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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~冒険者強化訓練編~
125/218

男の引退生活part1

―――ガガ・・ザザザ――神――――領域――進行―――ガガガ――

ステー・・タス―――上昇―――ザザ・・―――


目が覚めた俺は、布団の中を芋虫のようにモゾモゾと動き回る。


『出たくない・・・。』


日差しが眩しい。

布団から顔を出した瞬間焼かれそうだ。

そんな事有り得ないのに・・・。


「ワウウウウゥ―――!」


ガルムが俺から布団をはぎ取る。


「ぐおあ!?眩し!?ガルム返せ!」


俺は、窓から差し込む日差しに視界を奪われた。

ガルムを追って、椅子に躓き、顔面を壁にぶつける。

痛くはないが、ぶつかった衝撃で仰向けに倒れた俺の顔を

布団を咥えたガルムが覗き込む。


「ワフッ!」


ガルムが吠えた瞬間、布団が俺の顔に落下。

俺は、深いため息を吐いた。


「ガルム・・・外に行きたいのか?」


「ワフッ!」


ガルムが俺の腹にのしかかる。

俺は顔から布団をどかし、ガルムを見た。

「行こう!」と誘うガルムの純粋無垢な顔に再びため息を吐く。


「・・・分かった。準備するからどいてくれ。」


ガルムは耳と尻尾を立てて、俺の上からどいた。

俺は頭をガシガシとかきながら起き上がる。


「いつもの恰好で行くのはな・・・。」


着用していた頭防具は壊れてしまった。

この際、新しい防具と服を着用するのも良いだろう。

マリエルのような敵もこの先遭遇するかもしれないし・・・。

俺は、2階の魔法倉庫へ向かった。


魔法のカバン/レア度:9/保管可能数5000

魔法の小カバン/レア度:8/保管可能数3000


英雄のズボン:ズボン/レア度:10/防御6000↑

英雄の衣服:服/レア度:10/防御7000↑

英雄の羽織:マント/レア度:11/防御8000↑


英雄の手袋:腕/レア度:10/防御10000↑

英雄の腰巻:腰/レア度:10/防御10000↑

銀のピアス:装飾品/レア度:6/防御5000↑

片手剣グイン/レア度12/攻撃19500↑


装備を終えた俺は、服装を確認する。

赤と黄色を基調とした服で所々、金をあしらっている。

英雄の羽織は、金の装飾が無いので目立つ事はないだろう。


『FREE』をプレイしていた時に製作したシリーズで、

服と防具一式を装備する事で効果が発揮される。


《英雄の一撃》で攻撃力が大幅に上昇。

《魔力量向上》で魔力量の限界値を20000増加させる。


そして、このシリーズでメインと言える効果が《英雄祖の加護》である。

《英雄祖の加護》は、自分がピンチになると発動し、攻撃力を3倍にする。

いわば、火事場の馬鹿力だ。


英雄シリーズに頭防具が無いのが、痛い・・・。

俺は銀のピアスを代わりに装備した。


「ガルム。どうだ?」


俺はガルムに向き直り、見せてみる。

ガルムはコクリと頷いて尻尾を振った。「いいよ!」と言いたいようだ。

ガルムが「良い」と言うのだから、コレでいいのだろう。


俺とガルムは、久しぶりに新王都に転移するのだった。


――――新王都――――


俺とガルムは新王都内を歩く。

俺に向けられる視線はない。


『さけているのか・・・将又、恰好が違うから気付いていないのか。

まあ、どっちでもいいけど、この後どうしようか・・・。』


俺はガルムが出たがるから新王都に来ただけだ。

リゼンブルに行こうとしたら、裾を引っ張られて止められるし、

《古代砂漠》に言っても「嫌だ。」と動かなくなるし、

ガルムは一体何をしたいのだろう?


いつも、俺の言う事を素直に聞いてくれるガルムが妙に反抗的だ。


「はっ!まさか、反抗期か!?」


俺はすっかり忘れていた。

精神発達の過程で、反抗期はやってくる。

ガルムも子供から大きくなり、大人になろうとしているのだ。


『そうか。大人に・・・。』


ほろりと瞳から水が流れる。

そう思っていると、ガルムはある場所で伏せた。

左に向き直るとそこは、冒険者ギルドだった。

俺は呆然とし、ガルムに言う。


「前言撤回。ガルム・・・お前はまだ子供だ。」


ガルムは俺が冒険者を辞めた事を知っている。

だけど、クレアの言葉を真に受けて、通常通りギルドまで来たのだ。

俺は、顔を押さえて深いため息を吐いた。


「あれ?貴方は・・・。」


周辺を歩いていた冒険者が俺に気が付く。

俺は、ビクッと反応して、反対方向へ走り出した。

冒険者ギルド前で伏せていたガルムは俺を追う。


「待ってください!」


『誰が待つか!』


冒険者は俺を追いかけるが、俺を見失う。

俺は、人気のない場所のベンチに腰かけた。

魔法のカバンから煙草を取り出し、吸い始めようとするが、投げ捨てる。


「何でこうなる!」


俺は頭を抱えた。ガルムに悪気はない・・・。

怒りの矛先が何処にもない俺は、物に当たった。


もう1つのベンチを片手で持ち上げて、地面に叩きつける。

音を聴きつけた住民達が駆けつけてくる前に、俺とガルムはその場を去った。


「ガルム・・・帰っていいか?」

俺はガルムに尋ねた。

ガルムは俺の裾を引っ張って「嫌だ。」と態度で示す。


俺は、項垂れた。


「すみません。人を探しているのですが、この人知りませんか?」


そう声をかけてきたのは、小さな女の子だった。

身の丈に合わない長刀と大きなカバンをぶら下げ、和装をしている。

アッシュグレーの髪を後ろで三つ編みにしており、誰かと顔が似ていた。


俺は、差し出された写真を受け取り、眺める。

そこには、女の子と黒髪の男が写っていた。

男は、女の子の頭に手を乗せ、女の子はそれを気恥しそうにしている。


「この男を探しているのか?」

と尋ねるとコクリと頷いた。


「知らないな。他を当たってくれ。」

俺は写真を女の子に返却する。


「あの!情報が集まりそうな場所とかあったら案内してくれませんか?

私、この街に始めてきて・・・それで・・・。」


「道が分からないのか?」

女の子は頷いた。


「案内は出来ないが、この街に冒険者ギルドという施設がある。

そこを尋ねるといい。」


「え!でも・・・。」


「道が分からないんだろ?その辺の人に聞けば、教えてくれるさ。」

俺は、辺りの住民達を指さした。


「あ、ありがとうございます!」

女の子は、長刀と大きなカバンを抱えて住民達に声をかけに言った。


俺は、息を吐いて呟く。

()偶然(・・)か?」


俺とガルムは、再び歩き始める。

ガルムがログハウスに帰りたがらないので、俺は仕方なく宿に2、3日泊まる事にした。

泊まるのは、只の宿ではなく、温泉付きの宿屋だ。

俺が設計した建物で、人気があるらしい。


『前は、リリィ達がいたな・・・。』


自分で設計して置きながら、まだ数度しか入浴していない。

それに、あそこなら無粋な輩は来ないだろう。


『憩いの場に、余計な揉め事を持ち込む奴なんて早々いないからな。』


俺は、宿屋で、個室を1つ借りる。ガルムを個室に残し、温泉へ向かった。

従魔を温泉に入れられないのが残念でならない。


「今度、従魔用でも作ってみるか?」


俺は、温泉を堪能し、レンタルの浴衣を着用する。

魔法のカバンに武器以外の物を収納し、個室に戻った。


「ワオーン!」


寂しかったのか、ガルムは俺の周りを走り回る。


「落ち着けよ。」


畳の上には、布団と毛布、枕の一式セットが引かれている。

ガルムはそれを甚く気に入ったようで、尻尾を振って丸くなった。

それもそのはず、ログハウスのベットに使用している物と、全く同じなのだ。


『実は、レア度の高い素材を使用した超高級品である!』


俺は、早速潜った。

ふわふわ感が俺を優しく包み込む。


「3日と言わず、もう少し宿屋に泊まろうかな~。」


そんな事を考えていた矢先だった。

扉が数回ノックされる。


「レイダス()、お客様がお見えです。」


()はやめろと言った筈だが・・・。』


「客?今行く。」


俺は、ドアノブに手をかけようとするが、《探知》の反応をきっかけにやめる。

浴衣のまま、魔法のカバンと武器を装備する。

そして―――扉をあけた。


「久しぶりだな・・・アリエス。」


強張った顔をした彼女が目の前にいた。

店員は、軽く頭を下げ、その場を去って行く。


「あの・・・話しがあるの。」


「断る。じゃあな。」

俺が、扉を閉めようとすると間に足と手を挟まれて止められた。


『潰してやろうか・・・?』


「待って!」

必死な表情にイラっとした。


「謝罪は不要だ。仲間と傷の舐め合いでもしてろ。」


「お願い・・・します!フエンとルドルフの2人もいるの!」

俺は、視線をアリエスの後ろに移す。

少し離れた先に2人が立っていた。

2人は俺と視線が合うや否や、頭を下げた。


俺は、諦めて息を吐く。

俺はしつこく迫られると弱い。


「どんな話かは知らないが・・・少しだけだ。」


「ありがとうございます。」


アリエスは、深々と頭を下げた。

表情は、緩まる事なく硬いままだ。


俺は宿屋の店員を呼び、1つ、部屋を用意させた。

俺達はその部屋に向かう。

静かな廊下に沈黙が降り、誰も口を開こうとしない。

彼らは、沈黙の重みに、堪え兼ねているのだ。


斯く言う俺も少し気まずい。

楽しい会話、冗談なんて言える訳がない。

というか、言う気にもなれない。


『話しを聞いて、終わり。話しを聞いて、終わり・・・。』

俺は、気持ちを落ち着かせ、集中力を高める。

余計な詮索は、話しを長引かせるだけだからだ。


俺は、部屋の扉をゆっくり開けた。

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