ダンジョン&スライム⑥
「お母さん、ただいまー!」
巨大赤スライムとの戦闘で大切な装備(アミンのウッドシールドとナユラの服)を失った2人は、さすがに裸でうろつくのもまずいと思い、とりあえず家に帰ることにした。
「お母さん、アミンが後ろから何度も突いたら、熱いのがたくさん出て、私の服が大変なことになったんだよ。つまり、私が下着姿なのはそういうことなの」
「まあまあ、でもアミン君はマザコンでしょ。母親の象徴がその程度のふくらみで下着姿を見せられてもリアクションに困ると思うわ」
「お母さん、どちらかと言えばアミンはロリコンだよ。スライムダンジョンからの帰り道で、アミンは私の胸とお尻を89回もチラ見していたんだ」
「・・・たしかにアミン君は家についてから、ナユラの下半身を5回チラ見しているわね。だけど、少し小さめのブラウスに押し込んだお母さんの胸も5回チラ見しているわよ」
「これは困ったことだよ。アミンのとどまることを知らない欲求は爆発寸前だよ。私は強く求められたら断る自身がないよ・・・」
「ナユラ、いつまで下着姿でいるのかしら?アミン君が爆発する前に、急いで服を着てきなさい。早くしないとお母さんも対抗して服を脱ぐわよ」
「うわー、お母さんの体はえげつないから、イヤー!」
ナユラは叫びながら自室に走っていった。アミンは走り去るナユラの後ろ姿を、なんとなく目で追ってしまう。
「まあまあ!アミン君、ナユラの下着姿をガン見したわね。すごくイヤラシイ目つきだったわ。だけど男の子だから仕方ないわね」
マーリはブラウスの第三ボタンを開けながらアミンに近づく。大きな谷間が露わになり、アミンは堪えきれずにやっぱりチラ見してしまう。そんなアミンの様子にマーリは微笑みながら、
「男の子の欲望って抑えられないでしょう。お母さんは覚悟を決めました。アミン君、我慢しなくていいのよ」
さらに近づきながらマーリはアミンの手を取り、指を絡ませる。アミンは昨夜の抱きしめられたときに感じた、フニフニした柔らかさと包み込むような温かさを思い出し、「ゴクリ」と唾を飲み込んだ・・・
「これはいったい!私が服を着て戻ってきたら、何故かお母さんは胸元がはだけているし、アミンはガン見しているし、いやらしく指を絡めているし。詳細な説明を求むよ!場合によってはアミンにお仕置きが必要だよ!」
「お母さんは、アミン君のとどまることを知らない欲求を鎮めようとしたの。あのままでは暴走してしまう恐れがあったわ」
「どちらかと言えば、お母さんが暴走させようとしていた気がするけど・・・」
「男の子は暴走が終わると全ての煩悩から解放されるわ。だから、あえて暴走させてしまう方法もあるのよ。もちろん、暴走させないことによる利点もあるから、ナユラもこれから経験を積みながら覚えましょうね」
「さすがお母さんだよ。私もアミンの暴走をコントロールしたいよ・・・だけど、自分も暴走したい気持ちを抑えられないよ・・・」
母娘のとめどないおしゃべりは続いていたが、お仕置きを受けたくないアミンはその場から一目散に逃げ出した。ナユラの下着姿とマーリの谷間が目に焼きつき離れない。何とも言えないモヤモヤした気持ちになったアミンは、鍬を手に取り畑に向かった。
「うおー!」
気合い声を上げながら、一心不乱に鍬を振い荒れ地を耕していく。昨夜の開拓経験でコツをつかんでいるので、どんどん畑が広がっていった。
そんなアミンを遠くからナユラとマーリは見つめていた。逃げたアミンを捕らえ、お仕置きするつもりで探していたが、
「お母さん、逃げたアミンが畑を耕しているね」
「アミン君なりの発散方法なのかしら?ちょっとかわいそうな気もするわね・・・お母さんの母性本能がくすぐられてしまうわ」
「アミンにはもっとたくましく成長して欲しいから、これでいいのかも。うちの畑もどんどん広がるし。アミンもかわいそうだけど、私もお母さんも少し我慢が必要かも」
「・・・そうね。私達も我慢が必要ね・・・」
母娘はうなずき合うが本心は、
(アミンは私のものだよ。私以外がアミンに触れるだけで吐き気がする・・・我慢何かするわけないよ!)
(私がアミン君を正しく導く必要があるわね。大人の女としての義務と喜びが待っているわ!)
微笑みながら2人はうなずき合ったが、アミンを見つめる目には異常な熱がこもっていた。
しばらくの間、畑を耕したアミンはモヤモヤした気持ちも無くなり、スッキリした気分になっていた。クリアになった頭が問題を思い出す。
盾をどうするか?
スライムの吐き出す炎でウッドシールドは消し炭になった。元々、アミンの手作りなので再生は可能だが、今後の戦闘を考えると炎に強い盾、できれば鉄製の盾が欲しい。アミン自室に戻り、お金と売れそうな物を袋に詰め込み、村の商店に向かった。
ピロマ村・・・アミンは村で買い物をするのも、村の名前を思い出すのも久しぶりな気がする。こんな田舎の村に名前なんてあることを忘れるところだった。この村で盾が買えそうな店は、村に唯一の道具屋だけだ。アミンは早速、道具屋に向かった。
道具屋に入ると店のオヤジが嫌そうな顔で出迎えてくれた。アミンは元々嫌われていたが、昨夜のオヤジがマーリを口説く姿を見られてばつが悪いのだろう。
「オヤジ、盾を見せてくれ」
「俺の店には、お前見たいな貧乏人に買える盾は無いぞ。1番安い“なめし皮の盾”で3万Gだが、金はあるのか?」
500Gでお腹一杯食べられるこの村で、まだ12歳のアミンにとって3万Gは大金だ。全くお金が足りなかった。
「オヤジ、まけてくれ。俺は1500Gしか持っていない」
「話にならんな。貧乏人。金の無いやつはクズだな。ここはお前みたいな貧乏人がくる場所じゃない。クズは屑屋にでも行け。しっし!」
予想していた以上に盾は高額でアミンは貧乏だった。道具屋を追い出されたアミンは仕方なく屑屋に向う。屑屋とは、鉄屑や紙屑、ぼろ布の買い取りと販売をしている店だ。薄汚れた店で、いつも怪しい客が訪れている。マーリからも「屑屋に近づいてはダメ!」と言われていたが、盾を探すためだ、仕方がないだろう。
アミンは薄汚れた屑屋に入ると薄暗い店内に店員が1人いた。
「オヤジ、盾を見せてくれ」
「こんな美人に対し、オヤジとはどういう了見だ。まったく、近頃のガキは礼儀を知らないようだ」
薄暗くて気付かなかったが店員は女性のようだ。ボサボサの髪で顔の半分が隠れていて美人かどうかは判断できない。
「そんなに見つめるな。見つめたい気持ちは解るが・・・正直なガキだな。まったく、けしからん」
「オバサン、この店に盾は売っているか?」
「・・・・・・」
アミンの問いかけに女からの反応がない。聞こえていないようだ。
「・・・お姉さん、この店に盾は売っているか?」
「あるにはあるが・・・まったく、君は正直ものだな。私は実年齢より若く見られるから“お姉さん”と呼ぶのが適正だろう。君の正直さに免じて私も正直答えたいと思うが、そもそも盾を何に使うつもりだ?」
今度は直ぐに反応があった!
「スライムダンジョンでの戦闘のためだ。俺はモンスターハンターだからな」
「なるほど、あの子供の遊び場所か。あそこで遊ぶなら、手作りのウッドシールドを十分だと思うぞ」
「何を言っている。手作りのウッドシールドは直ぐに燃えてしまう」
「燃えるだと?詳しく話を聞こう・・・」
アミンは巨大赤スライムの話をした。強烈な炎のブレスを防ぐには炎に強い盾が必要だ。話し終えたアミンは、道具袋から巨大赤スライムの体液を取りだした。何かの役に立つかもしれないと思い採取していたものだが、今は結晶化して触ると微かに温かい。「ちょっと借りる」と女が結晶を手に取った。どうやら、鑑定スキルで調べているようだ。
「確かにこれは赤スライムの結晶だ。ずいぶんとレアな物を手に入れたな。君の話だと、かなり大きな個体だったようだが、倒せるレベルなのか?」
「俺のレベルは、剣3、盾1、光魔法2。仲間も風魔法2だ」
「・・・すごいな、剣3レベルか。傭兵として食っていけるレベルだぞ。それに魔法も使えるのか・・・巨大赤スライムは火山地帯にだけ生息するレアモンスターだと思ったが・・・そのレベルなら勝てるだろう。ところで君はいくら持っている?」
「1500Gあるぞ」
「話にならんな、貧乏人。だが、君の持っている赤スライムの結晶全てとならば交換してもいいぞ」
「交渉成立だ!盾をくれ!」
女は店の奥からゴソゴソ探しだし、埃が積もった鉄製のラウンドシールドをアミンに手渡した。
「少し古い物だが防御力は十分だろう」
アミンは早速、左手に持ち振り回す。金属の盾はズッシリと重いが、盾スキルの補正もあり十分に動かすことができた。
「またスライムダンジョンでレアな物を見つけたら、ここに持ってくるがいい。買い取りしてあげよう」
「ありがとう、お姉さん!」
アミンは盾をブンブン振り回しながら店から出て行った。アミンが喜ぶのも無理はない。子供が手作りしたウッドシールドと店売りの鉄の盾では防御力が桁違いだ。
「フフッ。面白い子を見つけた。あの子は金になる・・・」
屑屋の女はアミンの背中を見送りながら呟いた。
装備がバージョンアップしたアミン。早速、ラウンドシールドとロングソードを装備し、素振りと戦闘のイメージトレーニングを始める。練習は日が落ちるまで続け、
「盾スキルが2に上がったのじゃ」とレベルアップを告げる内なる声が響いたところでメージトレーニングを終了した。順調に成長を続ける中、スライムダンジョン探索3日目が終わった。
スライム討伐数(1~3日合計)
スライム 300匹
巨大スライム 2匹
巨大赤スライム 1匹