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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~男の復讐編~
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七王道血祭パーティだ!part5


「やあ、やっぱり来たんだ。」


ドッドは俺を微笑んで迎える。

自分が殺されると分かっていて、こうも平然としている他人を見た事がない。


『言えた義理じゃないか・・・。』


「ああ、俺の為に死んでくれ。」


俺は、剣を鞘から引き抜きドッドの胸を貫く。

彼は無抵抗に俺の剣を受け入れた。


「本当なら・・・僕は死んでいるから・・・これが正しい。

君に殺される時を待っていたよ。」


ドッドはリゼンブルで一度死を遂げている。

彼の人生は終わりを告げ、本来生きてはいない。


「アインがお前を生かし、連れ帰った意味を無にするのか?」


でも、自分が犯した石化現象に罪悪感すら感じていない彼が―――

フーワールに何としても勝ちたい彼が―――

自殺に近い行動を取る理由が俺には分からない。


彼は「僕は死んでいるからこれが正しい。」と言っていた。

だけど、人間なら一度死のうと二度死のうと生きたいと思うのではないか?


「七天塔に帰って来て・・・思ったんだ。

フーワールを認めさせても越えられない壁がある。」


神は人間に試練を与えると言う。

越えられない壁はない。

誰もが一度は耳にする言葉だ。


「君だよ。」


「俺?」


「うん・・・。君を倒せるイメージが全く沸かない。」


ドッドは眼を伏せて静かに語る。

「世界は僕を中心に回っている・・・。

今でも時折そう思うけど、君を見ると「ああ、違うんだな。」って・・・。

君みたいな人間が世界の中心に立つに相応しい。僕は・・・先に退場するよ。」


潔い彼に俺は言う。

「勘違いするな。世界は残酷で理不尽で、俺達を永遠に苦しめる監獄だ。

未来永劫、俺達に安息は無く、あるとするならばそれは死だけだ。」


「まるで・・・君も死んだ事があるような・・・言い分だね。」


冥土の土産に教えてやるよ―――


「俺は転生者。別世界で死を迎え、この世界に誕生した者だ。」


「成る程ね・・・。通りで眼が死んでいるわけだ。」

ドッドはなにやら納得したようで、笑みを浮かべた。


「僕が問題を引き起こさなければ、

他の七王道を巻き込まずに済んだ・・・のにな。」


「自覚があったのか・・・。」


「自分の性格くらい・・・把握しているさ。

別に悪い事をしたとはこれっぽっちも思っていないよ。」


彼は、手の平を俺の顔に向けて言う。

「ああ、そうだ。僕にはもう必要ない物だから・・・これは君に上げるよ。

好きに使ってくれ。」


ドッドの手の平が青白い光を放つと同時に俺の身体が光りだす。

鑑定で、自分のスキルを確認すると《未来予知》と《メドゥーサの眼光》が増えていた。


「どういう風の吹き回しだ?」


「言っただろ・・・。僕にはもう必要ない物だ。

上げるなら・・・看取る相手に受け取って貰いたい・・・。」


ドッドの背からは大量の鮮血が滴り、血の噴出す量が増加する。

彼の体力は底を尽きかけていた。


「アインに渡さなくて良かったのか?」


「彼はこれから僕と・・・同じ場所に来るんだ。

上げたって・・・それこそ意味がないよ。」


俺は頷いて、剣を引き抜く。


倒れながら彼は言った。

「地獄で待っている。」


ドッドは絶命。

俺は彼の死体を燃やして、独り言を呟いた。


「逆だろ・・・。」


地獄(・・)は俺がいるこの世界だ―――


俺はアンベシャスの様子を見に行くつもりだったが、やめる。

優先すべきはシャールだ。


「でも・・・何処にいるんだ?」


―――ヴァルハラ―――


リーゼルは目を覚ます。

身体は動かないが、確かに彼は生きている。


隣には、ピンク色の長い髪をカールさせた女性が

熱心に他の人間やエルフを治療していた。

汗水たらし治療を続ける彼女の必死さにリーゼルは心を打たれる。


暫く傍観を続けたリーゼルであったが、

戦場でエルフに殺された光景がフラッシュバック。


急に上体を起こした彼は、身体の痛みにもだえた。

その様子に気づいた女性は「安静にしてください!」と注意を促す。


「貴方の身体は、ボロボロです。

他の方の治療が終わるまで大人しく待っていてください。」


「あんたは?」


リーゼルは女性に名前を尋ねる。

自分が生きているのは、彼女のおかげであると直感で理解していたのだ。


「私は七王道が1人シャール・クレスタ。

ヴァルハラ国王ヴェル・フュアレ・三世の救援要請を受け、

貴方達を助けに来ました。」


女神―――


リーゼルはそう口にしそうになった。

頬を微かに赤らめたリーゼルはシャールから顔を背ける。


美しい彼女を直視出来ない・・・。

シャールの周りがキラキラと輝き、彼女をより一層美しく見せる。


リーゼルは一目ぼれした―――


身体の調子が戻ったリーゼルと少数精鋭部隊は、改めてシャールに礼をする。

彼らに差し出せるものは無く、頭を下げるしか出来ない状況に不快だったが、

シャールの笑顔が彼らの不快感を吹き飛ばす。


「私は当たり前をしただけです。人は持ちつ持たれつですので。」


リーゼルは頬を再び赤くするが、彼が横に視線を向けると

他の部隊メンバーも顔を赤くしていた。

鼻の下が伸びていて、みっともない。


リーゼルは、そのメンバーに肘鉄を食らわせノックアウト。

横腹に彼の肘がめり込み、相手は苦しむ。


リーゼルはニヤリと愉悦に浸った。

今一度女神を拝もうと視線を戻す彼であったが、

シャールはリーゼルが肘鉄をかました相手を心配して駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


「は、はい。大丈夫です。」


鼻の下を伸ばしていた相手は、リーゼルにどや顔。

リーゼルは拳を握り締め、「後で覚悟しろよ。」と小さく呟くのだった。


そして、シャールに蘇生された彼らは、

自分達がどのような状況にあるのか彼女から説明を受ける。


新王都少数精鋭部隊の生き残りは、既に王都へ帰還。

ヴァルハラの内乱は終結。

死んだ彼らは、戦争の戦死者として死者名簿に記載され、

新王都に情報が送られたらしい。


「誤情報じゃねーか。」


「国王の配下が勝手に行ったそうです。

待てと言ったのですが、賭けあってくれなくて・・・。」

シャールは軽くため息を吐いて気を落とす。


「俺達が帰還すれば解決するだろ。それに・・・。」


リーゼルはチラリと周囲に視線を向けた。

エルフ達はひそひそと会話をしており、目つきは良い印象を与えない。

内乱の終結に協力した立場の彼らを未だ差別していた。


「あんまり長居はしたくねーしな。」


「そうですね。私もこの雰囲気はちょっと・・・。

宜しければ貴方達と同行しても良いですか?」


リーゼル達は下心丸出しでシャールに振り返る。


「め、迷惑でしたか?」


シャールは迷惑と勘違いして、発言を取り下げようとするが・・・。

リーゼルが止める。


「迷惑なんてとんでもねー!是非とも宜しく頼むぜ。」


シャールは満面の笑みを浮かべて、リーゼルの腕を取る。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


「お、おう。」


果たして彼は彼女のハートを堕とせるのだろうか・・・。

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