表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
100/218

男は、絡まれる。


俺とガルムは、冒険者ギルドの酒場でくつろいでいた。

リーゼルは、仕事で忙しいらしく、面会が出来なかった。

報酬を受け取りに来たのだが、如何やらまだ先になりそうだ。


そんな俺に周囲は、視線を向ける。

今まで嫌だった視線が、今では慣れてしまった。


『俺の精神も成長している証拠だな!』


俺は、ジョッキに入った酒を飲み干し、テーブルに置く。

酒場のマスターに追加で酒と料理を注文した俺は、飲み食いに夢中になる。

《宿屋 青薔薇》程ではないが、酒場の料理は上手い。


俺が、ガルムに料理を分けていると、声をかけられた。


「レイダスさん!お久しぶりです!」


「お久しぶり~~。」


俺は、声をかけてきた人物達を見た。


「おう。青年達か。久しぶりだな。」


カイル達だった。

新王都が出来てからというもの俺は、全く彼らと会わなかった。

『今までどうしていたのだろう・・・。』

そんな事を思った俺はある事に気が付く。


「その恰好・・・。魔物にでも襲われたか?」


カイル達の防具には傷があり、服は所々破れていた。

装備している武器も壊れかけ寸前だった。


「アハハハ・・・。」


カイルは苦笑いした。

俺は詳しい話しを聞くことにする。

その前に、座るように言った。


「一旦座るといい。」


「いえ、座ると立ち上がれなくなりそうなのでご遠慮させて頂きます。」


「そうか。」


俺は、ゲイルに断られた。

それだけの疲労を抱えているのだろう。

俺は、座りながら話しを聞く。


「で、どうしてそうなった?」


「俺達は、帰郷する為に王都を出ました。

村に暫く滞在して、王都に戻ったのですが、魔物がうようよいて・・・。」


「成程。」


カイル達は、戦争前に王都を出発。後に王都に戻った。

その時には、既に戦争は終結していて、

それを知らなかったカイル達は《不死者の人間》に襲われた・・・。

辺りが妥当だろう。


「旧王都を見張っていた冒険者か黒い番犬に保護されたのか。」


カイルはコクリと頷いた。


「見事な見解!流石オルドレイ殿です。」


ゲイルは、俺を褒めたたえる。


『正直、そこまで褒める内容じゃないと思うが・・・。』

現状を把握している者なら誰でも分かる。


「今日、ここに来たばかりだろ?休息を取った後、見て回るといい。

防具屋や武器屋、洋服屋も揃っている。宿屋は直ぐに予約が埋まるから、速めにな。」


「あ、ありがとうございます!」


カイルは、頭を深々と下げた。


「何故頭を下げる?宿屋を紹介してくれた恩を返しただけだ。気にするな。」


俺がそう言うと、カイルは頭を勢いよく上げた。


「恩って!そんな・・・。俺達は、レイダスさんに助けて貰ってばかりで・・・。」


カイルは奥歯を噛みしめ、拳を握った。

『やれやれ・・・。』


俺は、席から立ち上がってカイルの頭をワシャワシャと撫でまわした。


「うわ!?何するんですか!?」


カイルの髪はぼさぼさになった。

俺は、再び席につき、笑みを浮かべた。


「俺に迷惑をかけたくないのなら、強くなれ。それまで青年は、ひよっこだ。」


俺は、酒の入ったジョッキを片手に持ち、酒を飲む。

カイルは、ぼさぼさになった髪を直して、真剣な目で俺を見る。


「分かりました!俺、頑張ります!

レイダスさんに一人前と認められるように頑張ります!」


カイルの気合の入った顔つきに俺は、口角を上げる。


「まあ、無理しない程度に頑張れよ。」


「はい!」


元気いっぱいの返事に、イリヤとゲイルは微笑んだ。


「そうと決まれば、イリヤ!ゲイル!行こう!」


「え!? 行くってどこに?カイル待ってよー!」


「オルドレイ殿失礼致します!」


カイルが冒険者ギルドから外へ駆け出して行った。

その後ろにイリヤとゲイルが付いて行く。


「仲良いよな・・・。」


俺は、酒を飲み干し、料理を完食した。

席を立ち上がり、お代をテーブルに置く。


俺は冒険者ギルドを後にしようとするが、眼前に5人の冒険者が立ち、道を塞いだ。

相手は身長が高く、俺は見上げる。


『どう見ても悪だな。』


顔つきが悪者?チンピラ?風な輩だった。

リーダーらしき男は紫の短髪で背に大剣を背負っている。


俺はテペリの巻き添えで絡まれた事を思い出す。


「貴様に用がある。」


「なんだいきなり?」


俺とガルムは、周囲を囲まれた。


「要件は?」


俺は、囲まれつつも冷静だった。

《ステータス操作》を手に入れた俺は、ガルムを巻き込まずに戦闘ができる。

その為、余裕があったのだ。


「貴様に俺の妹が負けるはずがねえ。俺の妹を傷つけた罪を償え!」


「やれ!」というリーダーの号令で相手は武器を抜き、一斉に飛び掛かった。

ガルムは、軽く跳躍し、1人を踏み台に脱出した。

俺も軽く跳躍し、後方へ宙返りする。


《気配探知》を発動させている俺は、冒険者ギルドの出入り口周辺に人間がいない事を確認し、

5人の冒険者を殴り飛ばした。

的確に顔面を打ち抜き、冒険者達は、外でノックダウンした。


俺は、リーダーらしき男の胸ぐらを掴み上げた。


「グウッ!」


口からは大量の血を流していた。


()と言ったな?」


俺は、男の肩を殴った。

リーダーの男の骨がボキボキと音を立てて砕ける。


「ぐあ゛あ゛あ゛あ゛!」


「答えろ。」


俺は、リーダーの男を問い詰める。

拷問のような光景だが、致し方ない。

リーダーの男は俺を睨みつけて、答える。


「マリー・フラクト。貴様に片足と右腕を斬り落とされた女は、俺の妹だ!」


俺は、驚いた。


『兄がいたのか!?』


「逆恨みか。あの女の兄なら、妹が何をしたか事情説明を受けているはずだろ?」


「ッ!うるせえええ!」


マリー・フラクトの兄と名乗る男は、俺に殴りかかる。

俺は、男の胸ぐらから手を離さない。

男の右拳を左手で受け止め、握りつぶした。


「ぐおあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」


男の指の骨を砕いた俺は、男の拳から手を離す。

男の手からは骨が飛び出し、プルプルと震えていた。


「俺に絡んだ理由を言え。」


俺は、無表情に尋ねたが、男は黙る。

口を固く閉ざして話そうとしない。


『殺そう。』と思ったが、周囲にギャラリーが出来て来た為、やめる。

俺は、男の胸ぐらから手を離し、背を向けた。


「これに懲りたら、報復なんて考えるなよ。じゃあな。」


俺は、ガルムを呼んでその場を後にした。

「報復はするな。」と釘を刺したが、あの男は、俺が立ち去るまでずっと睨みつけていた。


『あれは報復しに来るな。』


どのタイミングで攻撃を仕掛けてくるか不明な為、対策の立てようがなかった。


「新しい魔法を使って、監視でも付けるか・・・。」


俺は、人気のない場所で魔法を唱えた。


「《神聖の神専用魔法/第20番:精霊召喚》」


俺の眼前に、《聖》属性の精霊が姿を現す。

人間サイズの精霊は、優しく微笑み俺の指示を待った。


「マリー・フラクトの兄を監視し、不審な動きがあれば、俺に報告しろ。行け。」


精霊は、俺の指示に頷き、マリーの兄の元へ飛んでいった。


《精霊召喚》で召喚された精霊は、召喚者の命令に従順に従う。

lvは100だ。戦闘になったとしても、負ける事はない。

又、精霊を消滅させたいときは、召喚者である俺が念じれば消える。


監視という役目を、精霊に与えたのは適任だからだ。

召喚した精霊にはスキルとして《透明化》がある。

常時隠れる事が可能な精霊には打ってつけだ。


それに、俺も《透明化》は使えるが、常時付いて回るわけにはいかない。

俺にも用事というものがあるからだ。


後の事は、精霊に任せ、俺とガルムは久しぶりに採掘や採取に熱中するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ