モンスターパレードpart1
「どうしてこうなった!」
俺は、数多の魔物と戦いを繰り広げていた・・・。
――――時間は遡り2時間前――――
俺は、凛香達4人と別れた後、夢見の森のログハウスに帰宅した。
ガルムは就寝しており、起こすのは少し気が引ける。
そこで、俺は転移を使用し外に出た。
「王都以外の場所に行ってみるか。」
王都で何かが起こると踏んだ俺は、王都以外の場所を目指す。
珍しく俺の勘は外れる事になるのだが、それを知るのはまだ先の話しだ。
俺が足を踏み入れた場所・・・。
そこは、旧王都グラントニアから西へ行き、砂漠を超えた先にある。
《ブエノス大森林》
広大な森の中に遺跡が点在しており、神秘的な雰囲気が心を躍らせる。
『FREE』をしていた当時、
プレイヤー同士で遺跡の調査が行われたが、謎が解明される事はなく、
公式サイトにもこの遺跡について語られる事はなかった。
その為、星波の丘以外で来たかった場所ランキングの上位に君臨している。
俺は、遺跡の壁画を眺め、視線を動かす。
「変な絵だな。」
独特な絵と言えばいいのだろうか。
昔の人が好んで描きそうな絵だ。
猿のような人間のような絵が神々しい存在に土下座をしている様子に俺は首を傾げる。
遺跡の奥に進んで行くと、今にも崩れそうな天井に大きな黒い龍が描かれていた。
よく見れば、それは、龍ではなく蛇だった。
「ウロボロスか?」
前世でウロボロスは、《死と再生》つまり、不老不死の象徴とされていた。
自分の身に宿る物は、ウロボロスと同様であり、同類だ。
視線を戻すと四方向にそれぞれ入り口があるのに気が付く。
「んー。どっちに行こうか・・・。」
迷った場合は、《瞬間移動》で脱出出来る為、行き先は直ぐに決まった。
「真っすぐで。」
直線に来たのだから、帰りも直線で戻ればいい。
シンプルな考えに自画自賛する俺であったが、後にそれが俺を後悔させる。
壁画を眺めていると床に亀裂が入る。
しかし、壁画の絵の解読に集中する俺はそれに気が付かない。
壁画は戦争の様子を描いていた。
様々な生き物が武器を手に1つの存在に立ち向かっていく。
「何と戦っているんだ?」
壁画は横に伸びており、終わりが見えない。
奥に進む度、床に亀裂が走る。
似たような壁画が続いたが、終わりが近づく。
彼らが戦っていたのは、
神々しい翼を持った2人で1つの存在で、
武器が容易に弾かれている様子が描かれていた。
「こんなのに、勝てるのかよ?」
何を思ってこの壁画を描いたのか謎過ぎる。
解明する気でいたが、俺は断念した。
『引き返そう。』
そう思って、振り返った時「ピシッ!」と音が鳴る。
俺はようやく床の亀裂に気が付いたのだ。
亀裂はどんどん広がり、遺跡は崩壊を始める。
俺は舌打ちして走り出す。
「飛行の方が早いか?」
俺は魔法を唱えた。
「《魔法/第7番:飛行》」が――――
「発動しない!?」
床は崩落。
俺は、遺跡の地下深くに落とされた。
「うおああああああ!?」
目を覚ますと辺りは暗く、闇が支配していた。
俺は、魔法で明かりをつけようとするが、手の平に炎が現れない。
「どうなってる?」
俺は、別の手段としてカバンから鉱石を取り出す。
《光明鉱石》暗闇の中を照らす鉱石で、松明と違い永続的だ。
鉱石で当たりを照らすと遺跡の残骸らしき物体が転がっている。
上を見上げれば、鉱石の光が届かないのかとても暗い。
「大分深くまで落ちたんだな・・・。」
俺は取り敢えず、歩き回る。
途中で人骨らしき物を発見するがスルー。
「ん?」
歩き回って、30分程だろうか・・・。
目の前に神殿のような建物を発見する。
階段を登り、神殿内に足を踏み入れると設置されていたランプに火が灯る。
俺は、警戒するが特に何も起こらない。
神殿内は、広く静かだ。
奥には一振りの剣が刺さっており、刀身は光を帯びている。
「あからさまに、抜けって感じだな。」
俺は、怪しむ事もなく、剣に近づく。
剣を握ろうと手を伸ばした時だった。
視界が揺れる。
「ぐっ!」
幻覚が見えた俺の視界に、1人の男が映る。
持っていた剣を床に突き立てた男は、その場を去って消えて行った。
気が付けば、俺は剣を握っている。
後は抜くだけだった。
「うおらああああああ!」
剣が抜かれたと同時に刀身に帯びていた光は霧散する。
代わりに風が発生し、刀身を包み込んだ。
さらに、刀身部分は透明化によって、消える。
「高性能だな。」
俺は鑑定を行ってみた。
―――鑑定―――
神殺しの剣/レア度不明/攻撃不明
俺は首を傾げた。
『FREE』の世界で《神殺しの剣》は存在しない。
発見例も無ければ、製作例もないのだ。
「この世界特有の武器か・・・。
というかレア度不明、攻撃不明ってなんだよ!」
測定不可とは異なり、不明の場合は、攻撃力やレア度の強弱が発生する。
攻撃する度に数値が変化する為、与えるダメージ量はランダムなのだ。
「これは、戦闘に使えないな。」
俺は剣をカバンにしまい、神殿の外に出る。
そこに待ち構えていた魔物に俺は驚愕した。
「何だこの数!?」
100や1000どころではない。
10000以上もの魔物の群れが待機していたのだ。
《魔物の祭り》
『FREE』でも存在する多種多様の魔物が一軍として集まる魔物の祭典。
レイド戦として用いられるそれは、1人や2人で勝てるものではない。
「魔法で一掃できるか試してやる。」
俺は腕を前に出し、手の平を広げた。
「《破滅の魔導士専用魔法/第10番:雷神の一撃》!」
魔法は不発。
やはり、魔法はこのエリア限定で使用出来ないらしい。
《魔法不可エリア》と呼ばれるその場所では魔法は使用できず、
アイテムや物理的な対抗を余儀なくされる。
「と言っても、魔法系統のアイテムを持ち合わせてないんだよな。」
スキルも試しに発動するが、コレもダメ。
如何やら《スキル不可エリア》も展開されているらしく、脱出は絶望的だ。
「実力で勝てと言われている気分だ。」
魔法やスキルは便利すぎる。便利すぎるからこその油断・・・。
生じた隙・・・。
俺は息を吐き、片手剣を手に魔物へとゆっくり接近する。
「ステータスは、変動していない。」
俺は、久しぶりの緊張感を味わう。
そして――――
戦闘は開始された。




