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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~男の復讐編~
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七王道血祭パーティだ!part4


国王のいないリゼンブルの現状は深刻だった。

決定権がない貴族達だけでは意見がまとまらず、経済状況は悪化の一途を辿る。

ギルドに依頼が雪崩込み、ギルドマスターのジョナサンは処理に追われていた。


それを察したガラン達は新王都に戻る帰路にある。


「ん?」

ガランは後方に振り返る。

そこには何もなく、ただ平地が広がっていた。


「どうしたんですか?」


「いや、何でもない。」

ガランは最後に「気のせいか。」と呟く。

それは気のせいなどではなく、彼が視線を向けた先には七天塔があった。


七天塔での死闘を彼らはまだ知らない・・・。


少しでも空気を明るくしようと話題を持ち出すガランであったが、

新王都の異変に気付いた一行は血相を変える。


新王都の冒険者ギルドに赴いた彼らは、

憔悴している冒険者達を目の当たりにした。

覇気がなく、意欲というものを感じられない。


「シャーロット様とギルドマスターが死んだ。」


冒険者の一人が呟いた言葉を耳にしたガラン達は驚愕する。


「どうなってんだよ!」


ここまで来たら、誰の犯行か理解できてしまう。


「なんでだよレイダス・・・。」


苦悩に満ちた発言にフェノールは表情を暗くした。

彼らはレイダスが石化現象解決に貢献した事実を知っている。

手配所を出したのは国であり、恨み憎む気持ちも理解出来た。

だけど―――


「やっていい事と悪い事の区別位つけろよ!」


悲痛なガランの叫びにライラは優しく肩に触れる。


「冷静になってください。

レイダスさんを止められるのは私達だけです。」


彼女の発言は正しい。

冷静さを欠いては何も始まらない。

ガランは軽く深呼吸してから自分の頬を叩き、喝を入れる。

気合を入れなおした彼のやる気は十分だ。


「そうだな。ありがとう。」


「いえ、これ位いつでも歓迎ですよ。」


「じゃあ、気を取り直して考えるか。」


彼らは次にレイダスが襲いそうな場所を考える。

石化現象の事件に関わり、レイダスに憎まれる者、

それは―――


「七王道・・・アイン。」

フェノールが口を開く。


「絶対そうだ。間違いない。」


「では、早速・・・て、え?七王道が関わっているんですか?

あの七王道が!?」

「冷静に」と言った矢先にライラは混乱した。


「ああ、あの場には七王道のアイン・ロウネルがいた。

俺はカイル達と部屋から追い出されて、

フェノールはレイダスに付きっ切りだったから、

姫様達と何の話をしていたか分からないんだ。」


ライラは真剣な顔つきに戻り、

「関与しているのは確かでしょう。」と言う。


「七王道が住まわれている場所はここから大分離れた場所にあると聞きました。

でも、方角や位置を私は知りません。」


「それなら、俺とフェノールが知ってるから道案内ぐらいは出来る。

問題は距離だ。」


「そんなに遠いんですか?」


「馬でも最低1週間だな。」


「いっ!?私達は間に合うでしょうか・・・。」

ライラは不安に駆られる。


「流石のレイダスも七王道相手には手古摺るだろう。

それに、フェノールの師匠は強いからな。」


ガランが「な!」と言いながらフェノールに視線を向ける。

彼女は自信ありげに胸を張った。

その様子に自然とライラから笑みがこぼれる。


「分かりました。私はガランさん達を信じてついて行きます。」


ガランとフェノールは頷く。

彼らは出立の準備を始めるのだった。


―――七天塔―――


アインはカイル達と修行に明け暮れていた。

来る日も来る日も剣を振るい、剣術を磨いていく。


ドッドに負け、レイダスに負け・・・。彼のプライドはズタズタだ。


「も・・・ダメ・・・。」


「俺も・・・。」


イリヤは魔力量の底が付き、カイルはスタミナ切れで立ち上がれない。

ゲイルは必死にアインの修行に耐えるが、1時間後に脱落する。


アインは自分の汗を拭いながら、カイル達に言った。

「お前達は少し休んでいろ。私は、4フロアで修行を続ける。」


カイル達は、歩いて行く師の背中を見送った。

そこへすれ違うようにしてアンベシャスが来訪する。


「アインを見なかったかの?」


「うわあああ!?ってアンベシャス様?」


気配を消していたアンベシャスにカイルは驚くが、

驚いたカイルにアンベシャスは驚く。

心臓を押さえ、鼓動を落ち着かせようとするアンベシャスにカイルは申し訳なくなった。


「すみません・・・。」


「き、気にするな。してアインは何処に?」


「師匠なら4フロアに行きましたよ。」


「そうかそうか。では、お主らは修行に励め。」

笑いながら、去って行くアンベシャスにカイルは首を傾げる。


『何だったんだろう?』


4フロアに続く階段をアンベシャスは登っていく。

一歩一歩踏みしめ、何処か遠い眼をしていた。


「生きて帰れるかのお・・・。」


七王道の序列でアンベシャスは下から2番目。

カイネの上に位置している。

実力差はそんなに空いていないが、若干の差が死闘の勝敗を分ける。


4フロアの光が差し込み、アンベシャスは目を細めた。

腕で影を作り、彼は階段を登りきる。


中央に立っているアインにアンベシャスは声をかけない。

彼が気づくまでアンベシャスは黙って傍観した。


一心不乱に剣を振り続けるアインが嘘をつく男には見えない。

しかし、アインに対しての信用はアンベシャスの中で下落しつつあった。


「アンベシャス?」


数分経ってアインはようやくアンベシャスの存在に気が付く。


「いつにも増して熱心だの。」


「ああ、もっと力を付けたくてな。剣術を一から鍛え直している。」

アインは、石化現象について一切触れない。


「ドッドに勝った男が何を言う。」


アンベシャスがそう言うと彼は苦笑した。

明らかな嘘―――簡単に騙されていた自分にアンベシャスは嫌気をさす。


『年の功が聞いて呆れるわい。』

アンベシャスは少し微笑んでアインに言った。


「今日、お主に会いに来たのは、七王道として過ちを犯した者を正しに来たのだ。」


アインは真剣な顔つきでアンベシャスの要件を聞く。


「お主は、ワシらに嘘をついた。

同じ七王道であるならば、嘘をつく必要はあるまい。」


「誰から吹き込まれた?」


「さて、誰だと思う?」

アインとアンベシャスは睨みあう。


アインは歯を噛みしめて、ココにはいない男に怒りを募らせた。

七王道同士の関係を壊し、崩壊させようと企む男を彼は許せない。


そんな歪んだ考えを読み取り、アンベシャスは言う。

「違うだろう。全てお主が招いた結果だ。

不毛で無駄な戦いを持ち込みおって・・・傍迷惑にも程がある。」


「私は七王道を守ろうと・・・!」


「お主が守ろうとしたのは己のプライドだ!

七王道を舐めるのも大概にしろ!このわっぱが!」

アンベシャスの怒りの咆哮にアインはたじろぐ。


「何も怒り心頭なのはお主だけではない。ワシの機嫌を悪くさせるな。」


アンベシャスは銃を抜いて、アインに突きつける。

彼も又、大剣を突きつけた。


「序列第6番の分際で私に説教を垂れるな。

私は決して過ちなど犯していないし、道を違えたつもりはない。

改心させたくば、私を打ち倒していけ!」


アンベシャスは鼻を鳴らす。

「お主こそ偉そうな口を叩くな。まだ頂きを知らんのはお互い様だ。

まあ、逃げたお主には一生辿りつけんだろうがの。」


「私がいつ逃げた!?」

アインは声を荒げる。


「ドッドを倒したと洞を吹き七天塔に逃げ帰ったではないか。

本当は、あの男が恐ろしかったのだろう?」


「黙れ・・・。」


「あの男がドッドを倒した。自分が勝てないドッドをあ奴が倒した。」


「黙れ・・・。」


「限界を・・・知ってしまったのだろう?認めてしまったのだろう?

あの男には勝てないと―――」


「黙れ!」

アインは大剣を横に一閃。

アンベシャスは容易に彼の攻撃を避け、距離を取った。


「ワシもそうだ。あ奴に勝てる者はいまい。フーワールもドッドもあの男に殺される。」


「まさか・・・あの男に手を貸しているのか!?」


「如何にも、あの男との約束で貴様を殺せばワシは生かされる。

あの男をあらゆる手を使って殺せぬなら、

お主を始末した方が手っ取り早い。」


アインは歯を噛みしめる余り歯ぐきから血を流す。

「アンベシャス・・・。貴様は七王道として失格だ。」


「元々、老体のワシが救世主なぞ柄ではない。

逆に下りられてせいせいしとる。」


「・・・もう、何も言わない。私は己の責務を全うするのみ。」

アインは大剣を正眼に構える。


「ふむ。まだ七王道ごっこ(・・・・・・)を続けるか。哀れだわい。」

アンベシャスは銃口をアインに向けた。


「このコインが床に落ちた時を合図とする。覚悟は出来とるな?」


「上等だ。」


アンベシャスは金のコインを弾き飛ばす。


2人の間に流れる短い静寂―――。


彼らの心の準備はそれだけで十分だった。

七王道同士であろうと、道を阻む者には容赦しない。

人間として戦士として・・・彼らは敵の命を奪う。


コインが床に触れた瞬間―――


彼らは同時に動き出す。

アインは最高速度でアンベシャスに向かって走り出す。

アンベシャスは装填していた銃弾をアインに放つ。


七王道同士の死闘がここに開幕した。

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