神様の様子
「痛い痛い痛い痛い!」
ヘストルは、真っ暗な空間で頭を押さえていた。
頭には大穴があき、足はない。
全て、俺が負わせた傷だ。
人間ならば、死んでいる傷だが、ヘストルは死なない。
ヘストルは、マリエルの身体を利用し、俺を殺そうとした。
人間の身体に憑依していたヘストルは、本来の力を発揮できないものの
驚異的な戦闘力を有していた筈だった。
悉く失敗に終わった原因として、ヘストルの見立てが甘かったと言える。
しかし、ヘストルは諦めない。
「絶対に殺してやるウウウウ!」
ヘストルは憤怒に身を焦がす。
マリエルだった時の口調はそこになく、声には憎悪が溢れている。
その時、俺を殺す為に次の策を練るヘストルの元に来訪者が現れた。
「お主もか、神ヘストルよ・・・。」
呆れ半分の来訪者に、ヘストルは顔を向けた。
「神エーテル・・・。神アデウスのように私を殺しにきたの?」
「いやいや、今回はすこ~し違うぞ。」
神エーテルは、ぶりっ子の真似をした。
しかし、直ぐにまじめな顔をする。
「お主を拘束しに来たのだ。あの男を殺そうとする理由を聞きたくてな。」
「話したら、味方になってくれる訳?」
「それはないな。私は、お主達のやり口が好かないし、嫌いだ。」
神ヘストルは、大声で笑った。
狂気に身を委ねた神ヘストルの笑い方は、
怖いを通り越して気持ち悪さを感じさせる。
神エーテルは、笑い方の気持ち悪さにドン引きして、後退した。
「何処までも馬鹿な神だね!あの男の正体に気付き始めているはずだろう?
何故生かす?何故殺さない?
気付いているのなら、私や死んだ神アデウスを理解できるはずだ!」
神エーテルは、神ヘストルの言葉にケロッとしていた。
まるで、何も感じていないかのような表情に
イラっとした神ヘストルは怒りをぶつけた。
「何故あの男の肩を持つ!?貴様は、神や生命達がどうなってもいいというのか!?」
「愛している生命達が命を落とすのは、胸が痛む。
しかし、全てはなるようにしかならん。
そもそも、あの男を先に貶めたのはお主達ではないか。
お主達を理解できる?そんなもの理解したくもない。」
神エーテルはそう言い切って、ため息を吐く。
「拘束すると言ったが、変更する。
お主を生かしておくと又、良からぬ事を仕出かしそうだ。
同胞を手に欠けるのは嫌だが、仕方あるまい。」
神エーテルは、神ヘストルの頭を鷲掴んだ。
「やはり、神エーテル・・・。貴様は神アデウスの言う通り愚かな神だ。
私を消したとしても、あの男を殺そうとする神は他にもいるぞ。」
「忠告感謝する神ヘストル。精々足掻かせて貰おう。」
神エーテルは、神ヘストルの存在を躊躇なく消した。
生命を愛し、神を大切に想うからこそ、神エーテルは己が手を汚す道を選んだ。
「さて!あの男は、恋び・・・もとい!女性と買い物に行くのだったな。」
神エーテルは、いつもの調子に戻り、鼻歌を歌う。
ルンルン気分で自分の空間へと帰宅する神エーテルなのだった。




