男は怒る!そして・・・
男は、ボアル・ベアを斬り裂いていく。
――――――楽しい―――――――
男の感情が高揚感に満たされる。
ボアル・ベアを殺す前に我に返った男は、前世を思い出す。
「俺は『あいつ等』と同じことをしている。」
男の肩からガルムは素早くおり、安全地帯で待機する。
「―――鑑定———」
魔物/ボアル・ベア/成体
lv/11
体力/3810
防御/ 700
攻撃/1200
速度/ 800
持久力/1400
魔力/ 200
魔力量/600
魔法適正/E
男は鑑定を使用し、ボアル・ベアのステータスを見る。
体力はガルムよりも上だ。
しかし、今の男は軽くボアル・ベアのステータスを凌駕している。
グルオオオオオオオオ!!!
ゆっくりとボアル・ベアへとちかづていく男。
ボアル・ベアは、男に走って突進していく。
「遅い。」
男はボアル・ベアの突進を前進しながら右へ回避し、
ボアル・ベアの左後ろ足を斬り落とす。
グ!? ルオオオ・・オオオオオ!!
ボアル・ベアは足を一本失い、バランスを崩す。
がすぐに3本の足で態勢を立て直す。
「次はどこを斬り落とされたい?」
男は静かに笑う。
男はある感情に支配されていた。
―――――楽しい――――――
男は楽しんでいた。高揚感が男を満たしていく。
『自分には力がある』
男はボアル・ベアの四肢を切り落とす。
ボアル・ベアに残されたのは頭と胴のみ。
動くことができないボアル・ベア。
グ・・・・ルォ・・オオオオオォ・・・
ボアル・ベアの声は弱弱しく、まるで命乞いのように男には聞こえた。
「今更命乞いか? もう遅い。」
男は屍となった青年に指を指す。
そう、もう遅いのだ。
『ボアル・ベアは青年を殺した。ならば、ボアル・ベアが死ぬのは当然だろう?』
と男は言いたいのだ。
「心臓をゆっくりと刺し貫いてやる。 死ねるお前は幸せ者だ。」
男はボアル・ベアを蹴り上げ、仰向けにさせる。
ボアル・ベアにはもう抵抗する力は残っていない。
男は、剣をボアル・ベアの胸に突き立てる。そして――――――――――――
「死――。――――――――」
「ワオオオオオオ――ン!!!!」
男は、ガルムの遠吠えに我に返った。
『俺は何をしている?』
『俺は青年の仇を『普通に』とるんじゃなかったのか?』
やっていることは間違っていない。ボアル・ベアが死ぬのは決まっている。
しかし、男は『青年の仇』をとるということを忘れていた。
男はボアル・ベアを殺すことをただ単に楽しんでいたのだ。
男は『命をもてあそんでいた』のだ。
「これじゃまるで・・・・・・・・・・・・・。」
男は叫びたい気分に襲われた。
「うおあああああああああ!!!!!」
男の剣がボアル・ベアの心臓を貫いた。
―――ドン!!!!――――というすさまじい音が『メイサの森』に鳴り響く。
男が剣を引き抜くと同時にボアル・ベアは絶命した。
男は、フラフラと立ち上がる。
そして、空を見た。
空を見れば雨雲が漂っていた。
ポツリ、ポツリと滴が落ち、次第に雨に変わる。
男は雨の中、雨雲を見つめていた。
「何やってんだろうなー。俺・・・。」
男は前世を思い出した。
『俺は、ボアル・ベアを殺した。青年の仇を取ることを棚に上げて・・・・。
よく考えてみろ。ボアル・ベアだって生きるためには食料が必要だ。
俺がボアル・ベアに怒る理由がどこにあった?』
そう——— 男はボアル・ベアが青年を食べているのを見て怒った。
それは『男の前世』と青年を重ねたからだ。
――――青年は生きたかったはずだ。―――――
好き好んで死にたいやつはいない。
男も生きられるのなら生きたかった。しかし、男はあの世界(日本)で生きていけなかったのだ。
しかし、男は人生をあきらめた。『死』を選び楽になった。
男は自覚したのだ。
『俺は、ボアル・ベアに―――――――――――――――』
『俺があいつらにされた最悪な行為をしていた。』
男は空を見上げたまま笑う。
『あいつら側にはならないと心に決めていたのにな。
俺から、奪い、いたぶり、死に追いやったアイツらには!!――――――』
そして、男は肩に飛び乗るガルムに感謝をする。
「ありがとう。ガルム。」
「クウゥ———ン アウ!」
ガルムは嬉しそうに尻尾を振る。
ガルムのおかげで男は前世の『あいつ等』と同じことをしていたことに気付くことができた。
男は静かにほほ笑むのだった。
「イリヤ!あっちをみてきてくれないか!!」
「うん!分かった!カイルーーーー!!どこなのーーー!」




