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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
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呪術師の女を探せ!part2


「ファルゼン。本当にこの道で合ってるのか?」

俺は、茂みをかき分けながらファルゼンに尋ねる。


俺達は、ヴァローナを探すべく、ファルゼンとマリーが預けられていたという村に向かっていた。

新王都から発った俺達の現在地はリゼンブルから北、森のど真ん中である。

見渡す限り緑が広がっている。


「もう少しだ。」


ファルゼンは案内役として俺とガルムの先頭を歩く。


『FREE』をプレイしていた当時、リゼンブル近郊に村があるとは聞いていたが、

村に立ち寄る事がほとんどなかった俺は位置を把握していない。

仕方なく、案内を頼むしかなかった。


『不審な行動を起こせば、即首を跳ね飛ばそう。』


俺は、拳を作り片手で感触を確かめる仕草をした。

ファルゼンは前を向いていて、それに気付いていない。


森の中を進むにつれ、次第に光が差し込み始める。

俺は、その眩しさに耐えきれず腕で影を作った。

森を抜けた俺達は、ファルゼン達の住んでいた村に到着したのだ。


「ここが俺達の住んでいた(メメス)だ。」

ファルゼンはそう言って、村を指さす。


村は、魔物防止の為、木の柵が設けられていた。

村人には活気があり、村の広場では、子供達がはしゃいでいる。

成人を迎えるぐらいの男は、訓練施設のような場所で素振りをしていた。


俺達は、村に入り、俺はファルゼンの後ろをついて行く。

すると、村の中で一番立派な建物の前で止まった。


「ここは?」

俺はファルゼンに視線を送り、尋ねる。


「村長の家だ。ヴァローナさんを村に招き入れたのは村長だから、

少なからず、情報が得られるだろう。」


俺は、離れた位置に待機し、ファルゼンは、扉をノックした。

すると家の中から「はーい。」と声が聴こえてきた。

女の声だ。

返事をした女は、玄関に近づいて行き扉を開ける。


家の中から姿を現したのは、オレンジ髪の小さな女の子だった。


「お母さん。お客さんだよ!」


『ミーナと背丈が一緒だな。』

恐らく、年齢も同じくらいだろう。


女の子の声に母が玄関に駆け寄り、女の子と場所を入れ替わる。

髪色は女の子と同じでオレンジ髪だ。

女の子の髪は、母親似だと直ぐに分かった。


後ろで髪を結んでいて、ポニーテイルにしている。

エプロンをしている様子から料理をしていたと推測した。


「はい・・・。ってファルゼンじゃない!大きくなって・・・。」

女の子の母は、ファルゼンに驚くと下から上へと視線を移動させる。


『帰郷していないのか?』


「お久しぶりですレーゼルさん。率直で申し訳ありませんが、村長に要件があります。」

ファルゼンの言葉にレーゼルはうつむく。


「すいません。丁度、訓練所に出かけた所で時機戻るとは思うのですが・・・。」


「訓練所ですね。分かりました。こちらから赴きますので、お邪魔しました。」

ファルゼンはそう言って、村長の家から離れる。


「訓練所に向かったらしい。行こう。」

ファルゼンの発言に俺は頷く。

訓練所に向かう道中俺は、ファルゼンに尋ねた。


「村長宅で待っていた方がすれ違いにならず済むんじゃないか?」


すると、ファルゼンは「いや。」と首を横に振った。


「村長は、訓練所で若い男に剣を教えているんだ。夜まで戻らないはずだ。」


「お前も村長から指導を受けたのか?」


「ああ。」と彼は肯定した。


ファルゼンの発言から、村長は村の長としての役割と訓練場の教官を兼任していると理解した。

俺の予想で、村長は相当なカリスマ有していると思われる。


それから数分、黙って歩いていると、男達の掛け声が聴こえてきた。


「はあああああ!」

「やあああああ!」

「せい!」

「おらああ!」


俺は、声のする方向へ視線を向けた。


「あれが訓練所か?」

とファルゼンに尋ねると「ああ、そうだ。」と肯定した。


若い男達が木刀を手に、1人の男を取り囲んでいた。

中央に立っている男は、片手に大剣サイズの木刀を持ち、

もう片手には酒の入った瓢箪をぶら下げている。

見た目年齢は40代といった所だ。

黒髪で片目には、斬られた跡が残っている。

後遺症なのか片眼は瞼を閉じていた。


若い男達は、順番に飛び掛かって行くが、軽くあしらわれて一撃を貰う。

大剣並みの木刀を軽々と片手で振り回す姿は、「豪快」の一言だ。

時折、水分補給で酒を飲んでいるが、どう見ても身体に悪い。


「おらおら!どうしたどうした!そんなもんか!」


男は、若い男衆を挑発し、闘志を駆り立てる。

若い男衆達は負けじと男に向かって行く。


数分後―――――


予想はしていたが、若い男衆は、全員打ちのめされ、地面に倒れ伏す。

皆意識はあり、荒い息を上げている。

一方、中央に君臨する男は、息一つ乱していない。


「1時間休憩とする!各自水分補給を忘れるなよ!」


男は木刀の大剣を地面に突き刺し、指示を出す。

若い男衆達は、ゆっくりと立ち上がり、俺達を通り過ぎていく。


そんな男にファルゼンは近づいて行った。


「村長。お久しぶりです。」


「・・・・・・・。」


ファルゼンの声に、村長と呼ばれた男は

彼をジーッと眺めて返事をしない。


数秒後、村長は目を見開き、ファルゼンを指さした。


「お前!ファルゼンか!?でかくなったな!」


村長はファルゼンの背中を豪快に叩く。

ファルゼンは、叩かれた衝撃で少しふらついていた。


『なんかイメージと違う・・・。』


遠目から眺めていると村長は俺の存在に気が付いた。


「なんだ。連れがいるのか。」


「はい。今日は、村長に用があって戻ってきました。」


村長はファルゼンから離れて向き直る。

先程のふざけた態度から一変し真剣な表情をした。


「そうか。ここで話すのもあれだ。別の場所に移動しよう。」


村長は、地面に突き刺した大剣に瓢箪を括り付け背に携える。

俺達は、村長に黙ってついて行った。

てっきり、村長宅に行くのかと思えば、村の子供達が元気に遊ぶ広場だった。

広場の隅には、複数の丸太椅子が置かれており、その内の1つに村長は腰を据えた。


「ほれ、お前さんも座りな。」


村長は、近くの丸太椅子を軽く叩き、座るよう促す。

俺を見つめる瞳は、俺を観察しているようだった。


「失礼する。」


俺は、一言そう言って、丸太椅子に腰を据えた。

ガルムは俺の隣に伏せる。

ファルゼンも丸太椅子に座り、会話が出来る状態になった事で次の段階に進む。


「まずは、自己紹介をさせてもらう。

俺はこの村の長を務めている《ダラス・メグライア》。皆からはダラスと呼ばれている。

メグライアでもいいが、まあ、好きなように呼んでくれ。」


「では、ダラスと呼ばせて貰おう。

俺はレイダス・オルドレイ。王都のSSランク冒険者だ。」


ダラスは、一瞬驚きの表情を見せるが、直ぐ元の顔に戻った。

俺がSSランク冒険者である事に驚いたのだろう。


「そうか。で、そのSSランク冒険者がこんな田舎に何の用で来た?」


俺が要件を述べようとすると、ファルゼンが横から口を挟む。


「それは、俺から説明させてください。」


俺は、ファルゼンに視線を向けた。

ファルゼンは真剣な表情で俺を見る。

俺をため息を吐いて、彼に言う。


「いいだろう。お前に任せる。」


「ありがとうございます。」

ファルゼンは頭を下げ、ダラスに向き直り説明を始めた。


「俺がこの村に来たのは、ヴァローナさんについて情報を得る為です。」


「黒いフードの女か?」


「はい。彼女が何処へ行ったか知りませんか?」


ダラスは、顎に手を当て考えるが直ぐに止める。


「昔の事だ。今は何処にいるか分からん。」


「そうですか・・・。」

ファルゼンは、肩を落とした。


「おい。」

俺は、2人の会話に割って入る。

2人は傍観していた俺に向き直った。


「今の居場所は分からなくても、行き先位は聞いているだろ。どうなんだ?」


「残念だが、その女は行き先も告げずに姿を暗ませた。

俺を問い詰めても、それしか答えを持ち合わせていない。悪いが他を当たってくれ。」


ダラスは、大剣に括り付けていた瓢箪を取り、酒を飲みだす。

俺は息を吐き、ファルゼンは、再び肩を落とした。


「ファルゼン。虱潰しでもいいから探すぞ。」

俺は、椅子から立ち上がって、ファルゼンに言う。


「虱潰しって、見つかるはずがない!」


ファルゼンは声を荒げた。

この世界は広い。

何億何千人もの中から1人の人物を探し出す事は不可能に近い。


「手掛かりがない以上、そうする他ないだろ。」


俺の言葉に感情は籠っていない。

俺はファルゼンとは違い、そこまで感情的になっていないからだ。


ファルゼンは唇を噛みしめ、悔しそうな表情を浮かべた。

手掛かりがあると信じて、村に訪れたのに無駄足だった事実に彼はショックを受ける。

俺は、都合よく考えていたファルゼンに内心呆れた。


『黒幕が姿を現すのは、最後と決まってる。お約束だろ?』


「ヴァローナがお前達に悪さでもしたのか?」

ダラスは、酒を一旦置き俺達に尋ねる。


「口外する理由が皆無だ。」


「そう言わずに聞かせろよ。」

ダラスは、口角を上げて笑みを浮かべる。


「・・・・・・。」

俺は無言になり、ダラスを見下ろす。

ダラスの笑みが怪しく思えて仕方がなかった。


「他を当たれと言っておきながら、聞かせろとは何様のつもりだ?」

俺は、ダラスを睨みつけた。


「ちょ!やめてください!」

ファルゼンは、椅子に座ったまま、俺に声をかける。


「ビビりは引っ込んでいろ。」


俺は、視線だけを動かし、ファルゼンを睨みつけた。

淡々とした口調で言葉を発したが、ファルゼンは恐怖を感じていた。

彼の背筋に悪寒走る。冷や汗が頬を伝った。


「俺達は、遊びでこの村に来た訳ではない。

手助けをする気もない相手に情報を口外して俺達にメリットがあるか?

もし、ダラスがヴァローナと繋がっていれば、俺達の情報が筒抜けになる。

それを許す程俺は愚かではないからな。」


俺は、腰の剣を抜き、ダラスに突きつけた。

周囲の人達はその光景に驚き、動揺する。

俺達をボーっと眺める子供を親達は抱き上げ回収していった。

広場に残ったのは、俺達3人だけだ。


「武器を下ろしてください!・・・オルドレイ!武器を下ろせ!」


ファルゼンは、身体を震わせながら、大剣を抜く。

『切っ先まで震える身体でよくやる・・・。』


俺がファルゼンに気を取られていると、ダラスは立ち上がり、木刀の大剣を振り上げた。

ファルゼンには、一瞬の出来事で理解できなかっただろうが、

俺は、剣で木刀の刀身部分を斬り落とし、ダラスの腹部を殴った。


「ゲホェッ!」


ダラスは悶絶し、前のめりに倒れ込む。

彼は白目をむいていて、気を失っていた。


「ファルゼン。ダラスをこいつの自宅に置いて来い。

それで、ため口はチャラにしてやる。」


俺は、ダラスに触れてこっそりとある魔法(・・)を発動させる。

それから、ファルゼンにダラスを渡した。

彼は、呆然と立ち尽くしていたが反射的にダラスを受け取る。


「後で、弁解しても遅いですよ。」


村人に現場を目撃された以上、ファルゼンはともかく、俺は良く思われないだろう。

俺は、ダラスを抱えるファルゼンに背を向けて森へと歩いて行く。


「別にいい。二度と来ないから。」


俺は、軽く背伸びをしてガルムと森へ姿を消すのだった。

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