《冒険者強化訓練》part2
《冒険者強化訓練》1日目が始まった。
冒険者達が指導員にどんどん声をかけていく。
「レイダスさん俺とパーティ・・・のわ!?」
「僕と組んでください!」
「いいえ、私とお願いします!」
『わ~。俺、超大人気~・・・。』
冒険者達が、一斉に押し寄せてきて、俺は戸惑っていた。
他の指導員達には、嫉妬なのか舌打ちされる。
『どう断ろうか・・・。』
俺は断る事しか考えていない。というか、凄く断りたい!
ソロに慣れている俺は、パーティ戦が不慣れである。
正直な話、上手く教えられる自信がないのだ。
俺の方が知りたいよ・・・。
「俺を選択してくれたのは素直に嬉しい。でも、指導員は他にもいるだろう?
パーティを組む前に、俺を選択した理由を尋ねてもいいか?」
俺は、取り敢えず1人1人理由を尋ねる事にした。
冒険者達から理由を聞いて見ると、大体こんな感じだ。
1、俺が強いから、魔物討伐がスムーズに進む。
2、魔物について詳しそう。
3、俺の知識や技術を吸収したい。
『こいつら、楽がしたいだけじゃないのか?』
《冒険者強化訓練》の目的は、パーティ連携ミスを最小限に留め、冒険者死亡数を減らす事だ。
俺頼りの戦闘で、成長が見込めるはずない。
只、冒険者達の中には、俺に対して憧れを抱いている者もいるようだ。
後先考えずに、気持ちが先走るのは仕方がないのかもしれない。
俺は、視線を動かし、右から左へと冒険者達を観察していく。
そして、4人の冒険者でピタリと目が止まった。
4人の冒険者は、こちらを気にしているようで、チラチラと視線を向けてくる。
俺は、声をかけてみる事にした。
「おい。そこの4人。」
声をかけられて4人の冒険者は肩をビクリと震わせる。
「は、はい!」
リーダーらしき男が返事をした。
「指導員が決まっていないのか?」
「あの・・・はい。そうです。」
俺は、椅子から立ち上がって冒険者達を掻き分ける。
『逃げの口実を作るとしよう。』
「俺で良ければ、パーティに加わろう。」
「え!?」
4人の冒険者は動揺する。
俺が4人に声をかけた事で後ろでは、冒険者達がぼやいていた。
俺は振り返って、冒険者達に謝罪する。
「すまないが、そういう事だから、他の指導員を当たってくれ。」
冒険者達は残念がりながら散開して行った。
「あ、あの・・・。」
4人の冒険者が俺を見つめている。それに気が付き、振り返った。
「どうした?」
「俺達なんかの為に・・・良かったんですか?」
リーダーらしき男が散開して行った冒険者達に視線を送る。
「どういう意味だ?」
俺は首を傾げた。
「俺たち弱いから・・・。」
リーダーらしき男の発言で、他の3人の冒険者は肩を竦めて、うつむいた。
自分達を下に見ているようで、どこか暗い雰囲気を放っている。
「指導員は冒険者を指導する義務がある。強さは関係ない。
お前達が訓練に参加したのは、強くなりたいからだろう。違うのか?」
俺の発言に4人は無言だった。
「質問を変えよう。お前達は弱いままでいいのか?」
俺の質問に1人の冒険者が口を開く。
「嫌・・・です。」
小さく消えそうな声で、杖を強く握りしめている。
強くなれるならなりたい。弱いままなんて嫌だ!
誰だってそうだ―――――
俺は笑みを浮かべる。
「そうか。やる気があるなら、十分だ。
俺は、討伐対象の魔物について聞いてくる。お前達は、外で待っていろ。」
「あの!・・・。」
リーダーらしき男の声は、俺に届かず、俺はそのまま歩いて行く。
男は、伸ばした腕をゆっくり下ろし、息を吐いた。
彼の肩に手が乗せられ、彼は振り返る。
「フエン。外で待ちましょう。」
赤い髪の冒険者の言葉にフエンと呼ばれた男は頷く。
――――――――――
俺は冒険者ギルドの外に出た。
「何処にいる?」
辺りを見渡すが、4人はいない。
俺とガルムは街を歩く。少しして、視界の端に4人の姿を捉えた。
俺とガルムは咄嗟に建物の影に隠れて、4人の様子を観察する。
杖を持った白髪の冒険者と
魔導書を腰にぶら下げた赤髪のポニーテイルの冒険者がベンチに腰を据えている。
残りの男2人は、立ったままだ。
4人で何やら話しをしている。
「英雄が俺達の指導員だなんて信じられない。」
「僕もだよ。夢みたいだ。」
男2人は、俺が指導員である事に喜んでいる。
そして、若干興奮気味だ。
「私達も他の冒険者達みたいに強くなれるでしょうか?」
白髪の冒険者は杖を強く握りしめた。
「大丈夫よ。ステータスが低いあたし達でもきっと強くなれるわ。」
赤髪の冒険者が白髪の冒険者の杖を握る手に触れる。
優しく、温かい言葉に白髪の冒険者は「うん。」と頷く。
『そういえば、ステータスがlvに見合っていなかったな。』
俺は、4人を鑑定していた。
『FREE』では、ステータスの上がり方は、種族や職で決まっていた。
それがこの世界では、バラバラのようだ。
今まで、鑑定して気付かなかったのは、鑑定してきた相手や魔物が
『FREE』をプレイしていた時と大差が無かったからだ。
4人の場合は、lv30代なのに、ステータス値がlv20代位だ。
『それで、あんなに暗かったのか・・・。』
lvを上げれば、その分だけ強くなる。
それは、lv100という制限が無ければの話し・・・。
例え、lv100になったとしても、彼らの強さは精々lv90で止まるのだ。
この世界でステータスの上りの良さは才能なのだろう。
『俺って異常なんだな~。』と改めて思う。
「おい。そんな所で何してる?」
俺は、話しを聞かなかったフリをする。
「あ、えっと・・・すみません。」
リーダーらしき男が俺に謝罪し、ベンチに座っていた2人は立ち上がった。
「気にするな。場所の指定をしなかった俺が悪い。
早速だが、トーリカの森に向かう。準備は出来ているか?」
「はい・・・。大丈夫です。」
覇気がない声に俺は、ため息を吐く。
「もっと、元気よく返事できないのか?」
「すいません・・・。」
やはり、覇気がない。
俺は、呆れて、頭を抱えた。
「もういい・・・行くぞ。」
それから、トーリカの森まで俺達は無言だった。




