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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~石化現象編~
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新しい家族が増えました


俺は、ログハウスの2階で《メドゥーサの抗体》を生産していた。

ガルムが俺の隣に座り、様子を伺う。

遊んで欲しいのか、そわそわと身体を動かしていた。


「これだけあれば十分だろう。」


生産した《メドゥーサの抗体》は10本。

1本につき1度だけ石化付与効果を解除出来る。


この消費アイテムがこの世界にあるのは、恐らく七王道ドッド対策の為に

『FREE』の運営者が設けた物だ。

絶対攻略不可能なゲームをする人間はいない。

ゲームには必ず、突破口が存在している。それが《メドゥーサの抗体》だ。


俺は、ログハウスの2階から下りて、外へ出ようとする。

そして、ドアノブに手をかけた時、ガルムの耳がピクリと動いた。


「ガルルルル・・・。」


ガルムは、扉の先に向かって唸りだす。

何の気配も感じない俺は、平然と扉を開けた。


そこには、1人の老人が立っている。

執事服を着こなした老人は、首のネクタイを直し、俺にお辞儀してこう言った。


「お久しぶりにございます。ご主人様(マイロード)。」


「誰だ。名を名乗れ。」


俺に執事服を着た老人の知り合いはいないし、

夢見の森には俺の魔法が数重に施されている。

侵入出来たとしたら、あいつら(・・・・)と同類か、それ以上の存在だ。


他にも気がかりがあり、|俺の中の何かが大人しすぎる《・・・・・・・・・・・・・》。

俺が敵と認識した相手には決まって騒ぎ出すあれが、老人に対して反応を示さない。


『敵じゃないのか?』


俺が警戒心を和らげた頃合いを見て、

執事服を着た老人は自分の名を口にする。


「私の名は、セラス・ティロ・アンデルセン。

ご主人様(マイロード)が生み出した精霊(・・)でございます。」


俺は、彼の発言に驚愕する。


「あの精霊(・・)か!?」


「左様でございます。」

彼は肯定した。


セラス・ティロ・アンデルセンは、

ファルゼンの監視をさせる為に俺が生み出した精霊だ。

役目を終えた精霊を、俺は消さずに夢見の森の管理をさせていた。


「自我を持ち、人間の姿に化けている理由はなんだ?」


生み出した精霊は自我を持たず、発動者の命令に従順に従う傀儡だ。

何らかの原因で自我が芽生えたとしか説明が出来ない。

彼は、俺の問いに答えた。


ご主人様(マイロード)の《スキル:存在固定》により、

私の存在はこの世界の生命体として認知されるようになりました。

自我に関しましては《存在固定》で生じた副作用でございます。」


俺は、自分にツッコミを入れた。

()、無自覚使用かよ!』


俺はスキルを感覚的に使いがちで、こうして墓穴を掘る。

自分の落ち度に俺は落ち込んだ。


「もし、俺が消えろと念じたら、お前は消えるのか?」


「いいえ。《存在固定》で一生命体として活動している以上、

ご主人様(マイロード)の念で消失出来ません。

ご不快であるならば、即座に死にます。」


セラス・ティロ・アンデルセンは、自我を得ながらも俺に忠実だった。

ご主人様と俺を崇める彼に《悪意探知》を使うまでもない。


「死ななくていい。精魂が尽きるまで俺に仕えろ。」


「畏まりました。ご主人様(マイロード)。」

彼は俺にお辞儀した。


「それでは、仕える身として僭越ながら、仕事をさせて頂きます。

ご主人様(マイロード)がご帰宅されるまで、森の管理を含め、ログハウス内の清掃を致します。

それ以外で、何かご命令はありますか?」


「そうだな・・・。ガルムがお前を警戒している。

俺が帰ってくるまでに仲良くなれ。」


「畏まりました。」


俺は、ガルムに向き直り頭を撫でる。


「ガルム、セラスは俺達の敵じゃない。仲良くしてやれ。」

そして、立ち上がると同時に《念話》を飛ばした。


『怪しい動きを見せるようなら、殺せ。』

ガルムはコクリと頷いた。


「じゃあ、後は任せる。」

俺は、《空間転移》を発動させカイル達の元へ戻るのだった。


―――トーリカの森―――


カイル達は、突然現れた俺に驚愕する。


「レイダスさん!?一体どこから!?」


驚く彼らとは反対にアインは冷静だった。

「《空間転移》も出来るのか。」


「当然だろ。お前は使えないのか?」


「生憎、七王道は全員、移動系魔法やスキルを使えない。」


lv90の彼らが移動系魔法やスキルを使用出来ない理由は幾つか想像できる。

その中で最も可能性が高いのは、

『製作者である運営者の設定が固定され、新しいスキルと魔法を習得出来ない。』だ。

俺の憶測が当たっているのなら、彼らに思考以外の成長はない。


「そうか。では、俺がお前達をリゼンブルまで送ろう。」


俺は、スキルを全体化し、《瞬間移動》を発動させる。

リゼンブルに着いた彼らは呆然としていた。


「まさか、《瞬間移動》か?」


「当然だ。」


アインは頭を抱えて、落ち込んだ。

「伝説のスキルの使用者が目の前にいるなんて・・・。」


『《瞬間移動》が伝説?』


lvの高い『FREE』のプレイヤーが全員使用出来る《瞬間移動》が

伝説扱いされている事に、首を傾げた。


「凄い!凄い!私達リゼンブルにいるの?」


「間違いない・・・。ここはリゼンブルだ!

あの建物見た事がある!」


アインとは対照的にカイル達のテンションは高い。

《瞬間移動》の凄さに感激しているようだ。


「はしゃぐのは勝手だが、ドッドを探さないと被害が拡大するぞ?」

俺の言葉に彼らは我に返る。


「そ、そうですね・・・。」


「申し訳ありません。」


「さて、アイン。お前が指揮を取れ。」


「己が分を弁えているようだな。」


偉そうにするアインに俺は言う。

「俺が指示を出すよりドッドに詳しいお前が指示を下した方が的確だ。

それと、敗者は勝者の言う事を聞くものだ。精々俺に楽をさせろ。」


俺は、アインの頬に剣の鞘をグリグリと押し当てる。

彼は、眉間に皺をよせ、眉をぴくぴくと動かす。


「良いだろう・・・。次は私が勝つのだ。精々胡坐をかいているがいい。」


アインは、俺の鞘を払い、指示を出す。

説得力があり、威厳のある発言に弟子のカイル達は「はい!」と返事をした。

カイル達は散開し、その場に残ったのは、俺とアインだけだ。


「私達は、王城へ行くぞ。」


俺とアインは王城へ向かうのだった。

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