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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~冒険者強化訓練編~
123/218

神様の様子


「痛い痛い痛い痛い!」


ヘストルは、真っ暗な空間で頭を押さえていた。

頭には大穴があき、足はない。

全て、俺が負わせた傷だ。

人間ならば、死んでいる傷だが、ヘストルは死なない。


ヘストルは、マリエルの身体を利用し、俺を殺そうとした。

人間の身体に憑依していたヘストルは、本来の力を発揮できないものの

驚異的な戦闘力を有していた筈だった。

(ことごと)く失敗に終わった原因として、ヘストルの見立てが甘かったと言える。

しかし、ヘストルは諦めない。


「絶対に殺してやるウウウウ!」


ヘストルは憤怒に身を焦がす。

マリエルだった時の口調はそこになく、声には憎悪が溢れている。

その時、俺を殺す為に次の策を練るヘストルの元に来訪者が現れた。


「お主もか、神ヘストルよ・・・。」

呆れ半分の来訪者に、ヘストルは顔を向けた。


「神エーテル・・・。神アデウスのように私を殺しにきたの?」


「いやいや、今回はすこ~し違うぞ。」

神エーテルは、ぶりっ子の真似をした。


しかし、直ぐにまじめな顔をする。

「お主を拘束しに来たのだ。あの男を殺そうとする理由を聞きたくてな。」


「話したら、味方になってくれる訳?」


「それはないな。私は、お主達(・・)のやり口が好かないし、嫌いだ。」


神ヘストルは、大声で笑った。

狂気に身を委ねた神ヘストルの笑い方は、

怖いを通り越して気持ち悪さを感じさせる。

神エーテルは、笑い方の気持ち悪さにドン引きして、後退した。


「何処までも馬鹿な神だね!あの男の正体に気付き始めているはずだろう?

何故生かす?何故殺さない?

気付いているのなら、私や死んだ神アデウスを理解できるはずだ!」


神エーテルは、神ヘストルの言葉にケロッとしていた。

まるで、何も感じていないかのような表情に

イラっとした神ヘストルは怒りをぶつけた。


「何故あの男の肩を持つ!?貴様は、神や生命達がどうなってもいいというのか!?」


「愛している生命達が命を落とすのは、胸が痛む。

しかし、全てはなるようにしかならん。

そもそも、あの男を先に貶めたのはお主達ではないか。

お主達を理解できる?そんなもの理解したくもない。」


神エーテルはそう言い切って、ため息を吐く。


「拘束すると言ったが、変更する。

お主を生かしておくと又、良からぬ事を仕出かしそうだ。

同胞を手に欠けるのは嫌だが、仕方あるまい。」


神エーテルは、神ヘストルの頭を鷲掴んだ。


「やはり、神エーテル・・・。貴様は神アデウスの言う通り愚かな神だ。

私を消したとしても、あの男を殺そうとする神は他にもいるぞ。」


「忠告感謝する神ヘストル。精々足掻かせて貰おう。」


神エーテルは、神ヘストルの存在を躊躇なく消した。

生命を愛し、神を大切に想うからこそ、神エーテルは己が手を汚す道を選んだ。


「さて!あの男は、恋び・・・もとい!女性と買い物に行くのだったな。」


神エーテルは、いつもの調子に戻り、鼻歌を歌う。

ルンルン気分で自分の空間へと帰宅する神エーテルなのだった。

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