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ダンジョン&スライム⑨

「・・・うーん・・・はっ!」


 意識を取り戻したナユラは周囲の状況を確認した。大量集まったスライム、巨大スライムはいなくなっている。フロアの床を汚すドロッとした液体はスライム達の残骸だろう。当たり一面、スライムのベトベトな液体だらけだ。アミンは、どれだけスライムを殺したのだろうか・・・そのアミンは、疲れ切った顔でナユラの肩に頭を預けて眠っている。


「アミン、戦い疲れて寝ちゃったんだね。動き疲れて寝ちゃう、赤ちゃんみたいで可愛いなー。ナデナデ・・・」


 あまりの可愛らしさに、ナユラはついついアミンの頭をナデナデしてしまう。ついでにほっぺをつんつんする。


「ここはスライムダンジョンだよ。いつスライムが現れるか分からない危険な場所なのになー。私の肩で寝ちゃうなんて可愛いよー」


 そこに5匹のスライムが体をプルプルと揺らしながら小部屋に入って来た・・・小部屋の空気が一変する。スライムの侵入に気が付いたナユラが、怒りに満ちた視線をスライムに向け、寝ているアミンを起こさないように、怒りで沸騰しそうな心を抑えながらボソボソと呟いた。


「・・・ボソボソ・・・今は私のターンでしょ・・・傷つき疲れた男の子を女の子が優しく寄り添う時間でしょ・・・この時間は私だけのものでしょ・・・怒りがこみ上がってくるよ・・・荒れ狂う風達よ。吹き荒れ狂う、刃の嵐となれ・・・刃嵐!」


 風魔法2レベル、刃嵐の呪文詠唱が完成した。突風が吹き荒れ5匹のスライムを中心に竜巻が現れた。竜巻はスライム達を持ち上げ、ねじり、バラバラに引き裂いた。


「・・・のじゃ」ナユラは微かに内なる声が聞こえた気がした。「あまり怒るとアミンが起きてしまうのじゃ。怒りをコントロールするのじゃ。風魔法レベルが3に上がって新スペルを覚えたのじゃ。役立つ魔法だから、怒りを鎮めて使ってみるのじゃ」と内なる声が響いた。ナユラは内なる声を聞き、こみ上げる怒りの感情を無理やり押さえつけた。「アミンは私と寄り添って幸せなの・・・アミンと私の邪魔はさせない・・・」ナユラは呪文詠唱を始めた。


「風よ来たれよ。風よ集いて嵐の壁となれ・・・風結界!」」


 ナユラを中心に小部屋を覆いつくすほどの大きさの強烈な嵐の壁・・・風結界が作られた。スライム程度なら侵入はもちろん、風結界に触れただけでバラバラに引き裂かれるだろう。安心したナユラは、自分の肩でスヤスヤと眠るアミンの寝顔を見ながら、時折つんつんしながらアミンが起きるのを待ち続けた・・・




ツンツン。


「もう少し寝かせて・・・」


ちゅっちゅっ。


「・・・ちゅっちゅっ、って・・・はっ!」


 アミンは頬に柔らかい感触がして目が覚めた。瞼を開くと至近距離に幸せそうに微笑むナユラの顔があった。どことなく顔が赤く目が潤んでいる。


「アミン、おはよう」

「ちゅっちゅっ、って聞こえたような・・・」

「さっきまで小鳥が飛んできて、ちゅんちゅんと鳴いていたから、この泣き声かなー。それともアミンは寝ている間にエッチな夢でも見ていたかなー。そんなことよりも、スライムとの激戦で凄く疲れていたみたいだけど起きて大丈夫?」


 スライムダンジョンの中で疲れて寝てしまったことをアミンは思い出した。慌てて周囲を見回したがスライム姿はない。あるのは床一面の、スライムのベトベトした体液と視界を遮る嵐の壁・・・


「この嵐の壁は、風魔法が3レベルになって覚えた風結界なの。結界でスライムの侵入を防いでいたんだよ」

「俺が寝ている間、守ってくれていたのか・・・体の疲れもすっかり取れたよ。ありがとう、ナユラ」

「アミンが元気になってくれて良かった。今日はお母さんから頼まれた仕事があるんだ。アミンにも手伝って欲しいよ」

「もちろん、手伝うよ。マーリさんのお願いなら、断る理由はないよ。それで、どんな仕事なの?」

「巨大スライムのべたべた体液集めだよ」


 2人はそこら中に飛び散っている巨大スライムの体液を集め始めた。集めた体液は大きな皮袋に詰め込んでいく。すべての体液を集め袋詰めすると、なんと皮袋10袋分もの物量になった。この前は巨大スライムの体液1袋だけでも、重くて持ち帰りに苦労した記憶が蘇ってきた・・・


「アミンは力持ちだし男の子だから、10袋くらい1人で運べるよね!よーし、そろそろ家に帰ろうねー」


 アミンは巨大スライムの体液が入った袋、10袋を担ぎ歩きだした。立っているのがやっとだが、1歩1歩と床を踏みしめながら進み始めた。あまりの重さに気を抜けば、その場で倒れてしまいそうだ。


「アミーン、早く行こうよー、日が暮れてしまうよー」


 ナユラは急かせているが、返事をする余裕もない・・・今は一歩、ただ一歩ずつ前に進むだけだ。「・・・のじゃ」アミンは微かに内なる声が聞こえた気がした。「なぜじゃ、なぜ2回に分けて運搬しないのじゃ。とりあえず運搬スキルを覚えたのじゃ」運搬スキルを覚えたアミンは、何とか倒れずにナユラの後を追うことができた。家に着くころには「運搬スキルの2レベルになったのじゃ」と内なる声が聞こえ、運搬スキルのレベルが上がっていた。運搬スキルの効果で倒れることは無かったが、巨大スライムの体液を10袋も背負った帰り道は、普段の何倍も時間がかかることになった。すべての袋を家にしまう頃には、すっかり日が沈んでいた。


「荷物運び、お疲れ様。アミンはやっぱり力持ちだね!男の子は女の子の荷物を運んでくれるという言い伝えは本当だったんだね」

「・・・運搬スキルが無かったら、倒れていたと思う・・・」

「アハハ!アミンは冗談ばっかりなんだから、アミンがこんなことで、倒れたり、へこたれたりするわけないよ。冗談は置いておいてアミンに相談があるの・・・今日はお母さんが帰らないでしょ・・・だから、村で夜遊びしない?」


 夜遊びといってもど田舎のピロマ村だ。夜でも開いている店は、酒場(実際には酒場兼食堂兼宿屋)くらいしかないが・・・


「モンスターハンターのお仕事している私たちは・・・仕事をしているから、もう大人の仲間入りをしていると言えるよ。労働の後のお酒を飲む権利はすでにあるはずなんだ」

「そうだな・・・モンスターハンターになって4日が経って、スライムダンジョンの探索も順調に進んでいるし、酒場で今日までの探索成功のお祝いをするものいいかもな」

「やったー。早速、酒場に行こうね。お母さんの話だと、男女でお酒を飲むと、積極的になって奔放になるって聞いたし、いろいろな意味で楽しみだね」


 2人は探索の汚れを落とし、精一杯のおしゃれをした。そして全財産、アミンは1500G、ナユラは2000Gを持って夜の酒場に向かった。



スライム討伐数(1~4日合計)

スライム    405匹

巨大スライム    9匹

巨大赤スライム   1匹


4日日のスライムダンジョン探索終了時点の習得スキル

アミン スキル:剣5 盾4 光魔法3 運搬2

ナユラ スキル:料理1 農業1 風魔法3

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