男の帰宅後
男が『夢見の森』に戻った後、青年は目を覚ます。イリヤとゲイルに状況を聞かれるが『記憶改変』により、当時の出来事を思い出せないでいる青年――—カイル。
憶測や推測であるもののゲイルは『助けてくれた人物』がいるという可能性をカイル伝える。
『メイサの森』
「う・・・・・・・・俺は、何をしてたんだっけ?」
カイルは目を覚ました。
すっかり日は昇り、木漏れ日が差し込んでくる。
昼ぐらいだろうか?
カイルは上半身を起こす。
防具や服はボロボロで、腹部の肌が露出している。
「俺・・・・冒険者ギルドの試験に落ちて・・・・それで・・・」
ショックのあまり『メイサの森』まで来てしまったことは覚えている。でも————
「うっ! その先が・・・・思い出せない。」
ボアル・ベアに襲われ殺された所から
男により蘇生され、生き返った所までカイルは何も覚えていなかった。
『第8番:記憶改変』
思い出そうとするたびに頭痛が襲う。
カイルはふらつく足で立ち上がる。
「イリヤとゲイルの所に戻らないと!」
きっと二人とも心配している。
俺はふらつく足で歩きだすが、すぐにつまずいた。
「うあ!」
派手に顔を地面にぶつけた。俺は、片手で顔を抑えながら、つまずいた先を見る。
そこには、『茶色の大きな塊』が転がっていた。
「なんだ・・? うわああ!?」
俺は、それを見て驚く。
「ボアル・ベア!? え? なんで!?」
「ボアル・ベアは駆け出しの冒険者には絶対に勝てないと言われている魔物だ。
そんな魔物がなんでこんな場所に!?」
俺はよく見るとそれが死んでいることに気付く。
四肢が斬り落とされ、仰向けに倒れているボアル・ベア。
残っているのは頭と胴だけ、そして心臓を『一突き』
酷い殺され方をしていた。
見ていて、俺は気持ち悪くなって吐いた。
「う、うおええええ!」
「心臓を刺してから、四肢を斬ったんじゃない。四肢を斬り落としてから心臓を貫いたんだ!」
ボアル・ベアの心臓部分を見ると、心臓を容易に貫通していた。
俺程度の武器じゃ浅い切り傷をつけるのが精いっぱいだ。
「一体誰が・・・?」
『命をもてあそんだようなその惨状』にカイルは「酷い奴もいるんだな・・・。」
とボアル・ベアを哀れむのだった。
「お~~~い!! カイルー!!」
「イリヤの声だ!」
俺はイリヤの声がする方へと駆け出す。
木々を除け、茂みを掻き分けた先に彼女はいた。
「イリヤ!!」
「カイル!! 良かった無事だった!って・・・どうしたのその恰好!?」
イリヤが驚くのも無理はない。防具と服はボロボロ、腹部分の肌が露出しているのだから。
ハラワタをボアル・ベアに食べられていたことを忘れてしまったカイルからすれば、自分でも
どうしてこんな格好をしているのか不思議なぐらいだ。
これではまるで変質者だ。
「イリヤ!見つかったか!ってどうしたんだその恰好!魔物に襲われたのか!?」
イリヤの声を聞きつけて、ゲイルもカイルの元へとやってきた。
カイルは『驚くよな~』と心の中で言う。
俺は説明する。
試験に落ちてから、ショックのあまり走り続けたこと、そうしている内に『メイサの森』まで来てしまったこと。
すると、ゲイルがカイルの話に疑問を抱いた。
「お前がメイサの森に魔物と遭遇しやすい時間帯に入ったのは理解した。お前も無事で良かった。が、そうするといくつか分からないことがあるな。」
「というと?」
「俺は別に嘘なんてついてないぞ。」
俺は嘘なんてついていないのに嘘つき呼ばわりされたようで腹が立った。
「そう怒るな。まずは私の話を聞いてくれないか?」
ゲイルは、冷静になれと俺に言う。
確かに俺は冷静じゃなかった。俺はおとなしくゲイルの話を聞くことにした。
「まず、カイル・・・お前は目を覚ました時、死んでいたボアル・ベアの横にいたんだな?」
「ああ。目が覚めて二人の元に戻ろうと思って歩き出した時だ。茶色い塊につまづいたんだ。」
「それがボアル・ベアだったんだろう?」
「ああ。」
「ただの憶測にすぎないのだが、カイル・・・お前、ボアル・ベアに襲われたんじゃないか?」
「「!?」」
イリヤと俺は驚いた。
「ただの憶測だと言っただろう。お前は恐らくボアル・ベアに襲われて、瀕死の状態に陥ったんだ。」
俺は、ゲイルの話を聞いて少し納得する。
防具と服がボロボロなのが証拠になる。
「そして、瀕死に陥ったお前を見つけた者がボアル・ベアを倒した・・・おそらく、その者は回復系のアイテムか回復魔法が使えたのだろう。そして、お前を治し、その場を立ち去ったのだろうな。」
俺はメイサの森にはいってからの記憶がない。ゲイルの言った内容は説得力があった。
でも、俺の中で一つ納得のいかないことがあった。
「俺は、俺を助けてくれた人に感謝している。だけど・・・・」
俺は、ボアル・ベアの死体を見た。四肢は斬り落とされ、心臓を貫かれた死体を――—
「あんな・・・殺し方・・・。」
命を弄ぶような殺し方に俺は納得がいかなかった。
「カイル。今は命があっただっけでも喜ぶべきだ。」
「そうだよ。 私はカイルが生きていてくれて嬉しいよ・・・。」
ゲイルとイリヤはカイルと同じ村でずっと一緒に過ごしてきた。
カイルの気持ちが手に取るように分かっていた。
『カイルは優しい。』
カイルは自分を襲ったボアル・ベアを哀れんでいる。
冒険者を目指す者なら、魔物の命を依頼で奪うことや生活を維持するために殺すことは日常的にあることだ。しかし、素材や依頼目的ではなく、只々、理由もなく『命』を奪う行為にカイルは苛立ちを感じていた。
『苦痛と恐怖を抱きながら死んでいったんだろうな。』
記憶があれば、そんな哀れみの気持ちを抱かなかっただろう。
カイルはゲイルの言葉に渋々うなずく
「ああ。 そうだな。 二人共ありがとな・・・。」
カイルは思った。
「俺は、俺を助けてくれた人に会ってみたい。」
どんな性格で、どんな事をしているのかカイルは知りたかった。
『力』を持つと誰しも変わるものだ。
相手を見下し、奪い、殺し、まるで世界が自分を中心に廻るが如しの暴威を振るう。
カイルは『力』が欲しかった。自分には大切な物を守れるだけの力があり、まだまだ秘めた力を持っているとも思っていた。
けど、違っていた。
『自分も『力』を手に入れたら変わってしまうのだろうか?』
カイルは、手に入れた『力』を悪用せず、大切な人を守るために使いたいと望んできた。
カイルは、信じたかったのだ。
『俺を助けてくれた人は、悪逆非道な人物でないことを―――—』
イリヤとゲイルはカイルの言葉に頷く。
「こんな危険な森で話すのもあれだし、日が高い内に王都に戻ろうよ!」
イリヤの言葉で3人は王都に戻るのだった。
男「ハ、ハクショ―イ!!」
神様「うむ。風邪か?」
男「全状態異常無効を持つ俺が風邪をひくと思うか?」
神様「むー。ないな。」
男「誰かが俺の噂をしてやがる。」
神様「お主の首を狙っておるかもなw」
男「やめろよ!神様が言うと洒落に聞こえねーから!」




