七王道血祭パーティだ!part3
アンベシャス・モルガノールは、男を恐れていた―――
男の動体視力、身体能力共に驚かされた彼だが、右足と肩を撃ち抜いたのだ。
戦意喪失をさせられたに違いない・・・。
彼はそう踏んでいた。
だが、彼の予想は大きく裏切られる。
男は痛覚が麻痺しているかのように至って平然としており、
自分に対して強気な姿勢を示す。
『もう一度、撃ち抜くか・・・?』
彼は背後に銃を隠している。
男を一瞬で撃ち抜くのは容易だ。
しかし、彼は目を丸くして行動に移さない。
チラリと男の肩が見えたのだ。
自分が撃ち抜いたはずの肩の傷が既に完治している。
七王道にもない超回復能力を有する男に彼は驚愕していた。
彼が一度に放てる銃弾数は6発―――
男の間合いに入る前に自分が男を仕留められる自信が彼にはなかった。
理由は他にもある。
カイネが戻ってこないのだ。
アンベシャスとカイネは同行する事が多く、先程も男が来るまで他愛ない会話をしていた。
無断で孤島に侵入した男を殺しに向かった彼女が戻ってこない。
それは、彼女の死を意味する。
七王道の中で弱いとされる彼女だが、それは七王道内での話であり、
七王道以外の人間に彼女が負けるはずが無い。
すなわち、彼の眼前にいる男は七王道の実力と同等、又はそれ以上の可能性がある。
彼は直感で男が強く、異様であると理解していた。
声のトーンが段々低くなり、殺気に満ち満ちていく男に恐怖心を抱く。
アインが男に濡れ衣を着せた事実を知った彼は、
アインを殺す代わりに生かしてもらう約束をする。
男に下僕と言われようと他の七王道に恨まれようと彼は気にも留めない。
何故なら、生きられるからだ。
彼は年老いた人間であり、残り寿命が短い。
最後位好き勝手に生きたいと誰でも思う年齢だった。
思い浮かべるのは、アインを殺した後の余生・・・。
放浪しながら、気ままライフを送る―――それが、彼にとっての幸せだ。
微かに口元を笑わせていた彼だが、すぐさま真剣な表情に戻る。
これから七王道内序列第3位の人物と死闘を繰り広げるのだから・・・。
「行ったか。」
俺は、柱の影から顔を出す。
アンベシャスが俺の下僕としてアインを殺しに行った。
彼の実力でアインに勝てるとは思えないが、手傷を負わせられるのならそれでいい。
精神的なダメージも受けてくれれば万々歳だ。
「次は、シャール・クレスタか。」
七王道が1人シャール・クレスタは、ヒーラー職の上位、《聖女》職である。
lv90は、確立で左右される蘇生魔法《黄泉天鈴》を使用できるlvで、彼女も使用可能だ。
蘇生に失敗すれば死体は灰となり消え失せ、成功すれば体力1で復活する。
博打のような蘇生魔法である事からlv100に到達したプレイヤーは《死体蘇生》へと
使用する蘇生魔法を切り替える。斯くいう俺もその1人だ。
「・・・とその前に。」
忘れる所だった・・・。
俺は七天塔の最上階にある宝物庫を探す。
「お!あったあった・・・。」
純白の門を俺は開門する。
中には金銀財宝が溢れていた。
売り払ったら莫大な富を得られるだろう。
俺は、金銀財宝を魔法のカバンに収納し、気になったレアアイテムを手に取る。
―――鑑定―――
厄災の魔導書:魔導書/レア度:10/稀に呪い効果を相手に付与。
王道を貫きし者:銃/レア度:14/攻撃、防御、速度を大幅向上。
運命のコイン:消費アイテム/レア度:12/指定した面が出た場合、願いを叶える。
世界級魔物召喚巻物:消費アイテム/レア度20/強敵をフィールドに出現させる。
カリーヌの苗木×5:消費アイテム/レア度:10/大地から吸収した生気で体力を回復。
等・・・。
俺が最も気に入ったアイテムは、
王道を貫きし者:片手剣/レア度:14/攻撃、防御、速度を大幅向上だ。
今の片手剣武器を《王道を貫きし者》に変更し、俺はシャールの元へ向かう。
シャールの管理する七天塔最上階に赴いた俺であったが、
彼女はこの孤島にいないらしい。
『探す手間を取らせるなよ・・・。』
「孤島にいないのなら仕方ない。」と俺は割り切り宝物庫を漁る。
―――鑑定―――
王道を貫きし者:杖/レア度:14/魔法回復量、防御を大幅向上。
世界級魔物召喚巻物:消費アイテム/レア度20/強敵をフィールドに出現させる。
カリーヌの苗木×5:消費アイテム/レア度:10/大地から吸収した生気で体力を回復。
不術の小太刀:消費アイテム/レア度:20/斬りつけた相手に呪い効果を付与。
不術の小太刀を手に入れた俺は、内心で笑みを浮かべていた。
小太刀が付与する呪い効果は絶大で、『FREE』でも恐れられていた。
実際、自分の身で受けた事が無いので、どれだけ強力かは未知数だが、
嬉しい収穫だ。
「シャールがいないとなると・・・。」
アインはアンベシャスが殺しに行った。
ならば―――
「次はセレスチアンだ。」
俺は、七天塔を駆け下りる。
その頃セレスチアンは、自分が管理する七天塔最上階で身を震わせていた。
「寒い!」
それが悪寒であると理解していなかった彼女は、ワザとらしく身をくねらせる。
弟子を失った彼女は自分で自分を騙さないとやっていられない。
それだけ、彼女は他人に飢えていた。
愛を与え、愛を得たい彼女にとって、弟子の消失は痛い。
他人に飢えすぎる余りに生じた彼女の隙に俺は感謝する。
獰猛な獣の動きを予測するなど知を有する人間には困難極まりないのだ。
彼女の槍さばきに法則は無く、避けられた後の攻撃力はカイネに次ぐ。
俺の速度を最大限に発揮すれば、一瞬なのだが・・・。
壁に激突する自信がある。
その為、俺の本領は出せない。
瞬間的にlv200程度にステータスを抑えている。
差があろうとそれを覆す存在が七王道であり、『FREE』で中々勝てなかった所以なのだが、
『よく勝ってたよな。昔の俺・・・。』
なんとなく自分を賞賛したくなった俺である。
そして、俺は最上階に到達。
セレスチアンに斬りかかった。
隙だらけの背中めがけて斬りかかった筈なのに、彼女の槍が目の前にある。
彼女は背を向けたまま槍だけを後ろにまわしていたのだ。
「乙女が落ち込んでいる時に刃物を向けちゃダメってお母さんから習わなかったの?」
俺は前世の親を思い出す。
「習う訳が無い。」
逆に殺してやりたかった。
セレスチアンは、片足を軸に回転し、俺を吹き飛ばす。
俺は空中で宙返りして態勢を立て直した。
「まあ、そんな怖い顔をしないで。」
彼女は微笑む。
「私と楽しいお話をしましょう。」
彼女の目が据わった瞬間、違和感を感じたが直ぐに消失。
その事から状態異常系のスキルか魔法を使用されたと理解した。
「俺に《魅惑》は効かない。」
「あら、残念・・・。」
《スキル:魅惑》異性を虜にする女性限定のスキルだ。
魅惑状態に陥った者は、発動者の手足となり、貢ぐような行動に出る。
「お前は《幻惑》も持っているだろう。何故、そっちを使わない?」
「貴方に関係ないでしょう。」
セレスチアンは頬を若干膨らませ、不快感を抱く。
『どっちにしても俺には効かないからいいか。』
俺は、再び斬りかかろうとするが、意外な発言を耳にして動きが止まる。
「・・・貴方に見込みがありそうだから、その・・・弟子にしてあげようと思って。」
「は?」
「だから、弟子よ弟子!私の弟子になりなさい!」
大人びた風貌とは裏腹の言動に俺は首をかしげた。
『弟子ならそこらた辺で拾えばいいだろうに・・・。』
と思った俺はそこでハッとする。
「弟子に逃げられたのか?」
セレスチアンがビクリと肩を動かす。
俺は確信を突いてしまったらしい。
「うっ、うるさいわね。弟子にならないなら殺してあげるわ。」
彼女はキレだして、槍を振り回す。
弟子が逃げたのは彼女の所為だ。
『それを俺のせいにするとは、許さん。』
俺は、槍を受け止めて刀身を側面にそって切り返す。
反応が早い彼女は咄嗟に槍を回転させ、己の手を守った。
俺の追撃は止まず、俺は彼女を攻め立てる。
「くっ!」
壁際に追い込まれた彼女は苦しい声を上げる。
俺は留めの一撃を与えた。
「終わりだ!」
「ああああああ!」
彼女は肩から足にかけ両断されたが―――
「がっ!?」
それは俺も同じだった。
セレスチアンと同様の切り傷が俺に深深と残る。
俺は、この現象を知っていた。
「《生体連結》・・・。」
《生体連結》は、相手と自分を繋ぎ、同じダメージを与える。
手に視線を向ければ、ジャラジャラと鎖が音を立ててぶら下がっていた。
鎖の名は《死王の鎖》と呼ばれる消費アイテムの一種だ。
「いつの間に?」
死にかけていた彼女は回復アイテムを服用し傷を癒す。
笑い声を上げながら、俺に説明した。
「貴方が私に斬りかかった時、巻きつけたのよ。
失敗したらどうなるかとひやひやしたわ。」
「やってくれるな。」
《生体連結》はどちらかが死亡するまで継続する。
「さあ、私と踊りましょう。」
弟子を失った彼女の螺子はどこか飛んでいた。
自分を刺し、切り裂きながらも彼女は笑みを絶やさない。
回復アイテムを服用しては、自分を傷つけた。
苦痛に表情を歪ませる俺の姿を彼女は想像する。
「どうだ!」と言わんばかりに顔を上げた彼女は「え?」と声を漏らす。
「なんで平然としているのよ!」
痛みはあった。俺が攻撃した時は―――
《生体連結》の欠点は、自分の傷が相手に反映されるのではなく、
ダメージ量が相手に反映される事にある。
俺の攻撃力は凄まじい。自分で自分を斬ったのだから当然だ。
だが、セレスチアンの攻撃力は俺の防御力より低い。
つまり、彼女が自分を傷つける行為自体が無駄なのだ。
俺の防御力が彼女の上を行っている以上、俺の勝利は揺るがない。
「俺が強いからだ。」
セレスチアンは、か細い息を吐く。
「信じられない・・・。」と声を震わせていた。
「七王道の私達より強い人間がこの世界にいる筈が無い!」
「固定概念に囚われ過ぎだな。目の前にいる人間が何よりの証拠だろう?」
セレスチアンは、自分の腹部に槍を突き立てたまま動きを止まる。
「弟子を探す前に、自分を見つめ直すべきだったな。」
俺はセレスチアンを、より絶望の淵へと叩き落す為、カバンから銃を取り出す。
先程俺が手に入れた銃だ。
「そんな・・・嘘よ。だって、剣士職は・・・。」
彼女の言いたい事は良く分かる。
しかし、これが現実だ。
「じゃあな。セレスチアン・・・。」
俺は銃弾を彼女の脳天にぶち込む。
俺も同時に絶命するが《不老不死》がある限り、俺は不死身。
起き上がった俺はセレスチアンの死体を燃やした。
カイネ、セレスチアンを殺し、アンベシャスはアインと同士討ちの予定。
よって、残るはフーワール、ドッド、シャールの3人。
俺の復讐は順調だ・・・。
だが、アンベシャスがアインを殺し損ねた場合を考慮するなら―――
「残り4人。」
俺は次の七天塔へと足を運ぶのだった。




