男は蘇生を試みる
男は、冷静に考えた。
「青年を助ける方法がある!」
男は早速青年に魔法を唱える。
『ボアル・ベア マジごめんなさい!!』
『メイサの森』
俺は青年の死体を眺めていた。グロイ・・・・。
「腹の部分だけ綺麗に食われてやがる。」
少し吐き気がしたが、冷静に考えると青年を助ける方法があることを思い出した。
ボアル・ベアにはほんとに悪いことをしたと思う。
俺は深く反省した。
『聖職者魔法/第9番:死体蘇生』
『ヒーラー』職から派生する『聖職者』になることで習得と発動が可能になる魔法だ。
俺は、『統合』の影響で、他の職でないと得られない魔法やスキルを多く有している。
「ヒーラー職取っといて良かった。」
俺は、青年に魔法を唱えた。
『聖職者専用魔法/第9番:死体蘇生』
青年を中心に緑色の魔法陣が展開する。
そして、青年の体が再生を始める。
『死体蘇生』は死体が残っている場合のみしか使用できないが、
死体になった者を蘇らせることができるという便利魔法だ。
ちなみに回復職の『聖職者』専用の魔法なので、職を切り替えないと使用できない。
俺は、『剣聖』から『聖職者』に職を切り替えた。
この際、剣装備は自動的に外される。職を『剣聖』に戻したのち再装備ということだ。
『聖職者』で『杖』を装備していれば、魔法の発動や魔法による回復速度が早くなったり、魔法の威力が上がる等の効果がある。
「まあ、今の俺には関係ないが。」
青年の体を再生させるのに3秒と言ったところか。
そして―――――青年は目を覚ました。
「うわああああああああああ!!!」
いきなりだった。
青年は、勢いよく起き上がり、腹部当たりを両手でぺたぺたと触る。
「あれ・・・? 俺生きてるのか・・・?」
「俺死んだはずじゃ?」と体のあちこちを触る。俺には全く気付いていない。
『ああ、ビックリした。俺の心臓はガラスでできている。ガラスハートだ!割れたらどうしてくれる!』
と俺は心の中で青年に文句を言うのだった。
そして、青年が俺に気が付いた。
「あ、あなたは??」
『最もな疑問だな。でもな、俺人間と話すの苦手なんだよ。』
俺は青年にどう返事をしようか悩んだ。
『蘇生』したなんて言ったらどうなるのやら・・・。
『あ・・・・あの手がある。』
俺は、心の中で笑みを浮かべた。
青年には少し悪いが、命があるだけでも感謝してもらう。
「俺は、ボアル・ベアに喰われて死んだお前を『蘇生』したんだ。」
「え!?」
『動揺するだろうな。』
本来、職とは最初に選択した職からさらに上位の職へと派生させて行く。しかし、それだけだ。
『剣士』職が回復魔法を覚えたいと、『ヒーラー』職に変えたいと思ったとする。
しかし、変えることはできないのだ。
一度選択した職から、別職に変えることはできない。ひたすら職の頂点を目指す。
これが『FREE』の職システムである。稀に条件を満たすことで、特殊な職が派生することもあるが、
職の『特性』から大きくそれることはない。
じゃあ何故俺は職を変えれる?
これも『統合』の影響だ。『統合様様』なのである。
俺はアカウントそれぞれ職も違う。そのうちの一つが『ヒーラー』職だ。
『FREE』での『ヒーラー』職で、最も高位の職は『聖職者』だ。
俺は、4つのアカウントそれぞれの職を『究極』まで極めた。
魔法の発動条件や習得条件、派生条件、そして職の最も効率の良い戦闘方法まで熟知している。
それを考えると
『俺『FREE』にはまりすぎじゃないか?』
と思う。
青年が動揺するのは予想ができていた。
俺の見た目はどう見ても『剣士』
それなのにヒーラー職から派生して習得できる『死体蘇生』を使えるのはおかしいのだ。
「え?・・・え!? 蘇生ってあの蘇生ですか!?」
「なんだ? 『蘇生』を知らないのか?」
「いや・・・知ってはいるんですけど、蘇生魔法を使える人を見たことがないので・・・」
俺は、青年の発言に疑問を抱いた。
『蘇生魔法を使える人を見たことがない。』
俺が規格外とはいえ、蘇生魔法ぐらい使える人間はいるだろう。
「蘇生魔法を使える人を見たことがないというのはどういう意味だ?」
俺は青年に疑問を率直にぶつける。
「あ・・・えっと、・・・・」
青年は蘇生されて間もない。混乱しているんだろうな。
『しょうがないか。閃いた案を実行するとしよう。』
俺は息を吐く。
「はあ~。」
俺は青年に告げた。
「お前には悪いが、『記憶を消させてもらう』。」
「え!?」
俺は、青年の顔を覆うように手のひらを広げる。
『魔法/第9番:記憶改変』
俺が魔法を唱えると同時に青年は、糸が切れたように倒れこむ。
『記憶改変』は相手の記憶を書き換える魔法だ。きっかけがない限り、今回の件を思い出すことはないだろう。
「悪いな青年。」
俺は青年に謝る。
俺は、出てきて早々だが『夢見の森』に一旦戻ることにした。
ガルムと共に
『魔法/第8番:空間転移』
で『メイサの森』から移動するのだった。
神様「前回の話は暗すぎてみるに堪えんかった。」
男「すいませんでした。」
神様「可哀そうだの~ボアル・ベアwww」
男「ごめんなさああああい!!!」




