引原ごんすけ
昔丹後の国に引原〈ヒッパラ〉という峠がありました。
昔々のことですから今のようにたくさんの車が通る大きな道ではありません。
細くて険しい山道で、大きな木もたくさん生えた昼でも暗い道でした。
そこに「引原ごんすけ」と呼ばれる古い狸がいて、よく人を化かしておりました。
お祭りによばれて行った帰り、持っていたご馳走を食べられたり、
「やれやれ、かえったわい」と風呂を浴びていたら、それは小川の水溜りだったりしました。
峠のふもとに住む村人たちは大変迷惑をしていました。
そこでみんなで相談して、狸の悪さを封じるためにお地蔵様を建て、
お坊さんにお経を読んでもらいました。
今も線路脇にあるお地蔵様が、そのとき建てられたお地蔵様だと伝えられています。
そんなこんなで引原におられなくなった「ごんすけ」は、海辺の山に移っていきました。
「ごんすけは」そこでも悪さを始めました。
嵐の夜に、浜辺のあちらこちらに火を燃やして沖を通る船をおびき寄せる、
船は浅いところへ乗り上げて動けなくなる、そこで食糧や積荷を奪うといことが
たびたびありました。
海辺の村の人たちも困ってしまい、みんなで相談すると、
山の上の海がよく見渡せるところに大きなお地蔵様を建て、
偉いお坊さんを招いて狸封じのお経をいただきました。
このお地蔵様は高さ180cmの、五色浜のお地蔵様がそれだと言われています。
こうして「ごんすけ」は海辺の山にも居られなくなって、もっと西の
但馬の山へと退散していきました。
「ごんすけ」はそこでもまたまた悪さを始めます。
丹後から逃げてきた古い狸が但馬の山に棲みついて、人を化かしている
ということはたちまち噂になりました。
あるとき、山できこりが焚き火をしてあたっていると、
見知らぬおばあさんがやってきて「ちょっとあたらせてくんさらんか」
といいます。
きこりがよく見ると、おばあさんの後に大きなしっぽが見えます。
「ははーん。さてはこいつだな、近頃噂の高い古狸めは」
と、いきなりそこにあった燃えさしの丸太をつかんで打ちたたき、
とうとうその狸を退治してしまいました。
これが「引原ごんすけ」の最後だと今に伝わっています。
(おしまい)
地元に伝わる昔話を子どもたちに伝えるためまとめてみました。