表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~予兆編~
131/218

ルーナ―ン観光


『ぐおおおおお・・・頭いて~・・・。』

アルに案内されながら俺は、頭痛と吐き気に悩まされていた。


振動が身体に伝わる度に脳が揺れる。

吐き気を必死に抑えるが、堪えられず、近くにあった空の樽に吐き出した。


「うおえええええ~・・・。」


アルは、顔色の悪い俺に近づいて尋ねる。


「お主、昨晩酒を飲んどったろ。」


「記憶にない。」

とはっきり答えるものの、再び吐き気に襲われ、

樽の中に吐き出した。


「酒臭いか?」


「少しな。原因は恐らくコレだろう。」


アルが取り出したのは、空になった《酒瓶》だった。


「ああ・・・そうだった・・・忘れてた。」

俺は昨日の記憶を一部取り戻す。


宿屋へ向かう道中、ドワーフ秘伝の酒が売っていた。

それに興味を惹かれた俺は1本購入。

カバンの中に有る筈の《酒瓶》が無い事から、

アルの言う通り、俺の体調不良は酒の所為らしい。


「ドワーフの酒は、《付与》に分類される。《酔い無効》があろうと防げん。

酔いが付与された以上、暫くは我慢だわい。」


俺は溜息を吐いた。

付与は、相手に効果を与える事を指す。

この場合、酔い状態は付与と断定され、俺に効果を発揮した。

状態異常、デバフと断定されれば、頭痛や吐き気にならずに済んだのだが、

今回ばかりは俺の落ち度である。


「まあ、そう長く継続せんから半日したら落ち着くだろう。」


「だと・・・助かる。」


前世の俺は、酒に強かった。

その為、酔い状態を甘く見ていた節がある。

いい教訓になった・・・。


少し吐き気が収まった俺は、樽から離れる。

俺達は再び歩を進め、ダングレスト広場に向かった。

広場に近づくに連れ、騒がしさが増し、空中に物が飛びかう。


ジョッキ、棍棒、鍋、鉱石・・・等


『種類が豊富すぎて覚えきれん。』


その内の1つが俺の横顔にクリティカルヒット。

ピンク色の果汁が顔から滴る。


《ベリーベリー》と呼ばれる食用アイテムの一種で、

見た目はドリアンだが、味はラズベリーである。

夢見の森のログハウスでデザートとして食していた。


「アル・・・。ドワーフ達は、物を投げ合って何をしているんだ?」


俺は飛んでくる物体を避けるが、時折当たる。

酔い状態がまだ解除されていない俺の動きに切れはない。

当たっても平常でいられるのは、酔いのせいで、怒る気になれないだけだ。


「昨晩、この辺りで揉め事でも会ったんだろう。

ドワーフは喧嘩をするとな、物を投げ合うんだ。」


「これでは、周りに被害が出るだろう。」


「大丈夫だ。どちらかというと全員喜んで飛び込んでいくわい。

ドワーフは騒がしいのが好きだからの。」


「・・・・・・」


「着いたぞ。ここがダングレスト広場だ。」


俺は、旧王都での決闘演武大会を思い出した。

屋台が並び、店に客が押し寄せる光景。

それと非常に酷似していた。


違うとすれば、建物の側面が少し黒ずんでいる事と

鉱石や武器、防具関連を販売している店が多く、

建物の煙突から煙が上がっている事ぐらいだ。


「ドワーフの国だから、当たり前か・・・。」

俺はぼそりと呟いた。


「順当に見て回れば、日暮れまでには見終わるだろう。」


「分かった。」


俺達は、アルの案内で店を順番に見て回る。

掘り出し物を発見したり、珍しいアイテムを入手できたり、豊作だった。

そんな中、ある店で俺の足が止まった。


「あれは?」


「ん?ああ、あれはメルヴィーの店だ。一風変わった素材を売っていてな。

只、高すぎて買えんのだ・・・。」

アルは、肩を竦めた。


俺は、店に並べられたアイテムの1つを手に取り、鑑定する。

《真祖の血》と表示されたそれは、

ドワーフ達のlvでは絶対に入手不可能なアイテムだった。


「アル。メルヴィーというドワーフは強いのか?」


アルは首を横に振って否定した。

「いや、ワシと大して変わらんはずだ。」


・・・だとしたなら、可笑しな話しだ。

邪神に身を捧げた人間が魔物として存在進化した姿《真祖》からしか

入手出来ない貴重アイテムがこんな場所に有る筈がない。


《真祖の血》が貴重と言われる由縁は、

空気に触れると蒸発する事にあり、専用のアイテムがないと決して取れない。

それが、俺の手にしている小さな小瓶。

そして、《真祖》の推定lvは90とされており、

lv100のプレイヤーでも討伐は困難だ。


「そうか・・・。」


『取り合えず、貴重に変わりはない。』

俺は購入を決め、店に足を踏み入れた。


「この品を購入したい。」

俺は、レジに座っていたドワーフに話しかけた。


「・・・ん?あ~、その品かい?200ギニーだよ。」


『・・・あれ?』


「なんだい?あたしの顔に何かついてるかい?」


俺は我に返った。

「いや、破格の安さに驚いただけだ。」


「そりゃあ、そうさ。なにせ使い道のないアイテムだしね。」


『使い道のない?』

俺は、深く追及はせず、購入を終えた。


「買えたか?」


「まあな。」


俺達は店巡りを続けた。

その道中、俺は、アルに質問する。


「何故、使い道のないアイテムを店に置く?」


彼曰く、

「使い道がないのではなく、使い道が不明。」なのだと言う。


店側としては、用途が不明な以上、金額のつけようがない。

そして、用途が不明な品を早々購入する客もいない事から、

比較的安価に設定される。

そうでない物に関しては、非常に高く、手が出ない程だ。


ドワーフ達は、日々アイテムの効果を研究しているらしいが、

それでも、分からない事は多々あるらしい。

より良い武器と防具を作り続ける。それが彼らの生き方であり、

その為には、先ず使用するアイテムについて知る必要があった。


メルヴィーの店に《真祖の血》が置かれていたのは、

使い道を知る者が購入する時を待ち望んでいたのかもしれない。


そして、所々立ち止まって、店内を見ていた結果・・・日が暮れた。

それでも有意義な1日を過ごせた事に俺は満足している。

宿屋に戻った頃にはすっかり酔い状態も治っており、清々しい気分だった。


「ワシらの国は気に入ったか?」


「ああ。良い国だ。」


アルは豪快に笑った。


「他にも見所はあるのだが、すまんが、ワシは退散せねばならん。」


アルは、急用が出来たらしく、案内はこれ以上出来ないらしい。

思い返せば、ダングレスト広場で、彼は他のドワーフと話しをしていた。

友人か知人の類だろう。


「そうか。案内に感謝する。楽しい観光が出来た。」


「なーに。大した事はしとらんわい。

次に会う機会があれば、ワシお勧めの酒場で酒を飲み交わそう。

楽しみにしとるぞ!」


アルは、そう言いながら、宿屋を後にした。

やはり、ドワーフはドワーフだ。

陽気に去って行った彼に俺は笑みを溢す。


それから3日間、俺はルーナ―ンに滞在するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ