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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~冒険者強化訓練編~
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《冒険者強化訓練》part6

《冒険者強化訓練》編長くなりそうです・・・。


―――夢見の森 ログハウス―――


今日は、《冒険者強化訓練》2日目。

俺は、目を覚ます。


いつも通り朝食を作り、いつも通り食す。

そして、いつも通り装備を装着して行くが――――


「嫌な予感がする。」


ドアノブに手をかけようとした手を引っ込め、2階の倉庫へ向かった。

レア度の高い消費アイテムを所持し、新しい武器を製作した。

それでも、俺の中のモヤモヤした感覚は消えず、もどかしくなる。


防具や服も製作するが、どうにも落ち着かなかった。


「何なんだこの感じは・・・。」


魔法のカバンに防具と服をしまい、玄関で待つガルムに言う。


「ガルム、今日は留守番だ。」


「クウ――――ン・・・。」


ガルムは尻尾と耳を下げて、残念そうな表情をした。


「ごめん。今日だけは、頼む。」


俺の声にガルムはコクリと頷いて、ベットの傍で伏せた。


『ガルムを連れて行ったら行けない気がする・・・。』


俺は、ログハウスの扉を開けて、新王都へ転移する。

冒険者ギルドを尋ねると酒場のマスターと受付嬢以外いなかった。


「冒険者達は?」

俺は受付カウンターに近づき、受付嬢に尋ねた。


「皆さん、決闘場へ行かれましたよ。」


「そうか。ありがとう。」


俺は冒険者ギルドを出て、決闘場へ向かった。

決闘場へ近づくにつれ、嫌な感覚が強くなる。


「うっ!」


胸のモヤモヤが気持ち悪くて吐きそうになった俺は、片手で口元を抑えた。

数分後には回復し、再び歩きはじめる。


『風邪か?』


そんなはずはない。

俺に状態異常は効かない。つまり、原因はもっと別にあるのだ。


『決闘場に何がある?』


決闘場には冒険者達しか居ないはずだ。

俺は、それでも前に進む。

後にこの判断が俺を苦しめる事になるとは、想像もしていなかった。


決闘場の会場に足を踏み入れるとリーゼルとクレア、

そして冒険者達が中央に集まっていた。


「おう。レイダス!」


「おはようございます。」


リーゼルは俺に手を振り、クレアはお辞儀する。


「おは・・・・。」


俺も挨拶しようとした時だった。リーゼルの背後に目が行く。

そこには、俺の苦手な人物が立っていた。


「何故、ジョナサンがここにいる。」


俺は立ち止まり、ジョナサンを指さした。


「おや、気づかれてしまいましたか!

リーゼルから話しを聞きまして、リゼンブルから見学に来ました!」


「帰れ。」

俺は、きっぱりと言う。


「ううッ!相変わらず冷たい!」

ジョナサンはハンカチを噛みしめ、涙を流す。


『俺が感じていた嫌な感じはこいつだったのかな?』


俺は、ジョナサンのリアクションをスルーして、フエン達を探す。

リーゼル達から見て、一番奥に4人はいた。


「あ、レイダスさん!おはようございます。」

フエンが挨拶してきたので、俺も挨拶する。


「ああ。おはよう。昨日はやり過ぎて・・その・・・すまなかった。

傷の具合はどうだ?」

フエンは一瞬、キョトンとしたが直ぐ元に戻る。


「は、はい!大丈夫です。」

元気な返事に俺は、安心した。


「そうか。なら、良かった。他の3人も平気か?」


「はい。」


「あたしも平気よ。ただ、貴方に言わないといけない事があるの。」

アリエスの言葉に俺は首を傾げた。


「マリエル。」

アリエスは、マリエルを呼んで俺の前に立たせた。

彼女は、俯いて手先をもじもじと動かしている。


「マリエル!」

アリエスは、彼女を怒鳴った。


マリエルは、

「ひうっ!」

と変な声を上げ、身体をビクリと反応させた。

彼女は泣きそうになりながら、口を開く。


「あの・・・今日まで・・・すいませんでした。」

マリエルは、頭を深々と下げ、俺に謝罪した。


「俺、何かされたか?」

4人は、俺の発言に呆然とした。


「・・・なんだ、その顔は?」

俺は4人に尋ねた。


すると、アリエスに

「貴方・・・鈍感なのね。」

と呆れられた。


「さあな。他人の考えを察せる人間の方が可笑しいと俺は思うけどな。」

俺は、4人に背を向ける。

その時、視線の端でマリエルの瞳に黄色い炎が灯るのを見た。

瞬間、俺に怖気が走る。


『!?』


俺は、4人から早歩きで距離を取った。

手汗が酷い。額から頬を伝い汗が落ちる。

俺は、冒険者達を掻き分け、クレアに言う。


「クレア。すまないが、俺は少しの間席を外す、決闘場周辺を歩いているから

俺の組んでいるパーティの番が来たら俺を呼びに来てくれないか?」


「構いません。体調不良ですか?」

無表情なクレアに俺は言う。


「そんな所だ。」

俺は、急ぎ足でその場を離れる。


『・・・早く・・・早く!』


俺は、1分1秒でも早くその場を離れたかった。

そして、決闘場の外へ出た。


「はあ・・・はあ・・・。」


俺は、決闘場の外壁に寄りかかり胸に手を当てる。

動悸が激しく、心臓の音が大きく聞こえた。


「あの・・・黄色い炎は・・・。」


何処かで見た事があった。それを思い出せない。

不意に頭痛で俺はしゃがみ込む。

そして、視界にぼんやりと人影が映った。


『あの2人じゃないのか・・・?』


焼けた平原の中、2人の人影がこちらを見つめていた。


『誰だ・・・貴様は!』


ぼんやりとハッキリしない人影に、憎しみと怒りが込み上げてくる。


俺の中の何かが囁く――――『敵だ。』


敵―――

そう言われた瞬間、感情がドロドロになり、剣を抜きそうになった。

俺は、理性で剣の柄を左手で押さえつける。


「これは・・・幻だ!・・・幻覚だ!」


自分にそう言い聞かせた。瞼を閉じ、息を整える。

決闘場では、訓練が始まったのか騒がしい音が耳に届く。

ゆっくりと瞼を開けると、そこは、既に見慣れた王都ではなかった。


焼けた平原で俺は倒れている。

口から血を吐いて、眼前には、赤い月が浮かんでいた。

喉に血が溜まっているせいか、呼吸が苦しい。


心臓は貫かれており、身体中に斬られた跡がある。

月を眺めていると、月を覆い隠すように人影が俺の顔を覗き込んだ。


『・・・・・・・。』


俺は、ギリギリと音を立てて歯を食いしばる。

目の前の人物は敵だ!

俺は、眼前の人物を睨みつけ、殺してやりたい衝動に駆られた。


人影は邪悪な笑みを浮かべて、光り輝くナイフを俺の心臓に突き立てる。

既にぽっかりと穴があいている心臓部分に突き立てられたナイフは捻られた。

それによって、俺の心臓は完全に停止する。


「畜生・・・・。」


俺の意識は遠のいていく。

意識を失う瞬間、夢で出てきた赤い瞳の人物が現れた。

敵を追い払って、俺に呼びかける。


俺は、そこで目を覚ました――――


目を覚まして、真っ先に飛び込んできたのは決闘場にある個室の天井だった。


()、倒れたのか・・・。』


俺は、ベットで仰向けに寝ていた。

横に視線を向けると無表情で食用アイテム《アップルポップ》の皮を

ナイフで剥いているクレアの姿があった。

薄く丁寧に皮を剥くクレアに見惚れていると彼女がこちらを見た。


「目を覚まされましたか。魘されていたようですが、大丈夫ですか?」


通常運転のクレアに俺は言う。

「ああ。最近、夢見が悪くてな。」


俺が起き上がろうとすると、クレアに服をつままれ止められた。


「顔色が良くありません。横になっていてください。」


いつになく真剣な表情をしたクレアに俺は少し驚いた。


「・・・分かった。」


俺は、クレアの言葉に甘え、横になった。


「ここまで、俺を運んだのはお前か?」


「はい。貴方を探していると、

住人達が慌てた様子で、知らせにきました。」


「そうか・・・。俺を探しに来たという事は、順番が回ってきたんだな。」


「そうですが、ギルドマスターにお願いして後回しにして頂きました。」


クレアが何故俺の為にそこまでするのか理解出来なかった。

それでも、お礼はすべきだと思った。

俺をここまで運び、介抱までしてくれたのだから・・・。


「色々手を回してくれたようだな。ありがとう。」

俺は、微笑んだ。

すると、クレアは突然顔を背けた。


『・・・え?俺なにかした?』


俺からは見えないが、クレアは顔を赤くしていた。

彼女は自分の動悸が落ち着くのを待ち、向き直る。


「・・・剥き終わったので、どうぞ。」

クレアは俺に《アップルポップ》の入った皿を差し出した。

俺は、上体を起こし《アップルポップ》を1つ摘まんだ。


『ウサギだ。』


俺は、ウサギ切りされた《アップルポップ》を口に頬張った。

リンゴのような味が口の中に広がる。


「上手いな。」


俺は、夢中に《アップルポップ》を頬張る。

その様子にクレアは微笑んだ。


『まるで、子供のよう・・・。』


俺は、夢中になるあまりクレアの表情に気付いていなかった。

皿に入っていた《アップルポップ》は、

数分もしない内になくなり、俺のテンションが少し下がる。


「もし良ければ、休日に買い物でも行きますか?」


クレアの言葉に俺は「そうだな。」と笑みを浮かべて返事をした。

いつの間にか顔色が良くなった俺は、ベットからおき、肩を動かす。


「よし。」


『身体の動きに異常はないな。』


「行かれますか?」


「ああ。待たせるのも悪いしな。」


「私は、怪我をした冒険者達の治療を任されましたのでここに残ります。

お気を付けください。」


クレアは、頭を下げて個室から退室する俺を見送った。

身体の中のモヤモヤは目を覚ましてからも残っているが、朝程ではい。


『戦闘に支障があれば、棄権すればいいしな。』


俺は、決闘場のフィールドへ足を運ぶのだった。

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