男は王都へ行く!・・・はずが連行されたーライラverー
『ライラ・シュバーン・へレンツ』
王都グラントニアを守る『黒い番犬:ブラックドギー』
ライラは男と出会う。
※ライラ視点のお話です。
『王都グラントニア 検問所』
「ライラ書類が片付いたのなら、見回りをして来てくれないか?」
「了解しました! 行ってきます!」
私は上司であるウェルダンさんの指示で今日も元気に見回りに出る。
私は『王都グラントニア』の『黒い番犬:ブラックドギー』王都を守る番人!!
私たちの職柄から『黒い番犬:ブラックドギー』と呼ばれるようになりました。
私のメインの仕事は、怪しい人物を追跡したり、手配書の人物を捕まえることです!
しかし、今回は、見回り!
『認可証なしで王都に入ろうとする人物』を発見し、『検問所』に案内することが私の今回の役目です。
私が、正門付近を歩いていた時でした。
肩に小さな『従魔』をのせている『金髪の男性』を発見しました。
頭には、背中まであるであろう長くて赤い布をまいていて、
身につけている洋服や防具も赤く、よく見れば質が高いことが分かりました。
『レア度の高い素材で作られているんだな~。』
とちょっとうらやましくなりました。
私が着用している『黒い騎士服』は
中がゴワゴワしていて寒い日には最適なのですが、暑い日なんかは汗がべとべとして気持ち悪い。
私と同じ仕事をしている同僚たちもきっとこの男性の防具や服を見ればうらやましくなるだろう。
しかし、私は思うのです。
あれだけ目立つ格好をしていれば、誰だって視線がいく。
『自己アピールなのでしょうか?』
私はそんな事を考えながら、男性に近づきました。
長年、この仕事をしてきて、彼のような男性に認可証を渡した記憶や履歴がないのだ。
「ああ! ちょっと待って! そこの君!!」
私は、男性を呼び止めました。彼はこっちに気付いて振り向きます。
「俺に用か?」
私は、彼に説明しました。
「認可証をお持ちですか? 認可証をお持ちでない方は国に入ることはできません。」
しかし、彼は私をじーっと見てなにやら考え事をしているようでした。
「あの~、話を聞いていますか?」
「あ! すまん。少し考え事をしていた。」
彼は、我に返りました。
「すまんが、もう一度話してもらえないか?」
と説明を求められたので私はもう一度彼に説明します。
「はい! 王都に入られるのですよね? 王都に入るには、『検問所』でいくつか『話し』をした上で『認可証』が発行されます。 お手数をおかけするのですが『検問所』まで一度来ていただけますか?」
彼は、コクリとうなずきました。
私は、彼の了承を得て、彼を『検問所』に案内します。
ですが、私はこの時やってはならない事を彼にしてしまいました。
私のメインの仕事は、『怪しい人物を追跡』したり、『手配書の人物』を捕まえることです。
その癖で、彼の左腕をがっしりと掴み『連行』する形で検問所に連れて行ってしまったのです。
検問所に着いた時には、彼は憔悴しきっていて、私は『やってしまった!』と後悔しました。
私は周囲の空気を読むのが下手です。自覚はあります。
彼はきっと周囲から『犯罪者なの?』という目で見られたはず、彼はその視線を感じたのでしょう。
椅子に座り込んだまま、暗い雰囲気を出す彼に私は、謝罪しました。
「す、すいませんでしたああああ!!」
私は自身の犯したミスに泣きそうになりました。
その横にウェルダンさんが立ちます。
「私の名は、ウェルダン・マルクダーン。部下が失礼な事をした。私からも謝罪をさせて頂きたい。」
ウェルダンさんにまで迷惑をかけて・・・私の心は痛みました。
涙があふれてくるのを私は必死に耐えました。
「はい・・・。大・・丈夫ですから・・・お気になさらず・・・。」
彼は、『気にするな』と憔悴しながら言いました。
それを聞いて、私の心はさらに痛みました。
「私のこの部下は空気を読まないのだ。追跡や犯人を捕まえることにかけては一流なのだが、時折、他人にこうして迷惑をかける。」
ウェルダンさんは、涙目になっている私の頭を鷲掴み、再び頭を下げさせました。
私はそれに驚きながらも謝罪しました。
「ひやああ!! 本当にごめんなさいいいいいいい!!」
必死に抑えていたであろう涙が限界を迎えました。
『うええええ~ーーーん』
私は心の中で泣きました。
頭を下げたまま泣く私を哀れに感じたのか 彼はウェルダンさんに言いました。
「大丈夫だ。変な噂は流れないように考慮はしてくれるんだろ? それに、『検問所』で認可証を受け取ってからじゃないと王都に入れないことを知らなかったんだし、それを知らなかった俺も悪い。」
私はそう述べる彼に少し驚きました。
私のミスで、周囲から不快な目で見られたにもかかわらず、許してくれたのだ。
私は今回のようなミスを沢山してきました。一度も謝罪をして、相手に許してもらえたことなどありません。
ウェルダンさんが彼に言います。
「そう言っていただけるとこちらとしてもありがたい! ライラ!御仁に感謝するといい!」
ウェルダンさんは鷲津掴みにしていた私の頭を放しました。
私は髪を整え、涙を拭いました。
そして、感謝の意を示しました。
「私の名は、ライラ・シュバーン・へレンツ!私の失態をお許しいただきありがとうございます!
以後このような失態がないよう精進致します!」
私は真剣な眼差しで彼に感謝しました。
私の失態を許してくれた御仁だ。私は、もっと成長して、仕事をやり遂げたい!
その気持ちを全て言葉のせて彼に言いました。
私はこの仕事が好きだ。
『私は私の人生を悔いがないように生きたい!!』
彼は私をじーっと眺めてからボソッとつぶやきました。
「――――――――――――――――。」
「え?」
私にはそれが聞き取れませんでした。
彼は、椅子から立ち上がりました。
「いや なんでもない。只の独り言だ。 『認可証』発行してくれるんだろ?」
独り言――――—
そう言う彼ですが、私は気になって仕方がありませんでした。
私の勘になるのですが、彼の気持ちが籠っていたような気がしたのです。
「はい。 中層までの『認可証』をお渡しさせて頂きます。」
ウェルダンさんはそういうと認可証を彼に手渡しました。
彼は、カバンに認可証をしまいます。
「じゃあ、俺は行かせてもらう。」
彼は、『検問所』をでようとドアノブに手をかけた時でした。
「あ、あの!!」
私は彼を止めました。彼の動きも同時止まりました。
『私何してるんだろ!?』
私は自分で何故 彼を止めたのか理解できませんでした。
『心臓がバクバクする・・・・・・・。』
「なんだ? まだ何かあるのか?」
彼は私を見ます。
「貴方のお名前をお伺いしても・・・?」
『わ、私ほんとに何してるんだろ!?』
彼からすれば、彼を不快にさせてしまった私とはあまり会話をしたくないはず。
「―――――――――――――――。」
彼は、戸惑ったようでした。
私は、彼の様子を見て言いました。
「えっと、無理にとはいいません! 名乗りたくなければ別に構いません! 私が気になっただけですので!」
認可証を発行し、渡すのに、名前は関係ない。
認可証を受け取る者に危険がないことが証明できれば、それでいい
それが、ルール。
私が言ったように『気になっただけ』なのです。
「―――――――――――だ。」
「・・・・・・・え?」
彼は、小声で名前を言いました。
しかし、聞き取れませんでした。
さっきのようにまた独り言だと言って行かれてしまうと私は思っていました。
けれど、彼はもう一度ちゃんと聞こえるように名前を教えてくれました。
「俺の名は、レイダス! 『レイダス・オルドレイ』 だ!」
私は彼をどれだけ見つめていただろう。
去っていく彼の後ろ姿をずっと眺めていました。
ここに来た時憔悴しきっていた彼でしたが、去っていくときの彼は堂々としていました。
私の胸はまだ動悸がおさまらない。
『私はどうしてしまったのだろう・・・・。』
ライラ・シュバーン・へレンツは男に『恋』をした。
ウェルダン「ライラどうした? 顔が赤いぞ?」
ライラ「はっ! あ・・・いや! なんでもないです!!」
ライラ『レイダス・・・さんの あの表情が頭から離れない~!!』
ウェルダン「・・・・・・・・・・」
ウェルダン『風邪か?』




