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ダンジョン&スライム③

意識を取り戻したナユラは周囲の状況を確認し、もう一度気絶することにした。

「あれ?今、意識を取り戻した気がしたような?」

アミンはナユラの頭をポンポン叩く。

「むにゃむにゃ・・・頭ポンポンも好きですが、ここは頭ナデナデが正解・・・ぐーぐー」

「寝言風に言ってないで起きろ。ここはダンジョン内だから安全とは言えない」

意識がはっきりしてきたナユラは気絶前の状況を思い出した。大量のスライムを誘導していたが強力な光で視力を失い、ダンジョンの壁に頭をぶつけて意識を失ったようだ。目覚めると正座するアミンの膝の上に自分の頭が載せられていた。これが3大胸キュンシチュとして名高い「膝枕」だ。ナユラが気絶した振りを継続中なのも頷ける。

「怪我の具合はどうだ?」

「このまま体勢で休み続ければよくなると思うよ。少し、頭を打っただけだから。私、強い光で視力が無くなって、スライムにつまずいて壁にぶつかったみたい」

「すまない。あの光は、スライムとの乱戦の中で覚えた俺の魔法なんだ。ナユラを守るどころか危険な目に合わせてしまった」

「モンスターハントに危険は付き物だよ。気にしないで、私だってモンスターハンターなんだから。それにしても、魔法を覚えるなんて凄いね」

「ピンチになるとスキルを覚えやすくなると聞いていたけど本当だった。スライムに囲まれて、死ぬかと思ったからな」

「ふーん・・・あれ!私も魔法を覚えているよ!風魔法だって。風魔法は上位スペルになると天気を操ることもできるから、農民達の憧れのスペルなんだよ!」

大量のスライムとの死闘を乗り越え成長した2人。スライムダンジョン探索2日目でスキル1つ、スペル1つを習得した。この成長スピードは異常な早さだ。通常は、スキル、スペルは何カ月もかけて覚えるもの。2人は、この異常な成長スピードについては気が付いていなかった。


「自由なる風よ。刃となり切り裂け・・・鎌鼬!」

ナユラの放った風魔法がスライムをバラバラに切り裂いた。スライム相手には十分すぎる威力があり一撃で倒す。思いがけない膝枕と魔法習得で、ナユラのモチベーションが再び高まり、次々にスライムを倒していく。アミンはモンスターハントのスリルと己を鍛えることに快感を覚える変態なのでいつも高いモチベーションだ。

順調にスライム狩り続け、今日のスライム討伐数も100匹を超えた。次なる獲物を探し、隣の小部屋に入ると巨大なスライムがプルプルしている。昨日倒した巨大スライムより、一回り大きく感じる。

「アミン・・・やっと、見つけたね」

「昨日より成長した俺達の力を見せてやろう。準備は良いか?」

ナユラはこくんと頷き呪文詠唱を始める。

「自由なる風よ。あいつを切り裂いて・・・鎌鼬!」

風の刃が巨大スライムに直撃し、大きな裂け目が付くが貫通はしなかった。魔法を受けた巨大スライムは2人を見つけ猛然と突進してきた。

「うおー!」

アミンが盾を構え前に出る。ドカン!と盛大な音とともに巨大スライムがアミンの盾に衝突。衝撃で2メートルほど押し込まれるが、アミンは突進を受け止めた。盾スキル効果だろう。突進が止まった巨大スライムにアミンのロングソードとナユラの魔法が当たり体を削っていく。巨大スライムは、近接での体当たりと体の一部を伸ばした打撃を仕掛けるがアミンの盾でことごとく防がれた。

「いけるよ!ついにあのべたべたが再び手に入るよ!」

2人は勝利を確認し攻撃を続ける。アミンは盾越しに見る巨大スライムの目がギラリと光った気がした。その直後、

びょーん。

目を疑う光景だった。巨大スライムは2メートルほど飛び上がり巨体はアミンの頭上に・・・

どすん!

とっさに避けるが間に合わず巨大スライムはアミンの上に落下した。

「ぐふっ・・・」

巨体に潰されたアミンが呻く。スライムの弾力がある体は、押してもぷにゅぷにゅ動くだけで力が入らず身動きができない。巨大スライムはアミンの体の上で小さく飛び跳ね始めた。アミンは必死に呪文詠唱を始めるが、

「光の輝きをもって、ぐふっ!」

「光の、ゲホ!」

「光の輝きをもって闇を打ち、ぐふぇ!」

巨大スライムの飛び跳ね攻撃で詠唱が中断し魔法が使えない。ナユラも遠距離から風魔法「鎌鼬」を連発するが大きなダメージは与えていないようだ。「うおー!ゲホ・・・うおー!ぐふっ・・・」

アミンは呪文詠唱を諦め、潰された状態からの剣攻撃に切り替えるが効果は薄い。巨大スライムはグイグイ体を押し付けアミンの体力を奪っていく。

ナユラは、このままではアミンが死んでしまうと思った。

「アミンは私のもの。あんたなんかに好きにさせない・・・」

自分の大切なものが奪われる、そう思った直後、自分の中にどす黒い感情が芽生えた。

アミンにのしかかり、うすら笑いを浮かべる巨大スライムを殺したい。私の大切なものを奪おうとするあいつを殺してバラバラに切断し食らいたい。自分の感情が抑えきれない。

「殺したいよ。バラバラにしたいよ。食べたいよ・・・」

ナユラは自分の中に、どす黒い圧倒的な力が芽生え始めたことに気付いた。このどす黒い力は自分が望むだけで直ぐに手に入る。巨大スライムをバラバラに引き裂き、食らうことなど造作もないことだろう。ナユラがどす黒い力を受け入れようとした時、

「・・・のじゃ」微かに内なる声が聞こえた気がした。「気がしたじゃ、ないのじゃ。このパターンはさっきやったのじゃ。風魔法レベルが上がって新スペルを覚えたのじゃ。今はこれで我慢するのじゃ。それに本当にアミンが死にそうだから早く助けるのじゃ」と内なる声が響いた。ナユラは内なる声を聞き、見失いかけた正気を取り戻す。「アミンを助けないと!」ナユラは呪文詠唱を始めた。

「荒れ狂う風達よ。吹き荒れ狂う、刃の嵐となれ・・・刃嵐!」

ナユラの呪文詠唱が完成すると、突風が吹き荒れ巨大スライムを中心に竜巻が現れた。竜巻は巨大スライムを切り裂き、ねじり、巨体を空中に持ち上げる。

「また、死ぬかと思った!このヤロー!」

竜巻により浮き上がった巨大スライムの下敷きからアミンは抜け出した。「アミンの光魔法もレベルアップしたのじゃ」内なる声に響き、導かれるように、アミンは新スペルを詠唱した。

「巨大スライムよ、止めだ!全ての生命を育む光よ。我に降り注げ・・・生命光!」

アミンとナユラに優しく温かい光が降り注ぎ、徐々に傷や疲れを癒やしていく。

「止めはさせなかったけど、お日様の下で日向ぼっこしているみたいだよ。癒やされるね」

アミンの新スペルは持続性のある回復魔法だった。かなり気恥ずかしかったがアミンは気を取り直し、ロングソードで巨大スライムに斬りかかった。何度か袈裟切りを繰り返すと巨大スライムは力尽き、べちゃっとした液体をまき散らし姿を消した。止めを刺したアミンの全身にはスライムの体液がべっとりとかかっている。

「やっと倒した・・・また、死ぬかと思った・・・昨日より強くなってるし・・・」

アミンは全身スライムまみれだ。粘り気があるべたべたが張り付き気持ちが悪い。

「アミン、スライムを剥がすから動かないでね。お母さんへのお土産にするんだ」

ナユラがアミンに張り付いたスライムを丁寧に剥がして袋に入れる。全身丁寧にお掃除してくれるナユラ。アミンは、むずむずとこそばゆさを感じた。

「やっとキレイになったよ。お掃除終わり。スライムのお掃除だからお掃除スラだね」

いまだに持続している光魔法「生命光」の優しい光に包まれながらナユラのお掃除スラが終わった。

「ありがとう、ナユラ。だけど、俺は剥がされるより剥がす方が良かったかな」

「うん。まだ、2回目だから・・・これから、いろいろ試そうね。私、アミンが良くなるように頑張るよ」

冗談を言い合いながらも、ナユラは、心に芽生えたどす黒い力を思い出し身震いした。あのどす黒い力を受け入れたら、どうなっていただろうか?今はどす黒い力の存在は感じない。だが完全に消えたわけではない。自分の奥底に潜んでいるとナユラは感じていた。

激戦続きで疲れ切った2人は、2日目のダンジョン探索を終了した。子供の遊び場所としては、あまりに危険すぎるスライムダンジョン。今日の探索は、死んでしまってもおかしくない戦いの連続だったが、アミンはモンスターハントのスリルが楽しくて堪らなかった。


スライム討伐数(1~2日合計)

スライム    200匹

巨大スライム    2匹


2日日終了時点の習得スキル

名前:アミン スキル:剣1 盾1 光魔法2

名前:ナユラ スキル:料理1 農業1 風魔法2

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