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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
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呪術師の女を探せ!part1


ファルゼンは、冒険者ギルドの出入り口を見る。

足音が聴こえてきたのだ。


扉は開かれ、3人の人物と従魔が姿を現す。

俺を含む、リーゼル、ウェルダンの3人とガルムだ。


「あの揺れはなんだ!妹に何かしたのか!」


ファルゼンは、俺達に接近するが途中で足を止める。

結界に触れれば、痺れると学習したからだ。


「特に何もしていない。お前は黙って俺の質問に答えろ。」


ファルゼンは唇を噛みしめる。

今の彼は無力だ。結界から出るだけの力を持たない彼は「分かった。」と頷いた。


「マリー・フラクトの兄ファルゼン・フラクトでいいな?」

ファルゼンは頷く。


「マリー・フラクトとは幼少時から一緒か?」


「ああ。」

ファルゼンは頷く。


「幼少時、マリー・フラクトと親しかった人物はお前以外にいたか?」


ファルゼンは眉を動かした。

俺に顔を向けて、尋ねる。


「何故そんな事を知りたがる?」


「質問しているのは俺だ。いるのかいないのか、答えろ。」


俺は、上から目線でファルゼンに言葉を発した。

ファルゼンは暫く沈黙したが、口を開いて質問に答える。


「いた。黒いフードコートを着ていて、名をヴァローナという。」


俺は、質問を止めて、リーゼル達に向き直る。


「当たりだな。」


『黒いフードコートとか怪しさ満点じゃないか。』


リーゼルとウェルダンは頷いた。

マリー・フラクトを捕まえるだけでも面倒だったのに、厄介ごとが次第に増えていく。

俺は、内心項垂れていた。


俺は一息ついてからファルゼンに向き直った。


「お前の妹は、そのヴァローナという女に呪術魔法をかけられたかもしれない。」


「なんだと!?」


ファルゼンは不意に結界に触り、弾かれた。


「あの人がそんな事をするはずがない!」


ファルゼンは否定した。


『あの人?』


「ヴァローナと話しをした事があるのか?」

と尋ねると、ファルゼンはうつむいて沈黙した。


「妹が気を許す相手だから・・・。そう思ったのなら、甘いな。」


俺はファルゼンにハッキリと言った。


他人の心理を完全に理解するなんて不可能だ。

善人そうな相手でも、実は思惑を巡らせているかもしれない。


俺の勘では、ヴァローナはマリーを利用したと考えられる。

マリーの置かれている状況がヴァローナには都合がよく、

呪術魔法をかけ、マリーにイスガシオを襲撃させた。


目的は不明だが、ヴァローナは危険だ。


『大事になる前に潰しておきたい。』


俺の平穏を脅かす存在は消す。

何が何でもだ!


「他にも特徴を知っているはずだ。洗い浚い吐け。」


俺は、ファルゼンを睨みつけた。

彼はゆっくりと口を開き、言葉を発する。


「身長は、160㎝くらいで川のように透き通った髪色をしている。

顔はフードで隠していたから分からないが、包容力のある女性だ。」

とファルゼンは答えた。


俺は、ニヤッと笑みを浮かべて、ファルゼンにある提案をする。


「ファルゼン。ヴァローナの捜索に協力しないか?」


「!?」


「「な!?」」


突然の提案にその場にいた者は、驚愕した。

ファルゼンは動揺する。


「レイダス正気か!?」


リーゼルが俺の横に立ち、発言する。

ファルゼンは、犯罪者である妹を脱走させようと冒険者ギルドに忍び込んだ。

つまり、ファルゼンも犯罪者である。


「ファルゼンはヴァローナに会った事がある。なら、発見しやすいだろう。

それに契約を結ばせるから問題ない。」


俺の真顔にリーゼルは、呆れた。

「私は御仁に賛成です。」とウェルダンは俺に同意する。


「妹を犯罪者に仕立て上げた女を捕まえたくはないか?

お前はどうしたいファルゼン?妹の罪を帳消しにできるかもしれないぞ?」

俺は、妹の開放を餌にファルゼンを揺すった。


ファルゼンは、自分の両手を眺める。

思い浮かぶのは、小さい妹の笑顔だ。

そんな妹を陥れた女をファルゼンは許せなかった。


ファルゼンは思う。

ヴァローナの真意を確かめたい。

昔は、自分達に優しくしてくれた人が何を考えていたのか・・・。


ファルゼンはもう俺を憎んでいなかった。

真っ直ぐ俺を見つめる瞳に曇りはない。


「分かった。協力しよう。」


餌に喰いついたファルゼンに俺は、笑みを浮かべる。


「じゃあ。協力の証としてここに契約を結ぶ。」


俺は、結界を解き《魔法/第10番:直筆契約》を唱える。

羽ペンと用紙を渡し、サインさせた俺は、ファルゼンに言う。


「明日、ヴァローナが居そうな場所への案内役として俺と行動して貰う。

冒険者ギルド入り口で落ち合い、直ぐに出発だ。今日はその部屋で休め。」


「了解だ。」


今後の方針を勝手に進めた俺にリーゼルは口を開く。


「その部屋は俺の部屋だぞ・・・。」


リーゼルは不機嫌になり、俺をジト目で見ていた。


「今日は、別の部屋で寝ろ。それとも相部屋が良いのか?」


「ふざけんな!」

リーゼルは怒鳴る。


「嫌なら我慢しろ。」

それを即答で返す。


「ぐぬぬ・・・。」

リーゼルは歯を食いしばり、拳を握る。

相当部屋を気に入っているのだろう。


その様子にウェルダンは笑みを零した。

ウェルダンだけでなく、ファルゼンも笑みを浮かべる。

彼は、俺とリーゼルのやり取りに声を上げて笑った。


「如何やら、俺は貴様を誤解していたらしい。」


「俺の名は、レイダス・オルドレイだ。貴様なんぞではない!」


俺はファルゼンに指を突きつけた。

ファルゼンは、一瞬戸惑ったが冷静になる。


「分かったよ・・・。オルドレイ・・・これでいいだろ?」


俺はコクリと頷いて、指を下げた。


『さっさと平穏を取り戻して、俺は、《星波の丘》に行く!』


その為にヴァローナは邪魔だ。

イスガシオを滅ぼす事が目的なら新たな刺客を送り込んでくるだろう。

許可を得る前に、ヴァローナに妨害されては困る。

イスガシオが平和にならなければ、俺は《星波の丘》に永遠に行けないのだ。


『殺してやる・・・。』


俺は、会った事もないヴァローナに殺意を向ける。


俺達は、解散し各々別行動を開始する。

俺とガルムは準備の為、夢見の森のログハウスに帰宅するのだった。

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