ける。part1

男は、筆記試験を通過する。

『予想以上に簡単だった。』

そして、次なる試験は『実技』

実技試験会場は、男がこの世界にきて初めて見る『決闘場』だった。

控室で、通過者各々準備をする中、カイルの様子に異変が――――――――――—

『冒険者ギルド 2階廊下』

俺は、一息ついていた。正直、筆記は自信がなかったのだが・・・・・。


「筆記通っちまった。」

俺は筆記を簡単に通過した。


問題に出てきたのは、レア度の低い薬草や鉱石が入手できる地帯はどこだ?

この剣の名前は?


その程度の問題だった。

『FREEの世界にはまっていた俺からすれば簡単すぎる問題だった。もっと難しい問題が出ると思っていたのだが・・・。拍子抜けだ。こんな問題で落ちる奴がいるのにも驚きだ・・・。』

試験を受けたのは8人。


その内の4人が筆記試験を落とした。

『頭・・・悪そうだったもんな。』

去って行った4人は、冒険者というよりもチンピラのような雰囲気だった。去って行くときに

「やってられるか! んなもん!!」とか言っていたからな。


それとも――――――――—

『この世界全体の平均lvは俺が思っているよりも低く、俺以外で知識を豊富に持ってる者が少ないんじゃないか?』


「レイダスさん!! レイダスさん!!」

試験を受けていた個室の扉が勢いよく開く。

カイルが俺の名を大声で叫んでいる。

『やめろよ!! びっくりしただろうが!!!』


俺は、心の中でカイルに怒る。


「聞こえてるから、人の名を連呼するな。」

『まあ、怒るんだけど。』


「すいません。 それよりも、見てください!」

カイルは俺に1枚の紙を手渡した。


「ん? 筆記試験順位表?」

俺は、紙の内容を確認した。そこには、筆記試験の順位と成績が載せられていた。

問題は全部で50問、合格ラインは35問である。


1位

レイダス・オルドレイ/50

2位

カイル・ラ―ギンス/40

3位

フェノール・スタレイン/36

4位

ガラン・レーガン/35


※筆記試験脱落者は記載しません。


『え? 俺、満点なの?』


「俺、筆記試験2回目なんですけど、満点なんて取れませんでしたよ!?」

とカイルは俺を尊敬の眼差しで見つめる。


「これくらいできなくてどうする。」

出題された問題は『FREE』をプレイしていた者からしてみれば、簡単な問題だった。

逆に解けない方がおかしい。俺はこの時、『FREE』をしていた頃を基準に考えてしまっていた。


「レイダスさんは、博識なんですね!」

俺の台詞にカイルは、ますます目を輝かせる。


『まずい。 余計に油を注いだか。』

俺は、発した言葉を振り返った。

『プレイヤー視点はいけないな。 というかそんなキラキラした目で俺を見ないでくれ・・・。』


俺は、「そうでもないさ。」とカイルに言う。

そこへ、個室にいた残りの合格者2人と受付嬢が廊下に出てくる。


「決闘場へ移動したいと思いますので、私についてきてください。」

そう言って、受付嬢は、スタスタと早歩きで、廊下を歩いて行く。


受付嬢の後ろをついて行く。合格者たち。

カイル以外の合格者の1人が俺に声をかける。


「あんた。筆記試験満点なんだってな! すげーじゃねーか!」

『褒められた・・・。』


「ああ。ありがとう。 えっと・・・。」


「ん? おお! 自己紹介してなかったな。 俺は、『ガラン・レーガン』! こっちの無口は『フェノール・スタレイン』つうんだ。 よろしくな。」

ガランの紹介で、フェノールはペコリと頭を下げる。


「よろしく。俺は、レイダス・オルドレイ。

王都には今日来たばかりだ。」

俺も自己紹介をする。


「そうか! 王都には色んな店があるからな! 冒険者になった暁には見て回るといい!」

ガランはそう言いながら、口角を上げる。


「そうさせて貰おう。 ガランとフェノールはどうして試験を? 見たところ、武器や防具には強化が施されているようだ。試験官を確実に倒すために準備していたのか?」

と俺は訪ねた。


「はっはっはっ!」

ガランは図星をつかれたのか大声で笑う。


「よくみてやがる! そうさ。俺たちは今日のために準備してきたのさ! 俺たちは以前実技で落ちちまってな。実技の決闘ルールは、アイテムを使わなけりゃ どんな装備もOKだからな。」


俺は「なるほど」と頷く。


「レイダスと言ったか? 何故お前は試験を受けた?」

『質問を返されてしまった・・・。』


「ついでだな。」

俺は即答した。嘘はついていない。

俺の本来の目的は、『情報』を『冒険者ギルド』で得ることだ。


それを聞いてガランがまた大声で笑う。

「はっはっはっ! 俺たちが必死に手に入れようとしている冒険者の資格を『ついで』か!

はっはっはっ!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・』


「つきました。ここが決闘場です。」


会話をしている内に実技試験の会場に着いたようだ。

近くで見ると、決闘場と言うだけあって、迫力がある建物だ。

形状は円形で『コロシアム』と似ている。


受付嬢に案内され、『決闘場』の中に入る。

「広いな・・・。」

決闘場に入って初めて実感する。『広い』―――――――—

平地の地面が円形に広がっている。

そして、360度 観客席に囲まれている。


「それでは、試験官の方々をお呼びしてきますので、試験開始まで、控室でお待ちください。」

そう言って、受付嬢は試験官を呼びに行った。


「じゃあ! 控室には俺が案内しますね!」

受付嬢が控室の場所を告げずに行ってしまったので、どうしようかと思っていた俺だったが、カイルが案内役になってくれた。

『控室ぐらい案内してくれよ。受付嬢・・・。』


「ここが控室です。」

とカイルが扉を開ける。

『プロ野球選手の控室かここは!!』

俺は、心の中で叫んだ。

ロッカーや椅子は違うにしろ、配置がそれっぽかったのだ。


俺たちは、各々迫りくる実技試験に向け準備を始める。

ガランは、武器と防具を再度確認している。

フェノールは、『魔導書』を読んでいる。

『あいつ『魔導士』だったのか。鑑定してないからな~。』


カイルは、――――――――――――――――――――――――震えていた。

俺はカイルに声をかけた。

「大丈夫か?」

と肩に手をのせるとビクッと震わせた。


「うわぁ! あ・・・はい。大丈夫です。・・・すいません。」

全然大丈夫ではなかった。緊張のあまり完全に委縮している。

『カイルを見ていると、前世を思い出してしまう。 ボアル・ベアの時といい・・・。』


「青年・・・。いや・・・。」

俺は、カイルにアドバイスしようとした。

戦闘に関してならいくつかアドバイスできるだろう。

俺は『FREE』を長年やってきた『経験』がある。知らない事の方が少ないくらいだ。

でも、『精神面』に関してはどうにかできる自信がなかった。『俺もメンタル弱いから・・・。』

どう対処するのが正しいのか分からない俺・・・・。

しかし、目の前で震えているカイルをどうにかしたい。


俺は、肩で完全に寝てしまっているガルムをそっとおろす。

そして、カイルに面と向かって告げる。

「カイル。今のままだと試験官に負けるぞ。」


「!!」

カイルの表情が青ざめていく。

ガランと、フェノールも今の俺の発言に一瞬手を止めた。


「そう・・・ですか・・・・。」


俺が告げたのは『真実』だ。持久力や速度があっても、相手の攻撃が回避できなければ、カイルは戦闘不能になる。


「不安になるのは、分かる。」


俺は言葉を続ける。不安な気持ちはよくわかるのだ。

この世界で俺は『強者』の側に立っている人間かもしれない。

しかし、過去を忘れる事なんてできない。『辛かった。 痛かった』そんな感情も

思い出さなくなるだけだ。いつしか過去は埋もれていく。忘れるのではない。


『埋もれるだけだ。』


思い出す回数が減るだけなのだ。過去は、刻まれる。

本当に心の底から忘れたいと願うなら――――――――—『死ぬしかない。』


俺は、そう思っている。

カイルにも刻まれているのだ。

『冒険者になれなかったという過去』が――――――――――――—


「分かる?・・・あなたに俺の気持ちが分かるんですか!!」


「俺は、冒険者になるために必死に頑張ってきた! 努力したんだ!! それを『ついで』で試験を受けている人に分かるんですか!!」


カイルは、拳をギュッと握りしめて、俺を睨む。俺は彼の逆鱗に触れた。

反発するよな。俺もカイルの立場なら同じことを言っていただろうな。

『自分より持っているくせに―――――—同情されたくない。!』という怒りや妬み、自分が世界から切り離された感覚が渦巻いている。

逆に言ってくれてよかったのかもしれない。


前世の俺には、『その台詞』を相手にぶつける力すらなかったから―――――—。


「ああ。 分かるさ。俺も散々味わったからな。」


「!・・・・・・・・・。」

カイルは、俺の言葉に驚きの表情を見せるが、一瞬だった。


「俺より持ってる奴が何言ってやがる!!て俺も思ってたよ。」

図星だったのか。カイルは唇を噛みしめてうつむく。


「俺は、命を投げたことがあるんだ。」

俺は語る。思ったこと全てをカイルにぶつける。


「でも、助かって今はこうして生きている。 チャンスを貰ったと思ってるよ。」

助かったのは嘘だ。俺は、人影(神様?)からチャンスを貰ったのだ。

意味としては同じことだ。


「自分の命を無意味に思うな。 自身のやってきた努力を無意味にするな。 努力はいずれ報われる。」

俺は命を捨てた・・・人生をあきらめた。―――――そんな俺にはなるな。

努力は報われる・・・生まれ変わった俺のように――――――――—。


「ゲイルとイリヤもお前を応援している。そう願ってくれている。」

俺は1人だった。

でも、お前は違うだろう?―――――――カイル。


「お前はそれを無駄にするのか? 捨てるのか? 無意味にするのか?」

俺は、カイルに問う。

カイルは、泣きそうな顔で、大きく首を左右に振った。震える声でカイルは言う。


「むいみに・・・・しま・・・せん。俺は!・・・俺は!・・・頑張って!・・・みせます!」

俺はカイルの答えに満足した。

『やっぱり青年は、俺とは違う。』


「そうか、まずはその顔を何とかすることから始めろ! 落ち着いたら作戦会議でもしよう。」

俺は、カイルに作戦会議を提案した。

カイルは、涙を強引に拭って作戦会議に参加する。


ガランとフェノールも

「それは、俺たちも参加可能かな?」

と結構ノリノリだった。


俺は、頷く。

「大歓迎だ。 早速、始めよう。」

実技試験開始まであとわずか・・・。

―――――――――—俺たちの試験はまだ終わらない―――—――――――――—

ガルム爆睡中

「zzzzzzzzz~」

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