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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
101/218

《毒の邪蛇》


俺とガルムはイスガシオのディレット宅に訪れていた。

採掘や採取をしている間に、イスガシオの近くまで来ていたのだ。


「唐突に、すまん。」

俺は、謝罪した。


ディレットが慌てた様子で俺に言う。


「やめてください。貴方のお陰で、イスガシオの民は、助かっている。

それに貴方に謝られては、我々の立つ瀬がない。」


「分かった。」と言って俺は謝罪を止めた。


そこへミーナがやってきて、笑顔を浮かべる。


「あ、お兄ちゃん!こんにちは!」


元気な挨拶に俺は、軽く手を振った。

ミーナはそのまま何処かへと走って行く。


『来たついでに国宝の件について説明していくか・・・。』


俺は、ディレットに国宝《炎華龍撃槍》を取り戻した事を伝える。


「本当か!?」


ディレットは、勢いよく立ち上がって、表情を明るくした。

俺は、ディレットを一旦落ち着かせ、座るように促す。


「話しはまだ終わっていない。」


俺は、話しを続けた。


「国宝《炎華龍撃槍》を取り戻したが、国宝を強奪した犯罪者が再び現れるかもしれない。

そこで、王都グラントニアのギルドマスターに託した。

安全な場所に保管しているが、暫くは返還できないだろう。」


「そうですか・・・。」


ディレットは、落ち込む。

俺は、話題を変えた。


「畑は?」


「毒抜きを教えて貰って以降は、

食に不自由は無くなりましたが、未だに畑から毒素は消えません。」

とキャロルがキッチンから姿を現した。


「土壌の土を入れ替えたりは?」


「したが、効果はなかった。毒消しを撒いてみたが、それも一時的な効果だった。」

とディレットが説明する。


「やっぱりか・・・。」

俺はボソッと呟いた。


俺の呟きを聞いたキャロルは俺に尋ねる。


「やっぱりとはどういう意味ですか?」


「ああ~・・・。そうだな。説明するよりも体験した方が早いだろう。」


俺は、ディレットと畑へ向かった。

畑は、以前と変わらず、食用アイテムが毒素に侵されていた。


俺は、《探知》を発動させた。反応はあるのが、薄い。

地面の奥深くに何かいるのは間違いない。


『俺は正体を知ってるけどな・・・。』


「見てろよ。」


俺は、ディレットにそう言って剣を抜いた。

そして、スキルを発動させる。


「《スキル:刺突》」


《スキル:刺突》は、剣士職の初歩スキルである。

剣や槍等の剣士職用武器の突き威力を上げるという効果だ。


「《スキル:ステータス操作》」も付け加え、威力を調整する。


俺は、真下に向かって、剣を突き刺した。

その衝撃は、横に広がる事はなく、真下に伝わる。


俺は、地面から剣を抜き、ディレットに言う。


「ここを掘ってみろ。」


俺が、指さしたのは俺が剣を刺した場所だ。

「分かった。」といってディレットは地面を掘り始めるが、何も出てこない。


そこへ他の獣人が駆け寄ってくる。


「何やって・・・わあああ!人間だあああ!」

「に、逃げろオオオ!」

「殺される殺されるうう!!」


獣人達は俺から逃げようとするが、ディレットがそれを止める。


「貴様ら!恩人に向かってその態度はなんだ!獣人であるならば、俺に協力しろ!」


ディレットの声に他の獣人達は静止した。

獣人達は、お互いを見合ってディレットの手伝いを始める。

獣人達は、時折俺をチラ見するが、俺はディレット達の作業見学を続けた。


約15分後―――――


ディレットの手に何かが当たる。


「あと少しだ!」


ディレット達は作業速度を上げ、掘り当てる。

獣人達は驚愕した。

掘り当てたのは、魔物だったのだ。

そして、その魔物は俺の一撃で死亡していた。


「《毒の邪蛇》又の名を《毒蛇の神》だったかな?」

俺は、魔物名を口にする。


「これが、毒素の正体・・・。」


ディレットは作業に疲れて肩で息をしていた。


「ああ、でもな。こいつ1匹だけじゃない。まだ10匹いるぞ。」


「10!?」

獣人達は息を呑んだ。


「良い事を教えてやる。《毒の邪蛇》は、獣人の血と肉が大好物だ。

毒で弱らせ、死体を喰らう。

国王が殺された時、多くの獣人が死んだと聞く。

恐らく、それが原因で畑に住み着いたんだろう。」


獣人達の背筋に悪寒が走った。

俺の言い方もあるが、嘘はついていない。


「その魔物は、何故地表に顔を出さなかったんだ?」


ディレットは、俺に質問する。


「《毒の邪蛇》は基本的に大人しい魔物だ。

こちらから手を出さなければ、何もしない。まあ、とっくに手遅れだがな。」

俺は、ニヤッと笑みを浮かべた。


畑の地盤が揺れる。

獣人達は、地盤の揺れに尻もちをついて倒れた。


「《毒の邪蛇》は群れで行動する。1匹殺せば・・・後は分かるよな?」


そして、畑のあちこちから、《毒の邪蛇》が飛び出す。

《毒の邪蛇》は毒の牙を剥きだしに、俺達に襲い掛かろうとするが、それは無駄に終わる。


俺は、飛び出してきた数を確認し、ガルムに一言発した。


「やれ。」


ガルムは、素早く爪で魔物を斬り裂いていく。

牙で噛んでしまえば、毒状態になる為、ガルムは本能的に避けているのだ。


数分もしない内に、飛び出してきた《毒の邪蛇》は全滅し、ガルムは俺の元に戻ってくる。

俺は、ガルムを撫でた。


「ワフゥ~~。」


嬉しそうに身体を擦り寄らせるガルムが可愛くて仕方がない俺は、ガルムを抱きしめた。


「よくやった。」


俺は、ガルムのモフモフが名残惜しいが、手を離す。

俺は、立ち上がって、獣人達に発言する。


「これで、食糧難は完全に解決だ。これからは、死体処理に気をつけろよ。」


ディレットを含む獣人達は、呆然とした。

ディレットは我に返り、俺の後についてくる。


ディレット宅に戻った俺とディレットは、再び話しを始める。


「何故、魔物の存在を伏せていたのですか?」


「確証がなかった。魔物だとして、()の獣人達では対処出来ない。

だから、言わなかった。」


「それで、魔物を討伐した事で毒素は消えるのですか?」


「多分な。」


ディレットは、テーブルに前のめりになった。

テーブルに顔をつけ、息を吐く。


「良かった・・・。本当に・・・。」


ディレットの瞳から涙が溢れる。


『涙もろい奴・・・。』俺は、そう思った。

そこへミーナが駆け寄る。


「どうしたの?なんで泣いてるの?」


ディレットは、上体を起こし、ミーナを抱き上げる。


「良い事があったんだ。これからは、美味しい料理が一杯食べられるぞ。」


ミーナは満面の笑みを浮かべて「やったー!」と喜んだ。


『他人の癒しの空間に部外者がいるのは場違いだな・・・。』


「用事は済んだ。俺は帰る。」

俺は、椅子から立ち上がった。


「また、遊びに来てね~。」


ミーナはディレットに抱えられて、大きく手を振る。

俺は、背を向けたまま、軽く手を振るだけに留めた。


――――新王都――――


俺とガルムは、《瞬間移動》で王都に戻ってきた。

既に日が暮れ、街に人気はない。


俺とガルムは、森に身を潜める。

精霊がスキルを行使しようとしていたからだ。


『召喚者だからか、感覚が伝わってくるんだ。』


「うお!?」


俺は、声を上げた。

俺の視界が突然、違う光景を映し出したのだ。

『《スキル:視界共有》だな。』


《スキル:視界共有》は、

相手の視界を覗いたり、自分の視界を相手に見せる事が出来るスキルだ。


精霊は、俺にある光景を見せる。

冒険者ギルドの外壁をよじ登り、一室を覗くマリーの兄の姿が映し出されていた。


俺は、精霊に待機するよう《念話》を飛ばし、冒険者ギルドに向かうのだった。

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