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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~石化現象編~
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《石化現象》を解明せよ!


王城へ向かう道中、俺とアランはドッドについて話し合う。


アイン曰く、ドッド・レネゲストは、弓兵職で遠距離戦闘を得意とするらしい。

視界に入った相手を石化させる《メドゥーサの眼光》も厄介だが、

《スキル:未来予知》が拍車をかけている。


接近戦に持ち込めたとしても、《メドゥーサの眼光》を使われれば、

一瞬で決着がつくのだ。


「あの2人には、正直参っている。事件を引き起こした原因が馬鹿馬鹿しい。」


俺は「同感だ。」と頷いた。


『FREE』での彼らには、

運営の設定とプレイヤーとの戦闘しか役割を与えられていなかったが、

この世界での七王道は救世主とされ、平和を乱す悪を断罪する存在らしい。

トーリカの森を破壊していた俺を止めようとしたアインの行動がそれだ。


だが、七王道の1人であるドッド・レネゲストの性格は

好奇心旺盛、そして自己中心的。

彼からしたら、世界の平和はどうでも良いのだ。


だって、世界は自分を中心に回っているのだから―――


世界が自分の都合に合わせて修正されると思い込んでいるドッドは、

未だに私利私欲を満たすべく、行動している。

早急な対応が必要だ。


しかし、範囲を拡張した《気配探知》にドッドの反応はない。

夜、リゼンブル近郊に姿を現すのなら、日が昇っている内に情報収集するべきだ。


そこで、俺達は二手に分かれた。

カイル達は住民達から情報を集め、俺達は国王から現在状況を確認する。


アインはカイル達と誓約を交わしており、彼らに異変が会っても感知が出来る。

移動手段のない彼を俺がフォローするのだ。


仲の悪い俺達はドッドについて話し合って以降、無言で歩くが、

建物同士の間に石化している住民を発見する。

アインは血相を変えた。


石化した住民に駆け寄ろうとする彼を俺は止める。


「助けたいのは山々だが、今は無理だ。」


《メデゥーサの抗体》は10本。

石化した人間を元に戻せば、戦闘分が枯渇する。


アインは歯を噛みしめ「すまない。」と呟いた。


―――リゼンブル 王城―――


俺達は、リゼンブルの王城に訪れる。


『相変わらず荘厳だな。』


俺が門に視線を向けると

シャーロット・ツヴァン・グラントニア護衛時に使用した馬車があった。

馬は荒い息を上げ、しゃが見込んでいる。


『姫様がいるのか?』


馬が疲弊している事からリゼンブルに急いで来たのだろう。

俺が馬車に気を取られている間に、アインは門番に事情を説明する。

彼らは、素直に俺達を通してくれた。


俺はアインに視線を向ける。

『救世主様様と言った所か。』


王城の門が開けられ、俺達は王城内に足を踏み入れる。

その時、俺は違和感を感じた。


「変じゃないか?」


「何がだ?」

アインは、俺に向き直り首を傾げる。


言葉にしようもない違和感に俺は戸惑う。

俺はアインを置き去りに急ぎ足で歩き出した。

王城内の廊下を歩き、部屋という部屋の扉をこじ開ける。


俺の行動にアインは混乱。

「一体どうしたんだ!?」と俺に尋ねる。


「お前は気付かないのか?周囲をよく見ろ。

使用人や王族がいる筈の王城内が静かな筈が無い。」


王城内は、静かすぎた―――。


俺は、最後に立派な扉を蹴破る。

その先に広がる光景にアインは驚愕し、絶句。


俺達の眼前には石化したリゼンブル国王、皇子、貴族達、

そして、グラントア現国王シャーロット・ツヴァン・グラントニアの姿があった。


「どうなっている?」


「知るか。」


門番は、通常通り業務をこなしていた。

つまり、彼らは王城内の(・・・・)状況を知らない(・・・・・・・)


「この状況を知られるのはまずい。」


「分かっている。《魔法/第5番:壁離遮断》。」

俺は魔法を唱えた。


《壁離遮断》は、指定した部分に壁を形成する魔法だ。

これで、俺達のいる部屋に誰も入って来れない。


「まさか、国王を石化するとは・・・。」

想像もしていなかった出来事に俺は目を伏せる。


「いや・・・これはドッドの仕業ではない。

彼は自己中心的ではあるが、それだけの理由で国王を石化しない。」


「ドッド意外に完全な石化が可能という結論が出るが?」


「そうなるな。」


自信のある彼に俺は尋ねる。

「奴を信じるのか?」


「七王道は互いを理解している。私の見解に狂いはない。」

アインはそう言って、辺りを物色し始めた。


―――その頃―――


住民達に聞き込みを行っていた筈のカイル達はリゼンブル周辺の森にいた。


事件発生時、住民達は就寝しており、ドッドを目撃していない。

「有力な情報が得られない。」と思った彼らだが、

リゼンブル近郊で日常的に採取をしている住民と遭遇する。


その住民によれば、「少し離れた先に大樹がある。」らしい。

石像が沢山置かれ、不気味に思った彼は、採取場所を近頃変えたのだった。


「うう~・・・。」

イリヤは真っ青な顔をして口に両手を当てる。


彼らの周囲には、石像が幾つも置かれていた。

恐怖に表情を歪めた石像を見る度、イリヤは吐き気に襲われる。


「イリヤ・・・耐えるんだ。」


カイルも真っ青な顔をしており、説得力が無い。

彼女は木の陰に顔を隠し、吐いた。


ゲイルは2人の心配をしながらも石像を調べる。

彼は、石像の表面をコツコツと叩いたり、心臓の鼓動を確かめた。


叩いた感触と石像の重さ―――

そして、鼓動が無い事実―――


ゲイルは石像から目を伏せた。

視線を下に向けた彼は、地面に落ちている奇妙な物を手にする。


「石化した杖?」


握り部分を残し、石化した杖をゲイルは木に投げつけた。

杖は、ぶつかった衝撃で粉々に砕ける。

彼は砕けた破片を拾い上げ、杖の中心部分を確認した。


「内部まで浸透しているな・・・。」


「うわああああああ!?」


ゲイルがまじまじと杖の破片を眺めているとカイルの悲鳴が聞こえる。

イリヤとゲイルの2人は、急いでカイルの元へ駆けつけた。


「カイル!」


「大丈夫か!?」


カイルは腰を抜かし、震えている。


「あ、あれ・・・。」


彼が指さした先には、更地が広がっていた。

更地の中心には2体の石像があり、男の石像は槍を・・・。

女の石像は魔導書を握りしめている。


カイル達3人は、石像と化している2人の人物を知っていた。


「ガランさん・・・フェノールさん・・・。」

イリヤはその場で崩れる。


石化現象の謎は深まるばかりだ。

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