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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
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~おまけ Let's温泉!part2~


「酷い目に会いました・・・。」

ライラは、温泉につかりながら、肩を竦める。


「あう・・・。ごめんなさい・・・。」

リリィは頭を押さえて涙目になっている。

プリシナールに、小突かれたのだ。


「店長がすいません。」と彼女は謝罪する。


「大丈夫です。それにしても、人気という割には、人が少ないですね。」


「温泉は数種類あると言っていたわ。

他の温泉に入りに行っているのかもね・・・。」


リリィは小突かれた頭から手を放し、温泉をかける。

すると、出来ていたコブが引いて行った。


「リゼンブルにも温泉があるけど、ここの温泉は別格ね。」


リリィは、肩までつかる。

完全にリラックスしているようで、目がとろんとしていた。


「初めての温泉に緊張していましたが、気持ちいいです。」

ライラは、「ふう~。」と息を吐く。


「そう言えば、イリヤさんとクレアさんは何処に?」

プリシナールは辺りを見渡す。


「きっと、他の温泉に行ったのよ。効能が違うから私達も堪能しましょう。」

リリィの言葉にライラは同意した。


「そういえば、リリィさんは、温泉がお好きなんですか?

リゼンブルにもあると言っていましたが・・・。」

ライラはリリィに尋ねた。


「そうね。昔、パーティを組んでいたメンバーと温泉に行った事があって

それがきっかけね。」


リリィは、丁度いい岩に腰かけた。


「店長は、リゼンブルの温泉によく通ってたんです。

私も同行させて頂きました。」


ライラは「へー。」と返事をする。


「私は、仕事で忙しいので別の国へ行く事もありません。

少し羨ましいです。」


事実、黒い番犬は、王都から離れる機会がない。

休日が出来たとしても期間が短く、出かける暇がないのだ。


「そういう人がいるから造ったのかもしれないわね。」

リリィは、片足を上げて、お湯を軽く飛ばす。


「どういう意味ですか?」


「レイダスは、他人に冷たそうに見えるけど、案外優しかったりするの。

私もそれに助けられた。」


リリィは、仰向けになって笑みを浮かべた。

『そう・・・あいつがいたから私は変われたのよ。』

心の中で彼女はレイダスに感謝する。


「店長は、彼に恋してるんです!」


「な!?」

プリシナールの驚きの発言にリリィは顔を真っ赤にして起き上がる。

温泉に音を立てて入っていく。


「そ、そんな事ないんだからああああ!」

リリィはポカポカとプリシナールを叩く。

プリシナールの顔は笑っていた。


「それでは、私とライバルですね。」

ライラの発言に2人は振り返る。

彼女は立ち上がって、2人に近づいて行った。


ライラの顔は真剣で、真っすぐリリィを見つめていた。

顔を真っ赤にしていたリリィも真剣な顔をして真っすぐライラを見つめる。


「そうなんだ・・・。うん!私達はライバルで、友達よ。絶対負けないんだから!」

リリィからやる気がにじみ出る。


「はい!私も負けません!」

ライラからもやる気がにじみ出る。


ライラとリリィは拳を突き合わせて、互いに笑いを上げる。

それから3人は、他愛ない会話をする。

好きな物は?趣味は?


彼女達は会話に華を咲かせた。

一方その頃、クレアとイリヤは、複数ある温泉の内1つに来ていた。


イリヤが気にしていた滝がある温泉だ。

温泉には各々滝がある。その中でも一番大きな滝で、滝に打たれている客がいる。

彼女はそれに興味を惹かれたのだ。


「クレアさん行ってみない?」

イリヤはクレアを誘う。


「行きます。滝に打たれる・・・修行になりそうです。」


クレアは、無表情で拳を握って見せる。

彼女の態度にやる気が現れていた。

イリヤは、笑みを浮かべてクレアの手を引く。


「修行じゃないよ。遊ぶんだよ~!今日は楽しみに来たんだから!」


クレアは無表情な顔の口元を緩める。

2人は意外と気が合うのかもしれない。

イリヤとクレアは、滝に打たれ、他の温泉を回り、堪能する。


3人と2人は途中で合流し、

最後にゆっくりと温泉につかる。

仕事詰めだったライラとクレアは、リラックスして身体を癒した。

ライラは誘ってくれたリリィに、クレアはライラに心の中で感謝する。


5人は、荷物をカバンにしまい、浴衣を着用しようとするが、着方に戸惑った。

浴衣は、赤とオレンジのグラデーションがかかっていて、綺麗だ。

説明書があったおかげで、時間はかかったが着用出来た5人は、

入って来た時の暖簾をくぐり、廊下を歩く。


「気持ち良かったですね。」


「いいお湯でした~。」


「又、来たいわね!」


等と会話をする。

廊下を真っすぐ歩いて行くと受付カウンターが見える。


「どうする?食事もしていく?」


「良いですね!」


「私も妹に賛成です。」


ライラとクレア以外の2人も頷いて肯定する。


「決まりね!受付に行ってくるから、先に座ってて!」


リリィは、受付に駆け出して行った。

4人は、あいている席を探し、腰を下ろす。


「床に座るなんて新鮮です。」


「そうですね。」


座布団(これ)ふわふわだよ~。」


リリィを待つこと数分後―――


「受付終わったわ。コース料理にしたわ。」

リリィは座り、4人に言う。


「コース料理ですか!楽しみですね!」

ライラは、料理を食べるのが好きだ。

自然と笑顔がこぼれる。


料理を待っている頃――――


彼女達が会話をしていると、受付カウンターが何やら騒がしい。


「どうしたんでしょう?」

プリシナールは首を傾げる。


「レイダス様!いらっしゃいませ!」

その言葉に5人は驚く。

店員は深々と頭を下げている。慌てて受付に駆け付けた女将も頭を下げた。


「その()は止めてくれないか?」


「し、失礼しました。レイダスさん!」

レイダスはコクリと頷く。


「今日は、料理を食べに来たんだ。従魔もいるのだが、席は空いていたりするか?」


「はい!こちらへどうぞ!」


店員がレイダスを案内した先・・・。

そこは、リリィ達の隣だった。

レイダスは腰を下ろしてから気が付く。


「ん?お前達か。集まって女子会か?」


「え、ええ・・・そんな所よ。」


リリィはぎこちなく返事をする。

ライラは顔が赤く、それを隠すようにうつむいた。

プリシナールは若干笑っている。


「そうか。ここの料理は美味しいから味わって行くといい。」


レイダスは、腰の片手剣を外し、壁にかける。

彼は、トレードマークの赤い布を頭から取り、横に置いた。

髪を下ろした彼の横顔にリリィとライラは更に顔を赤くする。


『ちょ、ちょっとおおお!このタイミングで来るなんて聞いてないわよ!』

『顔が、顔が暑いです!』


リリィは、レイダスから顔を逸らし、ライラは顔を両手で押さえた。

そうしている間にコース料理が運ばれてくる。


「料理をお持ちしました。」


色取り取りの野菜の上に盛り付けられている具材は、魚だ。

《カルパーノ》と呼ばれる魚で、サーモンのような味がする。

野菜と合わせるには最適な食用アイテムだ。


「それでは、頂きましょう。」


プリシナールは、料理を小皿に取り分けてイリヤに手渡す。

イリヤとクレアが小皿を置いて行った。

3人は料理に口をつけるが、リリィとライラはレイダスが気になって動けないでいた。


「早く食べないと次の料理が来るぞ?」


彼は、こちらに視線を向けた訳でもないのに、

まるで、見えているかのように発言する。

リリィとライラはビクリと反応した。


「わ、分かってるわよ!」


「た、食べましょうか!」


2人はようやく動き出す。

料理は美味しい。美味しいのだが・・・。


『動悸が・・・。』

『胃に入ってかないです。』


緊張のあまり2人の食事は上手く進まないでいた。

それでも、コース料理はテーブルに置かれていく。

吸い物、刺身、焼き物、煮物、水菓子と料理が順番に出てくる。


リリィは後悔した。

『コース料理にするんじゃなかった・・・。』


「ん~。美味しい!」

イリヤは美味しさのあまり頬を押さえる。


隣の席に座るレイダスも、料理が来てから黙々と食べていた。


2人が煮物を食べ始める頃、レイダスは武器と赤い布を持って席を立ち上がる。

彼は食事を終えたのだ。


「もうお帰りになられるのですか?」

店員が、レイダスに尋ねる。


「ああ。この後、用事があってな。料理だけですまない・・・。」


「謝らないでください!私達は貴方のお陰で、居場所が出来たのですから!」

店員は瞳に涙を浮かべていた。

受付からレイダスを眺める女将も同様だ。


「そうか。じゃあ、今度は宿泊込みで頼むとしよう。

美味しい料理と綺麗な個室の提供を楽しみにしている。」

レイダスは、笑みを浮かべる。


店員は涙を拭って「はい!」と返事をするのだった。


レイダスは、リリィ達の方に向き直って、話しかけた。

「俺は、もう行くがここには、料理や温泉だけでなく、娯楽もある。

卓球という遊びでな。楽しんでいけよ。」


彼は、それだけ言い残し、料金を払って温泉旅館を後にした。

と同時にリリィとライラは前のめりになり、テーブルに顔をつけた。


「イケメンすぎでしょ・・・。」


「流石、レイダスさんです・・・。」


2人は、顔から湯気を上げていた。

そんな2人にプリシナールは「フフフ。」と笑う。


『鈍感な男をおとすのは大変よ・・・。』

プリシナールは、お冷を飲む。

イリヤとクレアは料理に夢中になって、食べ続けるのだった。


その後――――


5人は、レイダスに言われたように、卓球をしていた。

プリシナール、イリヤ、クレアの3人は、リリィとライラの様子を微笑ましく見つめる。


クレアは顔は無表情だが、ライラを応援していた。

『頑張って・・・。』


「はああああ!」

リリィは卓球の球を返す。


「やあああああ!」

ライラはスマッシュで返すが―――


「まだまだああああ!」

リリィは何とか拾う。


楽しむというよりも、戦場で戦っているような2人・・・。


「あ!」

ライラがミスをしてリリィに1点入る。


「やりますね!」


「ライラさんこそ!」


2人は荒い息を上げる。

何故2人は、本気になっているのか・・・。それは、レイダスのせいだった。

高ぶった感情をぶつける先を求めた2人は、卓球でぶつけ合っているのだ。


こうして、

温泉を堪能し、遊び尽くした5人は温泉旅館の前に集まる。


「今日はありがとうございました。」

ライラは頭を下げる。


「こちらこそ!思わぬトラブルがあったけど楽しかったわ。」

とリリィは笑う。


「私もクレアさんと仲良くなれて嬉しいです。又、来ましょ~!」

クレアはコクリと頷いた。


「では、解散しましょうか。」


プリシナールの発言の元、5人は解散した。

リリィとプリシナールは、店へ、クレアとライラは2人で帰宅する。

イリヤは、カイルとゲイルが待つ宿屋へと走って行った。


「お姉ちゃん・・・温泉楽しかったね。」

ライラは夜空を見ながら、姉に言う。


「そうね。」

クレアは、前を向いたまま平坦に答える。


「大勢も楽しいけれど、貴方と2人でも来てみたい。」

クレアの発言にライラは姉を見る。

少し気恥しそうな姉の横顔にライラは「うん。」と微笑んだ。


今回を通して、仲良くなった5人は、定期的に女子会を開く。

それは又、別のお話―――――

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